株式会社Braveridgeの魅力:福岡発IoTデバイス開発の最前線

地方にある企業の製品開発に携わるエンジニアの働き方やスキルアップのための工夫などを紹介するこの企画。今回は福岡県福岡市西区にあるハードウェアメーカー株式会社Braveridge(ブレイブリッジ)を取材しました。

株式会社Braveridgeが展開する幅広いIoTデバイス事業

株式会社Braveridgeの本社外観

株式会社Braveridgeは福岡県福岡市西区に本社、同県糸島市に製造量産の自社工場を有するIoTデバイスのハードウェアメーカーです。企画から開発、製造、販売まで一貫して行うことを強みとしており、その高度な技術力は全国の自治体の防災システムや大手企業の製品など、多岐にわたる分野で活用されています。

会社名 株式会社Braveridge
住所 福岡県福岡市西区周船寺3-27-2
事業内容 ・ハードウェアの企画、設計開発、製造
・RFモジュール、IoTデバイス、通信回線、クラウドIoTプラットフォーム、IoTサービスなど、包括的なIoT実現環境の提供
設立 2004年7月
公式ページ https://www.braveridge.com/

IoTデバイス開発に必要な専門スキルを持った各分野のエンジニアが在籍するBraveridgeは、まさに"ものづくりのプロ集団"です。今まで世の中になかったものを新たに創出することに価値を見出すエンジニアたちのマインドは、福岡の地でどのように育まれているのでしょうか。

そこで今回は、ソフトウェア開発課の音村和生さんに、同社の事業内容や活躍するエンジニアの特徴、働き方などについてインタビューを行いました。福岡から世界を目指すBraveridgeのものづくりへの情熱に迫ります。

本日お話を伺った方
株式会社Braveridgeソフトウェア開発課課長の音村和生さん

株式会社Braveridge ソフトウェア開発課 課長

音村 和生さん

株式会社Braveridgeの強み:IoTデバイスの一貫開発体制

株式会社Braveridgeが開発する製品の一部
▲各種IoTデバイスの開発・生産や通信回線の提供など、幅広い事業を展開している。

編集部

はじめに、Braveridgeさんの事業内容についてお聞かせください。

音村さん

当社はBluetooth® Low EnergyやLTE-Mをはじめとする各種LPWAなど無線通信技術を軸に、日本国内でIoTデバイスの企画から開発、製造、販売まで行うハードウェアメーカーです。

ハードウェアメーカーとは言ったものの、通信機器の中に組み込む通信モジュールから、IoTセンサー通信機器、さらにはそれらを活用するための回線ネットワークやアプリ、そして、それら全てを使って完成されたIoTサービスも提供するなど、さまざまな次元で製品・サービスを提供しているのも特徴的な部分です。

事業としては、自社製品とODM案件の2軸で展開しています。開発部門は福岡市西区周船寺にある本社にあり、製造は隣の糸島市にある自社工場で行うため、開発から量産まで全て国内で行っているのが強みです。

これにより、お客様が独自のIoT製品を作りたいという要望に対し、形状からデザイン、サーバーなど全てワンストップでサポートすることが可能となっています。

また、2017年に新設し操業をスタートした糸島工場では、自社製品を活用したスマートファクトリー化も推進しています。生産能力が大幅に向上し、人員も増加しました。

自社技術の「ため池管理システム」を自治体に導入

株式会社Braveridgeの糸島工場の勤務風景

編集部

BraveridgeさんのIoT製品や無線技術は、どのような分野で活用されているのでしょうか。

音村さん

防災や公共インフラ、農業など、幅広い分野で製品やサービスを提供しています。防災分野の自治体向けサービスでは「ため池管理システム」があります。近年、豪雨災害が多発しているため、各自治体ではため池の管理体制整備が急務となっていますが、高価な水位計の設置は自治体にとって負担が大きいものでした。

そこで当社は、無線通信技術と量産設計技術を活かして機器を小型軽量化し、低コストで設置しやすい「ため池管理システム」を開発しました。現在、全国の自治体に導入が進んでおり、県単位での採用も増えています。入札、設置、運用管理はパートナー企業が担当しています。

スマート農業分野では、個人経営の農家が手頃な価格で始められるIoT製品の開発に取り組んでいます。農家の方々に直接ヒアリングを行い、現場での検証を重ねて開発を進めています。

