社会課題の解決やSDGsへの取り組みで注目される企業を紹介するこの企画。今回は、社会インフラ整備建設コンサルタント事業を通じて私たちの生活に欠かせない社会インフラ整備を支援する総合建設コンサルタントの「八千代エンジニヤリング株式会社」にインタビューしました。
八千代エンジニヤリング:社会インフラを支える総合建設コンサルタント
八千代エンジニヤリング株式会社は、国や行政のパートナーとして社会インフラの整備を担う建設コンサルタント会社です。
土木技術者をはじめとするプロフェッショナルが集まり、道路や鉄道、ダム、堤防などの建設計画・設計・維持管理や、まちづくり計画の策定などを行っています。
会社名 | 八千代エンジニヤリング株式会社 |
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住所 | 東京都台東区浅草橋5-20-8 CSタワー |
事業内容 | ・建設事業に関する計画、調査、測量、設計、工事監理 ・公共、民間施設などに関する企画、建設、維持管理および運営 ・環境、地質・土質に関する調査、計測、分析、評価、保全計画および技術協力 ・システム等の開発、運用、管理、保守 ・再生可能エネルギー事業 |
設立 | 1963年1月 |
公式ページ | https://www.yachiyo-eng.co.jp/ |
働き方 | ・ハイブリッドワーク:オフィスワークとテレワーク※の併用 ・フレックスタイム制度:コアタイム10:00~15:00(休憩1時間除く) ・育児・介護休業(勤続1年以上対象)、育児・介護短時間勤務、育児・介護時間 ・ノー残業デー ※テレワーク:在宅勤務・サテライトオフィス勤務(試行中) |
社会や地球環境の変化によって新たな社会課題が生まれるなか、創業60年を迎えた八千代エンジニヤリングは、フィジカル(土木技術)にデジタル技術を活用して都市や地域の課題解決を図るスマートシティ事業にも参画しています。
今回は、SDGsの目標達成に貢献する八千代エンジニヤリングの事業や、技術者・デジタル人材の育成制度などについて、スマートシティ課の戸谷奈穂子さんと山本菜月さん、開発推進部の柴田充さんにお話を伺いました。
土木技術とデジタルの融合による社会課題解決
編集部
まずはじめに、八千代エンジニヤリングさんの事業内容について教えてください。
同席の遊佐さん(広報課)
弊社は、社会課題を解決する建設コンサルタントを主な事業としています。
私たちが安心・安全で快適な暮らしをするためには、道路や鉄道、電気、ガス、水道などのライフラインを整備したり、防災・治水のため、河川整備やダム・堤防といった施設を建設する必要があります。弊社は、国や自治体など、官公庁の行政パートナーとして、このような社会インフラ整備を進めるためのコンサルティングを手がけています。
編集部
生活に欠かせないインフラを支える事業を展開しているということですが、具体的にどのような方法で支援しているのでしょうか?
遊佐さん
事業に先立って実施する事前調査や環境評価から始まり、計画や設計、工事の管理、インフラが完成した後の維持管理まで、幅広い業務を担っています。
例えば、新幹線を新しく開通する場合、まず開通によってどの程度の経済効果が見込まれるかを算出したり、利便性が高く環境負荷が少ないルートを導き出し、そのうえで軌道となる橋梁をはじめとする設計作業を行います。その後の建築作業はゼネコンが担当しますが、工事が設計通りに行われているかをチェックする役割を弊社が担うこともあります。
また、インフラは老朽化により徐々に経年劣化していくので、完成後は適切なタイミングで修復を施す必要があります。弊社は、維持管理のためにインフラの状態を確認して修復を提案したり、修復計画の策定を行ったりしています。
編集部
八千代エンジニヤリングさんが事業を行ううえで大切にしている考えや理念はありますか?
遊佐さん
社会構造や人々の価値観、地球環境など、さまざまなものが大きく変化する今、弊社が培ってきた従来の社会インフラの技術だけでは解決できない新たな社会課題も生まれています。弊社は、「この世界に、新しい解を。」というビジョンのもと、未来を見据えた新しい解決策に挑みたいと考えています。
そのためには、従来の土木技術だけでなく、デジタル技術をかけ合わせたり、他の事業者と知恵を出し合うなど、「共創」を意識した取り組みを行っていきたいと考えています。
編集部
2023年で創業60年を迎えた八千代エンジニヤリングさんは、社会の変化に合わせて進化を続けていらっしゃるのですね。
スマートシティ事業を通じたSDGs達成への取り組み
編集部
八千代エンジニヤリングさんは、事業を通じてSDGs達成への取り組みに貢献されていると伺いました。
戸谷さん
はい。もともと、社会インフラの整備という弊社の事業そのものが社会貢献活動と言えます。最近では土木分野だけでなく、新しいプロジェクトを通じてSDGsの目標達成に寄与しています。
具体例として、現在多くの自治体が取り組んでいる「デジタル田園都市構想」(※)があります。私が所属するスマートシティ課では、土木の知識とデジタル技術を融合させ、都市のデジタル化に必要なソリューションを提供することで、社会課題の解決に取り組んでいます。
(※)地方のデジタル化を進めることで地域課題を解決し、地方も都市も豊かにすることを目指す国の構想
災害時の安全確保:データ連携による効率的な情報共有システム
編集部
具体的には、どのような取り組みがありますか?
