日本円連動ステーブルコインを発行するJPYC株式会社の「年齢は関係ない」カルチャー

成長著しい企業の若手活躍や、それを支えるカルチャー、制度などを紹介するこの企画。今回は2021年1月27日に日本初のERC20(※)前払式支払手段として日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行・運営している業界大注目の企業、JPYC株式会社を取材しました。
※ERC20:イーサリアム(分散型プラットフォーム)と互換性を持つブロックチェーンで動作するトークンの統一ルール・規格のひとつ

日本円連動ステーブルコイン「JPYC」をリードするJPYC株式会社

2019年11月設立のJPYC株式会社は、2021年1月27日に日本初のERC20(※)前払式支払手段として、日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行・運営を手掛ける企業です。

同社はブロックチェーン推進協会(BCCC)や日本資金決済業協会に加盟しており、2023年8月にはJPYCの発行金額が20億円を突破。JPYCは、親和性の高い事業者や官公庁・自治体との業務提携を積極的に進め、社会の課題に挑戦し、解決に向けて貢献しています。

会社名 JPYC株式会社
住所 東京都千代田区大手町一丁目6番1号 大手町ビル4階 FINOLAB内
事業内容 ・ERC20前払式⽀払⼿段の発⾏
・NFT等ブロックチェーン全般に関するコンサルティング
設立 2019年11月
公式ページ https://jpyc.co.jp/

“社会のジレンマを突破する”をミッションに掲げるJPYCには、10代や現役大学生など、平均年齢27歳のフレッシュなスタッフが活躍しています。若手がのびのびと仕事に邁進できる背景にはどのようなカルチャーがあるのでしょう。

そこで今回は、代表取締役の岡部典孝さんに、JPYCがもたらす資本の流動性を上げる仕組みや、同社で活躍する社員の特徴、バリューなどを伺いました。

本日お話を伺った方
男性イラスト

JPYC株式会社
代表取締役

岡部典孝さん

パブリックチェーンを活用し、誰でも簡単にステーブルコインを活用

JPYC株式会社の企業イメージ画像
▲日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行(wantedlyから引用)

編集部

はじめに、JPYCさんの事業内容についてお聞かせください。

岡部さん

“社会のジレンマを突破する”をミッションに掲げる当社は、日本初のERC20前払式支払手段として、日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行・運営するスタートアップ企業です。

JPYCとは 、ブロックチェーン技術(ERC20)を活用した日本円ステーブルコインです。当社経由で常に1JPYC=1円で物品との交換に利用可能です。

2023年8月にはJPYC発行金額が20億円を突破した当社は、親和性の高い事業者・官公庁・自治体との業務提携を積極的に進め、“社会のジレンマを突破”を実現する方針です。

編集部

他のステーブルコインと呼ばれるものと比べ、JPYCにはどのような特徴やメリットがあるのでしょう。

岡部さん

JPYC自体は、世界標準のステーブルコイン「USDC」というドルのステーブルコインを発行しているCircle社からご出資をいただいており、全く同じ規格で発行していることが大きな特徴です。国際基準のオープンなパブリックチェーンを使っているため、誰でも使うことができます。

例えば電子マネーによるキャッシュレス決済は、会員登録をし、加盟店でなければ使用することができませんよね。当社はJPYCをそのような制限なく、誰でも使っていけるステーブルコインとすることを目指しています。今後はステーブルコイン同士の交換も展開する予定です。

編集部

ステーブルコインを一般の消費者が使うにはハードルが高いと思われがちですが、パブリックチェーンを使っているJPYCなら、誰でも簡単にステーブルコインを活用することができますね。

JPYCの仮想通貨市場での多彩な用途とメリット

JPYCの説明と使用シーンイメージ画像
公式サイトから引用)

編集部

JPYCはどのようなシーンで使うことができますか?

