働く人たちのワークライフバランスを大切にし、若手が活躍できる職場づくりを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は岡山県倉敷市にお話を伺いました。
倉敷美観地区、水島コンビナートをはじめ多彩な魅力を持つ「岡山県倉敷市」
倉敷美観地区をはじめとした観光都市であり、水島コンビナートを有する工業都市、桃やマスカットなどの一大産地でもある岡山県倉敷市。そんな多彩な魅力を持つ同市市役所では、若手職員の成長を後押しする職場環境が整っており、様々な場で若手が活躍しています。新採用職員における転職者の割合も4割と多く、働きやすさを求めて、年々その割合も増えています。また市外出身者(新採用職員)は44%にものぼり、地元出身の如何を問わず、多くの若手職員が倉敷市を支えています。
自治体名 | 岡山県倉敷市 |
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住所 | 倉敷市西中新田640 |
公式ページ | https://www.city.kurashiki.okayama.jp/ |
今回は倉敷市職員の内田さん、佐伯さん、林さん、小野さんに若手職員として働く魅力と、働きやすさ、ワークライフバランスについてお話を伺いました。
入庁から1年半で多様な業務を任せられて、幅広い経験を積める
編集部
倉敷市では若手の方が多く活躍されているそうですが、まずは内田さんのご経歴や業務内容についてお聞かせください。
内田さん
私は大学卒業後、保険会社の総合職として7年半勤務した後、転職して倉敷市役所に入庁しました。現在、入庁3年目で保健課ワクチン接種対策班に所属しており、市民の方が新型コロナワクチンの接種を円滑にできるように、医療機関との交渉や広報、ワクチンの管理など、新型コロナワクチン接種に関わる業務全般を行っています。
入庁して1年半ほどで責任ある幅広い仕事を任せていただけるようになり、よりやりがいを感じています。
編集部
具体的にどのような業務を任されているのでしょうか。
内田さん
例えば、ワクチン接種を行う200以上もの医療機関に向けた説明会を行っており、そこでのプレゼンターや資料作成を担当しています。
また、「個別接種促進支援事業」では主担当を任せてもらえました。
この事業は、医療機関での接種回数の増加・接種体制の強化を図るために、一定の要件を満たした場合に支援金を交付するもので、事業の案内、申請受付、支払い等の運営全般を担当しました。
ほかにも、接種券に同封するチラシや医療機関の一覧等の作成を業者に委託しており、企業との交渉・調整等も行っています。
周りが上位職の人ばかりだからこそ求められる若手目線
編集部
本当に幅広い業務をされていますが、中でも印象に残っているお仕事やエピソードをお聞かせください。
内田さん
印象に残っているのは、入庁1年半で主担当を任されたことです。現在、ワクチン接種対策班で役職がないのは私だけで、その中で自分が主になって担当業務を進めていくことはすごく緊張しました。でも、上位職の方が多いからこそ、「若手ならではの力を発揮したい」と考えていました。
実際に、私の提案も皆さん前向きに受け入れてくれています。
編集部
どんな場面で、若手の意見が必要とされていると感じますか?
内田さん
ホームページやチラシ作成・活用などの広報活動の際に感じました。広報活動の主担当も任され、ホームページのバナーやページ作成等を行っているのですが、「どういうレイアウトにするか」「どんな素材を使えばいいか」など、より多くの世代に周知するためには工夫が必要です。ホームページ以外でも、SNSなど、どんなツールを使って広報していくか検討することも重要です。新型コロナワクチンでは、若年~中年層の接種率がどうしても低くなる状況でしたので、その層に伝わる広報を行うことを、若手の目線で意識していました。
ホームページのバナーを作成した際や、SNSや倉敷市のアプリを活用した際に、上司から「いいね」と言ってもらえた時は嬉しかったですし、若手の力も必要とされていると感じました。
編集部
上位職の方に囲まれながらも、必要とされているスキルなどを活かして、ご自身に任された仕事を進められているのですね。
自分の働く意味、働きがいを求めて民間企業から転職
編集部
続いて佐伯さんのお話をお伺いしたいと思います。ご経歴やどんなお仕事をされているのか、お聞かせください。
佐伯さん
私は入庁1年目で、下水建設課の技師として働いています。前職は建設コンサルタントで5年間働いていました。
現在は下水道がまだ整備されていない地区において、下水道の本管工事や各家庭から本管へ接続する取付マスの設置工事を発注し、施工管理を行っています。
編集部
建設コンサルタントから転職して、倉敷市役所に入庁された理由をお聞きできますか?
