D&Iを推進する住友電装。育児と仕事を両立し、多様な人材が活躍するしくみとは

これからの新しい働き方や社会をつくっていくための取り組みを行っている企業を紹介するこの企画。今回は、自動車用ワイヤーハーネスのリーディングカンパニーである住友電装株式会社(Sumitomo Wiring Systems, Ltd.)を取材させていただきました。

住友電装株式会社とは

住友電装株式会社の外観

住友電装株式会社は、自動車にとって重要な部品であるワイヤーハーネスで世界的に高いシェアを誇っている企業です。

大正6年に創業した100年以上の歴史がある老舗企業でありながら、2017年にはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)宣言を行い、多様な人たちが多様な働き方ができるようこれまでにさまざまな施策を行っています。
(※)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I):多様性と受容を組み合わせた言葉。多様な人材を受け入れてお互いが認め合い、全員が能力を発揮して成長していこうという取り組み。

会社名 住友電装株式会社(Sumitomo Wiring Systems, Ltd.)
住所 本社:三重県四日市市浜田町5番28号
事業内容 ・自動車用、機器用ワイヤーハーネスの製造販売
・ワイヤーハーネス用、電気機器用部品の製造販売
・自動車用電線の製造販売
設立 1917年12月22日
公式ページ https://www.sws.co.jp/index.
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今回は、女性の活躍や総労働時間の削減といったD&I推進の取り組みや、採用にあたって求めている人物像などについて、人事部D&I・労政Grのチームリーダーである青山卓矢さんと、同Gr所属の大野由惟さん、総務部広報・CSRGrの沼遥香さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
住友電装株式会社 人事部D&I・労政Grのチームリーダー青山卓矢さん

住友電装株式会社
人事部D&I・労政Gr チームリーダー

青山 卓矢さん

住友電装株式会社 人事部D&I・労政Grの大野由惟さん

住友電装株式会社
人事部D&I・労政Gr

大野 由惟さん

住友電装株式会社 総務部広報・CSRGrの沼遥香さん

住友電装株式会社
総務部広報・CSRGr

沼 遥香さん

世界33の国と地域でワイヤーハーネス事業などを展開

住友電装株式会社の製品と技術力のイメージ
▲創業100年を超える住友電装株式会社は、高い技術力と時代にあわせた事業展開をもとに成長を続けている(公式サイトから引用)

編集部

まず最初に、住友電装さんの事業内容について教えてください。

沼さん

当社は「つなげる、つながる」技術を核とし、また、自動車用ワイヤーハーネスをコアとして、電子部品、電線などを製造・販売し、自動車産業に最先端の技術を届けている会社です。世界33の国と地域で事業展開しており、高いシェアを誇っています。

編集部

ワイヤーハーネスとはどういったものなのでしょうか。

沼さん

簡単に申しますと、電線の束です。電子機器をつないで電力・信号・情報を車体のすみずみまで送るという役目を担っており、人間の体に例えると血管や神経とも称されています。近年の自動車の電動化や自動運転化などで、ワイヤーハーネスに求められる役割やその重要度は増すばかりです。

当社は1917年に電線製造会社としてスタートしました。おかげさまで創業100年を超える企業になりましたが、大電流に対応できるワイヤーハーネスや、ハーネス用部品、自動車を制御する電子部品、自動車用電線など、高機能化と省スペース化・軽量化を両立しながら、自動車産業に最先端の技術を届けています。

編集部

なるほど。電線製造会社だった頃から「つなげる、つながる」技術を研鑽し、常に時代に合わせた事業領域で最先端の技術開発・プロダクト製造を行っているということですね。

行動原則はプロフェッショナル・チームワーク・チャレンジ

住友ハーネス事業の行動原則
▲住友電装グループ20万人以上の従業員が心に留めている住友ハーネス事業の行動原則(公式サイトから引用)

編集部

続いて、住友電装さんのカルチャーについてお聞かせいただけますか?

沼さん

当社には、「SWS WAY」という行動原則があります。これは住友電装グループの中で伝承されてきた仕事に対する基本的な考え方や仕事への取り組み姿勢を、共通した行動原則として明文化したものです。

編集部

「SWS WAY」が明文化されたのはいつ頃でしょうか。

沼さん

2005年に明文化されたのですが、2020年に見直されて現在の「プロフェッショナル・チームワーク・チャレンジ」を大原則とする「SWS WAY」になりました。

現在、自動車業界は100年に1度という大変革期を迎えています。「Connected(コネクティッド)」「Autonomous(自動化)」「Shared & Services(シェアリング)」「Electric(電動化)」という、いわゆる「CASE」と呼ばれる大きな変革に対して、次の100年の事業拡大を支えるために「SWS WAY」が見直されました。

現在の内容にしたのは、これまで脈々と継承されてきた姿勢や考え方を一新するということではなく、表現や構成をよりシンプルにしてよりわかりやすく、伝わりやすくすることが目的です。

