職場のワークライフバランスについてお話を伺うこの企画。今回は人口約9万人が生活を営む静岡県西部の都市・袋井市(ふくろいし)を取材。働きやすさにつながる制度の他、公的機関で働くことの意義や働きがいなどについてお聞きしました。
人口9万人が生活を営む静岡県袋井市
静岡県西部に位置する袋井市は、都会の喧騒から離れたのどかな気候が特徴のまちです。年間の日照時間が約2,200時間と、晴れの日が多い袋井市は、豊かな田園地帯や茶畑、遠州灘(えんしゅうなだ)など美しい自然環境に恵まれた地域として知られています。
自治体名 | 袋井市 |
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住所 | 静岡県袋井市新屋1-1-1 |
公式ページ | https://www.city.fukuroi.shizuoka.jp/ |
その袋井市で生活を営む地域住民の暮らしをサポートしているのが袋井市役所です。スローガンに“チャレンジ&スマイル”を掲げる袋井市では、市民のより良い暮らしを支援すると共に、職員の働きやすさやワークライフバランスにも積極的に取り組んでいます。
そこで今回は、袋井市役所総務課主幹(兼 人事研修係統括係長)の鳥居厚志さんと、 総務課人事研修係主任の高橋夏美さんに、地方自治体の業務や袋井市が取り組むワークライフバランスについてお話を伺いました。
“チャレンジ&スマイル”を実践する、袋井市役所の職務と業務
編集部
公的機関である市役所にはどのような部署があり、業務を担っているのか興味を持つ読者は多いと思われます。まずは袋井市役所の組織、職員の数についてお聞かせいただけますでしょうか。
鳥居さん
袋井市役所では“チャレンジ&スマイル”をスローガンに掲げ、地域住民が快適で安心な日常生活を送れるように、あらゆる面でのサポートを行っています。
組織としては総務、企画産業関係、健康、都市建設関係など全部で10の部があります。各部には36の課、さらに81の係や室があり、正規職員と非正規職員を合わせて約1,500人がさまざまな分野で業務にあたっています。
編集部
市役所の仕事は多岐に渡ると思われますが、どのような職種があるのでしょう。
鳥居さん
私のように一般事務を担う職員、土木・建築などの技術職員、幼稚園教諭や保健師、栄養士、図書館司書、学芸員などの専門職を担うものなどさまざまな職種があります。事務職と技術職、専門職が各職種に応じた能力を発揮し、一丸となって地域住民の暮らしを支えています。
多彩なバックグラウンドを持つ職員が活躍
編集部
袋井市には一定数の採用枠があるのでしょうか?
鳥居さん
採用計画を立て、それに応じて募集人数を決定していきます。毎年、退職する職員が一定数いることも考慮し、それぞれの職種における募集人数を計画、募集、試験(筆記・面接)、採用するという流れになっています。
編集部
中途採用で入所する場合、どのようなバックグラウンドを持った方がいらっしゃいますか?
鳥居さん
公務員とは全く関係のない業種からの応募など、多彩なバックグラウンドを持った方からの応募があります。自治体によっては年齢制限を設けている場合もありますが、袋井市はこれから年齢層を広げ、やる気があればすべての職種で40歳を過ぎても活躍することができるような募集をしていく予定です。
編集部
袋井市では新卒採用者に向けたインターンシップ制度は実施されていますか?
鳥居さん
学生の夏休み期間を利用し、8月から9月に実施しています。おかげさまで、2023年は応募が多く、全ての学生を受け入れることはできなかったのですが、今後も引き続き、職場体験というかたちも含め、インターン生を積極的に受け入れていく方針です。
編集部
年齢制限を広く設ける袋井市では、採用試験に合格することで、40代でも正規職員として地域に貢献できるというわけですね。また、学生にとっては市役所の普段の業務を知ることで、公務員の仕事をより深く知ることができますね。
民間企業から袋井市職員へ。入所10年目の職員の現在地
編集部
高橋さんは民間企業を経て袋井市の正規職員になられたと伺っております。前職ではどのような仕事をされていたのでしょう。
高橋さん
自動車関係の民間企業に勤務していました。仕事内容は壊れた部品を調べ、破損の原因を追求、製造の再検討をするといった技術職を担っていました。
Uターン就職を考えるようになった時、かつて非正規職員として袋井市役所に勤務していた母から、市役所で採用の募集があることを聞き、採用試験にチャレンジをしました。
編集部
入所後、どのような業務を担当されましたか?
