新しい働き方や独自の企業文化を持つ会社の魅力に迫るこの企画。
今回は地域の課題に対して、事業とテクノロジーでソリューションを提供・実装する「株式会社キッチハイク」にインタビューを行いました。同社は、地域特有の問題を解決するために、革新的な技術と事業モデルを組み合わせたアプローチを取っています。
株式会社キッチハイク:食と暮らしを軸に地域課題に挑む企業
株式会社キッチハイクは、「食と暮らし」を軸に、地域課題の解決や地域の価値向上に向けた取り組みを行う会社です。
会社名 | 株式会社キッチハイク |
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住所 | 東京都台東区東上野4-13-9 ROUTE89BLDG.4F(東京本社) 福岡市中央区大名2-6-11 Fukuoka Growth Next(九州支社) 北海道檜山郡厚沢部町赤沼町 認定こども園はぜる 横向かい(北海道支社) |
事業内容 | ・地域と子育て家族をつなぐ留学プログラム「保育園留学®」 ・関係人口特化型システム「つながるDX」 ・日本各地の特色ある食文化を贈る「NIPPON LOCAL FOOD GIFT」 |
設立 | 2012年12月6日 |
公式ページ | https://kitchhike.jp/ |
働き方 | フルリモート・フレックスで全国どこでも勤務可能 |
地方創生の取り組みが盛んになり、地域に活力を生む「関係人口」(※)の重要性が注目される中、株式会社キッチハイクは全国90以上の地方自治体・官公庁と連携し、地方における関係人口の創出に取り組んできました。さらに、「つながるDX」という関係人口創出の効果を可視化するシステムの開発にも力を入れています。
※関係人口…地域と多様な関わりを持つ人の数を示すもの。そのまちに住む「定住人口」、観光や遊びに訪れる「交流人口」に加えて、まちづくりにおける重要な指標として注目されている。
▲キッチハイクの取り組みイメージ図
株式会社キッチハイクの特徴として、フルリモートの働き方を採用し、社員が全国各地に在住していることが挙げられます。また、2022年には北海道と九州にもオフィスを開設しました。
今回は株式会社キッチハイクの働き方や企業文化について、多拠点居住を実践しながらつながるDX事業部で開発ディレクター・エンジニアを務める林さんにお話を伺いました。
キッチハイクの事業展開:地域課題解決のための3つの柱
▲キッチハイクさんの取り組む3つの事業
編集部
はじめに、キッチハイクさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
林さん
キッチハイクは「地域の価値を拡充し、地球の未来へつなぐ。」をミッションとし、自治体様向けに、食と暮らしを起点とした地域課題解決のためのソリューションを提供しています。
私たちがこだわっているのは、ソリューションを提供するだけでなく実装すること。そのため、自社を「地域と人生をつなぐ、食と暮らしの発明・実装カンパニー」と表現しています。
日本は「課題先進国」と言われており、地域はその最前線にあります。つまり、日本の地域課題を解決することは、将来的に地球全体が直面する課題への対応策を見出し、理想的な未来像を創造することにつながります。キッチハイクでは2050年を見据えた長期的な視点で「地域を未来の先駆者へ。」というビジョンを掲げ、地域に向き合う取り組みを進めています。
キッチハイクの主な事業は「保育園留学®」「つながるDX」「ニッポンローカルフードギフト」の3つです。
「保育園留学®」は、子どもが地域の保育園に通いながら、家族で地域に滞在できる短期留学プログラムです。「つながるDX」は、関係人口を可視化するためのサービスで、関係人口特化型SaaSと呼んでいます。「ニッポンローカルフードギフト」は、地域の魅力を「食」を通じて伝える仕組みで、市区町村単位で特産品などのローカルフードをカタログギフトにしたものです。
「つながるDX」:テクノロジーで関係人口を可視化し地域活性化を促進
編集部
キッチハイクさんの「つながるDX」は、各自治体が取り組んでいる地方創生事業の効果検証のような役割を果たすものなのでしょうか?
