若手や女性メンバーの活躍で躍進している企業をインタビューする本企画。今回はプロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」を運営する株式会社岩手ビッグブルズをご紹介します。同社は、インターンシップやワーキングホリデーなど、若者の成長機会を積極的に提供していることでも注目されています。
株式会社岩手ビッグブルズとは
株式会社岩手ビッグブルズは、2010年12月に株式会社岩手スポーツプロモーションとして設立され、2017年11月に現社名に変更されました。チームは2011-12シーズンから「bjリーグ」(※1)に参入し、2016-17シーズンからは新リーグである「Bリーグ」(※2)のB2に参戦しています。
(※1)bjリーグ:2005年から2016年まで活動していた、株式会社バスケットボールジャパンが主催していた日本のプロバスケットボールリーグのこと。
(※2)Bリーグ:2016年まで存在した2つのプロバスケットボールリーグ(bjリーグとナショナルバスケットボールリーグ)を統合し、発足した日本の男子プロバスケットボールリーグのこと。リーグは1部(B1)〜3部(B3)に分かれている。
2017-18シーズン終了後にB3へ降格しましたが、2022-23シーズンにB3リーグレギュラーシーズン年間チャンピオンに輝き、B2昇格を決めました。このチームの躍進は、岩手県のバスケットボールファンに大きな喜びをもたらしました。
会社名 | 株式会社岩手ビッグブルズ |
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住所 | 岩手県盛岡市向中野字細谷地95-1 |
事業内容 | プロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」の運営 |
設立 | 2010年12月 |
公式ページ | https://www.bigbulls.jp/ |
今回は、プロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」を運営する株式会社岩手ビッグブルズにインタビューしました。代表取締役社長の水野哲志さんに、クラブ運営に大きな影響をもたらしている東日本大震災からの復興へ向けた思いを伺うとともに、若手や女性メンバーの活躍、インターンシップやワーキングホリデーの取り組みなどについてお聞きしました。
2022-23シーズンはB3を制覇。岩手に感動を届けるチーム
編集部
まず最初に、岩手ビッグブルズとはどのようなバスケットボールクラブなのかをお聞かせください。
水野さん
岩手県を本拠地とし、2010年12月に設立されたプロバスケットボールチームです。男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」に所属し、2022-23シーズンには3部リーグに当たる「B3」で初優勝を果たしました。2023-24シーズンは2部リーグの「B2」で戦います。
チームロゴには「岩手県に夢や感動・一体感・活気を与えるチーム」というコンセプトを込めています。
▲岩手ビッグブルズのチームロゴ。力強く、勇猛果敢に勝利を目指す闘牛の姿を描いている(公式サイトより引用)
編集部
岩手ビッグブルズの社員の業務についても、ご説明をお願いできますでしょうか。
水野さん
試合の運営をはじめとした、チーム経営全般がメインになります。年間のホーム試合数は30~40試合ほどで、その円滑な運営に向けて、年間を通じて活動しています。
運営には、社員の給与に加え、チームの選手やスタッフの給与も必要となるため、大きな予算が必要です。そのため、資金を提供していただくスポンサーとの交渉や、収入に直結するチケットの販売が非常に重要な業務となっています。
岩手ビッグブルズの理念:震災復興に向けた活力源として地域に貢献
編集部
岩手ビッグブルズさんのクラブ設立直後に東日本大震災が発生しました。震災は、クラブにどのような影響を与えたのでしょうか。
水野さん
震災の発生は、クラブの設立からわずか4カ月後のことでした。私はまだ入社していませんでしたが、当時はクラブ内で「このような状況でバスケットボールを続けるべきか」という議論が盛んに行われたそうです。
しかし、さまざまな議論を経て、「震災復興に向けての活力になる活動をするべき」という結論に至りました。この理念のもと、現在も地域密着型のクラブとして活動を続けています。
私は2016年に入社し、2018年5月に代表取締役社長に就任しました。就任時に、震災復興への活力源となることや地域貢献という理念を引き継ぎ、これを自身の果たすべき使命として心に刻んでいます。
B3降格がチーム再起の契機に
編集部
岩手ビッグブルズさんは2022-23シーズンにB2昇格を決めました。感慨深いものがあったのではないでしょうか。
水野さん
ありがとうございます。歴史を振り返ると、やはり2017-18シーズンにB2からB3へ降格が決まったことが、クラブの運営において大きな転機になったと思います。
会社としてはリセットというか、ゼロに戻ったような状態でした。経営は本当に厳しかったです。そこから這い上がるために、社員もチームも全員で一丸となって努力を重ねたことが、今回のB2昇格につながったのだと思います。
編集部
降格から昇格までの間、水野さんはどのような思いを抱えていたのでしょうか?
