子ども服で親子の時間を充実させるグロウ。少子化でも成長を続ける秘密とは

子ども服で親子の時間を充実させるグロウ。少子化でも成長を続ける秘密とは

注目企業の躍進の秘密や若手の活躍などについて企業インタビューをしていく本企画。今回は、キッズファッションアイテムの企画・製造と、通販サイト「devirock(デビロック)」の運営を手がける、グロウ株式会社にお話を伺いました。

グロウ株式会社とは

グロウ株式会社は、ECサイトで子ども服を販売しています。「革新的付加価値を創造し、世界のあらゆる人々の物心両面の豊かさを追求する」をミッションとしており、手荷物を収納できるランドセルカバーなど、ありそうでなかった商品なども販売しています。

会社名 グロウ株式会社
住所 大阪府大阪市北区曽根崎新地2-1-23 JPR堂島ビル5F
事業内容 子供服の企画・製造・販売、Eコマース事業
設立 2008年4月
公式ページ http://gro-w.jp/

今回は、経営管理本部人事総務部の人事総務課課長である井上亮人さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
グロウ株式会社・経営管理本部人事総務部の人事総務課課長である井上亮人さん

経営管理本部 人事総務部 人事総務課
課長

井上 亮人さん

品質とデザイン性が高く、お求めやすい価格の子ども服を企画・販売

グロウ株式会社のブランド「devirock」のLOOK BOOK
▲グロウ株式会社のブランド「devirock」のLOOK BOOK(公式サイトから引用)

編集部

まず最初に、御社の事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

井上さん

グロウ株式会社は、「devirock(デビロック)」という子ども服のECサイトの運営を主な事業としています。弊社では、販路を実店舗ではなくオンラインに限定しており、自社サイトの他に、楽天市場さんやZOZOTOWNさんなどで子ども服を販売させていただいています。

弊社の子ども服の特徴としては、品質とデザイン性は担保しつつ、お求めやすい価格である点が挙げられます。Tシャツであれば3桁プライス・999円でお買い求めいただけます。

お子さんは成長が早いので、場合によってはワンシーズンでサイズが変わって買い直さなければならないこともあります。また、汚したり破いてしまったりということも多くあります。そういった子ども服特有の事情の中で、品質とデザイン性が高く、なるべくお求めやすい価格でという親御さんの要望に応える商品を揃えています。

編集部

品質とデザインが良くて、なおかつ価格にもこだわっているというのは消費者からすれば嬉しいことですが、どのようにして実現しているのでしょうか。

井上さん

販路をオンラインに限定していることが大きいです。実店舗があるとどうしても店舗の家賃や人件費が多くかかってしまいますが、グロウでは販路をオンラインに絞ることで固定費を抑えることができ、その分お客様に還元できます。

子ども服で充実する親子の時間

グロウ株式会社のステートメント
▲グロウ株式会社は「もっと親子になろう」というステートメントを掲げている(公式サイトから引用)

編集部

グロウさんが事業を行う上で大切にされていることはありますか?

井上さん

ブランドのステートメントである「もっと親子になろう」を、社内の価値観としてとても大切にしています。このステートメントには、「子育てにおける課題を解決し、子育てがもっと楽しくなる社会を目指したい」という願いが込められています。

例えばTシャツの生地が悪くて「チクチクするから、これ着たくない」だったり、お気に入りの服が汚れたり破れてしまって「もうこれ捨てちゃうね」「そんなの嫌だ」とか、お子さんが一人で服をちゃんと着れなかったり仕舞えなかったりとなると、親子の時間がストレスフルになってしまいます。

そうではなくて、「たくさん遊んで汚してもいいんだよ」とか「自分でお洋服着られるようになったね」というように、弊社の商品が親子の時間を充実させるものであってほしいと考えており、その辺りを核として事業をおこなっております。

編集部

グロウさんの子ども服を通して、親子がより楽しく親密な時間を過ごすことができるのは素敵ですね。そんな親子のやりとりを見たり想像したりすることで、社員の皆さんもやりがいを感じるのではないでしょうか。

0.1円にこだわるコスト意識で150%の利益増

グロウ株式会社の社内ミーティングの様子

編集部

グロウさんは2008年創業ですが、現在の経営状況についてお伺いできますか。

井上さん

現在はおおむね50億円行かないくらいの販売額です。特に今期に関しては、大幅な利益の改善が行われていて、昨年と比較して150%程度の成長を見込んでいます。また、来期以降についても堅調に成長し続けてまいりたいと思っています。