佐伯さん
私は隣の総社市出身で、以前は地元から離れて広島で働いていました。転職を考えた理由としては、ワークライフバランスを保つのが難しかったことや、離れた場所で暮らす両親の心配もあったためです。
元々倉敷という町が好きでしたし、仕事の規模なども加味して、地元ではなく倉敷市を選びました。
また、働きがいを求めていた、というのも理由の一つです。前職の業種の特徴上、あまり市民の方と接する機会がなく、自分が働いた結果が目に見えてきませんでした。
転職について考えたとき、市役所であれば、市民の皆さんの顔を見ながら働けるので、「誰のために働いているのか」が明確になるのではと思いました。そして、それは自分の働きがいに繋がるのではと考え、転職を決意しました。
編集部
倉敷市役所に入庁されて、働きがいは感じられていますか?
佐伯さん
そうですね。目的としていた「誰のために働いているのか」は実感できています。
実際に、市民の方が相談に来られることもありますし、施工業者さんと「この現場はどうしたらいいか」を一緒に考えるときも、市民のためになる仕事だと感じています。
自分が働く意味を考えるようになって、今は働きがいを日々感じられているので、転職してよかったですね。
こまめな声かけや親身なサポートを受けながら、必要な知識・経験を培っている
編集部
仕事の難しさを感じることはありますか?
佐伯さん
まだ入庁して間もないので、法令などの知識が足りていないと痛感しています。仕事を進める上で、そうした知識は必要不可欠です。
度々、些細なことで先輩方に相談や質問せざるを得なかったり、自分で勉強していかないといけなかったりするので、そういった面での難しさを感じています。
編集部
相談することも多いとのことですが、周囲の雰囲気やサポート体制はいかがでしょうか?
佐伯さん
現在の職場は、若手が多い職場なので、先輩は年齢が近い方がほとんどです。そのため、相談もしやすいですし、みなさん親身になって教えてくださいます。
若手の先輩方ももちろんですが、役職が上の方も「最近はどう?」「わかる?」とこまめに声をかけてくださいます。
分からないことがあっても「こういう理由でこの手続きがあるんだよ」と教えてくださいますし、「きちんと理解した上でやらないと駄目だよ」と助言をくださいます。自分のために言っていただいていることが伝わるので、ありがたい職場だと感じています。
編集部
先輩や上長の方から、こまめに声をかけてもらったり、相談にのってもらえたりするのは、自分の成長や働きやすさにもつながりますよね。
2年目で独り立ちして救命士として活躍
編集部
では次に、林さんの現在の所属、業務内容を教えていただけますか?
林さん
私は入庁3年目で、水島消防署で消防士として働いています。消防隊だけでなく、救急業務や救助隊としても活動しています。
救急指令があれば現場に行って、患者さんの観察や処置をして適切な医療機関に搬送する救急業務を行いますし、火災指令が入れば火災現場に行って消火活動を行っています。また、交通事故や家の中に閉じ込められたといった救助指令があれば、救助隊として出動し警防業務を行います。
編集部
消防士として働くやりがいは、どういった時に感じますか?
林さん
普段の業務としては救急の対応が大半なので、病気で苦しんでいたり怪我で痛がったりしている市民の方に一番に接触して、その苦痛を少しでも和らげることができていることに、日々やりがいを感じています。特に傷病者が女性やお子さんのときは、他の職員から「林に任せた」と言ってくださることも多いです。
私は専門学校で「救急救命士」という国家資格を取得しました。2年目からは救命士として独り立ちして、救命士の資格を持っていない先輩と自分のみで活動するケースもあるので、仕事自体のやりがいはすごく感じています。
全国でも少ない特殊部隊を持つ消防局で働く魅力とは
編集部
倉敷市で働くことの魅力や働きがいについてお聞かせいただけますか?
林さん
私が所属する水島消防署がある水島地区には「水島コンビナート」と呼ばれる、石油精製を中心とした全国有数の工業地帯が広がっています。
特殊な化学製品を扱う中で安全を守るためには、中核市の中でもトップレベルの消防力が求められます。また、全国でも12部隊しかない緊急消防援助隊の「エネルギー・産業基盤災害即応部隊」に登録されています。これは、石油コンビナートや化学プラント等の災害に対応する特殊部隊です。
特殊な環境で高い技術や知識が求められる職場で働けることに魅力を感じる方も多いと思います。
私もコンビナートに行くこともあるのですが、まだまだ専門知識が足りていません。化学物質などの知識を勉強する必要があり、今は先輩方からたくさん指導してもらっています。
しっかりと勉強しないといけない大変さはありますが、専門性を身につけられる署に配属されたのだと、日々気を引き締めながら業務にあたっています。
編集部
高い消防力や専門性が求められる部署ではありますが、その分責任とやりがいをもって仕事ができているということですね。
制度を活用して、自分の望むキャリア形成を実現
▲倉敷市役所の外観
編集部
では最後に、小野さんの業務内容について教えてください。
小野さん
私も転職者なのですが、入庁6年目、所属は人事課職員研修所です。主に研修の企画や運営をしている他、若手職員を中心とした採用PR活動を取り仕切る仕事をしています。
倉敷市では、新採用職員研修、新任係長などの昇格者研修、年齢に応じたキャリアデザイン研修などに加え、スキルアップを目指した実務研修など、幅広い研修を実施して、職員一人ひとりの資質の向上を支援しています。
編集部
研修以外に若手の方の成長を後押しするような制度や取り組みがあれば教えてください。
小野さん
倉敷市では3年から5年程度で部署を異動するジョブローテーション制度を取り入れています。
仕事に関する知識や経験を広く培うことができるので、自分の適性を新たに発見できたり、やりたい仕事を見つけられるきっかけになっています。ほかにも、人事異動やキャリアに関する希望を申告できる制度があります。
編集部
実際に制度を活用された方の声などご紹介いただけますか?
