独自のビジネスを展開し、若手が活躍しながら成長を続けている企業にインタビューする本企画。今回は、不動産電子取引サービス「PICKFORM」を展開する株式会社PICKにお話を伺いました。
不動産電子取引サービス「PICKFORM」を展開
▲ミッションとして「不動産取引を快適に、オープンに」を掲げている
株式会社PICKが手掛けているのは、不動産電子取引サービス「PICKFORM」です。一般的な電子契約サービスでは宅建業法上、対応が難しい不動産契約の電子取引について、最適なソリューションを提供しています。
PICKFORMの最大の特徴は、不動産電子取引サービスとしては国内唯一の国土交通大臣認定を受けているという点です。
会社名 | 株式会社PICK |
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住所 | 東京都目黒区三田1-5-13 |
事業内容 | 不動産テックサービス「PICKFORM」の企画・開発・運用 |
設立 | 2018年10月11日 |
公式ページ | https://pick-hp.com/ |
株式会社PICKがPICKFORMをリリースしたのは2022年5月。リリース後1年半で社員数は2.5倍、売上も好調で急成長しています。独自のサービスを展開できていることに加え、若手が活躍できる環境があるからこそ成長を実現できているのです。
同社のカルチャーなどについて、執行役員営業統括部長の阿部幸平さんにお話を伺いました。
国内で唯一の国土交通大臣認定を受けた不動産電子取引サービス
▲国内唯一の国土交通大臣認定を受けた不動産電子取引サービス「PICKFORM」
編集部
初めに、PICKさんの事業内容について伺わせてください。
阿部さん
PICKは「不動産取引を快適に、オープンに」というミッションのもと、不動産電子取引サービス「PICKFORM」を展開しています。PICKFORMは、土地売買契約書や物件契約書など不動産に関する契約書を電子化し、オンラインで契約を結べるというサービスになっております。
弊社はもともと代表の普家(辰哉さん)が大手ハウスメーカーの積水ハウスさんから独立し、立ち上げた会社になります。当初は不動産業を手掛けていましたので、その経験をもとに「もう少しここが便利になればいい」という視点で生まれたサービスがPICKFORMです。
編集部
不動産業を展開していたPICKさんが、なぜ不動産電子取引サービスを手掛けるに至ったのでしょうか?
阿部さん
PICKがPICKFORMを展開するに至ったきっかけは、2022年5月の宅建業法の改正です。宅建業法は不動産取引に関する法律ですが、法改正によって電子契約が解禁されました。そのタイミングでPICKFORMをリリースすることとなったのです。
編集部
電子契約サービスはさまざまなものがあり、競合優位性をどうつけていくかというのが課題となりそうですが、その点はいかがでしょうか?
阿部さん
実は不動産取引で電子契約を利用するとなると、さまざまな複雑なルールが絡んできます。そのようなルールを考慮せず一般的な電子契約サービスを利用してしまうと、宅建業法違反になってしまう恐れもあるのです。
PICKが提供しているPICKFORMは国内で唯一、国土交通大臣認定を受けた不動産電子取引サービスとなっております。
さまざまな細かいルールを考慮した設計になっておりますので、ご利用いただく不動産会社様は自社フローを変えるなど大掛かりな準備をしなくても安心してご利用いただけるのです。
今では多くの不動産会社様、ハウスメーカー様が、これまで利用していた電子契約サービスから変更し、当社のPICKFORMをご利用いただけています。
編集部
不動産業界で電子契約を取り扱うにあたって、壁となる部分を取り除いたサービスを展開されているのですね。
急成長の要因の一つは不動産業界の商習慣に合わせたセールス
編集部
独自のサービスを展開されているPICKさんですが、成長スピードについてお教えください。
阿部さん
PICKがPICKFORMをリリースしたのが2022年5月ですが、リリース後1年半で業務委託も含め社員は2.5倍に増えております。また、大手企業さんなどのサービス契約数については1年前と比較して7倍増です。
結果、売上としては約30倍増となりました。今でも毎月契約者数が増加しているという状況です。無料、有料プラン合わせて100社以上の企業様にPICKFORMをご利用いただいております。
編集部
ここまで成長できた要因としてどういったことが挙げられるでしょうか?