編集部

それは大きな成長ですね。少子化と言われて久しい状況ですが、その中でもこれほどの利益を上げている背景はなんでしょうか。販路をオンラインに絞っているという点以外にも何か企業努力があるのでしょうか。

井上さん

グロウでは「革新的付加価値を創造し、世界のあらゆる人々の物心両面の豊かさを追求する」をミッションとしており、それを実現するために我々社員がやるべきことを「GROW COMPASS(グロウコンパス)」という形で掲げているのですが、その中に「利益にこだわる」というコンパスがあります。

商品がお客様のお手元に届くまでには、企画、生産、物流など各所でコストがかかるのですが、この「利益にこだわる」というコンパスがかなり浸透しているおかげで、0.1円単位でコストを下げていくことができています。弊社の売上規模では、子ども服1枚のコストが0.1円下がるだけでも相当なインパクトがあります。

現在は物価高でもありますし、弊社のような輸入をメインとしている企業では円安も苦しいのですが、世の中の流れを言い訳にせず、しっかりと利益にこだわって各部が連動して動いているというのは、企業努力の結晶と言えるかと思います。

編集部

0.1円にこだわるほど細かいところまで、社員の皆さんが状況を把握してコストカットをしている結果が大きな利益につながっているのですね。それを理想に終わらせず、実現できているところが素晴らしいと感じました。

雑貨・周辺アイテムの充実でさらなる成長を目指す

編集部

子ども服は国内では少子化の影響を受けるものの、海外では今後も大きく伸びていく市場だと思います。今後は海外展開も視野に入れておられるのでしょうか。

井上さん

長期的な目線では検討する余地はあるかと思いますが、現在のところは国内で「親子の時間を充実させる」ということを目標にしています。というのも、これまではTシャツやパンツのようなアパレルが非常に売れ行きがよかったのですが、最近は、アパレルに加えて、上履きやランドセルカバーといった雑貨などのアイテムも好調なためです。

例えば、通学事情の変化について、ママさん社員からの「昔よりも子供の荷物が増えていて両手が塞がっている。転んだら大変」という意見もあり、ランドセルカバーに手荷物を収納するスペースを作って販売し、好評を得ました。

また、アパレル部門でも工夫があります。小学生は胸元に名札を付けることが多いのですが、普通のTシャツに名札を付けると、安全ピンでどんどん穴が広がってボロボロになってしまいます。そこで、Tシャツの胸元に目立たない小さな穴のあいたワッペンを付けて、その穴に安全ピンを通してもらうTシャツを作ったりしていますね。

このように、現在のところは、販路を横に広げるというよりは、国内のお客さまにより良い価値・幅広い価値をご提供することを軸に考えています。

編集部

市場を広げるよりは、まずは顧客満足度を上げることでさらなる成長を目指しているということですね。

20代〜30代でも管理職に。若手が活躍しやすい環境

グロウ株式会社の入社式での代表から新卒社員への激励
▲入社式での代表から新卒社員への激励

編集部

グロウさんでは若い方が多いと伺いましたが、20代や30代の方はどれくらい在籍しているのでしょうか。

井上さん

弊社の社員52名のうち、42名が20代〜30代で、平均年齢は33.7歳です。

編集部

確かに若い方が多いですね。具体的に活躍されている若手メンバーの事例があれば教えてください。

井上さん

まず管理職ということですと、30代で部長職になった社員もおりますし、私自身30歳ですが、人事総務の課長をしております。あとは最近、人事制度を変更して、課長の下に主任という役職を作りまして、入社して3年や27歳のメンバーも主任になったりしています。

管理職以外のお話をすると、弊社ではデザイナーはとても大切な職種なのですが、現在デザイナーは29歳・30歳・新卒で入社した22歳の3人となっていて、若手が頑張っている事例かなと思います。

編集部

若い方ですと経験の浅い方や未経験で入社される方も多いと推察しますが、なぜそのように活躍できるのでしょうか。会社としてのサポート体制やフォローなどについてお聞かせください。

井上さん

現場のメンバーにも採用に関わってもらっているので、「自分が採用者」という責任感が、現場のメンバーには間違いなくあるとは思っています。新入社員を育てていくというところはすごく意識をしてやってくれていると感じています。