水野さん
やはり、「震災復興の活力源になる」という理念は忘れませんでした。そして、この理念に共感できる人を社員に雇い、この理念を実践したいという選手を選んできたんです。
この思いが、ようやく実を結びつつあることを実感しています。B2に昇格したことで、チームとしても会社としても、次のステップへと成長するためのフェーズに移行できたと感じています。今後は、より高いレベルでの活躍を目指して、さらなる発展に取り組んでいきたいと考えています。
岩手ビッグブルズのキャリア支援:インターンとワーキングホリデーで実践的なスポーツビジネス体験
編集部
岩手ビッグブルズさんでは一般採用のほかに、インターンやふるさとワーキングホリデー(※)(以下ワーキングホリデー)も積極的に受け入れられていると聞きました。具体的な内容を教えてください。
(※)全国各地で自治体が主体となって取り組む、働きながら地方の暮らしを体験する制度
水野さん
はい、どちらもかなり積極的に受け入れています。実際に、大学生でインターンに来て、そのまま新卒入社したメンバーもいます。
受け入れた学生さんたちには、試合会場で行うイベントの企画を任せることも多いですね。こうした経験を通じて、スポーツクラブで働くことの充実感や楽しさを感じてもらえていると思っています。
編集部
受け入れる方々は、スポーツビジネスに興味を持っている方が多いのでしょうか。
水野さん
そうですね。バスケットボールだけに限らず、スポーツクラブで働いてみたいという大学生や専門学校生は、かなり多いと感じています。
ただし、プロのスポーツクラブは、見た目の華やかさと社員の仕事の厳しさとのギャップがかなり大きいのが現実です。そのため、クラブで働くことに興味のある方々は、インターンなどでスポーツビジネスの現場を一度、体験した方がいいと考えています。実際の業務を経験することで、自分に合っているかどうかを判断できるからです。
インターンシップの実態:チケット販売など実践的な業務で即戦力に
▲インターンのメンバーは本業に関連する実務を担当
編集部
インターンに参加される方はどのような方で、どんな仕事を担うのでしょうか。
水野さん
インターンで働く方々は、皆さん上昇志向が強いイメージがあります。弊社には、社員に負けないくらいの優れた意欲と能力を持った方が、インターンとして多く来てくれています。
そのため、インターン生には正社員とほぼ同じ業務に取り組んでもらっています。例えば、チケットの販売業務などを担当してもらっています。
編集部
インターンに参加された方はその後、どのようなキャリアを歩むのでしょうか。
水野さん
具体例を挙げますと、将来的にスポーツビジネスに携わりたいという学生が昨年度までの2年間、インターンに参加していました。彼はインターンを通じて、スポーツビジネスに取り組むためにはさらに別のスキルも必要だと気づいたようです。
そこで今春、まずは一般企業に就職し、システムエンジニアとしての技術を学んでいます。将来的には、その経験を活かして弊社に戻ってきたいと話していました。
編集部
インターンを経ての入社は、ミスマッチを防ぐことにも繋がりそうですね。
水野さん
そうですね。1年、2年と一緒に働いていれば、お互いの長所も短所も見えてきます。その上で相性を見極められれば、これは企業と個人の双方にとって良い結果につながると思います。
ワーキングホリデーの魅力:全国から集まる学生たちのスポーツビジネス体験
▲ワーキングホリデーのメンバーによる業務風景
編集部
ワーキングホリデーの受け入れ状況について教えてください。
水野さん
地元のジョブカフェ(※)や盛岡市と連携して、全国から若者を募集しています。2021年と2022年は合計で7人ほどを受け入れました。1カ月や2カ月という短期間ですが、参加者には様々な分野で活躍してもらっています。
(※)ジョブカフェ:都道府県が所管する若者の就職支援を行う施設。
編集部
参加者の出身地や滞在についてもう少し詳しく教えていただけますか。
水野さん
参加者は全国各地から集まっています。多くは夏休みや冬休みを利用して来る大学生で、滞在中はホテルに宿泊しながら働いてもらいました。もちろん、しっかりと給料をお支払いしています。このプログラムを通じて、参加者が地元に戻った際に岩手の魅力を発信してくれることを期待しています。そういった思いから、ワーキングホリデーに積極的に取り組んでいます。
ワーキングホリデーの成果:イベント企画から実行まで任される実践的な経験
▲ワーキングホリデーのメンバーが企画・運営した「謎解き」のイベント風景
