躍進する企業の取り組みや、成長を支える若手社員の活躍、ワークライフバランスなどを探るこの企画。今回は将棋AI(人工知能)の開発で培ったテクノロジーを活用し、"世界を驚かすサービス"の提供を目指すHEROZ株式会社を取材しました。
HEROZ株式会社:AIを軸にした革新的なサービス提供企業
HEROZ株式会社は、人工知能・AIの開発に特化したビジネスを展開する2009年設立のベンチャー企業です。同社が開発した将棋AI搭載の「将棋ウォーズ」は、日本将棋連盟公認の国内最大の将棋プラットフォームとして、現在も成長を続けています。
「将棋ウォーズ」をはじめとした頭脳ゲームの開発を通じて培った技術を活かし、2016年からはBtoB事業を展開しているHEROZ株式会社では、企業のAI導入の構想策定から開発・運用までをトータルで支援しています。
会社名 | HEROZ株式会社 |
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住所 | 東京都港区芝5-31-17 PMO田町7F |
事業内容 | AI技術を活用したサービスの企画・開発・運用 |
設立 | 2009年4月 |
公式ページ | https://heroz.co.jp/ |
働き方 | ・リモートと出社を自主選択 ・フレックスタイム制度 |
2023年4月からは、『ChatGPT』(※1)をSaaS(※2)型で提供するサービスを開始した同社は、AIを軸に深層学習(※3)などの機械学習の研究開発や、ビジネス・業務へのAI適用など実践的な応用に積極的に取り組むことで、企業のAIトランスフォーメーションの加速に尽力しています。
※1 ChatGPT:米国の企業Open AI社が開発したAIを使ったチャットサービス
※2 SaaS:Software as a Serviceの略。インターネット上でサービスとして利用できるソフトウェア
※3 深層学習:人間の神経細胞の仕組みを再現したニューラルネットワークを用いた機械学習の手法の1つ
急成長を遂げるHEROZ株式会社の事業内容や、成長を支える若手社員の活躍、ワークライフバランスなどについて、さまざまな領域で活躍する3名の社員にお話を伺いました。
将棋AIからビジネスAIへ:HEROZの技術革新と事業展開
▲HEROZでは「AI革命を起こし、未来を創っていく」をビジョンに掲げている(公式サイトから引用)
編集部
最初に、HEROZさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
小林さん
当社は深層学習を含む機械学習によるAI関連手法を固有のコア技術とし、AIを活用したインターネットサービスの企画・開発・運営を行うベンチャー企業です。
事業はBtoCとBtoBの2つを軸に展開しています。BtoCでは当社の人工知能関連技術を活かしたスマートフォン向け頭脳ゲームアプリ「将棋ウォーズ」や将棋AI解析サービス「棋神アナリティクス」などを世界中に展開しています。
日本将棋連盟公認の「将棋ウォーズ」は2023年6月現在、約700万人のユーザー様にご登録いただいており、HEROZ独自のAI技術によってAIが対戦相手になったり、次の一手をAIがサポートするなどの機能が高い評価を得ています。
HEROZのBtoB戦略:将棋AI技術を基盤とした事業拡大
▲HEROZでは企業のAI導入の構想策定から開発・運用までをトータルで支援している(公式サイトから引用)
編集部
次に、BtoB事業の事業内容についてお聞かせください。
小林さん
BtoB事業は2016年頃からスタートした事業で、現在、当社が最も力を注いでいる事業です。当社のAI技術では、AIによる自動監視や異常検知、コンテンツ配信の自動化やテストケースの自動生成などが可能となっています。
編集部
頭脳ゲームアプリといった、コンシューマー向けビジネスを長く手掛けられてきたHEROZさんが、BtoB事業に参入されたきっかけについてお聞かせいただけますか?