編集部

自治体から個人農家まで幅広く技術が活用されていますが、御社ではどのような顧客層をターゲットにしているのでしょうか。

音村さん

当社は特定のターゲットを限定せず、自治体から民間企業、個人のお客様まで、「IoTを始めたい、活用したい」という方が、低コストで迅速に実現できることを目指しています。

当社の特徴は、お客様の目的に合わせて使用できるよう、製品に汎用性を持たせていることです。例えば、「ため池管理システム」もため池に限らず、さまざまな用途に転用可能です。電源の確保が難しい場所でのIoT活用、例えば山間部の遠隔監視にも使用できます。このような汎用性のあるプロダクトを自社で企画、提案しています。

編集部

低コストでIoTを導入することで、さまざまな分野の発展に貢献できるのですね。

株式会社Braveridgeの開発体制:多様なスキルを持つエンジニア集団

株式会社Braveridgeの音村さんの勤務風景

編集部

Braveridgeさんでは、開発から製造、販売まで自社で行っているとのことですが、開発担当者はどのようなセクションに分かれて業務にあたられているのでしょうか。

音村さん

開発担当者は主に4つのセクションに分かれています。機構(筐体)、電子基板、ファームウェア、クラウド側のバックエンドです。それぞれの担当者が設計を行っています。

さらに、自社独自のIoTネットワークサービスも提供しています。このサービスには、バックエンドやフロントエンドと呼ばれるWebアプリケーション、IoT機器を操作できるスマートフォンアプリなどが含まれます。つまり、IoTに関わる全ての開発部門が社内に揃っているのが特徴です。

顧客との打ち合わせの段階からエンジニアが同席。スピーディーな製品化を目指す

編集部

まさにものづくりのプロフェッショナルが集まっているBraveridgeさんですが、現在の社員数と、在籍するエンジニアの数を教えていただけますか?

音村さん

全体としては本社に30名、工場に50名ほどの社員がおり、開発部隊はそのうち約15名となっています。本社にはエンジニアの他、営業、総務・経理が在籍しています。

編集部

エンジニアはどのような経緯で開発に着手されるのでしょうか。

音村さん

当社に依頼されるお客様の多くは、IoTやITに詳しいわけではなく、「こういうことをやりたい、こんな場所で使いたい」といった、ざっくりとした要望から始まります。

打ち合わせの場には関係する部門のエンジニアが同席し、筐体のデザイン、電気回路、ソフトウェア、システム構成などの要件を、各セクションが集まってその場で話し合い、仕様を決めていきます。

IoTの開発では、最終的にはセンサー機器を通信ネットワークとサーバー、アプリケーションに繋いでデータのやりとりをします。そのため、開発に関わる全ての者が同席した方がスムーズに進みます。

私は中途で当社にジョインしましたが、ざっくりとした要望から製品化するのは、初めての経験でした。

編集部

まだ仕様書や設計図ができていない状態から各セクションのエンジニアが打ち合わせの場に同席し、製品化へとつなげるのは、かなり丁寧な仕事をされていると感じます。Braveridgeさんがこのような手法を取られる理由をお聞かせいただけますか?

音村さん

一言で言うなら、その方が早いからです。打ち合わせのために何度もお客様に足を運んでいただくよりも、さまざまな立場の複数のエンジニアの視点で、具体的にやりたいことを1回の打ち合わせでお客様から全てヒアリングをするのが当社の開発の特徴です。

一般的には、IoTサービスをゼロから開発する場合、そこに複数の企業が絡むほうが多いと思います。当社のような通信機器を作る会社、それをクラウドにあげるための回線ネットワークを構築し提供する会社、クラウド周りを開発する会社など、IoTの構築には多岐に渡る専門要素が必要なのです。

その複数の開発要素をBraveridgeという会社の中に全て取り込んで、それぞれのプロが複数の視点で、お客様の要望を具体化していきます。

ヒアリングによって求める仕様が明確になったら、エンジニアはすぐに試作に着手します。このスピード感を実現しているのが、自社開発・製造です。相談から製品の完成までのプロセスを短期化することで、お客様が実際にサービスインする時期が早くなり、開発費用も抑えることができます。

編集部

打ち合わせの場や現場での意見が決定事項になるのでしょうか。

音村さん

当社では全てのことがトップダウンではなく、現場の者の意見によるボトムアップで決まります。現在提供している自社製品も、「こういうものを作りたい」というエンジニアの意見から生まれた製品が多数存在します。

