若手の提案を積極採用するチャーム。スピード重視のECでペット業界を席巻

組織づくりやその運営法などで独自性を発揮し、他社にない強みで業界をリードしている企業にお話をうかがう本企画。今回は社内システムの開発や運用からWebサイトの構築、さらには物流までを自社対応している株式会社チャームに、ペット業界におけるポジショニングや独創的なEC事業の運営体制、そしてそこから生まれてきた強み、さらには若手の積極的な活用やメンバー同士がサポートしあう企業文化について伺いました。

株式会社チャームとは

1979年2月に設立された株式会社チャームは、「お客様とペットに豊かな暮らしを」という理念のもとで、ペット用品の通信販売を行っている企業です。ECには2000年から取り組んでおり、すでに20年以上の歴史があります。この間に培ってきたノウハウが最大の武器であり、今では取扱商品数が6万点以上、注文件数は1日に1万件以上にまで及んでいます。

会社名 株式会社チャーム
住所 群馬県邑楽郡邑楽町大字篠塚1810-3
事業内容 熱帯魚、海水魚、水生植物、昆虫、爬虫類、両生類、犬用品、猫用品、小動物用品、日用品、ガーデニング、インテリア・雑貨の店頭販売及び通信販売、BtoB事業
設立 1979年2月
公式ページ https://www.charm.co.jp/

株式会社チャームの成長の原動力は、若手社員の積極的な活用です。Twitterやオウンドメディア展開のきっかけを作った若手社員の事例や、若手の提案を積極的に募る企業姿勢、さらには人事評価の考え方などをお聞きしました。そして採用で重視しているポイントをお伺いしています。

本日お話を伺った方
株式会社チャーム人事部主任の小崎さん

株式会社チャーム
人事部主任

小崎さん

企業理念は「お客様とペットに豊かな暮らしを」

株式会社チャームが展開するチャーム館林店の店内イメージ
▲アクアリウムが整然と並ぶチャーム館林店さんの店内

編集部

最初にチャームさんの事業内容についてお教えください。

小崎さん

弊社は「お客様とペットに豊かな暮らしを」という企業理念のもとで、ペットの用品と生体を主体にした通信販売を行っています。設立は1979年で、今年で44年になります。

現在では6万点以上の商品を取り扱っており、1日に1万件以上のご注文をいただいています。扱っているのは熱帯魚や海水魚、植物全般、両生類や爬虫類、昆虫などです。一般的にメジャーなペットといえば犬や猫ですが、弊社ではそれらの生体は販売していません。ペットカテゴリーの中ではちょっとマイナーな生き物を扱っています。

編集部

メンバーのみなさんの基本的な嗜好としては、やはりペットやアクアリウムをお好きな方が多いのでしょうね。

小崎さん

ほとんどのメンバーが生き物や自然を愛好しています。特に新卒社員は、ほぼ全員が何らかの生き物が好きですね。ただ、中途入社したシステムエンジニアやデザイナーなどの専門分野の方は、必ずしもそうではありません。現在ペットを飼っているメンバーもいますが、中には「生き物は、昔は飼っていました」という方もいます。

編集部

珍しいペットを飼っているとか、自宅にすごいアクアリウムを展開しているという方もいらっしゃるんでしょうね。

小崎さん

はい。例えば2023年4月に入社してくる新卒社員の中には、自宅で20種類以上のカエルを飼育している方がいます。また、長さが150cm以上もある巨大な水槽で海の生き物を飼育している方もいます。他にもチャーム以外ではなかなか出会うことのないような、マニアックで濃い人材が集まっていることは確かです。

編集部

メンバーがマニアックだからこそ、多くのお客様を満足させられるのでしょうね。

2019年の東京出店を機にBtoB事業へ進出

株式会社チャームがアンテナショップとしてオープンしたチャーム小石川店
▲チャームさんのアンテナショップとして2022年5月にオープンしたチャーム小石川店さん(公式ページから引用)

編集部

チャームさんの本社は群馬県ですね。

小崎さん

そうです。本社や物流センター、倉庫などの事業所は、基本的に群馬県を中心に点在しています。これまではECによるBtoCを主力事業にしており、個人のペットユーザー様向けサービスがメインでした。

しかしながら、2019年の東京進出を機に、新規事業に取り組んでいます(※)