高橋さん
最初の配属先である産業政策課(現:産業未来課)では、袋井市内の個人商店の魅力発信や、高校生を対象とした企業の合同説明会などを担当しました。
前職とは全く異なる仕事でしたが、私自身、新しいことに挑戦したい思いが強かったので、産業政策課での仕事は本当に良い経験になりました。
約4年間産業政策課の業務を担当した後、現在は総務課で人事や研修などの業務に就いています。途中、3年間の産休と育休を経て、早いもので入所から10年目を迎えました。
部分休業で育児と仕事を両立。理解が得られやすい職場環境
編集部
子育てをしながら正規職員として働かれている高橋さんの勤務時間についてお聞かせください。
高橋さん
3歳と1歳になる2人の子供を保育園に預けて働いている私は、部分休業という一般的には時短勤務にあたる制度を活用しています。袋井市役所の就労時間は8時半から5時15分までですが、部分休業制度を活用し、9時から4時までの短い時間で勤務しています。
鳥居さん
部分休業は制度として利用できるのは当然ですが、やはり職場の理解が必要です。袋井市役所では部分休業を利用する職員の家庭環境などを考慮し、理解することで無理なく働けるように努めています。
時間内で業務が終えられるように仕事を分配し、誰もが気持ちよく制度を利用できることが袋井市役所の風土です。
編集部
部分休業以外でワークライフバランスを考慮した制度はありますか?
鳥居さん
業務内容にもよりますが、テレワークにも対応しています。例えば、出社勤務予定だった男性職員が、家族の体調不良から急遽、テレワーク勤務に切り替えることも可能です。窓口業務では難しい部分はあるのですが、可能な限り柔軟に対応できるように努めています。
職員が急遽休みとなった場合も、周囲がバックアップする体制が常にあるので、休む側も安心して休暇を取ることができます。
高橋さん
私のように育児を理由に部分休業を申請する場合も、家庭の事情でテレワークを急遽申請する場合も、柔軟に対応してくれる職場環境なのが袋井市役所の特徴です。ストレスや後ろめたさを感じることなく制度を利用することができています。
編集部
部分休業やテレワークなど、職員全体が理解を示すことで、制度を利用する側も提供する側も、気持ちよく仕事に向き合うことができますね。
1時間単位での休暇取得が可能。柔軟な働き方ができる袋井市役所
編集部
民間企業から公的機関である袋井市役所に転職された高橋さんからみて、両者を比べた際に働きやすさの観点から、違いを感じることはありますか?
高橋さん
まず挙げられるのが休暇の取りやすさです。企業に勤めていた時は、時間休は午前または午後といったように半日単位でしか取得が難しかったのですが、袋井市役所の場合は1時間単位での取得が可能です。
私の場合は子供の通院のために1時間の休暇を取ることで、子供を病院に連れて行くことができます。午前と午後、どちらかに1時間の時間休を取るだけで気持ちに余裕が生まれ、仕事に集中することができているように思います。
丁寧なヒアリングによるクリアな評価制度
編集部
民間企業の場合、業績によって評価が決まることが多いのに対し、袋井市のような地方自治体の評価制度はどのようになっているのでしょう。
鳥居さん
袋井市役所では、1年を前期と後期に分け、人事評価を実施しています。人事評価では、必ず所属長が期首と期末に面談します。期首では目標業務に対する面談、その目標に対する評価が期末の面談になります。
これらに加え、人事異動に関する職員の希望をヒアリングする面談があり、職員の気持ちに寄り添った人事を心掛けています。また、総務課には『職員いきいき係』というセクションがあり、職員が常に誰かに相談できる体制を整えています。
高橋さん
面談では本人の意向などを丁寧にヒアリングしてくれるおかげで、自己評価と乖離が少ない評価が得られていると感じます。
編集部
最低でも年に5回の面談があり、希望に応じて個別での面談が可能なのは、かなり手厚いと感じます。そこにはどのような理由があるのでしょう。
鳥居さん
袋井市役所の場合、各課の組織がそこまで大きくないため、距離感が近く、目が届きやすいことが理由として挙げられます。
市役所の仕事は市民の暮らしをサポートすることですが、職員も市民のひとりです。職員もサポートする側・される側として、それぞれ思いやりを持つことが、健全な職場環境と働きやすさにつながっていると感じます。
編集部
円滑な業務の遂行だけではなく、職員の働きやすさにも考慮した面談が行われているのですね。
地域への貢献と市民の笑顔がやりがいにつながる
▲袋井市役所ではさまざまなイベントを企画し、市民の生活をサポートしている
編集部
袋井市役所の職員になったことで、やりがいを感じたエピソードがあればぜひ、ご紹介いただけますか?