お客様の要望を聞くことができる打ち合わせの段階からエンジニアが同席することで、顕在化していないニーズも含めてキャッチアップできていることが、積極的な提案につながっていると考えられます。

編集部

エンジニアファーストとも言える働き方が、スキルアップにつながっているように感じました。

各々がエンジニアスキルを高め、世の中に“なかったもの”を創出

編集部

さまざまな分野の企業様からの相談や依頼に応じられているBraveridgeさんですが、エンジニアには高いスキルが求められると思います。どのようなバックグラウンドを持った方が活躍されているのでしょうか。

音村さん

当社のエンジニアは経験を積んだ者が集まっており、中途採用がメインです。自分に知識がない分野の相談や依頼を受けた場合は、その分野を得意とする仲間に協力を仰ぐことで解決し、同時に自分のスキルも向上させています。

多くがエンジニア経験者ですが、IoTとは関係のない機械系の作業をしていた者がファームウェアに興味を持ち、入社した例もあります。当社としては経験者に限定せず、本人にやる気があれば受け入れる方針を取っています。

編集部

音村さんも中途入社とのことですが、Braveridgeさんに入社された理由をお聞かせいただけますか?

音村さん

大学まで福岡で過ごした私は、就職先が東京採用となり、最初は営業職をしていましたが、その後ソフトウェア開発に興味を持ち、その分野に転向しました。

もともと「ものづくり」に興味があり、関連するソフトウェア開発の仕事がしたいと思っていました。地元の福岡に帰ったとき「Braveridgeという会社が何か面白いことをやっているな」ということを知り、ここなら楽しく仕事ができそうだと感じ、入社を志望しました。

入社を決めた理由は、マネジメント業務や管理職ではなく、ずっとものづくりに携わっていたいという思いです。当社の社長である小橋は技術者で、今でも自ら図面を引いています。この会社ならずっとものづくりに携わっていけると確信し、入社を決めました。

世の中にないものばかり作っていることが当社の面白さです。私は同じ作業を長年続けるのは飽きてしまうので、さまざまな経験ができる当社の仕事はとても楽しいです。

同じ価値観を持ったものづくり集団のやりがいは“新たなことへのチャレンジ”

株式会社Braveridgeのメンバーの雑談風景

編集部

新しいことにチャレンジするアグレッシブさの源はどこにあるのでしょうか。また、前例のないものを世に送り出すにあたり、ご苦労されることはありますか?

音村さん

当社は同じものをずっと作るのではなく、常に新しいものを生み出そうとする者たちの集まりです。この価値観こそが新たなチャレンジへの源だと感じています。

前例のないものを作るので、完成後に判明する問題もあります。そのため、何度も試作をし、実証実験を繰り返します。技術部だけでなく、営業や工場を含めた全員が納得する製品を仕上げます。

実証実験では、実際の現場を模した環境を用意して検証を行います。現場に何度も足を運び、調整をしながら製品を完成させることもあります。例えば、ため池管理システムを完成させるまでには、何度も現地に出向きました。

これらの過程を大変とか苦労と捉えるのではなく、課題解決をすることに面白さや楽しさを感じられることが大切だと思います。

Braveridgeのエンジニアは納品したら終わりではありません。きちんとしたものを作り、実際に活用してもらおうというマインドを持ったものづくり集団です。その一員であることに誇りを持っています。

社内共有の知識と対話がエンジニアの成長を促進

編集部

さまざまな製品開発に携わるBraveridgeさんですが、エンジニアのスキルアップのための支援制度はありますか?

音村さん

当社の場合、各分野のプロフェッショナルがすぐ隣で仕事をしているので、外部セミナーに参加するよりも、より実践的な学びを得ることができます。つまり、社内でいろんな情報を収集できる環境が整っているのです。

例えば、ファームウェアを担当する者が電気について学びたい場合、電気の専門家に直接質問し、知識を得ることができます。当社は対話によるコミュニケーションを重視しており、チャットツールも導入していますが、直接会話をする機会が圧倒的に多いです。

IoT製品の開発では、自分の担当範囲だけでなく、電気や機構など他分野の知識も必要です。全体最適化を目指すためには、幅広い知識を吸収することが重要だと考えています。

このような環境を社内で実現している当社は、エンジニアとしての成長の伸びしろが大きいと自負しています。

編集部

なるほど。良い意味で仲間を巻き込むことで、仕事自体がスキルアップの機会になっているのですね。

“福岡から世界へ”を目指すBraveridgeの柔軟性に富んだ開発体制

株式会社Braveridgeの音村さんの勤務風景

編集部

Braveridgeさんの社員は、福岡出身の方が多いのでしょうか?

