社会課題の解決を目指し、革新的な事業に取り組む企業を紹介する本企画。今回は、訪日旅行者向けの観光PRや旅行事業などを通じて「つながり」を創出するツナガル株式会社をインタビューしました。
ツナガル株式会社とは
ツナガル株式会社は、新たな価値を生み出すための「つながり」をプロデュースする集団で、訪日外国人向けの観光PRや、日本の商品・サービスの海外プロモーション、地域の新しい魅力創出のほか、自社事業として旅行事業やオンラインツアー配信ソリューションの提供などを行っています。
地元の事業者などと連携しながら、地域の課題解決につながるような事業を共創することを重視するツナガル株式会社では、北海道から九州まで全国に6つの拠点を構えており、各地域に関する深い知識と思い入れを持つ地元の人を社員として積極的に採用しています。
会社名 | ツナガル株式会社 |
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住所 | 大阪府大阪市西区南堀江1-12-2東栄ビル201 |
事業内容 | ・訪日旅行者向けプロモーションやPRの企画・実施 ・旅行商品の販売 ・各種クリエイティブの企画・制作 |
設立 | 2010年5月 |
公式ページ | https://www.tsunagaru.co.jp/ |
今回は、自社開発の新規事業を積極的に展開するツナガル株式会社の成長戦略や、日本と世界の各地から人が集まる職場の雰囲気と働き方について、代表取締役の金岡毅さんに聞きました。
新しい価値が生まれるような「つながり」をプロデュースする
編集部
まずはじめに、ツナガルさんの事業内容について教えてください。
金岡さん
私たちは、「人生を変える出会いをつくる」をコアバリューに、「人と人」「人とモノ」「人と企業」「人と国」などのつながりを広げることで、新たな価値を生み出す集団です。
具体的な事業内容としては、グローバルコミュニケーション事業として、訪日外国人向けの観光PRや、日本の製品・サービスの海外プロモーションなど、日本の自治体や企業と海外の人をつなげるためのコミュニケーション創出を支援しています。特に、インフルエンサーマーケティングの分野に強みがあり、国内の多くの大規模プロジェクトに企画立案から携わってきました。
また、ローカルコミュニケーション事業として、観光客などを魅了する地域コンテンツの発掘や、観光を基軸にした地域づくりの支援を行っています。これまでに手がけたプロジェクトとしては、限界集落とも言える大分県の国東半島を自転車ツーリズムのまちとしてプロデュースし、地域経済の発展に大きなインパクトを残した事例などがあります。
編集部
日本の魅力をPRするだけでなく、新しい観光コンテンツを創出するところから支援しているのですね。
金岡さん
はい。このような事業に加え、近年では自社事業に力を入れています。2021年に、国内の観光事業者が海外の人に向けて手軽にライブ配信を行えるオンラインツアー配信ソリューション「LIVE Travelers」の提供を始めたほか、2022年には旅行業に参入し、地域と観光客の継続的なつながりを創出する「関係デザイン」をテーマにした旅行商品などを企画しています。
また、日本と海外の人が「窓」の形を模したスクリーン越しにリアルタイムにコミュニケーションし、新たな関係創出によって、孤独や格差、差別といった社会課題の解決策を見つけ出す「NOMADOプロジェクト」も手掛けています。
▲「NOMADOプロジェクト」では、ツナガル株式会社が独自開発した「窓」の形のスクリーンを使って両国の人が交流する。
編集部
LIVE配信や窓型デバイスの開発など、テクノロジーも積極的に活用しながら、さまざまな方法でつながりを創出していることがよくわかりました。
地域課題の解決を目指し自社事業を強化。ツナガルが描く成長戦略とは
編集部
2010年創業のツナガルさんですが、順調に事業や組織の規模が拡大していると伺いました。
金岡さん
はい。ツナガルは私が大阪で起業した会社ですが、現在は北海道から九州まで全国6ヶ所に拠点を構え、従業員数が40名を超える組織にまで成長しました。売り上げも、新規事業への積極的な参入などにより、新型コロナウイルスの影響があった2020年を除けば右肩上がりに伸びています。
編集部
ここまでの企業成長の歩みについてもお伺いできますか?