この年にオープンした恵比寿店では既存事業であるペット用品や生体の販売以外に、新たにBtoB事業に進出し、企業向けにレイアウト水槽のリース事業をスタートしました。
(※)2019年4月にチャーム恵比寿店(東京都渋谷区)をオープン。同店は2022年4月に閉店し、同年5月にチャーム小石川店(東京都文京区)をオープン。

編集部

東京の店舗は、これまでの店舗とは役割が違うのですね。

小崎さん

東京の店舗はチャームのアンテナショップという位置付けです。ペット用品を販売するだけでなく、例えばワークショップ形式の事業など、新たなビジネスモデルを展開しています。

生き物を扱う会社として、適切な飼育方法や繁殖方法などの情報を発信したり、各種のサポートやフォローを積極的に行うことで、お客様にさらに豊かなペットライフを提案しています。

中期的な目標は「専門店としての地位を改めて確立する」こと

編集部

東京出店が大きな転換点になったわけですね。ではチャームさんが目指している今後の方向性についてお聞かせください。

小崎さん

これは中期目標でもあるのですが、「専門店としての地位を改めて確立する」ということです。ECを強化して事業規模を拡大する以前の弊社は、実店舗だけでレアな生き物のみを扱っていました。そのレアな生き物を求めて、愛好家の皆様が日本全国から来店してくださるという本当の意味での専門店でした。

ところが規模が大きくなり、お客様も増える中で、売り上げの構成比も変わってきました。今では犬・猫用品の売り上げが大きなウェイトを占めています。それはそれで非常に重要なことだと思っています。

しかしながら、ペット業界におけるチャームの今後の立ち位置を、どう考えるのかという分岐点に差し掛かってきたことも確かです。

原点に立ち返って、レアな生き物を愛好するお客様に、さらにご満足いただける品ぞろえや情報発信を、改めて意識しなければいけないのではないか。これが今、メンバー全員で共有している問題意識なのです。

編集部

インターネットの進化で、商品も情報も手軽に入手できる時代です。だからこそ、原点に立ち返ってチャーム様ならではの専門性を強化するのですね。

一番の強みはすべてのEC関連業務を自社完結していること

株式会社チャームの倉庫における梱包作業風景
▲梱包などの物流関連業務も自社で完結しているチャームさん

編集部

チャームさんのECへの取り組みは2000年から始まっています。非常に長い歴史ですが、この間に培ってきた御社の強みを教えてください。

小崎さん

弊社の一番の強みはECに関わる業務を、すべて自社で行っていることです。商品の発注や管理、Webサイトの構築や社内システムの開発・運用、そして商品の撮影や生き物の管理、カスタマーサポート、さらには物流まで、他の企業様であれば外部に委託しているような機能まで、すべて自社で保有しています。

この体制を構築した一番の狙いはスピードです。例えば何か新しいアイデアが生まれたときでも、チャームの意思だけで決定し、システムを構築できるので、ビジネスとしての展開スピードが格段に早くなります。

また、委託先がないので何も妥協することなく、弊社のこだわりを百パーセント事業化できます。弊社のこだわりの品質をお客様にスピーディにお届けできるのは強みですね。

編集部

自社のこだわりをそこまで徹底できる体制は、確かに大きな強みですね。

小崎さん

そうです。生き物を愛好するお客様は、熱量の大きい方が多いですからね。こだわりの有無を、すぐに見抜かれてしまいます。しかもチャームのメンバーは、自分たちが生き物愛好家でもありますから、お客様と同じように熱量が大きい。それぞれの持ち場で「こうしたい」という熱い思いで仕事をしています。

その熱量を、そのままお客様にお届けするには、委託先を挟まない自社完結が最適なんです。

編集部

チャームさんのオウンドメディア「AQUALASSIC」を拝読すると、御社のこだわりや熱量がよく分かります。特に「charmの匠シリーズ」からは、熟練メンバーの方の職人気質やプロ意識がしっかりと伝わってきます。

小崎さん

ありがとうございます。そこもチャームの強みの一つです。弊社には昔ながらの職人気質を持ったメンバーが多く在籍して活躍しています。彼らに共通することは、常にお客様を第一に考えて行動していることです。