戸谷さん
愛媛県のスマート行政推進やデジタル実装支援の一環として、災害時の安全確保につながるデータ連携基盤を整備しました。
県内各地に設置された河川監視カメラや水位計、気象センサー、地表の傾きを測るデータなどを集約し、ダッシュボード上で可視化できるようにしました。これにより、災害時の状況把握や職員間の迅速な情報共有が可能になりました。
大雨が降った時、自治体の担当者は河川の水位をチェックし、一定のレベルに達したら周辺地域に避難情報を出します。これまでは担当者が実際に河川へ出向く必要があり、水位計のデータもタイムリーに活用できないなどの課題がありました。
このプロジェクトによって、河川カメラの映像や水位データなどを同時にまとめて確認できるようになり、より正確・効率的に情報発信することが可能になりました。
戸谷さん
近年では気象予測の精度も高まっていますが、まだ予測しきれない部分もあります。そのため、まずは利用可能なデータを効果的に活用して現状を把握し、市民に素早く危険を知らせることが重要です。
また、人手不足の深刻化や地方の人口減少が進んでいるため、業務の効率化を進める上でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは不可欠になっています。
海洋プラスチック対策:AIを活用した河川ごみモニタリングシステム
編集部
ほかにも、SDGsに関わる取り組みはありますか?
山本さん
愛知県岡崎市では、海洋プラスチックごみへの対策を支援しています。
弊社は、河川を流下する水面を撮影した動画データを解析してプラスチックごみや流木などの量を把握する「RIAD」というサービスを持っています。これを用いてどのくらいのプラスチックごみが川から海に流出しているのかを調査しています。現在、伊賀川と乙川の2つの河川でRIADを使ったプラスチックごみのモニタリングを行っています。
柴田さん
この取り組みの狙いは主に二つあります。一つ目は、海洋プラスチックごみの「実態解明」です。
プラスチックごみの多くは、人が暮らす陸地から出たごみが川を通じて海に流れ出たものだと言われていますが、その実態は完全には解明されていません。RIADを用いたモニタリングによって、データに基づく事実を集め、実態を正確に把握したいと考えています。
二つ目の狙いは「人の行動変容」です。プラスチックごみの実態が分かっても、ごみが減らなければ意味がありません。そこで、地元の皆さんとデータを共有することで環境意識を高め、ごみ削減の取り組みにつなげていきたいと考えています。
山本さん
モニタリングデータの変化を見た市民の方が、「清掃活動の成果でごみが減ったんだね」と手応えを感じてくれているので、今後も試行錯誤しながら行動変容につながるようなデータの活用方法を考えていきたいと思います。
戸谷さん
さらに、広島県の呉市では、愛媛県と岡崎市の技術を組み合わせた取り組みとして、「降雨時における、陸から河川へのプラスチックごみの流出のしやすさ」を可視化する取り組みも行っています。
編集部
社会インフラ整備の事業を通じて得たノウハウを連携させながら、社会課題の新しい解決方法を導き出しているのですね。
次世代技術者の育成:八千代エンジニヤリングの人材開発戦略
編集部
事業の特性上、八千代エンジニヤリングさんでは土木や設計などの技術職に就く社員が多いのでしょうか?
遊佐さん
はい、弊社は従業員数が約1,250人で、このうち技術者が約1,000人、事務職が約250人です。
編集部
技術者の方は、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
戸谷さん
多くが土木関係の技術者として、社会インフラのベースとなる技術を提供しています。例えば、渋滞対策などの道路計画、橋梁や道路、トンネルなどの設計、まちづくりを行う際の都市計画、河川や土砂崩れなどの防災対策のほか、社会インフラを整備する際の環境問題対策なども担当しています。
土木は「経験工学」(※)と言われますが、近年は土木分野でもデジタル活用の流れが強まっています。これからの建設コンサルタントは過去の経験で得たノウハウだけでなく、デジタルや人工知能などの新しい技術への対応も求められます。
(※)経験の蓄積によって、機能性や安全性、利便性を高めていく工学の手法のこと
編集部
新しい知識や技術に柔軟に対応する姿勢が必要になっているのですね。
技術士資格取得支援:キャリアアップを促進する充実した制度
編集部
多くの技術者が活躍する八千代エンジニヤリングさんですが、育成を支援する取り組みとして、どのようなことを行っていますか?
