著しい成長を続けている企業を紹介するこの企画。今回は、革新的な挑戦で静岡県の物流を支え、発展を遂げている山岸運送グループにインタビューを行いました。同社は、最新技術の導入や独自のサービス展開により、地域の物流ニーズに応えながら、着実に事業を拡大しています。
山岸運送グループの企業理念:静岡の物流インフラを目指して
▲物流業界において革新的な挑戦を続けることをビジョンとして掲げている(公式サイトより引用)
山岸運送グループは、昭和48年の創業以来、静岡県に根ざした物流サービスを提供し、地域の人々の生活を支え続けている会社です。
「革新的な物流システムの開発を行い中小・中堅物流事業者のスタンダードを創造し続ける」というビジョンを掲げ、業界の常識にとらわれない先進的な取り組みを積極的に推進しています。
会社名 | 山岸運送グループ |
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住所 | 静岡県島田市大柳266番地 |
事業内容 | ・物流事業 ・物流関連事業 ・製造事業 ・スポーツ関連事業 など |
設立 | 昭和48年2月 |
公式ページ | https://www.yamagishi-group.co.jp/ |
今回は、山岸運送グループが持続的な成長を実現できている要因に焦点を当て、常務取締役の山岸龍大さんにお話を伺いました。
山岸運送グループの事業展開:生活必需品物流のインフラ構築への挑戦
▲トラック保有台数は250台以上。静岡県屈指の対応力で物流を支える
編集部
まずは山岸運送さんの事業内容について教えてください。
山岸さん
弊社は、静岡における生活必需品物流のインフラを構築することを目指している物流会社です。
自社で2tトラックからトレーラーまでさまざまな車種を250台以上保有しており、静岡県屈指の対応力で、飲料、ドライ食品、生活雑貨、アパレルなど、さまざまな業種・業態に合わせた物流サービスを提供しています。
現時点(2023年9月時点)で、静岡県内の売り上げは50億~60億円、グループ全体で80億円程度です。まだインフラと呼べるまでには達していませんが、この先20年30年かけて、「生活必需品物流のインフラを作る」という目標を達成していきたいと考えています。
編集部
静岡県全域に拠点があるのでしょうか?
山岸さん
本社は静岡県の中部圏にある島田市にあります。弊社の拠点20拠点のうち17拠点がこの中部圏に位置しています。ここを中心にして、静岡県の東部と西部、さらには愛知県にも拠点を構えて、県内全域をカバーしています。
全国のパートナーと繋ぐ物流ネットワークがあるので、静岡を起点にして全国輸送にも対応できます。大手メーカー様からのご依頼も多くいただいています。
ダイレクト物流の革新性:多重下請構造の解消による効率化
▲サプライチェーンの上流から下流まで、トータルで対応できるのが強み(公式サイトより引用)
編集部
山岸運送さんの物流サービスには、どのような強みがあるのでしょうか?
山岸さん
サプライチェーンの川上から川下まで、全ての物流に対応できるというのが弊社の強みです。
例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアに並んでいるお菓子やカップラーメンなどが売り場に置かれるまでには、原料がメーカーに運ばれて、商品が製造され、卸会社を介して流通します。
弊社では、「ダイレクト物流」という独自のサービスで、お客様や納品先など、さまざまな関係者とダイレクトにつながり、物流管理から輸配送まで、サプライチェーン全ての物流を自社ネットワーク内で完結することができます。
編集部
それが実現できる会社は珍しいのですか?
山岸さん
そうですね。物流企業というのは得意業態があって、例えばメーカー物流に強い会社はメーカー物流に特化しているし、小売の物流に強い会社は小売の物流に特化するのが通例です。そのため、サプライチェーン全ての物流を自社で完結できる企業は少ないんです。
また、物流業界が抱える問題として「多重下請け構造」というものがあります。元請けの会社があって、2次請け、3次請けと連なり、6次請けに及ぶようなこともあります。お客様はどこが運んでいるかは知らないケースが多いのですが、実際はそのようになっています。
編集部
山岸運送さんが行っているダイレクト物流では、多重下請構造を取らないと仰っていますが、なぜそれが実現できるのですか?またお客様にはどのようなメリットがあるのですか?