また、弊社の代表である宮本(代表取締役の宮本智彦さん)が日頃から「仕組み化・脱属人化」を推進しており、結果としてマニュアルが整っていたり、しっかり言語化がなされていたりして、所属長だけでなく各人にまで落とし込んで理解をした上で業務をしています。

ですので、わからないことがあってもマニュアルを確認したり、周囲のメンバーに聞くことでキャッチアップして業務を進めやすいですし、自分の業務がどんな内容で、会社にとってどう役立っているのかが言語化できるほど理解できているので、主体的に業務に関わることができ、活躍しやすいのだと思います。

編集部

「仕組み化・脱属人化」が徹底されているため主体的に業務を行うことができるのですね。実際にグロウのメンバーのみなさんがどういった形で主体的に行動されているのか、何かエピソードをご紹介いただけますか?

井上さん

グロウでは、在庫や売上、粗利などのデータベースを社内の誰もが見られるよう開示しているのですが、このデータを「見える化」できるよう整えてくれたのが当時新卒2年目の社員でした。

前任者が退職するタイミングで「もっとこう言うふうにやったら便利なんじゃないか」と主体的に意見を出して、彼を中心に数名のプロジェクトで動いてくれました。制作中もさまざまな意見を取り入れ臨機応変に対応してくれて助かりました。

編集部

まさに「自分の業務が会社にとってどう役立つのか」が理解できていたからこそ、主体的に業務に関われた事例ですね。また、新卒2年目の方でそんな大きなプロジェクトに中心になって関われたというのは、ご本人にとって大きな経験だったでしょうね。

透明性の高い評価制度で若手でも高い評価が得られる

グロウ株式会社の勤務風景
▲グロウ株式会社の勤務風景(wantedlyから引用)

編集部

グロウさんでは活躍されている若手の方が多くいらっしゃいますが、評価制度としてはどのようなところを意識して設計なさっていますか。

井上さん

ここ最近で言うと、まずは透明性を大事にしています。特に頑張ってしっかり成果を出したメンバーは、年齢や社歴を問わずしっかり評価するようにしています。評価制度については、業務の違いからグループごとに評価項目を定めていますが、同じグループ内であれば、評価基準は同じです。同じグループであれば、新卒1年目でも30歳でも基本的には同一の基準で評価をしています。

また、役職が主任・課長・部長と上がっていくのも年齢などの制限は一切ありません。本人に意志があって、上長が推薦書を書いて、それを役員と人事が精査して決めるという運用をしています。

編集部

透明性の担保についてはどのようになさっているのでしょうか。

井上さん

部署によって評価の基準が違うと全く意味がないので、部長や課長に対しては評価者研修を行なうことで、1人のメンバーに対して誰が評価してもある程度同じであるように取り組んでいます。

また、今後は評価を受ける側に対しても、しっかりと評価研修を行おうとしているところです。これは「どんな人材がグロウでは評価され、求められているのか」を理解し、社員自身の日々の業務につなげてもらうためです。

編集部

年齢やこれまでの経歴に関わらず評価研修を受けてもらって、会社の文化であったり、自分のキャリアパスを見つめ直す機会を得てもらうということですね。

井上さん

そうですね。単純に形だけ上長と部下の面談をするのではなく、何のために面談をするのか考えてくれるよう、部長・課長にお願いしているところです。

育休後の復帰率ほぼ100%!復帰しやすい環境づくり

グロウ株式会社の勤務風景
▲グロウ株式会社の勤務風景(公式サイトから引用)

編集部

グロウさんでは子育て中の社員が多いと伺いましたが、どれくらいいらっしゃるのでしょうか。

井上さん

結構いますよ。産休・育休を取得した社員で言うと、これまでで10名前後、5分の1程度でしょうか。今年は、2022年10月に新設されたばかりの「産後パパ育休」を取得した部長職もいます。

編集部

部長職の方が産後パパ育休を取得したとなると、他の社員の皆さんも産後パパ育休をとりやすい雰囲気が醸成されますね。産休・育休を取得した社員に対して、会社としてはどのようなサポートをしていますか。

井上さん

業務の調整や時短勤務や一部リモート勤務などの制度でフォローしています。その甲斐あってか、ここ数年の復職率はほぼ100%です。

編集部

復帰率ほぼ100%というのは素晴らしいですね。産休・育休を取得すると1〜2年お休みすることになるので、どの企業様でも復職後のギャップが課題になっていますが、御社では何か対策をとっているのでしょうか。