岡部さん

NFT(※)を購入される方に多く使われています。JPYC自体はプリペイド交換ができ、それを経由してさまざまな電子マネーにチャージすることが可能です。つまり、ありとあらゆる電子マネー決済に間接的に使っていただくことが可能というわけです。
※NFT:Non-Fungible Token、非代替性トークン。ブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータのこと

金額ベースで最も多く使われているのは納税です。仮想通貨などの取り引きで利益を上げているクリプト長者と呼ばれる方々の、銀行を経由せずに納税したいというニーズに対し、手数料があまりかからずに納税ができるJPYCはマッチしていることがその理由です。

また、一般消費者の場合はブロックチェーン上のゲームで遊ぶためにNFTを購入する際、JPYCを経由すると簡単に購入することができます。

編集部

JPYCさんでは、官公庁・自治体との業務提携を進められているとのことですが、こちらについてもご説明いただけますでしょうか。

岡部さん

私自身、青ヶ島という絶海の孤島に普段は在住していることから、地方創生に関わる事業に携わりたいと考えており、現在は今年度中にふるさと納税にJPYCを使用できる準備を進めています。

ビジネスの決済ハードルを下げ、新たな事業へのチャレンジを促進

JPYC株式会社のミッション
▲「社会のジレンマを突破する」というミッションを掲げる(公式サイトから引用)

編集部

JPYCさんのミッション、“社会のジレンマを突破する”に込められた思いをお聞かせいただけますでしょうか。

岡部さん

日本では新しい商売を始める際に、決済方法にクレジットカードを使用する場合、決済手数料が3〜5%ほどかかるのが現状です。ECサイトにカード決済を導入した場合は、10%の手数料がかかることもあります。

また、クレジットカードは審査に1ヶ月ほどかかるため、この間は商売をすることができません。これは新規事業者にとって大きな負担であり、ジレンマです。あらゆるビジネスの基礎になる決済は、原価に関わる商売の場合、0.1%でも下がると途端に利益に跳ね返ってきます。

JPYCが突破する社会ジレンマのイメージ画像
▲お金の流れをスムーズにし、新たな事業へのチャレンジを促す(wantedlyから引用)

これに対し、ステーブルコインは手数料がほとんどかからずに決済ができ、審査も基本的には不要です。つまり、思い立ったら今日すぐにでも商売を始めることができるというわけです。私たちは手数料や審査など、さまざまな規制で高かった決済のハードルをブロックチェーンなどの新しい技術を使って極限まで下げていくことで、新たな事業にチャレンジする方が増えることを目指しています。

編集部

なるほど。JPYCは日本全体の経済成長に大きく貢献するステーブルコインというわけですね。

平均年齢27歳、若手が多く活躍するブロックチェーン業界

編集部

JPYCさんの社員数と部署、スタッフの平均年齢についてお聞かせください。

岡部さん

スタッフは約20名が在籍しています。部署は、営業と渉外広報、経営企画などを担う「営業企画部」、サービス運用や日常のオペレーション、サポートを「サービス運用部」、開発を担う「開発部」、労務や人事を行う「管理部」、地方創生や新規事業に携わる「ブルーエコノミー推進室」があります。

スタッフの平均年齢は27歳となっております。この数字もかなり若いと思うのですが、実はJPYCは16歳と21歳のスタッフと私とでスタートした会社です。

当時は10代が主力となって活躍していましたが、金融庁のライセンス取得や上場の準備を進めるにあたって、30代のベテラン社員も増えています。

編集部

ブロックチェーン業界全体で見ても、若手が多く活躍されているのでしょうか。

岡部さん

ブロックチェーンは、どちらかというと時間に余裕がある人が調べて詳しくなる業界です。副業で深く関わるのは難しいため、中学生の時からブロックチェーンに興味があり、どんどん詳しくなっていった方が10代でジョインすることが多い傾向にあります。

また、業界自体が新しいため、ちょっとブロックチェーンをかじったことがある30代よりも、若いうちから精通している10代の方が知識に長けているというのが特徴です。

大学生の法務部門責任者が存在。年齢に関係なく実力を重視

編集部

JPYCさんで活躍している若手メンバーには、どのようなバックグラウンドを持った方がいらっしゃいますか?