高橋さん
産業政策課にいた時に、地域のお店の魅力を知ってもらうことを目的としたスタンプラリー企画を立ち上げたことが印象に残っています。
お店を回ってスタンプを3つ集めて応募すると景品が当たる内容だったのですが、自分で考えたチラシやポスターが街中に貼ってあるのを目にしたり、市民が楽しそうにスタンプを押し、応募している姿を見て、とても嬉しかったことを覚えています。
また、高校生を対象とした企業の合同企業説明会では、参加した高校生が実際に採用されたと聞き、地元に貢献できていることを実感しました。採用に関して私が具体的に関わることはありませんが、出会いの場を提供できたことにやりがいを感じます。
前職は技術職ということもあり、人と対話をする機会があまりなかった私にとって、市民の方と話したり、喜んでいただける姿を目にすることができる袋井市役所の仕事は、とても楽しいです。
▲老若男女問わず、職員が地域の人々と交流することも多い。
人口約9万人の“ちょうど良い規模感”
▲袋井市の秋の風物詩「袋井まつり」では、中心部の各町がそれぞれの屋台を繰り出し、練り歩きや曳き廻しが行われる
編集部
全国にはさまざまな自治体がありますが、袋井市役所で働くことに、どのような意義を感じますか?
鳥居さん
約9万人の市民が暮らす袋井市の市役所の業務は、直接市民に伝わる仕事です。
人口が多く、まちの規模が大きい自治体では、何かを企画してもなかなか実行できない、やったとしてもどこまで浸透したか実感がないといった事象が起きがちですが、袋井市役所においては職員1人ひとりが自分の職務に責任を持ち、最後までやり遂げています。
若い職員の意見も積極的に取り入れている袋井市役所は、自治体として良い意味でちょうど良い規模感だと思います。
編集部
良い規模感とのことですが、部署が異なっても職員同士が会話をしたり、顔を合わせる機会は多いのでしょうか?
鳥居さん
正規職員540名のほとんどが市役所勤務になるので、職員同士の顔がつながり、合意形成もしやすいと思われます。部署間の連携も取りやすいため、自ずと仕事のやりやすさにつながっています。
人事異動によるローテーションはありますが、高橋も私も、ほとんどの職員と会話をした経験があることからもわかるように、初めての部署でも円滑なコミュニケーションを図ることができていると思います。
市民も職員も笑顔に。“チャレンジ&スマイル”に賛同できる方を歓迎
編集部
公的機関である市役所の仕事に興味を持った方は多いと思われます。最後に、採用に向けたメッセージをお願いします。
鳥居さん
スローガンの“チャレンジ&スマイル”を合言葉に市政を運営する袋井市役所は、市民の暮らしはもちろん、職員の働き方においてもこの言葉が活かされています。
地方公務員の場合、地元採用が多いと思われがちですが袋井市では居住地や出身地は一切問いません。事実、県外から正規職員として活躍している者もたくさんいます。
袋井市は静岡県の中でも中規模の都市ですが、人はあたたかく、暮らしやすい土地です。新しいことにチャレンジをし、市民も職場も笑顔になる職場を目指す袋井市の思いに賛同し、一緒に働きたいという方はホームページをチェックしていただき、ご応募いただけたら幸いです。
編集部
市民のより良い暮らしのために働くことの意味ややりがいを、現場の職員から伺えたことは、公的機関への転職を検討する読者にとって大きな収穫になったと思われます。また、育児など家庭環境を考慮した働き方は、ワークライフバランスが適切に保たれていると感じました。
本日はありがとうございました。
■袋井市役所
袋井市役所:https://www.city.fukuroi.shizuoka.jp/
採用ページ:https://www.city.fukuroi.shizuoka.jp/soshiki/1/2/jinji_saiyo/index.html