音村さん

福岡というより九州出身者が多いですね。私のようにUターン(地元に戻ってくること)の者に加え、Jターン(出身地とは別の地方に移住すること)の者もいます。県外で暮らした経験から地元の良さを再認識し、福岡に戻ってきた人が多いように感じます。

編集部

Uターンである音村さんから見て、首都圏と比較し、Braveridgeさんで成し遂げられる仕事の質に差はありますか?

音村さん

お客様の9割は首都圏にいらっしゃるので、地方だから仕事のスケール感が小さいということはありません。案件についても同様です。さまざまな土地でさまざまな仕事をしてきた私から見ても、Braveridgeでの仕事は魅力的でやりがいに満ちています。

以前、大手企業でソフトウェア開発をしていたときは、開発に着手する時点ですでにハードウェアが決まっていることがほとんどでした。「ハードウェアをこう変更すれば、もっと良いソフトウェアが作れるのに」というジレンマを感じることが多く、部品の変更を依頼しても、大手企業の場合はそれが通りにくいのが実情でした。

一方、Braveridgeでは打ち合わせの段階から、お客様とエンジニアが同席します。お客様が求めるハードウェアの仕様や要望をお聞きし、それを実現するために必要な部品を選定できます。形状などの要望が出てきた場合も、その場で話し合いながら柔軟に変更することができます。

さらに、操作性を考慮して、ソフトウェアの観点からハードウェアの部分に変更を依頼することも可能です。その結果、お客様に満足いただける使いやすい製品が完成します。このプロセスはとても楽しく、飽きることがありません。

当社は「福岡から世界へ」というビジョンを掲げており、福岡でできないことはないと自負しています。むしろ、ここでしかできない仕事があると信じて、日々業務に取り組んでいます。

都会と地方の“イイとこ取り”。住みやすい福岡で働く魅力

編集部

読者の中には、UIJターンを検討している方もいると思います。Uターン経験者である音村さんから見て、福岡にはどのような魅力があるとお考えですか?

音村さん

第一に、住みやすさを感じます。東京に比べて選択肢は少ないですが、ありすぎないところに魅力があります。また、海が近くて遊ぶ場所も多く、食べ物が美味しいのも特徴です。都会と地方のいいところを兼ね備えているのが、福岡だと思います。

さらに、Braveridgeの魅力に惹かれて、県外からわざわざ福岡に移住した社員もいます。

編集部

福岡とBraveridge、それぞれに魅力を感じている方々が活躍されているのですね。

スキルよりも“好奇心”を重視。挑戦する意欲のある方を歓迎

株式会社Braveridgeの糸島工場の外観
▲糸島工場の外観

編集部

Braveridgeさんのものづくりに対する考えや、エンジニアの仕事への姿勢に興味を持った読者は多いと思います。最後に、採用において御社が求める人物像についてお聞かせください。

音村さん

Braveridgeでは基本的に、その方が培ってきた技術力や経験というよりも、"好奇心"の強さを一番重視しています。

新しいことにチャレンジし続けている当社の業務は、どんなにスキルがあっても最初から完璧にできる人はおそらくいません。私も20数年間、ソフトウェアの世界に携わっていましたが、Braveridgeに入って初めて知ることや経験することは山のようにあります。

他業種の仕事に就き、独学でソフトウェアを学ばれてきた方ももちろん歓迎します。ただし、自発的かつ意欲的に多くの新しいことを学ぶ姿勢が重要となります。その大切な要素が好奇心の強さですね。そこに年齢は関係ありません。

当社には学習するための材料がたくさんあります。それをスキルとして身につけるのはやる気次第です。ハードウェアやサーバーなども学べる環境が整っているので、この分野で成長したい方、新しいことにチャレンジする意欲のある方を求めています。

編集部

今回の取材を通し、顧客の相談段階からエンジニアが同席し、開発に着手するBraveridgeの働き方は、自然とスキルアップにつながることがわかりました。この経験はエンジニアにとって大きな財産になると思います。また、大手企業では難しい柔軟な対応や、福岡で働く魅力も感じ取ることができました。

本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社Braveridge:https://www.braveridge.com/
採用ページ:https://www.braveridge.com/recruit/