岡部さん

現在当社に正規雇用で在籍している一番の若手は18歳です。法務部門の責任者は現役の大学1年生です。当社にジョインする前から起業し、Twitter(現X)でも発信していたため、DMで声をかけたことが出会いのきっかけです。学術的な勉強以外の実務経験を積みたいという希望があり、採用に至りました。

編集部

法務部門となると、労務や知財関係など、知識や経験が必要なセクションのように思われます。現役の大学生を責任者としているのはどのような理由があるのでしょう。

岡部さん

おっしゃる通り、法務部門は経験が非常に重要なのですが、高校時代から司法試験の予備試験を受験しているため、知識が豊富なことから法務部門を任せています。

具体的にはクライアントとの交渉や、知財関連を担っており、弁理士や弁護士とのやりとりも任せています。私自身、大学で法律を教える程度の知識があるため、必要があれば出て行くという体制です。

編集部

法務に精通したベテランを登用する選択もあったと思うのですが、あえて現役大学生を採用されたのはどのような狙いがあったのでしょう。

岡部さん

当社には年齢・性別は関係ないというカルチャーがあります。ベテランであろうが若手であろうが、実力のある人を実力相応のポジションに置くことをモットーに発展してきました。つまり、できる人ができる仕事をやるというシンプルな考えです。

編集部

できる人ができる仕事をやるというカルチャーは、働く意欲の向上にもつながっていると感じました。

自律分散と急成長・即行動のマインドが活躍の共通要因

編集部

若手が多く活躍しているJPYCさんでは、若手の育成にどのような手法を取られているのでしょうか。

岡部さん

設立当初は、インシデント・コマンド・システム(※)という日本ではまだ馴染みのない組織マネジメントの手法を採用していました。
(※)インシデント・コマンド・システム:米国で開発された災害現場や事件現場などの緊急時における標準化された組織マネジメントの手法

現場の責任者に権限を委譲し任せる体制を取っており、若い世代が入社した際も最初は10分や1時間といった短い時間内での責任者を任せています。責任者として業務にあたることで、全体像を把握し、マネジメントにつなげていくことが目的です。

会社が大きくなるにつれ、業務を細分化するための各部署ができてからは、各部署に責任者を置いていますが、責任者が休みの場合は「今日はあなたが責任者です」というように、どんどん権限委譲し、育てていく手法を取っています。

責任者の階層としては、上から取締役、部長級、副部長級、スタッフとなっており、部長が休みの場合は副部長が責任者となり、両者が不在の場合はスタッフが責任者となり業務を回します。

編集部

役職クラスも若い世代がそのポジションに就き、責任者を担っているのですね。

岡部さん

24歳ぐらいでサービス運用部門の責任者クラスを担っている方、開発においても20代前半の若い世代が活躍しています。あえて年齢を意識することはないほど、年齢に関わらず優秀な人がそれに相応しいポジションに就いています。

編集部

活躍している若手に共通する気質やマインドなどを感じることはありますか?

岡部さん

自分で決めて自分で動く、という“自律分散”ができる方が活躍しています。当社がバリューとして掲げる自律分散は、ブロックチェーンの基本的な思想であり、その意識がない方は当社にジョインすることは難しいでしょう。

また、急成長・即行動というバリューに基づき、成長の機会を逃さずチャレンジする人が結果として活躍しています。アクションを起こす前に考えすぎてしまうと一歩目が踏み出せなくなるので、新しい分野こそまずは即行動に移す方が、成長スピードが速いように思われます。

金融プログラムを直接触れる経験がJPYCエンジニアの魅力

編集部

JPYCさんの開発を担うエンジニアは、どのような方が在籍されていますか?

岡部さん

今は、ChatGPTなどのツールを使えば誰でも簡単にプログラミングができる時代ということもあり、当社にはプログラムコードを書ける方が多く、各部署にエンジニアが在籍しています。

また、全部署においてブロックチェーンの技術的な面の理解が必要なので、エンジニアがサービス運用部や管理部の業務に就いています。そのため、全スタッフの8割はプログラムコードを書くことができます。その中で、エンジニアを専門的にやりたいという方が開発部に集約しています。

編集部

エンジニアの方がJPYCさんだからこそ積める経験などはありますか?

岡部さん

大きなお金が動くプログラムを、責任者クラスで直接触れることは当社ならではの経験だと思います。当社では銀行でいう基幹システムを動かし続けているのですが、複雑ではないからこそ、少数での業務が可能です。

通常、銀行のシステムに触れるとなると、大きな機能のごく一部であることが多いのに対し、当社のエンジニアは何兆円も動くような仕組みの裏側をそのまま見れる、触れるというのが、エンジニアとしては面白いと感じるのではないでしょうか。

このように、当社はある意味インフラを作っているので、金融機関としての役割があります。JPYCに興味を持ってジョインするエンジニアも多いのですが、当社に入社するとインサイダーな情報にも接するがゆえに、セキュリティ面での制約が多くなります。

自宅など、自分の開発環境で自分でプログラムを作ることはできますが、当社のようにシステムの中心部にいるからこそ、重要な部分を触ったり見たりできることは、エンジニアの醍醐味だと思います。

編集部

JPYCさんのエンジニアは、若くして日本経済の中枢に携わることができるのですね。これはかなり貴重な経験だと思います。

自己啓発と技術向上に積極的に取り組む若手エンジニア

編集部

エンジニアの方がスキルを高めるために、自ら行動していることはありますか?