小林さん
当社がBtoB事業に着手するようになったのは、BtoC向けにAI活用をしていた頃に、バンダイナムコエンターテインメント様との業務提携がきっかけです。そこから翌年に竹中工務店様、コーエーテクモゲームス様とも提携をさせていただき、本格的に法人様に対してAI技術を提供するようになりました。
フルオーダーでAIシステムを構築するには、企業様の投資額がかなり大きくなるため、当社のAI技術を導入いただくのは、東証一部上場の企業様や、各業界のリーディングカンパニーといった大企業が中心です。
昨今は、生成AI(※)や『ChatGPT』の登場により、AIがもたらす業務の効率化が注目されたことで、中小企業様においてもAI導入への意識が高まっている傾向にあります。
※生成AI:サンプルデータからアウトプットを自動的に生成するAI(人工知能)
こうした時代の変化を受け、導入コストや人的リソースが膨大なフルオーダーだけではなく、AIサービスをSaaSやパッケージ製品として提供することを目指しています。これにより、中小企業様でも手軽にAI技術を導入できるようになります。
旧来のフルオーダーによるBtoBコンサルティングビジネスと、プロダクト開発を担う新規事業の2本柱で、BtoB事業を展開し、さらなる発展を目指す方針です。
話題の『ChatGPT』をサービス化。躍進の背景にあるスピード感
▲2023年4月にリリースした「HEROZ Knowledge System built with ChatGPT」。顧客企業情報の安全性にも配慮しながら『ChatGPT』のカスタマイズと実装を進めている(公式サイトから引用)
編集部
新規事業のプロダクト開発は松井さんが統括していると伺っております。こちらの事業についてもご紹介いただけますか?
松井さん
プロダクト事業では、過去に取り組んだプロジェクトで得た知見やAIを種とし、HEROZ独自のプロダクトやソリューションに仕立て上げていくことを目指しています。
例えば、私が現在マネージャーを務めている金融ユニットでは、企業の経営分析を提供するプロダクト開発に着手しています。市場に受け入れられるプロダクトの提供を目指し、ニーズの調査やユーザーヒアリング、ビジネスモデルの策定を行っています。さらに、最小限の機能を持つ製品(MVP)に必要な機能の定義や訴求ポイントの明確化、ユーザーインターフェースを含むSaaS開発に取り組んでいます。
また、2023年4月には、企業の実業務に適した形で活用可能なCustomized『ChatGPT』をリリースしたことも、新たなチャレンジの1つです。AIを軸に深層学習などの機械学習の研究開発や、ビジネスへの実践的な応用を続け、企業のAIトランスフォーメーションの加速を支援していきたいと考えています。
編集部
話題の『ChatGPT』のサービスをすでに実現されているのですね。売上の伸び率や社員数などに変化はありましたか?
小林さん
『ChatGPT』だけが影響しているわけではありませんが、売上高としては2018年から毎年おおよそ右肩上がりで成長を続けています。特に、2022年と2023年の期初時点(※)を比較すると、200%以上の成長となっています。
(※)2022年度第3四半期より、バリオセキュアとストラテジットを連結子会社化したためその売上を反映している。
また、組織としても拡大していて、社員数は2019年4月末に45名だったところ、2023年4月末では61名となっています。
■参照:『HEROZ Knowledge System built with ChatGPT』(プレスリリース)
HEROZの人材育成:異業種・未経験者の成長と活躍
編集部
中村さんは入社3ヶ月とのことですが、現在担当されている業務についてお聞かせいただけますか?
中村さん
運用中のプロジェクトを引き継ぎ、主にお客様への対応や保守点検を担当しています。また、既存のお客様への追加提案や業界のリサーチなども行っています。
編集部
HEROZが手がけるAI事業は専門的な知識が求められると思いますが、中村さんは前職でもAIに関わるお仕事をされていたのですか?
中村さん
前職は保険会社に勤務していました。HEROZのことは将棋ウォーズというゲームアプリを提供する会社として知っていましたが、異業種からの転職は大きなチャレンジでした。
HEROZへの入社を志望した理由は2つあります。1つは、HEROZが消費者向け製品で培ったAI技術を、企業向けビジネスに本格的に展開していく事業環境に強く惹かれたことです。新しいビジネスモデルの構築に参画できれば、非常にやりがいのある仕事ができると考えました。
もう1つはHEROZの社風です。社員が意欲的に学び、真摯に仕事に取り組む姿勢が自分に合っていると感じました。
入社1ヶ月でマネジメント業務を担当。支えたのは周囲の手厚いサポート
▲ランチタイムなどリラックスできる時間を利用し、情報交換をすることで若手社員をサポートしている
編集部
異業種、未経験からの入社となると、何もわからない状態からのスタートになりますが、不安に感じることもあったのではないでしょうか?