編集部
ワーキングホリデーの参加者には、どんな仕事を任せているのですか。
水野さん
試合会場で催すイベントの企画を任せています。例えば、フライングディスク(フリスビー)の選手を受け入れた際、彼は自らスポンサーを探してきて、ビッグブルズの選手がフライングディスクを客席に投げ込み、ファンがそれをキャッチするというイベントを実現してくれました。このイベントは今では年間を通じての恒例企画になっています。
また、現在人気の謎解きイベントを企画したメンバーもいます。会場中に謎解きをセッティングし、スポンサーから景品を提供してもらうことで、多くの子どもたちの来場につながりました。
イベントの企画には、会社として万全の協力をします。参加者に達成感を味わってもらい、成功や失敗の経験を将来の財産にしてほしいからです。
編集部
サポート態勢も整っているのですね。スポンサー集めにまでインターン生がかかわることがあるとは意外でした。
水野さん
若い方の発想や企画には、スポンサーの方々も賛同しやすい傾向があります。ただし、イベントの実行にあたっては、必要な予算を精査させた上で、「利益は出さなくてもいいが、赤字にはならないように」と念押しして進めてもらっています。これは、ビジネスの基本を学んでもらうためでもあります。
若手育成の取り組み:提案型の業務と多様な経験で成長を促進
編集部
インターンやワーキングホリデーの方のお話を聞いて感じたのですが、岩手ビッグブルズさんは若い方が活躍する場を、かなり積極的に提供しているのではないですか。
水野さん
おっしゃる通りです。社員を含め、私は常に「やりたいことは、どんどん提案してほしい」と言っています。社歴や年齢に関係なく積極的に発言してもらい、新たな業務にチャレンジしてもらっています。一般的な会社の若手社員と比べ、弊社の若手は任される業務の範囲が圧倒的に広いと思います。
編集部
キャリアアップへのサポートは、どのように行っているのでしょうか。
水野さん
参加したい研修があれば、いつでも参加していいというシステムを採用しています。例えば、地元のジョブカフェさんの1カ月研修などに、積極的に参加してもらっています。
編集部
水野さんご自身もまだお若いですし、若手メンバーとは気軽にお話をされているのでしょうね。
水野さん
そうですね。社内には垣根はありません。必要であればすぐにミーティングを開きますし、社内での飲み会も多いです。メンバーから誘われることもありますし、本当にいつも気軽に話しています。
▲岩手ビッグブルズの社員同士で出向いた初詣の風景
岩手ビッグブルズの職場環境:性別や年齢に関係なく活躍できる機会を提供
▲プロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」の専属チアダンスチーム「Red Charm」
編集部
岩手ビッグブルズさんの社員の方は、どのような姿勢で仕事に臨んでいるのでしょうか。
水野さん
社員の皆さんは本当に熱心に仕事に取り組んでくれています。弊社では、基本的に性別や年齢に関係なく仕事を任せています。力仕事も多いのですが、女性社員もそれぞれの持ち場でしっかりと頑張ってくれています。
編集部
社員のうち、女性はどのくらいの割合を占めるのでしょうか。
水野さん
正社員は12名ほどで、その半分が女性です。Bリーグの中でも女性の割合が多い会社だと思います。ただし、これは意図的ではありません。チアダンスチーム「Red Charm」の女性社員も含まれており、自然とこのような比率になりました。
編集部
チアの社員もいらっしゃるのですね。Bリーグの他チームでも、チアダンスチームのメンバーが社員になることは一般的なのでしょうか。
水野さん
最近は少しずつ増えてきているようです。岩手ビッグブルズでチアの社員が初めて入社したのは、5年ほど前のことです。その当時は、チアの社員はほとんどいなかったと思います。
弊社としては、チアのメンバーにも社員として腰を落ち着けて業務に取り組んでいただきたいという思いから、社員に登用しました。
編集部
女性の場合、出産や子育てと仕事の両立という課題に直面することがありますが、このことについてはどのようなサポートや対応をお考えでしょうか。
水野さん
それは非常に重要な課題だと認識しています。現在、弊社の社員はまだ若い世代が多く、これまでそういった事例はありませんでした。しかし、今後は確実にそのような状況が出てくると思います。その際には、個々の状況に応じて柔軟に対応していきたいと考えています。
新社屋の効果:働きやすい環境整備で社員のモチベーションアップを実現