山岸さん
弊社のダイレクト物流は2つの条件を設けています。1つは、商材が生活必需品であること。もう一つは、静岡発着であることです。この2つの条件を満たすことができれば、多重下請構造を取らない物流が実現できます。
多重下請構造では、連絡に時間がかかり、中間業者のマージンで手数料が増え、責任の所在も不明確になりがちです。
ダイレクト物流では、タイムロスをなくし、品質を向上させ、無駄なコストを削減させることができます。
▲山岸運送グループの「ダイレクト物流」では、多重下請け構造を取らない物流の形を実現している(公式サイトより引用)
山岸さん
もちろん仕事を協力会社にお願いすることはありますが、丸投げをすることはなく、しっかり弊社でコントロールする前提です。弊社が責任を持って、トータルで対応させていただいています。
多角的事業展開:社会人野球チーム運営による企業価値向上
▲都市対抗野球を目指す社会人野球チーム「山岸ロジスターズ」(山岸ロジスターズ公式サイトより引用)
編集部
山岸運送さんでは物流サービス以外の事業も展開されているのでしょうか?
山岸さん
はい。弊社のビジョンである「革新的な物流システムの開発」を達成するためには、さまざまな事業に挑戦する必要があると考えています。例えば、自動車の整備や損害保険、物流資材やフォークリフトの販売・レンタルなど、多岐にわたる関連事業を展開しています。
特に特徴的なのはスポーツ関連事業です。2017年には「山岸ロジスターズ」という社会人野球チームを設立しました。このチームは都市対抗野球大会を目指す本格的なもので、元プロ野球選手の平野謙さんに監督を務めていただいています。
編集部
本格的なチームなのですね。選手の皆さんは、野球と仕事をどのように両立されているのでしょうか?
山岸さん
選手たちは野球と仕事の両方に全力で取り組んでいます。ドライバーや倉庫作業など、それぞれの業務をこなしながら、野球の練習や試合にも励んでいます。
チーム設立の背景には若い人材を確保したいという想いもありましたが、結果として若いメンバーが仕事と野球の両方に全力で取り組む姿が社内の活性化にもつながっており、会社全体にとても良い影響をもたらしていると感じています。
急成長の要因:10年で売上3倍を実現した革新的アプローチ
編集部
山岸運送さんは近年著しい成長を遂げられていると伺っています。売り上げや従業員数はどのくらい伸びているのでしょうか?
山岸さん
売り上げで言うと、2011年には約26億円だったものが、2022年度実績でその3倍ほどに成長しています。従業員数も、2011年の108名から12年間で462名増員し、2023年には570名になりました。
編集部
この10年間〜11年間で、大きな伸びを示していますね。要因はどのようなところにあるのでしょうか。
山岸さん
いくつかありますが、最も大きな要因は「物流の領域を広げることに成功した」ことだと考えています。
実は10年前までは、弊社もメーカー物流に特化していて、製品の保管や製品の輸送しか対応していませんでした。一般的にメーカー物流に特化した会社は、その拠点を広げることで売り上げを伸ばすことを目指します。しかし、弊社は「エリアは静岡に特化」という方針の中で、原料の保管や輸送、小売店への輸送など、取り扱う物流の領域を広げる方向に舵を切りました。これが成功につながっていると考えています。
編集部
そのような方向性を選び、実現できた背景には、どういった経緯があったのでしょうか?
山岸さん
この方向性の根幹には、「静岡へのこだわり」という企業としての想いがあります。「静岡の物流は山岸運送グループに頼めば安心だ」と言われるような企業に成長させることを、現会長である私の祖父と現社長の父が長年考え、実践してきました。
実現に向けては、小売店の配送に強い会社から事業譲渡を受けるなど、戦略的にノウハウを得たケースもあります。また、配送を引き受けていたお客様から物流センター運営も併せて依頼され、そのノウハウを継承していただいたように、お客様との出会いの中でノウハウを得たケースもあります。
編集部
チャンスを活かしながら、静岡における物流インフラを作るという一貫した目標を持って、成長を続けてこられたのですね。
人材確保の戦略:業界課題を克服する採用マーケティングの成功
編集部
物流業界はドライバー不足という課題を抱えていると聞きますが、山岸運送さんでは従業員も大幅に増員されているそうですね。
山岸さん
はい、その通りです。ここ10年ほどで、物流業界におけるドライバー不足が社会問題として認識されるようになりました。荷物はあるけれど運べないという状況に直面しているのです。
そのような環境下で、弊社には毎年500人規模の応募があります。現在の運送業界では、人材を確保できれば売り上げが伸びる傾向にあるため、人を採用できる環境があるというのも弊社の成長に大きく関係していると考えています。
編集部
その要因はどのようなところにあるのでしょうか?
山岸さん
採用マーケティングのノウハウがあるというのが大きな要因です。
私は以前、経営コンサルティング会社の船井総研に勤めており、物流業界を担当していました。多くの運送会社がドライバー不足で困っていたため、採用に関するコンサルティングの依頼を数多く受けていました。そこで培ったドライバー採用のノウハウを、弊社にも活かしているのです。
編集部
具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?