中村さん
知識が豊富なHEROZの社員の中で、本当にやっていけるかという不安は少なからずありました。しかし、その不安を取り除いてくれたのが、上司や先輩方の手厚いサポートです。
当社には若手社員に限らず、学ぶ意欲や挑戦を後押しするカルチャーが根付いています。例えば、私は入社1ヶ月後にプロジェクトのマネジメント業務を担当することになりました。
AIモデルの精度検証という内容のプロジェクトでしたが、右も左もわからないような状態の中、どのようにマネジメントをするべきかを模索していた時、松井をはじめ、複数の社員から丁寧な指導を受け、サポートをしてもらいました。そのおかげもあり、プロジェクトを無事遂行することができました。
当社が掲げる行動指針の1つに"可能性に挑戦し続ける"という言葉があります。失敗を恐れず、挑戦しようという行動指針は、経営陣が日々発信するメッセージからも感じられます。
実際に社員の働き方を見ると、主体的かつ、意欲的に業務にあたっている者ばかりです。この姿こそが、HEROZのカルチャーだと思います。
編集部
中村さんがHEROZさんの社風の中に、主体性を感じた具体的なエピソードがあればお聞かせいただけますか?
中村さん
先ほど松井から紹介があった、『ChatGPT』を活用したサービスの具体化に向けたスピード感のある動きです。しかも、トップダウンではなく、現場の社員から働きかけ、実現したことに当社の主体性を感じました。
今話題の『ChatGPT』を具体的なサービスとして、すでに世に送り出している当社のスピード感こそが、HEROZの魅力であり、強みだと思います。
“プロジェクトが人を育てる”HEROZの人材育成のセオリー
編集部
入社後すぐにプロジェクトを任せるということは、HEROZさんにとっても大きなチャレンジかと思われます。その背景にはどのようなお考えがあるのでしょうか。
松井さん
基本的に当社では、ある程度のスキルを持つ経験者採用に注力しており、新卒者の採用実績はありません。中村は異業種・未経験者ではありますが、社会人としての業務経験と自主学習によるAIに関する最低限の知見があったため、入社から1ヶ月程度でプロジェクトを任せることができると判断しました。
入社後1ヶ月でプロジェクトを担当するのは一見乱暴に見えるかもしれませんが、"プロジェクトと顧客が人を育てる"という考えに基づき意思決定しました。もちろん、適切なバックアップ体制を整えることが前提です。
プロジェクトチームの主担当者となり当事者意識を持って、自分で試行錯誤することが成長につながります。状況に応じて必要なフォロー体制も整えています。
編集部
中村さんへのサポートはどのように行われていますか?
松井さん
中村の場合、AIに関する知識の習得からのスタートだったので、まず適切な書籍や教材をいくつか勧めました。実務においては基本的に実践を重視していますが、プロジェクトの品質を維持するため、例えば顧客向けの協議資料であれば提示前に内容をレビューしています。また、万が一中村が対応しきれない場合に備え、私がリカバリーに入る時間を確保しています。
1回30万円まで自己学習費用を支援「スキルアップ支援制度」
編集部
挑戦を後押しするバックアップ体制のほか、HEROZさんではキャリア支援やスキルを磨くための制度などはありますか?
中村さん
全ての社員が利用できる「スキルアップ支援制度」があります。自己学習のために購入した書籍やeラーニング、AIに関するオンライン研修の受講費用などを、1回30万円を上限に会社が負担する制度です。私自身もこの制度を利用して学んでいます。
未経験者の私にとっては学ぶことが多く、全て自費だと金銭的な負担が大きくなります。この制度のおかげで、気兼ねなく前向きに学習に取り組めていると実感しています。
松井さん
最近では、『ChatGPT Plus』の利用料金も会社が負担する取り組みを始めました。社員はこれを活用して、新しい技術や研究に触れ、ビジネスアイデアを考案するなど、様々な用途で利用しています。
編集部
中村さんがおっしゃっていた「学ぶ意欲や挑戦を後押しするカルチャー」が、HEROZさんのこれらの制度を通じて具体的に実践されていることがよくわかりますね。
“学び”が全社員の共通認識。モチベーションにつながる学習意欲の高さ
編集部
ここまでお話を伺い、HEROZさんには学習意欲が高い方が多く在籍されていることがわかりました。日常業務の中で、社員の方々の学ぶ意欲を感じる場面はありますか?
小林さん
会社が強制的に学ばせるということではなく、探究心や学びへの意識が仕事の中に自然に溶け込んでいるように感じます。社内には「会社は単にタスクをこなす場所ではなく、成果を出す場だ」と考えている者が多い印象です。
また、「今、こういうことを学んでいるよ」といった会話が雑談の中でも自然に交わされており、学習意欲が企業文化として根付いているのが当社の特徴です。
編集部
社内で勉強会や研修会などを実施されることはありますか?
