注目企業の新しい働き方や、社員のワークライフバランスの向上に取り組む企業を紹介する本企画。今回は、都内の障害者スポーツセンターや、2023年3月21日にオープンした「東京都パラスポーツトレーニングセンター」を運営する、公益社団法人東京都障害者スポーツ協会にインタビューしました。同協会は、障害者スポーツの普及や選手の育成に尽力し、社会的に重要な役割を果たしています。
公益社団法人東京都障害者スポーツ協会の概要:障害者スポーツ推進の中核を担う
公益社団法人東京都障害者スポーツ協会は、障害のある方専用のスポーツ施設として、都内2ヶ所の障害者スポーツセンター(「東京都障害者総合スポーツセンター(北区)」、「東京都多摩障害者スポーツセンター(国立市)」)を運営しています。
また、2023年3月21日に味の素スタジアム内にオープンした「東京都パラスポーツトレーニングセンター(以下、パラトレセン)」の運営も新たに受託しました。
パラトレセンは、パラスポーツの競技力向上を目指す都立初の体育施設です。ボッチャやシッティングバレー、車いすバスケットボールなど、様々な競技の団体と協力しながら、障害の有無に関わらずパラスポーツに親しめる場を提供しています。
さらに、東京都障害者スポーツ大会などの大会開催や、障害者スポーツを支える人材を対象とした講習会も実施しています。加えて、障害者スポーツの理解促進、選手の養成支援、地域での振興など、多岐にわたる事業を展開しています。
会社名 | 公益社団法人東京都障害者スポーツ協会 |
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住所 | 東京都新宿区神楽河岸1番1号セントラルプラザ12階 |
事業内容 |
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設立 | 1983年3月 |
公式ページ | https://tsad-portal.com/tsad |
今回は森さんと松田さんのお二人に、女性をはじめとした職員が働きやすい環境や、若手が多く活躍している理由などについてお話を伺いました。
協会のモットーと職場環境:「スポーツをいつでも・どこでも・いつまでも」を実現する職員たち
編集部
はじめに、東京都障害者スポーツ協会さんについてお伺いしたいと思います。まず、全体で何名の方が働かれているのでしょうか?
森さん
アルバイトの方も含めると、協会全体で200名を超えるスタッフが働いております。中でも、20代~30代の若手スタッフが中心となっています。
編集部
働かれている職員の方や職場の雰囲気について教えていただけますか?
森さん
東京都障害者スポーツ協会では『(スポーツを)いつでも・どこでも・いつまでも』というモットーが、全ての職員の間で共有されています。この共通の価値観のもと、各部署の職員が目標達成に向けて尽力しています。
全てのスタッフが「人と関わることが好き」という特徴を持っており、そのような雰囲気に包まれた職場です。明るくまじめな職員が多く、常に相手の立場や気持ちを考えて行動することを大切にしていると感じます。
特にスポーツ支援職のスタッフは体育会系の経験者が多く、人を元気づけたり、面倒見が良かったりと、そういった素養を持つ職員がほとんどです。
東京2020パラリンピックが生んだ障害者スポーツへの関心
編集部
どういった経緯で入職される方が多いのでしょうか?
森さん
東京2020パラリンピックなどをきっかけに、障害者スポーツやそれに携わる仕事があることを知って、入職するスタッフが多いですね。
以前は、大学などで障害者スポーツを専門的に学んで「どうしてもこの仕事がやりたい」というスタッフが多かったですが、最近は協会への入職経路が多様化してきた印象があります。
車いすテニスなどの競技を観戦したり、選手の活躍を知ったりして、「自分もこの分野で働きたい」と思うようになった職員も増えています。
編集部
森さんの入職理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
森さん
私が大学生のときは"障害者スポーツ"という言葉があまり浸透しておらず、知る機会もほとんどない時代でした。大学の体育学科で体育教員を目指していましたが、障害者スポーツの勉強はしていませんでした。
大学のボランティアサークルで、障害のある子どもたちと出会いました。彼らは生き生きとスポーツを楽しんだり、遊んだりしていました。一方で、小学校の先生から「学校ではなかなか生き生きできなかったり、集団に入れなかったりする」という話を聞きました。
ボランティア活動を通して、障害のある子どもたちが、少しでも生き生きと活動できる場、輝ける場を作りたいと思うようになりました。「スポーツを通したアプローチができないか?」という考えが芽生えてきたんです。
そんな中で、"障害者スポーツ指導者"という職業があることを知り「これしかない!絶対にこの仕事に就く!」と強く決意したことが、入職のきっかけです。
職員のやりがい:職種を超えて感じる「関わった人々の笑顔」
編集部
森さんは、働くにあたって、どういったところにやりがいを感じられていますか?