小野さん
私は実際に「チャレンジ制度」という制度を使って、現在の人事課職員研修所に異動しました。すべてにおいて「人」が大事だとの想いから、やりたかった研修に関する仕事や採用PRの仕事に携わることができています。
チャレンジ制度は、希望する部署にやりたいことやできることを自己PRできる制度です。
正直なところ「名ばかりの制度で実現しないだろうな」と思っていました。でも、実際に希望が通って、自分自身のキャリアをしっかり作っていくことができています。
編集部
若手の方でも制度を活用して、自分のやりたい仕事やキャリア形成を実現できる環境なんですね。
1年目でも定時で帰りやすい環境が働きやすさに繋がっている
編集部
ワークライフバランスについてお伺いしたいのですが、率直に倉敷市職員としての働きやすさはいかがでしょうか?
佐伯さん
新採用職員の目線からすると、1年目でも気を遣わないで帰れる雰囲気がいいなと感じています。
誰か1人は定時で帰っていて、帰りやすい雰囲気は働く上で大事なことだと思っているので、その雰囲気があるのは長所だと思います。
小野さん
「定時で1人は帰る」と特に決まりとしてあるわけではなく、そういう環境なんですよね。だから、みんな定時で帰るのに躊躇がなくて、1年目の職員も帰りやすく感じるのだと思います。
佐伯さん
そうですね。前の職場だと自分の仕事が終わっていても、周りの人が残業していると帰るのが躊躇われたり、社内の雰囲気的に帰れなかったりしていました。
転職を考える方の中には、こうした経験をされた方も少なくないと思います。自分の時間や家族との時間を大事にしたい方にとっては、このような職場は魅力的ではないでしょうか。
男性職員の育休取得率も増加中。育児と両立しやすい雰囲気がある
▲倉敷市役所外観
編集部
職員の方の中には育児と両立されている方もいらっしゃると思いますが、そうした方々をサポートする制度や取り組みなどあればお聞かせください。
佐伯さん
私の姉も倉敷市の職員として働いており、今は2人の子どもを育てています。育児と両立するのに助かったことを聞いてみたら「育休明けに同じ部署で働けたこと」と話していました。
産休育休で長い間お休みすることになって、職場復帰を不安に感じられる方も少なくないと思います。育休前と同じ部署で働けることは、復帰のハードルを下げることができるので、ありがたく感じたそうです。
あとは、子どものための看護休暇があり、1人につき年間5日取得可能です。姉は、参観日や子どもの急な発熱時に活用しています。
周りも育児を経験されている方が多く、「参観日は行ってらっしゃい」「子どもの帰る時間が早いなら、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」と声をかけてもらったり、気遣ってくれたりするので、働きやすいと言っていました。
編集部
育休に関するお話がありましたが、倉敷市の育児休業の取得率はいかがでしょうか?