山岸さん
特に力を入れているのは、自社ホームページの徹底活用です。
Webマーケティングの観点から、Google広告や求人サイトなど、様々な媒体を活用して自社ホームページへの流入を促進しています。そして、ドライバーが求める情報をホームページで効果的に伝えることに注力しています。
私は幼少期からドライバーと密接に関わってきたため、ドライバーのニーズをよく理解しています。そのため、必要な情報を適切に届けることで、高い応募率を維持できているのです。
編集部
自社内にこうしたノウハウがあるのは大きな強みですね。山岸運送さんが成長を続けられている理由がよくわかりました。
若手の活躍:30代前半の管理職が3分の1を占める組織風土
編集部
山岸運送さんでは、若手のメンバーも多く活躍されているのでしょうか?
山岸さん
はい。50代以上が一般的な物流業界において、弊社では多くの若手社員が活躍しています。私も30代前半ですが、主任以上の管理者の3分の1くらいが私と同世代のメンバーです。
編集部
高齢化が進む物流業界の中で、歴史ある山岸運送さんで、若手管理者がそれほど多く活躍されているというのは驚きですね。
山岸さん
もちろん弊社には50年の歴史があり、ベテラン社員も多く活躍しています。ベテランメンバーと若手メンバーがうまく調和しながら、これまで積み上げてきたものに対して「いいものは残して、変えなければならないものは変える」という意識を持っています。本当に仲良く楽しく、同じ方向を向いて仕事をしています。
編集部
若手メンバーが多く活躍しているということは、将来性という面でも大きな強みになりそうですね。
静岡の魅力:県外からの移住者を惹きつける住環境と立地
編集部
全国の中心地に位置する静岡県は、物流という観点でも大きなメリットがありそうですが、住みやすさという観点ではどのように感じていますか?
山岸さん
私は、静岡県は日本で一番住みやすいところだと考えています。
まず、土地が安いです。約5万円程度あれば2LDKの家に住めるので、東京などの大都市圏と比べると非常に安価です。
気候も穏やかで、食事も美味しい。さらに、スポーツが盛んで、ゴルフ場も多数あります。
私の住んでいる家からは、山、海、川のどれにも15分以内で行けます。それにもかかわらず、自宅から東京まで玄関から玄関まで1時間半で行けてしまうのです。東京にも名古屋にも短時間で行けるというアクセスの良さも大きな魅力です。
編集部
実際にUターン、Iターン、Jターンで他県から静岡県に移住してこられて働いている方もいらっしゃるのでしょうか?
山岸さん
たくさんいますよ。先ほどお話しした社会人野球の効果もあって、特に新卒のメンバーの約3分の2は県外出身者です。青森から九州まで、全国各地から来ています。
採用方針:スキルよりも人間力を重視する人材選考
編集部
最後に採用についてお伺いします。現在、どのような職種を募集されているのでしょうか?
山岸さん
特に力を入れているのはドライバーですが、ほかにも倉庫の作業員や管理者、トラックと荷物を紐付ける仕事を担う配車マンなど、さまざまな職種を募集しています。物流業界では多岐にわたる役割が必要とされるため、幅広い人材を求めています。
編集部
どのような方と一緒にお仕事したいと考えていらっしゃいますか?
山岸さん
スキルも大事ですが、弊社は人間力重視で採用を行っています。「協調性がある」「リスペクトを持って人と接することができる」「口先だけでなく思ったことを実際に行動に移せる」など、人としての素養を重視しています。これらの資質は、チームワークが重要な物流業界で非常に大切だと考えています。
編集部
物流に関する知識やスキルは、入社後に付けていただければいいということですね。
山岸さん
その通りです。もちろんスタート地点はスキルによって違ってきますが、一緒に働きたいと思うのは高い人間力を持った方です。
社会貢献実感:物流インフラを支える仕事の魅力と応募の呼びかけ
編集部
最後に、山岸運送さんに興味を持たれた方に向けて、メッセージをお願いします。
山岸さん
私は、物流というのは日本の血液だと考えています。社会を支える重要な仕事なのです。
弊社は、皆さんがよくご存じの大手メーカーの商品も多数取り扱っています。そのため、実際に働く中で、「人々の生活を支えている」という実感を強く感じていただけると思います。
「静岡における、生活必需品物流のインフラを作る」という目標に向かって、ともに挑戦していただける方を募集しています。興味を持ってくださった方は、ぜひご応募ください。
編集部
山岸運送グループの皆様の、「静岡における、生活必需品物流のインフラを作る」という目標に向かって挑戦を続ける姿勢に、とても魅力を感じました。ホームページには詳細な情報が掲載されていますので、興味を持たれた方はぜひご覧になってみてください。
本日はたくさんの貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
■取材協力
山岸運送グループ:https://www.yamagishi-group.co.jp/
採用ページ:https://yamagishigroup.re-cruit.info/