遊佐さん
弊社では、技術士やRCCMの資格取得に向けたサポートや博士課程・経済学修士の社会人入学の補助、海外事業部があるため語学学習支援を手厚く行っています。
官公庁をパートナーとした建設コンサルタント業務では、プロポーザル方式(※)で受託者を選定するのが基本です。この場合、プロジェクトリーダーにあたる管理技術者には、技術士やRCCM、建築士などの国家資格を持つ人しか就くことができません。
(※)不特定多数の企業が企画書や提案書を提出し、最も適した提案をした企業と契約する方式
そのため、弊社では比較的若いうちに技術士の資格を取ることを推奨しており、社内で試験対策のための指導を行っています。面接試験もあるため、資格保有者が面接官役となって模擬面接を実施し、フィードバックを行っています。
戸谷さん
技術士の試験は日本技術士会が実施していますが、弊社には技術士会から試験監督を依頼されるようなスペシャリストもいます。そういった社員が講師となって、必要な知識を教えることもあります。
遊佐さん
合格した場合の受験料は会社負担です。さらに、技術士や一級建築士の有資格者には専門資格手当として月額2万3,000円、RCCMやTOEIC860点以上の取得者には月額1万円が支給されます。
編集部
手当があると、モチベーションにつながりますね。資格を早く取得できれば、そのぶん早く責任ある立場でプロジェクトに携わることができ、成長にもつながりそうだと感じました。
デジタル人材育成:全社的なAIスキル向上への取り組み
編集部
これからの技術者はデジタル分野のスキルも求められるというお話がありましたが、デジタル人材育成の取り組みも行っているのでしょうか?
柴田さん
弊社では、会社全体でデジタル活用に取り組み、全社員を一定のレベルのAI人材にするという目標を掲げています。そのための研修も、2022年からスタートしました。
現段階ではマネジメント職以上の社員を対象に、会社の費用で外部の企業が開催するAI講座を受けたり、民間のAI資格を取得したりすることができます。
編集部
会社として目標を掲げているということで、八千代エンジニヤリングさんのデジタル活用への本気度が伝わってきました。
ワークライフバランスの実現:八千代エンジニヤリングの柔軟な働き方支援
編集部
八千代エンジニヤリングさんでは、出産や子育てをする社員をサポートするための制度や取り組みはありますか?
戸谷さん
私は産休と育休を経て、今は小学校3年生の子どもを育てながら働いています。技術者としての経験がキャリアに大きく影響するため、1年でもブランクを作ることを不安に感じる技術者もいますが、弊社では育休明けの社員に対し、周囲が積極的にフォローしてくれるので、私も安心して仕事に復帰することができました。
柴田さん
男性の育休取得も増えています。私のチームでは、この2年間で2人の男性社員が数ヶ月間から半年の育休を取りました。社内では1年にわたる育休や子育てによる短時間勤務を取る男性社員も増えています。
編集部
男女ともに子育てしながら働きやすい環境が整えられているのですね。フレックスタイム制度などの柔軟な働き方についてはいかがですか?
戸谷さん
弊社は行政と仕事をすることが多いこともあり、以前は官公庁に合わせて9時始業と決まっていましたが、社会の変化に合わせて現在では10時から15時をコアタイムとしたフレックス勤務となりました。
短時間勤務や在宅勤務の制度もあります。さらに、ワークライフバランスの実現を目指し、毎週水曜日をノー残業デーに設定しています。
八千代エンジニヤリングが求める人材:イノベーションを生み出す挑戦者
編集部
八千代エンジニヤリングさんのお仕事で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
山本さん
私は2020年に新卒で入社しました。「この世界に、新しい解を。」という弊社のビジョンに惹かれたことが入社を決めた理由でした。
現在、スマートシティ課で既存の土木技術にデジタル技術を組み合わせた新しい取り組みにチャレンジしています。まさに「新しい解」を生み出す一歩を自分が担っていると実感しています。
先例がないことに挑戦する大変さもありますが、それ以上に大きなやりがいを感じながら働いています。
編集部
八千代エンジニヤリングさんが一緒に働く人に求める人物像についてもお聞かせいただけますか?
戸谷さん
スマートシティを手がけるうえで大事なのは、土木分野の技術にデジタルをどう融合していくかを考えることです。そのため、「デジタルを活用してこんなことができるのではないか?」という想像力や新しい視点を持つ方、経験則にとらわれずに新しいことに挑戦できる方とぜひ一緒にお仕事したいと思っています。
柴田さん
山本の話にもあったように、「新しい解」を生み出すことが弊社で働くことの醍醐味です。ここに共感いただける方はぜひご応募ください。
編集部
インタビューを通じて、デジタル技術を積極的に取り入れ、新しい時代の建設コンサルタントとして業界をリードしようという八千代エンジニヤリングさんの強い意志が伝わってきました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
八千代エンジニヤリング株式会社:https://www.yachiyo-eng.co.jp/
採用ページ:https://www.yachiyo-eng.co.jp/recruit/