林さん
その通りです。「つながるDX」は自治体が保有している様々なデータを結合することで関係人口を可視化し、そこから具体的な施策につなげていくことを目的としています。
関係人口には、ふるさと納税の寄付者や地域のファンクラブ制度の会員など、多様な人々が含まれます。しかし、自治体の取り組みが複数の担当課に分かれていたり、同じ課でも個別に取り組んでいたりするため、その実態を把握・分析することが難しいのが現状です。
「つながるDX」にこれらのデータを取り込み結合することで、地域に強い興味や関心を持つ人を可視化することができます。そして、これらの人々とどのようにコミュニケーションを取り、どのような情報を届けていくかを検討することで、地域とのつながりや関係をさらに強化していきたいと考えています。
編集部
確かに関係人口は明確な数もつかみづらく、実態が見えづらい傾向にありますね。それらのデータを結合して可視化することは、効果検証とさらなる施策の改善につながる革新的な取り組みだと感じました。
キッチハイクの働き方改革:全国どこでも勤務可能なフルリモート体制
▲キッチハイクさんのオフィスの様子。出勤もリモートワークも完全に自由となっている
編集部
キッチハイクさんの働き方についてお聞きします。現在はフルリモートなのでしょうか?
林さん
はい、我々はフルリモートの働き方を取り入れており、自身や家族のライフステージやライフスタイルに合わせて暮らす地域を選んでいく「やわらかな定住」を推奨しています。基本的にオンラインでつながりながら、それぞれの場所で日々地域に根ざした活動を行っています。
具体例として、デザイナーの社員が2023年4月から、地域活性化企業人として岐阜県飛騨市に出向・移住をしています。他にもライフスタイルの変化に合わせて地方移住する社員や、私も含めて多拠点居住をする社員もおり、さまざまな働き方が実現できる環境となっています。
編集部
東京本社と北海道・九州にそれぞれオフィスもありますが、出社ルールなどはありますか?
林さん
出社に関しては完全に自由です。オフィスに行きたい人は行くし、自宅の方が良い人は自宅で働く、という形になっています。
この働き方にはCEOが大切にしている「人生を謳歌する」というメッセージが深く関係しています。メンバー全員が何もトレードオフにはせず、それぞれが大切にしたい生き方、働き方を実現し、「人生を謳歌する」ことが、事業の成長や仕事のパフォーマンスにもつながるというのがキッチハイクの考え方です。
具体的な取り組みとしては、「LIFE」という人事支援制度があります。これには、業務時間の調整を可能とするフレックス制度、上長と1on1でライフプランの共有を歓迎するライフプラン1on1制度、将来子供を持つことを検討する社員への妊活支援制度などが含まれます。これらは通院だけでなく、家族との大切な時間を確保するなど、人生を謳歌して働くことを支援するものです。
編集部
どこに住むかということも含めて、自分の望む暮らしが叶うのは素晴らしいですね。「食と暮らし」という人の営みを大切にするキッチハイクさんだからこそ実現する働き方だと感じました。
オープンなコミュニケーション文化:情報共有と相互理解を促進する仕組み
編集部
全国各地の社員の方とオンラインでコミュニケーションを取る上で、工夫されていることはありますか?
林さん
オンラインコミュニケーションのツールとしては、Slackをメインに使っています。しかし、キッチハイクの特徴はツールだけでなく、メンバーそれぞれがお互いを受け入れ合うマインドを持っているところにあると考えています。
我々がチームとして大切にしているマインドに「クローズドよりオープン」というものがあります。例えば、自分が悩んでいることがある場合、個別のメッセージではなくオープンな場で相談することで、同じ悩みを抱えている人とも課題を共有し、一緒に解決していくことを目指しています。
発信をオープンにするだけでなく、受け手側も「『Give』の精神を持ち、自分ごと化する」という姿勢を心がけています。Slackでのやり取りはもちろん、口頭でのコミュニケーションも非常に大切にしており、急な相談でも皆が快く受け入れてくれる環境があります。
編集部
なるほど、ツールだけでなくコミュニケーションを円滑にするためのカルチャーが浸透しているのですね。他にコミュニケーションを円滑にするための仕組みや機会などはありますか?