小野さん
倉敷市の育休取得率は、女性職員は100%、行政職であれば男性も50%ほどです。育児への理解がとてもある職場で、男女問わず育休を取ることができています。実際、私自身も丸々1ヶ月間、育休を取得しました。
育休を取得するにあたって、何も気にすることがなかったと感じていて、それはとても有難く魅力的な点だと思っています。
編集部
男性職員の育休取得率は増加傾向にあると採用パンフレットに掲載されていましたが、それは取得しやすい雰囲気が背景にあったのですね。
工業、観光、医療など、多彩な魅力を持つ倉敷市
▲倉敷市役所内観。白壁の蔵屋敷のようなデザイン
編集部
倉敷市にお住まいの職員の方も多いと思います。倉敷市の暮らしやすさや魅力を教えてください。
小野さん
倉敷市のことを「好き」という人が多いと感じています。いろんな顔を持つ町で、そういったところを好ましく思っている人が本当に多いです。
白壁の蔵屋敷や柳並木などの情緒豊かな町並みが広がる倉敷美観地区もありますし、製造品出荷額全国2位と、日本有数の工業地帯である水島コンビナートもあります。
また、倉敷の児島地区は国産ジーンズ発祥の地で、かつ繊維工業の製造品出荷額では全国1位です。「日本一の繊維のまち」として知られ、倉敷市の繊維産業発展の歴史は日本遺産に認定されています。
さらに温暖な気候を活かしたマスカットや桃といった果物、スイートピーなどの花卉の生産も盛んですし、多彩な魅力を持った町です。
林さん
倉敷市で働いている身として、医療環境が恵まれている街だと感じています。
人口10万人あたりの医師数が多く、大規模な病院も複数有しており、二次医療機関はもちろん、高度な医療サービスを提供できる三次救急指定病院も2つあります。また、今は全国に広がっているドクターヘリも倉敷が全国で初めて導入しました。
出生率も高く、妊娠・育児をサポートする施設も多数ありますので、家族と安心して暮らせる環境でもあると思います。
編集部
幅広い世代が暮らしていくにあたって安心な町ということですね。
求職者と近い目線を持つ、若手職員が中心の採用PR活動
▲若手職員の採用PRプロジェクトチーム
編集部
採用についてのお話を伺っていきたいと思います。倉敷市では、採用PRとして様々な取り組みをされているそうですが、具体的にどういったことをされているのでしょうか?
小野さん
職員採用のPRは、有志の若手職員で構成されたプロジェクトチームで進めています。プロジェクトチームの若手職員が「自分自身が就職活動したときに欲しかった情報やイベント」は何かを考えて、企画し運営しています。
採用パンフレットも若手目線で掲載する情報を考えてもらって、毎年作成しています。実は内田さんは、今年度制作に携わってくれました。
他にも、Instagramでインスタライブを実施し、若手職員が質問に答えるなど新たな取り組みにチャレンジしています。
実際に若手職員と直接話したり、仕事現場を見学したりできる「KuraCafe」も定期的に開催しています。
編集部
若手職員の方が中心になって採用PRをしている理由などあればお聞かせください。
小野さん
就職活動されている方は若手職員と年齢が近いことがほとんどですので、本当に必要とされている情報や職場の雰囲気などのリアルな声を届けるために、若手目線を心がけています。
実際に入庁した新採用職員から「インスタライブを見て、入庁を決意しました」と言ってもらえ、若手職員のやりがいにも繋がっています。
こうした背景があって、若手が中心になって採用PRに取り組んでいます。
面接・適性検査での採用枠も。仕事をしている人も受験しやすい
編集部
倉敷市の職員として、フィットする人物像や一緒に働きたい人物像をお聞かせください。
小野さん
倉敷市には若いうちから安心して働ける土壌があります。自分のやってみたいことがあれば、周囲の方達が一緒になって挑戦してくれる環境です。
倉敷市民の皆さまをはじめ、倉敷市に関わってくださるすべての方の幸せを追求し、前例にとらわれず、色々なことに一緒にチャレンジしてくれる方と一緒に働いてみたいなと思います。
編集部
それでは最後に、倉敷市職員として働くことに興味がある方に向けて、メッセージをお願いします。
内田さん
私が前職で働いていた企業は、福利厚生がとてもしっかりしていました。様々な休暇制度もありましたが、ほとんど活用できずに退職しました。
一方で、倉敷市は福利厚生が整備されている土台があって、それを有効活用している人の数が本当に多いです。
「制度を活用しよう」「周りも使って然るべき」という雰囲気があるので、職員みんなが制度を使いやすいですし、個人的にそれがとても良いと感じています。
佐伯さん
公務員試験というと筆記試験は専門試験のイメージが強いと思います。倉敷市では人物重視の採用試験を実施しており、面接や適性検査で対応している採用枠があります。
「転職したいけれど、働きながら筆記試験の勉強時間を確保するのが難しい」という方もたくさんいらっしゃると思います。そうした方にも、今までご自身の築いてきた経験などを面接でお話していただくことで、採用されるチャンスがある採用試験があります。
「勉強時間が取れないから」という理由で、公務員への転職に踏み切れなかった方にも、ぜひ倉敷市を選んでいただければと思います。
編集部
採用情報やインスタライブ、KuraCafeの開催日程などは、公式ホームページ・Instagramに掲載されています。
倉敷市で働くことに興味がある方や聞いてみたいことがある方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
本日はありがとうございました。
■取材協力
岡山県倉敷市:https://www.city.kurashiki.okayama.jp/
採用ページ:https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/jinji/saiyo/index.html