阿部さん
PICKが成長できた要因としては大きく3つ挙げられます。
まずは、先ほども申し上げた通り、宅建業法の改正のタイミングでPICKFORMをリリースできたことです。世の中の流れとしてDX化というのがキーワードになっていますし、不動産業界も徐々にこの流れに乗りつつあるのかなと感じております。
次に、こちらも繰り返しになりますが、PICKFORMが国土交通大臣の認定を受けた唯一の不動産電子取引サービスであるという点です。
最後に、私たちはスタートアップ企業ではありますが、一般的なスタートアップ企業では珍しく対面での打ち合わせを重視しております。
スタートアップ企業のなかにはオンラインで打ち合わせを完結させてしまうというところもあると思いますが、私たちは対面というのを重視しているのです。
これは、対面でのコミュニケーションが大切にされているという不動産業界の商習慣を考慮した対応となっております。
編集部
不動産の商習慣を意識されているというのは、不動産業を手掛けていたPICKさんだからこそできる対応ですね。
阿部さん
今は少しづつ変わりつつある不動産業界ですが、やはり古いとされている考え方や習慣というのはまだ残っている部分もあります。例えば打ち合わせに襟なしのシャツで来たら「ベンチャーっぽい人が来たな」と警戒してしまうこともあるでしょう。
ですので、襟ありシャツでスーツを着て打ち合わせに臨むということを行っています。ゴルフや食事に行くというコミュニケーションも積極的に実施するようにしていますね。
弊社では営業部の共通認識として「嫌われる要素を排除する」というものを掲げているのですが、極力不動産の商習慣に合わせながらビジネスのお話しをさせていただくことが大切だと考えています。
不動産会社が電子契約サービスを利用するにあたって課題となる部分を解消
▲宅建業法に対応したシステムが備えられているPICKFORM(サービス公式ページより)
編集部
PICKFORMが多くの不動産会社様に利用されている大きな要素として、国内唯一の国土交通大臣認定を受けた不動産電子取引サービスであることが挙げられますが、なぜ認定を受けることができたのでしょうか?
阿部さん
PICKFORMが国土交通大臣認定を受けられたのは、国交省が定める厳しいルールに適合しているシステムを備えているためです。
国交省は宅建業法の改正と同じタイミングで、電子契約に関するマニュアルを発表しました。しかし、そのマニュアルは60ページにも及び、大変複雑なものです。
なかでも、大きく注意しなければならないルールが3つあります。不動産の契約では「重要事項説明書」「契約書」の2つの書類が用いられます。宅建業法では、契約書にサインする前に重要事項説明書にサインしなければなりません。
もし不動産契約が書面で行われるのであれば、実際にどの順番でサインをしたとしてもわからないでしょう。しかし、電子上で契約をする場合はサインした時間が記録されることになります。
通常の電子契約サービスを利用している場合、サービスを利用している不動産業者が気を付けていないと、サインの順番を間違えたり、同時にサインしてしまったりという事態が起こり得るでしょう。その点、PICKFORMは宅建業法に適したフローが整っているのです。
編集部
普段は意識したことがない点でしたが、不動産契約には複雑なルールが設定されているのですね。残りの大きな2つのルールについても伺わせてください。
阿部さん
不動産取引の電子契約では、一般的な電子契約とは違った工程がもう一つ存在します。それは、電子契約を利用するにあたる同意書について、事前に契約者にサインしてもらわなければならないという工程です。
一般的な電子契約サービスでは同意書が内製化されていないため、不動産会社が独自で同意書を用意する必要があります。しかし、PICKFORMは同意書も内製化されているため、そのような手間を省くことができるのです。
最後に、宅建業者は重要事項説明書の原本を保管しなければなりません。紙の重要事項説明書の場合は宅建士や仲介会社、買い手さんなど契約に関わる人物のサインや捺印がなされているものを原本とみなしていました。
しかし、電子契約の場合はもう一つ、サインや捺印がされる前の宅建士だけでサインした重要事項説明書も保存しなければならないのです。これは電子であるがゆえに契約締結後の重要事項説明書改変の恐れがあるため、それを防止する意味で設定されたルールになります。