林さん
「クローズドよりオープン」の考えに基づき、会社内でのミーティングの議事録は、経営層の会議も含めてすべてオープンにしています。ミーティングに参加した人だけでなく、チーム全体に情報を共有しています。
また、全社ミーティングを通じて各事業部の取り組みの報告や相談を頻繁に行っています。さらに、入社式を全社員参加の場で実施することで、異なる事業部のメンバー間でも相互理解とコミュニケーションを促進しています。
対面でのコミュニケーションが日常的に取れない分、見えていないところでの意思決定の共有やお互いのメンバーを知るための取り組みには特に力を入れています。
若手社員の成長を促す環境:大きな裁量と挑戦の機会
▲多拠点居住をしながらマルチに活躍する林さん
編集部
キッチハイクさんで活躍する若手社員についてお聞きします。林さんは若くして活躍されている社員さんに該当すると思いますが、キッチハイクさんでの働き方や思いを教えていただけますか?
林さん
私は現在、多拠点居住をしており、全国いろいろな場所に住みながらキッチハイクでの仕事をしています。
もともとは「人が笑顔になれる場所をつくりたい」という思いを持ち、建築関係の仕事をしていました。しかし日本は災害が多いことから厳格な法規制があり、建築で自由に表現をすることは難しかったです。
そこで、もっと自由なフィールドで「人が笑顔になれる場所」を実現したいと思い、プログラミングを通してインターネットの世界に辿り着きました。
キッチハイクに出会い、「食を通じて人との出会いを創出する」という事業内容に共感し、エンジニアとして関われることに魅力を感じて入社しました。
当初は、地域課題の解決や地域の価値創出という「地方創生」の部分にはあまりピンと来ていませんでした。首都圏に住んでいたため、「地域が抱える課題」を実感できていなかったのです。
会社として地域課題に向き合う必要がある中で、自分でもそれを肌で感じてみたいという思いがあり、多拠点居住に踏み出しました。
多拠点居住を始めて本当に良かったと思っています。実際に現地に足を運び、地域の人々とコミュニケーションを取ることで、「地方創生」という言葉からは見えてこないミクロな課題、地域の一人ひとりの思いを感じ取ることができています。
地域課題を肌で感じているからこそ、キッチハイクでの仕事に熱量高く取り組めており、それがエンジニア以外の開発ディレクションや戦略立案など、仕事の幅の広がりにもつながっていると思います。
編集部
多拠点居住を実行に移されるというのが素晴らしいですね!その行動力が林さんのマルチな活躍につながっているのだと感じました。実際に林さんが働かれてみて、キッチハイクさんのどのようなところが若手社員の方の活躍につながっていると思われますか?
林さん
キッチハイクは現在30人前後と組織全体としてもコンパクトで、私の所属しているつながるDX事業部も少数精鋭で個々の活躍を求められるチームです。そのため、かなり裁量を持たせてもらっていると感じます。
一つの自治体の案件を担当しているメンバーもいますし、私自身も自治体様と直接やりとりをしながら機能開発を進めています。
責任範囲が大きいからこそ挑戦でき、活躍できるチャンスがあるというのは、つながるDX事業部に限らず全事業部で同じです。責任感やオーナーシップを持って活躍できる場がある会社だと思っています。
編集部
若手社員であっても裁量をもって働けることが、挑戦や活躍につながっているんですね。
キッチハイクが重視する仕事の進め方:「スピード・量・質」の優先順位
編集部
オーナーシップを持っていること以外に、キッチハイクさんで活躍されている社員の方に共通する特徴はありますか?
