新しい働き方を取り入れている企業を紹介していく企画。今回は、ワーキングペアレンツ専門の転職サービスや企業のDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進支援などを行う「XTalent(読み:クロスタレント)株式会社」をご紹介します。
XTalent株式会社とは?
XTalentは「フェアな労働市場をつくる」をミッションに、2019年に代表取締役の上原達也さんが設立しました。現在は労働市場における課題を解決するために、主に2つの事業を展開しています。
1つは、XTalentが創業時から行うワーキングペアレンツのための転職サービス「withwork(ウィズワーク)」です。働き方に柔軟性がある企業や、子育てに対して理解のある企業など、ユーザーの希望の働き方とやりがいが両立できるような求人を厳選してご紹介しています。
「withwork」は当初、子育て中の女性で時短勤務を希望する人の転職支援からスタートしたこともあり、取引企業には働き方の柔軟性やダイバーシティ採用の意欲が高い企業が多くなっています。
そのため、「withwork」のサービスは転職支援だけではなく、企業が人材の多様性を高めるための採用支援という側面も持っています。
■「withwork」のサービスサイトはこちら
https://withwork.com/
▲「withwork」のサービスサイト
2つめが、2022年後半にスタートした、企業のDEI推進を支援する事業です。
DEIとはダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の英語の頭文字からなる略称で、多様性があるだけではなく、公平で包括的に扱われている状態を意味します。
組織のDEI推進は世界的な流れとなっていますが、日本においては企業の経営上の重要課題の1つとして認識されつつも、形骸化していたり、課題が特定できていないまま断片的な施策が進められていたりするケースが多くあります。
そこで、XTalentは、これまで採用支援の観点から企業のダイバーシティ推進を行ってきた知見を活かし、サーベイとトレーニング、コンサルティングによって企業に伴走し、課題解決を行っています。
■企業のDEI推進コンサルティングサービスの公式サイトはこちら
https://dei.xtalent.co.jp/
会社名 | XTalent株式会社 |
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住所 | 東京都港区南麻布3丁目20-1 Daiwa麻布テラス5階 |
事業内容 | 人材紹介業 |
設立 | 2019年7月 |
公式ページ | https://xtalent.co.jp/ |
XTalentのメンバーは、場所や時間にとらわれない働き方で、育児ややりたいことを諦めないライフスタイルを実現しているそうです。XTalentの働き方や多様性を重視するカルチャーについて、自らも二児の父親として育児をしながら働く代表取締役の上原達也さんに伺いました。
キャリアも家庭も諦めたくない人を支援する「withwork」
▲「withwork」では忙しいワーキングペアレンツのためにコンサルタントとのやり取りはLINEが中心となっている
編集部
XTalentさんは創業から転職サービス「withwork」を提供されています。他の転職サービスと異なる特徴を教えていただけますか。
上原さん
サービスを届ける対象がワーキングペアレンツであるということが、大きな特徴です。ご登録いただく方は、小さなお子さんがいて働く時間の制約があるなどのご事情があり、そのなかでもキャリアも家庭も諦めたくないという思いを抱えている方が多いです。
そこで、私たちは「キャリアとライフをトレードオフにしない」(※)をコンセプトに転職支援をしています。
(※)トレードオフとは、一方を尊重すればもう一方が成り立たないといった「両立できない関係性」を示す言葉として使われます。
編集部
ユーザーの方に紹介するのは、ワーキングペアレンツの働き方に理解のある企業様ばかりなのでしょうか。
上原さん
そうですね。IT・Web業界を中心に、働き方の柔軟性や育児などの個々の事情に理解がある会社を紹介しています。具体的には、社内に子育て中のメンバーが多いとか、経営層やマネージャー層がそもそも子育て中であるとか、そういったケースが多いですね。
編集部
「withwork」のnoteで、サービスを利用した方の喜びの声をたくさん拝見しました。ユーザーの方がキャリアもライフも諦めない転職を実現していることがわかります。
■withworkを通じて新たな一歩を踏み出したユーザーさんのインタビュー記事はこちら
withwork転職ストーリー
組織のダイバーシティ推進に伴走するサービスを本格開始
▲DEI推進コンサルティングではDEIの計測や現状評価から始める
編集部
XTalentさんでは2022年後半に企業のダイバーシティ推進をサポートする事業を始められ、2023年2月に正式に販売をスタートされました。この事業についても、特徴を教えていただけますか?