一般的な電子契約サービスでは全員が署名したファイルしか保管されませんが、PICKFORMはそれに加えて原本も含めた2つのファイルを保存できる仕様となっております。
編集部
まさに不動産会社さんにとってかゆいところに手が届くサービスとなっているのですね。
営業に顧客サポートにプログラミング、若手社員が1人3役で活躍
編集部
PICKさんの社員さんの年齢構成について伺わせてください。
阿部さん
PICKでは業務委託を含めて20名程度の方が働いており、私が36歳で最年長者です。社員は20~30代で構成されていて、半分が20代となっております。また、10代の大学生のインターン生もいますので、かなり若い組織だといえると思います。
編集部
若手の社員さんの活躍例について教えてください。
阿部さん
28歳の社員がいるのですが、彼はもともと代表の普家が積水ハウスに在籍していたころの後輩です。
ですので、PICK入社前はハウスメーカーの営業経験しか持っていなかったのですが、今ではPICKFORMの営業とお客様をフォローするカスタマーサクセスの業務を担ってもらっています。
そのほかにも、彼自身がプログラミングにもともと興味を持っていたということもあり、プログラミングの勉強をしながらホームページの簡単な改修業務も担当していますね。また、弊社は週1ペースでコラムの出稿も続けているのですが、コラムの執筆もしてもらっています。
もともとハウスメーカーの営業しかしたことがなかった社員が、さまざまな幅広い業務に取り組める環境がPICKにはあるのです。
編集部
さまざまなことに挑戦できる環境を作っている背景としては、どういった思いがあるのでしょうか?
阿部さん
PICKは社員個人、そして会社それぞれのWILLが重なることが一番の理想だと考えています。
もちろんPICKで一生働き続けていくというわけではない社員もいると思いますので、PICKは今後の個人のキャリアを考えてスキルアップするための一つのステージでありたいという考えを持っていますね。
編集部
PICKさんでのキャリアの歩み方としては、基本的にスペシャリストよりもゼネラリストを目指していくことになるのでしょうか?
阿部さん
PICKは現在社員数もそれほど多くないため、ほとんどの社員は一人2~3役になっていますが、スペシャリストとして一つのことに集中している社員もいます。
本人の適正によってどちらを担ってもらうかは変わりますし、会社の状況によって一時的にスペシャリストになってもらうこともあります。
ゼネラリスト、スペシャリストどちらの役割を担ってもらうかは、柔軟に変化させていますね。
編集部
幅広いキャリアを歩むことができるということですね。
「”当たり前”のない環境」だからこそ社員同士で提案し合う
編集部
若手社員の成長を促すような仕組みとして、PICKさんにはどういったものがあるのでしょうか?
阿部さん
PICKは基本的に入社したばかりの社員についてOJT型で育成していきます。
例えばエンジニアでいうと、エンジニアでもある弊社のCTOが若手社員をレクチャーしながらインプットする時間を設けていますし、実際に自分で手を動かしてフィードバックをもらって修正するというサイクルを回しています。
また、セールスでもいきなり現場に1人で出すということはしていません。まずは一定期間一緒に先輩社員と伴走してもらってロープレを実施し、ロープレで合格をもらった社員から1人でデビューしてもらっています。
OJTや1人でのデビューは年齢問わず行っていますので、例えばインターン生であっても電話で取引先とやり取りをしているということもありますね。
編集部
しっかりと若手社員をフォローする体制が作られているのですね。社内の雰囲気はいかがでしょうか?
阿部さん
PICKの環境を一言でいうと「”当たり前”のない環境」といえると思います。我々は、まだ社内ルールがしっかりと整っているとはいえません。だからこそ、楽しめる部分も多い環境なのではないかなと思います。
例えば、「もっとこうしたほうが良い」というメンバーからの意見は吸い上げられやすい環境にあるといえます。実際に社員から意見が出ることも多く、週次や月次に実施するミーティングの場でディスカッションする機会も多々あります。
弊社は和気あいあいとした雰囲気があり、社員間のコミュニケーションを重視しているのです。
若手社員の意見が反映されて優れたプロダクトとなっていく
編集部
社員さんからの提案も多いとお話しされていましたが、実際に意見が採用されることはあるのでしょうか?