そこから生まれたこだわりですから、時には厳しい話をすることもありますし、頑固すぎると感じることもあります。ただ、やはりそういう方のお話を聞くと新しい発見があり、深くうなずくことしかできません。興味深い話がたくさん聞けます。

若手に任せて大成功したTwitterの運用

編集部

チャームさんの強みであるスピードですが、これに関する具体的な事例を教えてください。

小崎さん

例えば若手社員が発信した提案が、すぐに大きなプロジェクトとして取り上げられ成功したという事例があります。

弊社は今、SNSや情報サイトの運用を強化しているのですが、その重要性をいち早く訴えたのが入社5年目のメンバーだったんです。彼は役員にそのことを発信し続け、会社もその重要性をすぐに理解して彼にTwitterの運用を任せました。

それ以降、Twitterのアカウントが急激に増えてきて、今では弊社の重要な情報発信メディアになっています。また彼はその後も、オウンドメディア「AQUALASSIC」の立ち上げに主要メンバーとして加わり、さらに活躍を続けています。

編集部

他にも新卒や若い世代の方が、さまざまな部署で活躍されているのですね。

小崎さん

そうです。新卒採用をスタートしたのは2011年でした。毎年10名から20名ぐらいの新卒を採用しており、2023年はそれよりも多い31名の入社が決まっています。彼らには常に、やりたいことを積極的に提案してほしいといっており、提案内容によっては入社歴に関係なく活躍の場を提供しています。

つい2カ月ほど前にも、2022年に新卒で入社した若手が昇格を果たしたばかりです。「こうすれば、もっとお客様に喜んでもらえるんじゃないか」という提案を積極的に募り、聞き入れることが、チャームの企業文化なんですね。

そのアイデアが採用されれば、重要なポジションを任せるということになります。

編集部

メンバーの頑張りを、公平に評価する制度も導入されているのですか。

小崎さん

はい。各部署には目標がありますが、これとは別にメンバーが個別の目標を設定しています。これは所属部署の目標に関連したもので、個人としての目標達成率が部署の成果にも直結することになります。

メンバーは高い志を持って仕事に取り組むことができ、その成果がそのまま評価につながる制度になっています。

チャームで活躍しているメンバーに共通する資質

株式会社チャームのメンバー5名によるミーティング風景

編集部

チャームさんで活躍しているメンバーの方には、共通する資質などがありますか。

小崎さん

共通しているのは生き物や自然が好きだということです。そして素敵なアイデアをたくさん考えており、それを具現化する力を持っていることが、一番の共通点だと思います。

これまでの飼育経験などを通じてインプットしたものを、お客様のためにアウトプットできるんですね。活躍しているメンバーは、そういう能力に長けていると思います。

しかも、多くの部署が絡んで組織が成り立っていますから、普段は関わることの少ないメンバーたちを、いかに巻き込むかということも大切です。この能力は、大きなことを成し遂げたり、重要なポジションやプロジェクトに携わっているメンバーに共通しているな、ということを強く感じます。

編集部

そうした巻き込み力を発揮するためには、発言のしやすさが大切だと思います。チャームさんにはそういう環境があるということですね。

小崎さん

そう思います。チャームはここ20年ぐらいで急成長しているんですが、この間、メンバー同士の関係性も本当にフランクなものになってきました。誰に対しても気軽に発言しやすい雰囲気なんです。部署間の関わり方が多岐にわたっている弊社独自のカルチャーだと思います。

メンバー同士の助け合いが企業文化として定着

株式会社チャームの3名の出荷スタッフによる集合写真
▲メンバー同士のサポートが文化として定着しているチャームさん

編集部

メンバーをサポートする制度について伺います。現状で力を入れている取り組みには、どんなものがありますか。

小崎さん

制度面でいいますと、新卒社員に向けてはメンター制度を導入しています。これは今年で5年目になります。お客様とのやり取りなどをスムーズにするだけでなく、社内におけるコミュニケーションの円滑化などにも効果を発揮しています。

また、2022年からは中途入社した方向けのオリエンテーションをスタートしました。これは、さまざまな事業所を訪問して普段は関わることの少ない部署と交流したり、自社への理解を深めたり、会社への帰属意識を高めてもらうことなどを目的にしています。