林さん
「スピード感」はとても重要だと考えています。仕事で重要な要素として「質」「量」「スピード」がありますが、多くの人は「やるからには完璧にやり切りたい」という思いから質を重視しがちです。
しかし実際の仕事では、スピードが非常に大切だと感じています。当社のプロダクトは競合も多く、開発スピードや進化が非常に速いのが特徴です。そのような環境で戦っていくためには、新しい機能をいち早く市場に投入することが極めて重要です。同時に、多くの仕事をこなすという量の面も重要です。
「質・量・スピード」ではなく、「スピード・量・質」という優先順位で取り組むことができる社員が活躍していると考えています。
「わくわく」を大切にする企業文化:楽しみながら成果を出す仕事環境
▲全社で事業戦略・計画を数日かけて考える「合宿」
編集部
キッチハイクさんの企業カルチャーについてお伺いしたいと思います。「人生を謳歌する」というバリューに関連して、キッチハイク全体としてはどのような雰囲気があるのでしょうか。
林さん
まさにおっしゃる通り、「人生を謳歌する」という考えはメンバー全員が共通して根本に持っていると思います。自分自身が人生を謳歌することが、他の人の人生の謳歌にもつながり、それが未来を変える大きな力になると考えています。
そのため、「わくわくする」という気持ちを大切にし、楽しく働こうという姿勢がある会社です。さらに、自分が楽しむだけでなく、他の人を楽しませるという「Give」の精神も重視しています。
主なコミュニケーションツールであるSlackでは、業務だけでなく出張時の様子やオフィスに来たゲストについてなど、全社共有のチャンネルで皆がわくわくするようなコンテンツを気軽に共有し合っています。
会社として事業の成果を出し続けるため、スピードや量を保ちながら質を向上させるべく、皆とても熱心に仕事に取り組んでいます。同時に、人生を謳歌する働き方として「楽しく働く」という姿勢も非常に大切にしています。
編集部
わくわくしながら楽しく働けるような、会社としての具体的な取り組み例があれば教えてください。
林さん
会社の福利厚生として、毎月全国の連携事業者から食材を取り寄せする「同じ畑の飯を食おう」という制度があります。その食材を使った料理をリモートで皆で共有したりしています。
また、半年に一度、全国のメンバーが東京オフィスに集まり、3日間をかけて「合宿」を行っています。ここでは皆が同じ目線で事業戦略について真剣に考える場となっています。最終日には、メンバーで「わくわく」を共有する時間として、全国の連携事業者から取り寄せた食材や、メンバーゆかりの料理を皆で作って食べる「納会」を開催しています。
編集部
なるほど。もちろんメリハリをつけて真剣に業務に取り組みつつ、根底には楽しむ姿勢を持っているんですね。キッチハイクさんが大切にされている「人生を謳歌する」というバリューが社員の方々全員に浸透していることがよくわかりました。
キッチハイクが求める人材像:マルチタスクと変化を楽しめる柔軟性
編集部
最後に、キッチハイクさんが求める人材像について教えてください。
林さん
キッチハイクは事業の種類が多くはありませんが、「つながるDX」を例にとっても、エンジニアとして上流から下流まで幅広い業務をこなす必要があります。これは人員が十分ではないという理由もありますが、マルチに活躍できる人材が弊社に適していると考えています。この傾向はエンジニアだけでなく、他の部署でも同様です。
また、会社として制度の整備がまだ完全ではない部分もあります。そのため、既存の仕組みやルールを柔軟に見直し、最適な解決策を見出すことを楽しめる方が向いていると考えています。このプロセスを通じて、社員自身も成長できる環境があります。
編集部
「人生を謳歌する」という価値観が浸透しているキッチハイクさんならではの、楽しみながら成長できる環境が魅力的ですね。本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社キッチハイク:https://kitchhike.jp/
採用ページ:https://recruit.kitchhike.jp/