森さん
スポーツ支援職も事務職も、関わった方たちが笑顔になってくれた時に一番「この仕事をやっていてよかった」とやりがいを感じます。
以前、スポーツセンターを利用される方から「あなたに会えると元気になれる」と言っていただいたことがあり、その言葉が今でも支えになっており、原動力にもなっています。若い職員にもそんな体験をたくさんしてもらいたいですね。
また、事務職としてやりがいを感じるのは、働きやすい環境を整えることが、職員のやりがいや笑顔につながっていると感じる時です。
働きやすい環境を整えることが、職員のやりがいや笑顔につながり、そして障害のある方の笑顔にもつながるものだと感じながら、日々働いております。
編集部
働きやすい環境を整えるとのことですが、実際にどういった取り組みをしているのでしょうか?
森さん
どの企業や職場にも、様々な規定があると思います。そういった規定を、法律に照らし合わせて変更したり、より働きやすいものにするために毎年見直しをしています。
例えば、子どもを持つ職員が時間をずらして出勤できるようにしたり、1日単位ではなく1時間単位で有給休暇を取得できるようにしたりといった取り組みを進めています。これにより、職員の生活と仕事のバランスを取りやすくなると考えています。
職員の約半数が女性。女性管理職や育児と両立する職員も増加中
▲障害者スポーツ支援に関する相談窓口「パラスポーツコンシェルジュ」
編集部
先ほどお子さんを持つ職員の方のお話が出ましたので、関連して女性の方々の活躍に関してお伺いします。東京都障害者スポーツ協会さんでの男女比率はどのようになっているのでしょうか?
森さん
職員の女性比率は45.7%で、ほぼ半数です。最近は女性の職員が増加傾向にあります。
管理職の女性比率は18.8%です。以前はさらに低かったのですが、経験を積んだ女性職員が管理職に就くケースが増えてきています。
編集部
お子さんをお持ちの方は多くいらっしゃるのでしょうか?
森さん
はい、多くいます。現在、育児休業を取得している職員が4名、短時間勤務をしている職員が2名います。育児休業や短時間勤務は、以前と比較すると非常に取得しやすい環境になってきています。
育児と仕事の両立支援:柔軟な有給制度と時差出勤の導入
編集部
育児などと仕事を両立するための制度について、教えていただけますか?
森さん
休暇や育児・介護休業、短時間勤務については、東京都庁の制度を参考に運用しています。
1時間単位で取得可能な有給制度があり、子どもの急な発熱等で付き添いが必要な場合などに活用いただけます。
また、育児や介護等の理由により、時差出勤が必要な場合は、勤務時間を変更することも可能です。
さらに、育児・介護休業の取得期間中であっても、昇任試験の受験に必要な日数にカウントするなど、職員の状況に応じたキャリア形成を促しています。
編集部
女性の目線から、東京都障害者スポーツ協会さんの環境はどのように感じますか?
松田さん
休暇制度などが充実しており、仕事とプライベートの両立がしやすい環境だと思います。
周りの女性の先輩職員の方々が生き生きと働いている姿をよく目にします。育休などを活用しながら育児と両立した働き方をされている方もいて、ロールモデルとして参考になります。私自身も、将来そういった制度を利用できる機会があれば、積極的に取得したいと考えています。
育休取得の促進:性別を問わない育児休業の取得しやすい環境づくり
編集部
「育休を取得すると職場に迷惑がかかってしまうのでは」と考える方もいらっしゃると思います。育休を取得する方の、周りの方々をフォローする仕組みなどはあるのでしょうか?
森さん
スポーツ支援の現場や様々な事業運営を行う必要があるため、1人抜けてしまうと、その分、穴ができてしまいます。
その抜けた部分には、契約職員の方を募集して期間限定で入っていただいたり、派遣スタッフの方にサポートいただいたりすることで、カバーしています。このような形で、残ったメンバーに過度な負担がかからないように運用しています。
森さん
最近の流れとして、男性の育休取得が進められています。2022年度、育休を取得した男性職員もおります。男性も女性も育休取得する雰囲気が定着しつつあるので、後押ししていきたいと考えています。
とはいえ、「育休を取得したい」と言い出しにくい状況もあると思います。そのため、男性でも育休を取りやすいような仕組みづくりや、上長の立場にいる職員に向けた働きかけも行っています。
編集部
上長に対する働きかけとは、具体的にどういったことでしょうか?