編集部

伝承されてきた考え方を明文化し、さらにシンプルにするべく見直しを行うことで、「こうあろう」という方向が共通認識として明確になったということですね。

育休後の復職を社内保育所がサポート

住友電装株式会社の社内保育所である「SWSこねくとキッズ」
▲住友電装株式会社の社内保育所「SWSこねくとキッズ」

編集部

ここからは特集のテーマである女性の活躍についておうかがいします。住友電装さんでは、現在女性の方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか。

大野さん

全労働者に占める女性の割合は21.5%です(2023年3月末)。2016年の女性活躍推進法の施行以降、当社は行動計画に基づく女性活躍の取り組みを継続しています。

総合職採用については、新卒入社の女性比率が文系60%、理系10%となっており、当初の計画目標を達成しました。また女性管理職比率向上をめざして、女性社員向けのキャリア形成支援の研修を継続的に実施しています。

編集部

育児との両立という面ではいかがでしょうか。

青山さん

住友電装は、女性の育児休業取得率が100%、育児休業を取得した後の復職率も100%となっていることから、育児と仕事の両立がしやすい環境の基盤は整えられていると思います(男性の育休に関しては後述)。
また、育児と仕事の両立をサポートする仕組みとして、2017年に社内保育所の「SWSこねくとキッズ」を設置しました。

育児中はどうしても時間的な制約が生じますので、仕事と育児を両立しつつ業務で最大限のパフォーマンスを発揮するというのは簡単なことではありません。そこで、子どもを預けてすぐ会社に来られる、すぐに迎えに行けるという立地的なメリットをいかし、制約を少しでも緩和できればということで生まれた保育所です。

大野さん

現在、約30名の方がSWSこねくとキッズを利用されています。育児休業は子どもが2歳の誕生日を迎えるまで取得できますが、ご自身の事情にあわせて、最短で産後休業の終了翌日から子どもを預けて復職していただくことも可能です。

青山さん

会社から提供されるサービスであるということ、保育所に預けられているほかの子どもの親御さんも社内の方であるということは、預ける側の社員の皆さんの安心感につながっていると考えています。

育児用品の購入支援など、多様な支援を用意

編集部

住友電装さんの社内保育所「SWSこねくとキッズ」の存在は、復職後の女性社員の活躍にもつながっているのでしょうか。

青山さん

そうですね。SWSこねくとキッズを活用し、短時間勤務をしながら将来の管理職候補として働いていただいている総合職社員の方もいらっしゃいます。

短時間勤務ができる期間を、住友電装では「お子さんが小学校を卒業するまで」と長めに設定していることも、女性の活躍につながっているのかもしれません。

大野さん

カフェテリアプランという福利厚生サポートの制度も、育児世代から「とてもありがたい」というお声をいただいています。この制度では、毎年社員にポイントが付与され、社員本人が使い道を自分で選択することができます。
年間3万円分のポイントを付与されますが、育児用品の購入など、育児メニューを選択する場合はポイント単価が3倍となり、最大で年間9万円分のポイントが使えます。

編集部

社内保育所を設けたり、小学校卒業時まで短時間勤務ができるように設定したり、福利厚生を設けたりすることで、育児と仕事を両立しやすくなるようサポートをされているわけですね。育児休業後に復職率100%で多くの女性が活躍されているというのは、素敵な環境だと思います。

ワークライフバランス向上に取り組み、男性育休取得100%をめざす

編集部

もう1つの特集テーマであるワークライフバランスについても、お聞かせいただけますでしょうか。

青山さん

はい。住友電装では、2017年にD&I宣言というものをしました。ダイバーシティ&インクルージョン、つまりは多様性を受け入れて一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりに、会社一丸となって取り組んでいく意思表明です。

D&I推進の3つの柱として、「マネジメント改革」「働き方改革」「多様な人材の活躍推進」を掲げました。多様な人材に活躍していただくには、ワークライフバランスの充実が欠かせません。そのため、当社では有給休暇の取得促進を含む総労働時間の削減などに努めています。

編集部

住友電装さんでは、有給休暇の取得率というのはどのくらいなのでしょうか。

青山さん

かねてから有休取得率80%を目標としてきました。勤続年数に応じて有給休暇付与日数は異なりますが、基本は年間20日が付与されますので、その80%、つまり年間で有休を16日は取りましょうという取り組みです。継続的な職場への働きかけにより、2022年度は目標の80%を達成することができました。

編集部

有給休暇を取得しやすくする施策などがありましたら、教えてください。

青山さん

年に2回、2日連続の有休取得を推奨する「AB有休制度」があります。この制度を活用して4日の有休取得を前提とし、あとは月に1日ずつ有給休暇を取っていただければ16日になりますので、80%の取得率に至るだろうという狙いです。