そして既存社員については、2022年から管理職向けの研修をスタートしました。一般社員向けの研修については、これから取り組みを本格化させようと計画しています。

編集部

会社の制度だけでなく、メンバー同士がお互いをサポートしあうような風土もあるのでしょうか。

小崎さん

メンバー間のサポートは、かなり活発だと思います。というのも、チャームには独特な組織的特徴があるからです。それは、どこか一つの部署に配属されたからといって、その部署内だけでコミュニティが完結するわけではないということです。

弊社には多くの部署があります。それらの大半は同じ拠点で活動しており、業務を進めるうえでは、他部署と連携することがとても多いのです。結果として部署間の交流が非常に活発になり、お互いをサポートしたり助け合ったりということが自然な文化として醸成されたんだと思います。

編集部

部署間の関わりが多岐にわたっているチャームさんらしい文化ですね。

リモートワークやジョブチェンジの導入状況

編集部

リモートワークの導入状況をお聞かせください。チャームさんには、エンジニアのようにリモートワークに適した職種と、物流のように適さない職種とが混在しており、一律の導入状況ではないのでしょうね。

小崎さん

おっしゃる通りです。リモートワークは一部の部署で行っています。例えばエンジニアの中には遠隔地在住の方もいるので、その方にはフルリモートで仕事をしていただいています。

あとはカスタマーサポート部の一部の方ですね。自宅で電話対応やメール対応をされています。それ以外の方は基本的に、出社するワークスタイルになっています。

編集部

本人の希望で部署や職種を変えるジョブチェンジは制度化されていますか。

小崎さん

ジョブチェンジやジョブローテーションは、制度としてはまだ確立していません。ただし部署異動については、リーダーによっては頻繁に行う場合もあります。

例えば部署の事業拡大にともなって、適性のあるメンバーを社内でスカウトする感じですね。また個別の相談で「他部署にチャレンジしたい」という要望があれば、その方が活躍できる部署を調整するというケースもあります。

採用のポイントは「変化を楽しみながら仕事をできるか」

株式会社チャームが展開しているチャームよみうりランド店の店内

編集部

採用に関連するトピックについて伺います。チャームさんが採用時に重視しているポイントはどんなことでしょうか。

小崎さん

一言でいうと「変化に順応して、これを楽しみながら仕事ができるか」ですね。こういう資質をもった方がチャームの社風に合っていると思います。

今の時代、お客様の求めるものや時代の要求がどんどん変わってきていますから、弊社もそれに合わせて日々変化しています。極論すれば昨日出された指示が今日は180度変わるということもよくあります。そういう変化に順応して楽しめるか、ですね。

編集部

柔軟性や臨機応変さが重要ということですね。

小崎さん

そうです。幸いにもチャームはアクアリウム市場やペット業界において、多少なりとも影響力があるポジションにいるので、変化を起こしたり、それをブームにしたりということが可能です。それが弊社の役割だとも考えています。

そういうことを私たちと一緒になって、楽しみながらやっていけるかどうかがとても重要だと考えています。

編集部

ペットの飼育経験は必要でしょうか。

小崎さん

飼育歴の有無は、入社の条件にはなってはいません。ただし、弊社社長の今井(代表取締役の今井努さん)は、「生き物を大切にすることはチャームの社員としての使命。どの部署で働いてもその意識を持っていないと、お客様に良いものを提供できない」とよく話しています。ですから生き物に対する愛情や向き合い方を、しっかりと意識することは重要だと思います。

編集部

それでは最後に読者へのメッセージをお願いします。

小崎さん

私がチャームで働いていて強く思うことは「楽しい会社だ」ということです。そしてまた「成長性を感じられる会社だ」ということも実感しています。

今は予期せぬ変化が当たり前のように起こる時代ですけれど、弊社がその都度、臨機応変に対応してこられたのは、会社の柔軟性とメンバー個々の適応力とがうまく融合したからだと思うんです。会社もメンバーも変化を楽しんでおり、それが成長につながっているんですね。

弊社は本当に面白い会社ですので、興味を持たれた読者の方には、ぜひともその力を弊社で発揮していただけたらと思います。

編集部

キーワードは「変化を楽しむ」ですね。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社チャーム https://www.charm.co.jp/
採用ページ https://www.charm.co.jp/recruit/