森さん
上長の中には「自分たちの時代には、男性の育休は取れなかった」という考え方を持っている方もいるかもしれません。しかし、職員全員が働きやすい環境にするためには、職場全体の理解と協力が不可欠です。
意識を変えることは簡単ではありませんが、上長に対する働きかけは非常に大事だと考えており、改正された法律や新しい考え方などは、機会があるごとに伝えるようにしています。
編集部
東京都障害者スポーツ協会さんは女性が多く、20代~30代の方も多いとのことですので、性別に関わらず育休を取得できる雰囲気が定着しつつあるのは、多くの方に安心感を与えると思います。
若手活躍の要因:東京2020大会とパラスポーツトレーニングセンターの影響
▲2023年3月21日に味の素スタジアム内にオープンした「東京都パラスポーツトレーニングセンター」
編集部
20代~30代の方が多く働かれているとのことですが、若手の方が活躍されている理由や背景を教えてください。
森さん
東京2020大会の開催が非常に大きな影響を与えました。大会を契機に、協会の事業規模及び事業数が大幅に拡大し、新しいスタッフの大量採用にもつながりました。
加えて、東京都パラスポーツトレーニングセンターの新規受託も重要な要因です。委託先が増えたことで業務は増えましたが、それに伴い新しいスタッフを迎え入れることができ、組織としても充実してきていると感じています。
現在も、若手職員を中心とした積極的な採用活動を継続しています。今後、パリ2024大会やデフリンピック2025東京大会の開催など、障害者スポーツを取り巻く環境の変化に柔軟に対応するため、組織として引き続き若手職員の活躍を後押ししていく方針です。
キャリア事例:障害者スポーツへの情熱が導いた転職決断
編集部
若手活躍の事例として、実際に働かれている松田さんのお話を伺えればと思います。はじめに、入職の経緯を教えていただけますか?
松田さん
私は元々水泳をやっていたのですが、学生時代にパラ水泳を初めて見たときに「自分のやっている水泳とはまた別の競技のようだ」と思いました。自分の知らなかった世界を見たように感じて、とても感動しました。その経験がきっかけとなり、障害者スポーツに興味を持ちました。
その後、障害者スポーツ関連のボランティアや研修会などに積極的に参加し、学生時代から「障害者スポーツに関わる仕事に就きたい」という思いを抱いていました。
新卒での就職活動時は、東京2020大会を控えていたこともあり、障害者スポーツへの関わり方が多様でした。そのため、特定の分野に絞らず幅広く検討した結果、市役所に就職することを選びました。
市役所では障害福祉課に配属され、障害者スポーツの担当として、イベントなどの企画運営を担当しました。その経験を通じて、改めて障害者スポーツに関わる仕事への思いが強くなり、転職活動を経て現在の職場に至りました。
業務の多様性:事務職も体験できる現場での選手・ボランティアとの交流
▲公益社団法人東京都障害者スポーツ協会が開催している「東京都障害者スポーツ大会」
編集部
現在の業務はどういうことをされているのでしょうか?
松田さん
総務課人事係に配属されており、主に採用試験や研修などを担当しています。また、スポーツ関連の表彰者の推薦や理事会・総会の運営なども行っています。
1年目から責任ある仕事を任されるので大変な時もありますが、研修制度やフォロー制度が充実しているので、安心して仕事に取り組めています。
さらに、協会が主催している東京都障害者スポーツ大会など、協会事業に直接関わる機会もあります。現場での仕事では、実際に選手やボランティアの方々の姿を間近で見ることができ、とても貴重な経験となっています。
編集部
どういった時に仕事のやりがいを感じますか?
松田さん
この業界で働いていなければ、障害者スポーツの裏側を知る機会はあまりないと思います。裏で支えている方々の存在があってこそ、選手が活躍でき、それを見た人々が障害者スポーツに興味を持つようになるのだと実感しました。
大会の運営に携わったり、スポーツ支援に関わる職員をサポートしたりする自分の仕事が、選手の活躍や障害者スポーツ振興に直接つながっていると感じられる時、大きなやりがいを感じます。
編集部
市役所でもイベントなどの企画運営で障害者スポーツに携わられていたそうですが、転職されてより深く障害者スポーツに関わることになったからこそ感じることができるやりがいですね。
充実の研修制度:多岐にわたる内容と若手職員の主体的な参加
編集部
研修制度やサポート体制についてお聞きしたいと思います。松田さんはどのような研修を受けられましたか?