2023年度の目標は、男性の1週間以上育休の取得率100%

編集部

先ほど、住友電装さんでは女性の育児休業取得率が100%だというお話をうかがいましたが、男性のほうはどのくらいの取得率なのでしょうか。

青山さん

育児機会のあった男性社員の方の育児休業取得率は、2022年度は78%でした。男性の育児休業取得を促進するよう法改正がありましたが、心理的側面からも、まだまだ男性は取得のハードルが高いという会社が少なくないと聞いており、78%というのは比較的高い数値であると認識しています。

ただ、育児というのは男女問わず社員の多くが直面するものです。育児と仕事を両立し、社員に最大限活躍してもらう環境を整備するため、現状に満足せず、「男性も1週間以上の育児休業を100%取得」をめざすべきだろうという結論に至りました。2023年度までにこの目標を達成すべく、いろいろと施策を打っています。

編集部

どのような施策を実施されているのか、教えていただけますでしょうか。

青山さん

取得のきっかけづくりという点で、初回の育児休業における5日分について有給休暇とは別に賃金を支給することにしました(育休の有給化)。

賃金の心配が男性育休取得のボトルネックになっていると認識していたため、この有給化により、「まずは1週間取ってみよう」という人を増やそうと考えました。さらに、過去に取得せず残っている有休を活用すれば、最大55日間は賃金が出る仕組みになっています。

また、2023年度から全社的にeラーニング教育を取り入れる予定です。育児休業を取得する本人、上司、周囲それぞれの気持ち、配慮、サポートについて意志醸成を図りたいという狙いがあります。

例えば、本人には「育児休業を取得する際には周囲や上司に感謝の気持ちを持ちましょう」といったメッセージ、上司には「仕事の調整をサポートするのが上司の役割です」ということを伝え、気兼ねなく育児休業を取得できる職場環境づくりを狙っています。

編集部

そうした取り組みの結果、男性の皆さんの育児休業期間というのは長くなっているのでしょうか。

大野さん

はい。育児休業を取られた男性の7割以上の方が1週間以上取得しており、中には3カ月以上取得される方もいます。

青山さん

最近の事例では、課長職であるグループ長の男性社員が周囲に向けて業務調整をして、1カ月の育児休業を取得した例もあります。

編集部

金銭的な不安をサポートして、ご本人や周囲を含めての心構えを周知する教育を行いながら、制度の取得を促すことで、取得率が上がり、1カ月以上の育児休業を取る方も増えてきているということですね。

働き方見直し推進のため、ガイドラインを社員に配布

住友電装株式会社のオフィス

編集部

住友電装さんにおいて、総労働時間の削減について具体的な数値目標がありましたら教えて下さい。

青山さん

仕事と生活を両立させるという観点から、総労働時間を下げていくことは全社的に意識しています。先ほどお話した有休取得80%を前提に、時間外労働月10時間以内を目標として、年間の総労働時間も1,887時間以内に抑えましょうという取り組みを進めています。

編集部

かなり少ない数値ですが、その目標を達成するためにどのような施策をされているのでしょうか。

青山さん

まずは、会議や資料の在り方、効率的な仕事の進め方など、日常業務から変えていこうという考えから、2017年には社員にガイドラインを公開しています。

例えば会議では、「開催目的」「開催目的と照らし合わせて誰の出席が必要なのか」「どれだけの時間が必要で、どういう開催方法にして、何をゴールとするのか」を明確にしてから会議をしましょうと、会議運用方法について明文化しました。

編集部

有給休暇や男性の育児休暇の取得を促進し、業務の効率化も図ることで総労働時間を削減して、多様性のある人材が充実したワークライフバランスのなか存分に能力を発揮できる環境を整えているということですね。

今は自動車業界の大変革期。一緒に大きなチャレンジを!

取材にご対応いただいた住友電装株式会社の青山さんと大野さん

編集部

最後に、採用にあたって住友電装さんが求めている人物像というのはありますでしょうか。また、今回の記事をご覧になって御社にご興味を持たれたという方に向けてメッセージがありましたら、お願い致します。

青山さん

当社では、先にお話しした「SWS WAY」という行動原則を、会社として、住友電装グループとして非常に大事にしています。

この理念に共感してくださり、誇り高く、プロフェッショナルとしてチームワークを発揮し、周囲と協力しながら、失敗を恐れずに積極的にチャレンジできる方と、ぜひ一緒に働きたいです。

現在、自動車業界は大きな変革期にあります。ワークライフのバランスを充実させながら生活と仕事のメリハリをしっかりつけて、この大きな変化・変革の波に一緒にチャレンジしていきましょう。

編集部

ワイヤーハーネスの重要度が増すなか、100年に1度という大変革期ならではのチャレンジができる環境というのは責任重大ながらとても魅力的ですね。どうもありがとうございました!

■取材協力
住友電装株式会社:https://www.sws.co.jp/index.html
採用ページ:http://www.sws-saiyou.jp/