金岡さん
弊社は、国内向けの広告の企画制作事業からスタートしましたが、ツナガルが創業した2010年は上海万博が開催された年ということもあって、中小企業やベンチャー企業の間で中国への進出熱が高まりを見せていた時でもありました。その様子を見て「日系企業が海外で活躍するためには、現地でのPRやプロモーションをしっかりと行う必要がある」と感じ、中国向けのPR事業をスタートしました。
編集部
中国でのPR事業が、海外と接点を持つ最初のビジネスになったのですね。
金岡さん
はい。ただ、初めはそこまで大きな売上にならず、その後も5年ほどは国内の企業様向けの広告デザイン事業を続けていました。
転機が訪れたのは、「インバウンド」や「爆買い」というキーワードが日本で話題になり始めた2015年のことです。日本への旅行や日本製品に対する世界の関心が高まっているのを追い風に、「グローバルコミュニケーション事業部」を新設し、海外向けPR事業を本格化しました。
最初の頃は、企業様の商品やサービスを海外で認知してもらうためのPRが中心でしたが、次第に海外に向けて「観光」をPRしたいという自治体様からもたくさんご依頼いただくようになり、モノやサービスに加え、「コト」をPRするプロジェクトが増えていきました。
蓄積したノウハウをかけ合わせ、自社サービスとして展開
▲2023年5月、「関係デザイン」をテーマにしたサミットを福岡で開催した。
編集部
そうしたなか、ここ数年は旅行事業に参入するなど自社事業を積極展開しているのには、どのような背景があるのでしょうか?
金岡さん
私たちは、国内向けと海外向けのPRプロモーションを長年行ってきたことで、日本各地の魅力的なコンテンツをたくさん知ることができましたし、各地域の方たちとのつながりも構築できました。また、さまざまな国を対象にPRを行ってきたことで、国ごとに異なる国民性への理解や、その国に合わせた最適なプロモーションに関するノウハウを蓄積してきました。
そして、地域課題の解決に本気で取り組むためには、これまでのような受託型の事業だけではなく、積み上げてきた資産や強みを最大限に生かし、継続的なつながりを創出するようなソリューションサービスを自社で開発することが必要だと感じました。そのため、近年は自社事業に注力し、少しずつ事業会社へとシフトしているところです。
編集部
今後は、これまでに蓄積したノウハウをかけ合わせた自社事業によって、つながりの創出を推進していくのですね。
金岡さん
はい。つながりの創出を単なるビジョンで終わらせることなく、事業に落とし込むために何ができるのかを考えながら、今まさに邁進しているところです。
特に、先ほど事業説明の際にご紹介した「関係デザイン」を通じて、その地域が抱える課題の解決につながるような取り組みを地元の事業者様と一緒に推進したいと考えています。
ビジネスとして成立させるには「ロマン」と「収益性」の両方が大切
編集部
社会課題への取り組みを、収益性を確保しながらビジネスとして展開することに難しさはありませんか?
金岡さん
そうですね。社会課題の解決に取り組む企業はたくさんありますが、「お金にならない」というイメージが強く、CSRや企業ブランディングと位置付けているケースが多いと思います。
しかし、弊社の場合は、ベンチャー企業として筋肉質な営業組織を築いてきたので、何事においても収益を重視する文化が根付いています。いくら夢を語っても、お金が生まれなければ継続できないという意識が浸透しているんです。そのため、どんなプロジェクトでもビジネス目線を忘れることなく取り組むことができます。
編集部
稼ぐことが「当たり前」の考えとしてあるので、社会課題の解決も持続可能なビジネスとして展開できるのですね。
金岡さん
はい。地域や社会の課題が多面化・複雑化している今の時代においては、「夢を見てロマンを語る」ことと、「お金を稼ぐ」ことの両方を大事にしながら取り組むことが求められると思います。
編集部
一緒にビジネスを行う地域の事業者さんにも、そのような考えを持つ方が多いのでしょうか?
金岡さん
地域の事業者様にも、地元を盛り上げようという活力とビジネスマインドを持ち合わせた方が増えていると感じます。国内外で経験を積んだ方が、UターンやIターンをして地方で起業することも多く、地域を活性化させるために地元の魅力や取り組みを外に発信したいという熱量の高さを感じます。
全国各地にいる元気な事業者様と、お互いにメリットがある形で新しい事業やサービスを共創することができれば、日本はもっと魅力的な国になると思います。
編集部
ツナガルさんと各地の事業者さんがタッグを組むことによって、どのようなソリューションが生まれるのか、今後の展開が楽しみです。
全国に6拠点。ツナガルが地元での採用に積極的な理由
▲ツナガル株式会社は各地に拠点を持ち、リモートワークも導入していることから、オンラインでコミュニケーションをすることが多い。
編集部
ここからは、ツナガルさんでの働き方をテーマにお伺いします。国内に複数の拠点をお持ちですが、従業員の働く場所はどのように決まるのでしょうか?
金岡さん
私たちは、ひとつの拠点に集中するのではなく、各エリアのお客様と協業し課題解決を担いたいと考えているため、大阪本社のほか、札幌、東京、長野、福岡、大分に支社を構えています。
各拠点のメンバーは、元々そのエリアに住んでいる人を採用することが多いので、今住んでいる生活圏におけるコミュニティであったり、そこで自分が持っているネットワークをそのまま仕事に生かしてもらうことができます。ほかには、拠点のないエリアからフルリモートで勤務しているメンバーもいます。
また、会社命令による転勤はありませんが、本人の希望があれば他の拠点に移ることが可能です。2020年に札幌オフィスを開設した際には、東京オフィスにいた3名が手を挙げて拠点を移りました。
編集部
拠点がある地元の人を採用するケースも多いということですが、採用の際に重視していることはありますか?