松田さん
入職時の研修では、協会の概要説明として規程や組織体制、各課の事業紹介があります。また、障害理解や障害者スポーツの歴史、実態などの講義も受講しました。
研修の中にはグループワークも含まれており、オンラインでの実施にもかかわらず、参加者同士でコミュニケーションを取りながら効果的に進めることができました。
総務課の研修に加えて、他の課で実施している研修にも参加する機会がありました。若手職員が受講したい研修を提案したり、実際に研修を企画して課内で実施するなど、多岐にわたる内容の研修が行われています。
さらに、スポーツセンターでの障害者スポーツ体験実技研修も受けました。現場で利用者の方が実際に施設を利用している様子や、先輩職員の利用者対応を直接見学できたことは、非常に貴重な経験となりました。
新人サポート体制:メンター制度と定期面談による手厚いフォロー
編集部
新人の職員の方々をフォローする制度にはどのようなものがありますか?
松田さん
新人職員に対するフォローは手厚く、その一つがメンター制度です。事務局では新人職員1人に対して、先輩職員2人をメンターとして配置し、定期的にメンタリング(面談)を実施しています。
メンター職員の配置にあたっては、男女1人ずつ、同じ課1人・他の課1人としたり、年代などの相性も配慮した上で配置されています。未経験で入職した身としては、わからないことを気軽に聞ける身近な存在がいることがとてもありがたいです。
違う部署の先輩が1名つくため、自分が知らない他部署の業務についても知ることができ、協会全体のことを理解する機会になっています。また、普段あまり関わることがない方とも交流することで、横のつながりを広げるきっかけにもなる、とてもいい制度だと感じています。
編集部
メンター制度以外のフォロー制度についても教えてください。
松田さん
新任職員を対象とした定期面談というものがあります。人事担当者が新規職員のもとへ直接出向き、入職後1か月・3か月・半年を目安に面談を実施します。
直属の上司には相談しにくいことや、困っていることなど本音で相談できる場が、配属先以外にもあることの安心感は大きいです。
最初は目標などの話をしていましたが、だんだん回数を重ねていくうちに、他愛もない話をしたりと気軽に何でも話せるような場になってきています。これにより、職場環境にも馴染みやすくなっています。
求める人材像:障害者とサポーター双方の笑顔を創出したい方を歓迎
編集部
最後に、東京都障害者スポーツ協会さんに関心を持たれた読者の方に向けて、お二方からメッセージをお願いいたします。
森さん
東京都障害者スポーツ協会は、入職後に各種研修やメンター制度などを通して手厚くサポートしております。スポーツ支援職、事務職共に専門的な知識がない未経験者の方でも安心して働くことができます。
私たちの仕事は、障害のある方をサポートすることで、笑顔や生きがいを感じてもらえる可能性のある仕事です。同時に、サポートする側の方達の笑顔や生きがいにも関わることができる、とてもやりがいのある仕事です。
「一緒に楽しくスポーツすることで、心も身体も元気になってもらいたい」と考えているスタッフがたくさんおります。興味を持った方と一緒に働きたいと思っておりますので、ぜひお問い合わせください。
松田さん
協会には様々な経験やスキルを持った方がいるので、日々学ぶことが多く、刺激を受けています。
転職する際、自分のやりたいことや興味のあることを軸に行動することは勇気がいることもありましたが、今は挑戦して本当に良かったと感じています。
スポーツや福祉現場での経験がある方、人と関わる仕事が好きな方、障害者スポーツに興味がある方など、様々な方が活躍できる機会がきっとあります。
東京都障害者スポーツ協会の事業に興味を持たれた方は、ぜひ協会ホームページをご覧いただき、お問い合わせいただければ嬉しいです。
編集部
東京2020パラリンピック以降、パラスポーツへの関心が高まっており、「障害者スポーツに携わる仕事をしたい」と考える人も増えていると感じます。
東京都障害者スポーツ協会さんでは、未経験でも安心して仕事ができる研修制度やフォロー制度が整えられており、さらに育児と仕事・キャリアを両立できるような取り組みも進められています。
「未経験だから」「知識がないから」「育児などと両立できるか不安」という方々も、安心して働くことができる職場だと感じました。興味がある方は、ぜひホームページをご覧ください。
本日はありがとうございました。
■取材協力
公益社団法人東京都障害者スポーツ協会:https://tsad-portal.com/tsad
採用ページ:https://tsad-portal.com/tsad/topics/24623