岡部さん

ハッカソン(※)に出場する方も多く、社内で切磋琢磨しながらスキルを磨いています。学生時代にセキュリティ系のコンテストやキャンプに参加した経験を持った方がジョインするケースや、自身で技術本を執筆している方もいます。
(※)ハッカソン:特定技術に興味をもつプログラマーが集まり短時間で集中的にソフトウェアの共同開発などを楽しむイベント

年齢に関係なく、実力ある人が活躍するJPYCにいたからこそ、書籍の出版など外部からいろいろな話が舞い込んでくるように思われます。

実力を重視し、多様な学生を受け入れるJPYCのインターンプログラム

編集部

JPYCさんではインターン生を受け入れているとのことですが、どのような学生を採用されているのでしょう。

岡部さん

私が大学の客員教授をやっている関係で、その大学から受け入れたりはしています。あとは、大学生をアルバイトとして採用したり、正社員に登用する前段階で、インターンから入社した人もいます。

編集部

インターン生はどのような業務に携わっていますか?

岡部さん

インターンだからといって業務に制限を設けることはなく、正社員として入社した場合と同じようにオンボーディングをして、業務を割り振っています。中には短期間で責任者クラスまで上がるインターン生もいます。

もちろん、正社員と比べて若干権限は異なりますが、それほど差はありません。部署においても開発だけではなく、バックオフィスからスタートして、キャリアを積む学生もいます。

編集部

なるほど。インターン生を受け入れる際は、JPYCさんがお声がけをされるのでしょうか?それとも学生からの応募が多いのでしょうか。

岡部さん

どちらのパターンもあります。大学経由の場合だと、客員教授を務めている大学側から推薦いただくこともあります。一方で、JPYCは一部の方にとって非常に魅力のある会社なので、当社のスタッフとネット上で交流をしたことをきっかけにエントリーされる方もいます。

採用に関しては、インターン生だからといって積極的に採用することはなく、あくまで実力重視です。実力のある人がたまたま学生だったというだけで、インターンを募集しているタイミングでジョインし、正社員になったという実態に近いです。

自律分散・即行動・急成長を重んじる個性を歓迎

編集部

最後に採用について伺います。年齢・性別は関係なく、実力のある人を実力相応のポジションに置くというカルチャーが根付くJPYCさんには、どのような方がフィットすると思われますか?求める人物像と併せてお聞かせください。

岡部さん

基本的に、当社のカルチャーにフィットしている方を歓迎します。自律分散、即行動・急成長という当社のバリューに合った方となると、起業志望者や起業経験者が当社に興味を持つと思われます。

一方で、最近は金融庁監督下の事業者としての内部統制を整備する動きがあるため、上場準備経験がある方、あるいは金融庁の許認可を主体的に取得した経験がある入社希望者も増えています。

求める人物像については、年齢・性別に関係ない会社で実力を試したいという方がいらっしゃったら、ぜひ気軽にカジュアル面談にお申し込みいただければありがたいです。当社には、資格試験の勉強のため週24時間勤務の方や、大学に通いながら正社員として働いている方もいます。

働き方の自由度はかなり高く、スタッフの給与など想像以上にオープンな会社なので、驚かれる方も多いと思われますが、待遇面なども含め、まずは対話をさせていただければ幸いです。

編集部

最先端の日本円連動ステーブルコインの心臓部に関わる業務に携わることができるJPYCさんにジョインすることは、スキルアップはもちろん、自己成長につながることがわかりました。

年齢やキャリアではなく実力重視のカルチャーは、多くの若い世代にとって働く希望になると思われます。

本日はありがとうございました。

■取材協力
JPYC株式会社:https://jpyc.jp/
採用ページ:https://jpyc.co.jp/recruit