井上さん

率直に言うと、失敗をたくさんしながら、対策を講じている最中です。弊社を退職した人たちと食事に行くことがあるのですが、そのときに、当時の会社のフォロー体制に期待できなかったので復職せずに退職したという話を聞きました。

ですから、そうした声を無駄にしないよう、復職時の会社としてのバックアップや、ママさんパパさんが働きやすい環境を作っているところです。

編集部

なるほど。退職された方とも今も交流の機会を持っていらっしゃるのですね。

井上さん

そうですね。これは、僕個人のこだわりなのですが、例えばLINEで繋がっていたりすると、「今日誰々さんがお誕生日です」と言う通知が来たりしますよね。ああいうのをきっかけに、「お元気ですか」とか「お子さんは元気にされていますか」という形で連絡を取って食事に行くことはままあります。

せっかくグロウで仲間になっていただいた方ですし、ましてやお子さんがいらっしゃいますので、弊社で働いたことが悪い思い出であってはならないと思っています。

編集部

そういった交流の中で、丁寧に課題をヒアリングして、それを社内制度に反映して改善なさっているのですね。復帰率ほぼ100%はそういった努力が実ったからこそかもしれませんね。

井上さん

ありがとうございます。そうであってほしいですね。

他部署との連携や距離の近さが特徴の社内カルチャー

グロウ株式会社の社内イベントの様子
▲社内イベントの様子

編集部

グロウさんではどんなメンバーが多いでしょうか。

井上さん

自分の仕事だけでなく、他部署にきちんと興味を持って仕事に取り組んでいるメンバーが多いです。例えば、商品部のメンバーは生産部の状況を気にしていますし、生産部のメンバーは販売の状況に注意しています。

そうすると、例えばどのTシャツがどれくらい売れているか、在庫はどれくらいかと言うことも社内のデータベースで開示しているので、生産部のメンバーはそれをチェックして、発注の指示が出る前から、先手先手で動くよう心掛けてくれています。

そういったところは目標設定があるわけではありませんし、マニュアルに書かれているわけでもないのですが、グロウとその商品の価値を最大化し、お客様に最大化した価値をお届けするにはどうしたら良いかというところを、各部のメンバーがしっかり考えているからこそ成り立っていることだと思っています。

編集部

他部署の状況を把握しつつ、先回りして仕事に取り組むことで、会社とその商品の価値を最大化する。規模の大きな企業ではなかなかできないことかもしれませんね。

井上さん

そうですね。せっかくこの人数規模なので、特に若いメンバーには、商品部だから商品のことだけわかっていればいいとか、人事だから人事のことだけ考えたらいいということではなく、横の連携や距離の近さを意識してほしいと感じています。

そのように、横の連携を深めていくにあたって、先述の在庫や売上の情報など様々な情報を社員全員が見られるというのは非常に大きいと考えています。

採用では素直さと前向きに仕事に取り組む姿勢を重視

グロウ株式会社の勤務風景

編集部

最後に採用についてお伺いしたいと思います。記事をご覧になって興味を持った読者の方、今後入ってくる若い方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

井上さん

年齢に関わらず、素直さを持った方にお越しいただきたいと考えています。素直にわからないことを聞けるというところは重視しています。弊社は他のアパレル企業さんとはかなり違って特殊な部分もあると思います。ですから、そこを「新しい仕事を覚えるチャンスだ」「これは自分のためになる」と素直に受け止めることを大切にしていただきたいです。

もう一つは弊社の指針である「GROW COMPASS」にもあるのですが、「できる方法を考える」方であってほしいということです。弊社はまだ40~50億円規模の小さい企業ですから、普通のことをしていても大手の企業様に負けてしまいます。ただ、小さければ小回り・機動性も良いはずなので、場合によっては皆様が知るような大手の企業様にできないことを、グロウでできる可能性があると感じています。

ですから、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えることに軸を置いて仕事に向き合っていただけるような方と一緒に働きたいと考えております。また、会社として整っていない部分もまだまだあるのですが、それを「チャンスだ」と捉えていただける方だと嬉しいですね。

編集部

さまざまな意見を素直に取り入れて、試行錯誤しながら、気持ち良く働ける会社を一緒に作っていける、そんな前向きな人がグロウさんにはフィットしそうですね。本日はありがとうございました。

■取材協力
グロウ株式会社:http://gro-w.jp/
採用ページ:http://gro-w.jp/recruit/