阿部さん
社員から挙がった意見を採用することは多々ありますね。社内チャットに「ご意見ボックス」というチャンネルがあるのですが、プロダクトに関することも含め小さなことでも良いので提案してもらっています。
全ての意見が反映されるわけではないのですが、若手社員から挙がる意見は新鮮で、納得できることも多いです。若手社員の感覚を大切にしながら、日々改善を繰り返しているという状況です。
編集部
どんな場面で若手社員の意見が貴重だと感じるのでしょうか?
阿部さん
ユーザーファーストの視点でプロダクトの改善をしていけるのは、若手社員の意見があってこそだと感じています。
社内のデザイナーの若手女性社員がいるのですが、プロダクトのユーザーの使い心地や視認性について「初めてのユーザーがこのページを見たときにどんな体験が生まれるか」というのを考えて意見をくれます。些細な部分ではあるのですが、非常に助かっていますね。
編集部
プロダクト改善に若手社員の意見が生かされているのですね。
点になっている仕事を線として感じられるようなインターン
▲インターン生の植松さん。社会人になっても生きるような体験をインターン生に提供している
編集部
さきほどインターン生について少しお話がありましたが、PICKさんのインターンではどのような業務を担えるのでしょうか?
阿部さん
PICKのインターンは大きくビジネスサイド、エンジニアサイドにわけられます。私が管轄しているビジネスサイドのインターンには現在2名のインターン生が在籍しています。
一人はインサイドセールスでアポ取りをして、弊社の社員と一緒にお客様のもとに行ってもらっていますね。自分でアポを取得した案件については受注まで一緒に同行してもらって、成功体験を味わってもらっています。
そのほか、社内システムの構築やコラムの執筆も担当しています。もう一人のインターン生は主にコラムを執筆していて、ツールを使いながらSEO対策をどうするかというところまで考えてもらっています。
編集部
プロダクトを契約してもらうまでの一連の流れを見られるのは貴重な経験になりそうですね。
阿部さん
インサイドセールスは極めれば楽しい仕事ではありますが、やはりその領域の業務だけだと仕事の全体像はわかりづらい部分も出てしまうでしょう。自分が取得したアポイントがどのように受注につながっていくのかというのを、インターン生自身にも知ってもらいたいという思いがあります。
その経験は社会人になっても生きると思いますし、点になっている仕事を線として感じてほしいと考えていますね。
編集部
インターン生にとってはとても魅力的な環境だと感じました。学生だからこそ期待していることはございますでしょうか?
阿部さん
PICKは最近Xのアカウントを開設し、不動産会社にアプローチをしています。そのようなSNSを活用したアプローチをインターン生に担ってもらうこともあります。学生ならではの高い発想力と行動力からは、私たちも刺激をもらっていますね。
求めるのはPICKの6つのバリューを体現できる人材
▲「PICKが掲げる6つのバリュー体現できる方を歓迎したい」と話す阿部さん
編集部
最後に、PICKさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
阿部さん
PICKはパーパスとして「「住」を豊かに」を掲げています。大きいことをいっていますが、やはり不動産業界はまだ改善の余地があるところが多いと感じています。
これまでのやり方を全て変えていく必要はないと思うのですが、変化できるところは変えていって、より人々の生活を豊かにできる可能性が、不動産業界にはまだまだあるでしょう。
そのために弊社のミッション「不動産取引を快適に、オープンに」を達成して、一般消費者の方も含めより適切に不動産が取引できるような状況を目指していきたいですね。
そしてミッションを達成するために大切にしているのが「自分の弱さを知ろう」「数字にこだわろう」「ありのままでいこう」「小さな成長を積み重ねよう」「明るい未来を想像しよう」「相手のことを本気で考えよう」という6つのバリューです。
一歩先を見越して相手の行動に先回りして動くというのは、我々が大切にしているスタンスです。以上の6つのバリューを体現できるような方と、ぜひ一緒に働けたらなと考えています。
編集部
不動産業界が変わるという「明るい未来」を実現するために、自分の弱さを知ってありのままに行動できる方がPICKさんで活躍できるのではないかと感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社PICK:https://pick-hp.com/
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