金岡さん
単に「居心地がいいから、この地域でずっと働きたい」という動機以上に、自分が住んでいる場所に愛情があり、地域の価値を深く理解して、それをもっと多くの方に知ってほしいと思っていることを重視しています。
さらに、それをビジネスとして展開するときに、「私だったら、地元のこの人に声をかけて、一緒にやりたい」と、地域のプレーヤーまでイメージできるような方だと、より弊社での活躍の幅が広がると思います。
編集部
地元での暮らしを通じて得た全ての経験が、ツナガルさんでの仕事に生きてくるのですね。
メンバーの国籍も多様。海外経験のある日本人も
▲ツナガル株式会社が開催した中東地域向け旅行事業のオンラインセミナーのようす。
編集部
ツナガルさんは、歴代メンバーの出身国数が16カ国にのぼると伺いました。
金岡さん
弊社は、外国籍のメンバーが約2割で、ビザ取得のサポートからお手伝いして弊社に入社してもらうこともあります。
編集部
日本人メンバーも、海外経験のある方が多いのでしょうか?
金岡さん
はい。海外で暮らしたことがある日本人メンバーも多く、海外勤務を終えて日本に帰国するタイミングで弊社を転職先に選んでくれるケースもあります。
編集部
海外経験があることの強みは、どのような点にあると感じますか?
金岡さん
弊社は日本と海外をつなぐ事業を広く展開しているので、海外での暮らしを通じて得た感覚やノウハウが仕事にダイレクトに生かされていると感じます。
また、海外での生活を通じてその国に愛着が生まれたり、現地に友人がいたりすると、海外プロモーションなどを手がける際に、「私が暮らしたあの国の人たちに、日本の魅力をもっと知ってもらいたい」といった風に、自分ごととして高い熱量でプロジェクトに関わることができるのではないでしょうか。
編集部
地方在住メンバーから海外出身のメンバーまで、多様なバックグラウンドの人が集まるツナガルさんだからこそ、異なる価値観に触れながら自由な発想で事業を創造することができるのかもしれませんね。
ツナガルが大切にするのは「何をするか」よりも「誰とするか」
編集部
ツナガルさんの企業文化や、働くメンバーに共通する意識について教えてください。
金岡さん
弊社は、事業環境の変化に合わせて企業文化も流動的に変化させる「カルチャートランスフォーメーション」を推進しているので、創業当時からずっと変わらない強いカルチャーがあるわけではありません。
ただ、私は「何をするか以上に、誰とするかが大切」だと常に思っており、弊社のメンバーの間にも、「人」を大事にする考えが浸透していると思います。社内だけでなく、一緒に事業を行う社外の人たちも含めて、一つ一つの出会いを大事にして、人と人、国と国をポジティブな形でつなげていこうと考える人たちが集まっていると思います。
そんなメンバーを大切にするため、会社としては、社員の自己実現や満足度を上げるための仕組みづくりやサポート体制を強化していきたいと考えています。
編集部
社員のみなさんの、「地域に対する愛」も感じますか?
金岡さん
そうですね。それぞれが自分の地域に対してプライドを持っていますし、地域の魅力を世界に発信するために、「自分はこんな方法でやりたい」という考えをしっかり持っていると感じます。
バックグラウンドはみな異なりますが、自ら何かを切り開こうとする点や、今やるべきことを自ら考え行動する点は、メンバー全員に共通しています。
地域をより良くするための具体的なアイデアを持つ方を歓迎
▲金岡さんは、「社長感」を出さず、社員が相談しやすい存在となるように意識していると話す。
編集部
最後に、記事を読んでツナガルさんのお仕事に興味を持った方にメッセージをお願いします。
金岡さん
弊社は創造性と革新性をもって地域の課題を解決する事業を行っています。そのため、自分が今生活している場所や、そこに暮らす人たちにしっかりと目を向け、その人たちとどのような取り組みをすれば地域がより良くなっていくのか具体的にイメージされている方と、ぜひ一緒にお仕事をしたいと思っています。
人はひとりでは等倍の力しか発揮できませんが、周りと協力することで、何倍もの力を発揮できると信じています。ぜひ、弊社の優秀なメンバーたちと力を合わせて、社会に大きなイノベーションを起こしてください。
編集部
受託会社から事業会社へと転換を遂げようとしているツナガルさん。自らのアイデアで新しい価値を生み出し、それをビジネスとして成功させる挑戦は、大きなやりがいと成長の機会を与えてくれそうだと感じました。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
ツナガル株式会社:https://www.tsunagaru.co.jp/
採用ページ:https://www.tsunagaru.co.jp/recruit/