松井さん
コンサルティング業務を担当するビジネス職では、テーマを決めた勉強会を定期的に実施しています。現在進行中のテーマはESG&とSDGs、ノーコード(※1)&ローコード(※2)です。
※1ノーコード:プログラミング不要でシステムを開発できるプラットフォーム
※2ローコード:従来よりも少ないコード作成量でアプリケーションやシステムを開発できるツール・手法
私と中村はノーコード&ローコードの勉強会に参加しているのですが、ビジネス職でもエンジニアと同等レベルのアプリを作ることを目標に、新しいスキルの習得に挑戦しています。
HEROZの柔軟な勤務体制:学習と業務の最適化を図る選択制
▲センスが光るHEROZのオフィスでは、日々さまざまなアイデアが生まれている
編集部
続いて、HEROZさんのワークライフバランスについてお聞きします。現在の働き方はどのような勤務形態になっていますか?
小林さん
リモートワークをメインに、月に2回ほど出社する社員が多いです。北海道から石川県まで、全国からジョインしている社員もいますが、必ずしもフルリモートを前提としているわけではありません。
当社では、高い学習意欲を持ち、常に挑戦し続けるマインドを重視しています。そのため、最新技術や情報が集約する首都圏近郊で仕事をすることも重要と考え、東京にオフィスを構えています。
居住地が首都圏以外の社員でも、常にフルリモートを前提に業務にあたっている社員はいません。業務や学習状況に応じて、リモートとオフィスを選択するような環境を整えています。
編集部
なるほど。リモートワークとオフィスを自身で選択できるとのことですが、具体例としてどのような働き方を選択されているのか、中村さんからご紹介いただけますか?また、選択した働き方のメリットについてもお聞かせください。
中村さん
私の場合も基本的に、リモートワークをメインに、月に2回ほど出社するワークライフバランスを取っています。リモートワークの最大のメリットは通勤時間の削減です。
例えば、最近ジムに通い始めましたが、リモートワークのおかげで自分のペースで通うことができています。出社の場合は着替えを持ち歩く必要があったり、退社後に行くと遅い時間になってしまうことがありました。
また、当社はフレックスタイム制度も導入しており、11時から15時をコアタイムとし、始業と終業の時間を自由に設定できます。知人との食事や平日にしかできない役所の手続きなども、この制度を利用して柔軟に対応しています。
小林さん
他の社員の例を挙げると、MBA大学院に通っている者は講義に合わせて業務時間を設定しています。また、子育て中の社員は、保育園や幼稚園のお迎えに合わせて朝早くから仕事をし、午後の早い時間で切り上げています。参観日や通院などでの中抜けも可能です。
編集部
自分のペースでフレキシブルに働き方を選ぶことで、パフォーマンスをベストな状態に持っていくことができる素晴らしいワークライフバランスだと思います。
HEROZが求める人材像:高いスキルと学習意欲を持つ挑戦者
編集部
学習意欲がカルチャーとして根付いているHEROZで活躍できるのはどのような方でしょう。転職を検討している読者に向け、メッセージをお願いします。
中村さん
異業種からの転職、未経験者の私を受け入れたことからも、HEROZの"挑戦"するマインドをご理解いただけると思います。
キャッチアップしなければならないことも多々ありますが、周囲の社員が常に気にかけてくれるので、安心感を持って日々の業務に取り組んでいます。
このような器の大きさを感じることができる当社なら、私のような未経験者であっても、やりがいを見つけることができるはずです。
現職で悩まれていたり、新しい分野にチャレンジしたいという方は、未経験という理由だけで諦めるのではなく、実現のために何をすべきかを考え、当社へのジョインを検討いただければ幸いです。
小林さん
当社の一員になることで楽しめるのは、AIが今後世の中に与えるインパクトにワクワクできることです。多くの学習が必要ですが、その分、誰よりもAIのある世界を楽しめるはずです。
学習意欲があり、研ぎ澄まされた感性を持つプロと一緒に働くことが、自身のキャリア形成に重要と考える方にとって、HEROZは最適な環境です。自身のスキルにさらに磨きをかけ、臆することなく新しいことに挑戦するマインドを持った方を歓迎します。
編集部
HEROZさんの高い技術や貪欲に学ぶ姿勢の背景に、自主性を持った学びへの支援やフォロー体制があることがわかりました。
AIという今、最も注目されるテクノロジーで未来を創造するHEROZさんへのジョインは、成長環境に身を置きながらスキルアップを目指すことができる理想的な環境だと思います。
本日はありがとうございました。
■取材協力
HEROZ株式会社:https://heroz.co.jp/
採用ページ:https://heroz.co.jp/recruit/