▲2022年11月に移転した新社屋前での集合写真
編集部
社員の方は、どのような思いを持って入社されているのですか。
水野さん
社員の3分の2は岩手県出身で、地元のチームを盛り上げたいという方が多いですね。ただ、入社の動機は多様です。例えば、配偶者が岩手県出身の社員もいますし、前職でのスポーツビジネスの経験を活かしたいという理由で中途入社する方もいます。
編集部
最近、事務所を新設したと聞きました。
水野さん
はい。2022年11月に新社屋を設立しました。働く環境が非常に重要だと考えたからです。新事務所は2階建ての専用オフィスで、1階にはダンススタジオを完備しています。ここでは、チアリーダーチーム「Red Charm」のトレーニングや、地域の子ども達のダンスレッスンなどを行っています。
2階の事務所スペースには最新の機器を備えたミーティングルームを設置するなど、社員が充実して働ける環境を整えました。また、住宅街に立地しているので、今後は地域のコミュニティづくりにも貢献していきたいと考えています。
編集部
社員のモチベーション向上と地域振興の両面を考慮されたのですね。
岩手ビッグブルズが求める人材像:自ら道を切り拓く能動的な姿勢を重視
編集部
岩手ビッグブルズさんの採用活動について伺います。今後、どのように募集を行っていく予定でしょうか。
水野さん
マンパワーを必要としているので、社員数を今の2倍、3倍と増やしていかなければならないと考えています。プロスポーツチームにとって選手の獲得は重要な投資ですが、それと同じくらいフロントスタッフへの投資も必要です。会社を大きくしなければ、スムーズな運営は難しいでしょう。
編集部
採用活動は、新卒と中途の両方で行われるのでしょうか。
水野さん
はい、その通りです。新卒にも中途にもそれぞれ良さがありますので、それらを考慮しながら個々の適性に応じた採用を心がけていきます。
編集部
岩手ビッグブルズさんに適しているのは、どのようなタイプの方でしょうか。
水野さん
能動的な方が望ましいですね。当社はまだ小規模な組織なので、すべてを一から教えるのは難しい面があります。自分でどんどんと切り拓いていけるタイプの方が、当社では成長できると考えています。
また、体力も重要です。体力に自信があり、楽しみながら元気よく動ける方がスポーツ業界には適していると思います。そういった方々を積極的に受け入れたいと考えています。
編集部
バスケットボールが好きかどうかは、採用の条件になりますか。
水野さん
バスケットボールが好きであることは必須ではありません。むしろ、スポーツ全般が好きであれば十分だと考えています。
採用のポイント:地域貢献への強い思いと積極的な提案力を評価
編集部
このインタビューを読んで、岩手ビッグブルズさんに興味を持った方へのメッセージをお願いできますでしょうか。
水野さん
このビジネスには華やかな部分だけでなく、厳しい面もあります。そういった環境で仕事を円滑に進めていくためには、「地域を盛り上げたい」という強い思いを持っていることが重要です。そういう思いを持った方が活躍しています。
試合の勝ち負けに一喜一憂することも大切ですが、それだけにこだわると、負けが続いた場合にモチベーションが下がってしまう恐れがあります。そのため、勝敗に左右されずにクラブを盛り上げていく方法を常に意識できる方を求めています。
さらに、積極的にアイデアを提案したい方も大歓迎です。「この企画を任せてほしい」といった姿勢を持つ方を募集しています。
弊社はファミリー意識の強い会社で、すぐにチームの一員として溶け込めると思います。インターンやアルバイトを通じてスポーツ業界を体験し、その後のキャリアを考えるなど、幅広い選択肢も用意しています。
編集部
では最後に、岩手ビッグブルズの活躍を楽しみにしているファンに対して、メッセージをお願いします。
水野さん
B2に復帰できました。この6年間は会社にとって貴重な成長期間でした。売上規模は5倍に拡大し、企業としての体力もしっかりとついてきました。この基盤を最大限に活用しながら、さらなる高みを目指します。今後とも変わらぬご声援をよろしくお願いいたします。
編集部
シーズンの活躍を期待しています。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社岩手ビッグブルズ https://www.bigbulls.jp/
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