上原さん
弊社のDEI推進コンサルティングサービスは、簡単に言うと、ただDEI研修をするだけではなく、計測とトレーニングを行うことで組織のDEI推進に伴走するサービスです。
まず、DEIサーベイを行い、組織のDEIの何がいま問題となっていて、何から取り組んでいく必要があるのかを明らかにします。ここがどうしても曖昧になりがちですので、まず定量、定性ともに現状分析をしていきます。
その上でサーベイ結果に沿ったDEIトレーニングの実施や、施策の立案などに伴走していきます。
編集部
DEIの現状も組織ごとに違いがありますので、まずは現状を評価することから始めるのですね。
DEI推進コンサルティング事業についてのプレスリリースでは、サービス開発の背景や先行導入した企業様の事例が紹介されています。
XTalent(クロスタレント)、計測とトレーニングで組織のDEI推進に伴走する新サービスを開始
DEI推進企業として自社ポリシーやデータを公開
▲XTalentさんのDEIポリシーページ。DEI推進のためのパーパスやステークホルダーごとのビジョンを宣言している
編集部
XTalentさんはDEI推進コンサルティング事業を本格スタートする前の2022年10月に、自社のDEI Policy(DEIポリシー)を公表されました。策定の背景について、教えていただけますか。
上原さん
事業としてDEI推進コンサルティングを行っていく以上、やはり自分たちが他の会社よりもDEIを体現している状態でありたいと思っています。また、DEIを何のために行うのかについて、チームの中にしっかり浸透させていきたいなと思い、DEIポリシーを策定しました。
編集部
DEIポリシーはXTalent社内だけでなく、事業を通じてかかわるすべてのステークホルダーに向けて自社データとともに細かく発信していらっしゃいます。「フェアな労働市場をつくる」をミッションに掲げていらっしゃるXTalentさんとしては、自分たちから進んでこういうメッセージを出していこうという思いもあったんでしょうか?
上原さん
そうですね。「withwork」のサービスを通じて、転職市場にはたくさんのアンフェアがあると感じています。ジェンダーバイアスはもちろん、年齢や国籍、価値観の多様性が受け入れられていないと感じるシーンが多々あります。これは個人にとってはもちろん、企業の人材活用という観点でも大きな課題であると捉えています。
こうしたDEIの現状や課題に対し、やはり自分たちが敏感でいて、あるべき姿を語れるようにならないといけません。そこで、自分たちの行動に芯を通し、振る舞いをしっかり伝えていくためにも、こういったポリシーが必要だと考えました。
編集部
メンバー自身がDEIの目的や理想像について語れるようになるために、そして社会に広く意識してもらうために、DEIポリシーとして言語化や公開を行っているのですね。
メンバー同士が背中を預け合い、助け合うカルチャー
▲XTalentさんの社員が集まったオフサイトミーティングでの一コマ
編集部
続いて、XTalentさんのメンバーについて伺いたいと思います。社内はどのような雰囲気やカルチャーでしょうか?
上原さん
率直に言うと「いい人が多い」と感じています。例えば、今朝、Slack(ビジネスチャット)の中で「今日は体調不良で休みます」と投稿したメンバーが1人いたのですが、他のメンバーが立て続けに「大丈夫ですか」「しっかり休んでください」と声をかけていました。
また、あるメンバーが「これがわからなくて困っています」と投稿すると、すぐに助けの手が集まり、そのメンバーは「1を聞いたら10助けてくれた」と喜んでいました。
XTalentではバリューの中に「背中を預けよう」「真摯に向き合おう」という言葉があるのですが、この通りで、お互い背中を預けて助け合うことや、物事に対して真摯に向き合うという価値観を持った人は多いと思います。
▲XTalentのミッション・ビジョン・バリュー(同社採用ページから)
毎週のミーティングでは「メンバー同士を知る時間」も大切に
編集部
メンバー同士が背中を預けて助け合うために、日頃のコミュニケーションで工夫されていることはありますか?
上原さん
通常の業務のコミュニケーションだけでは関係性を作るのは難しいと思いますので、雑談やお互いのことを知る時間を大切にしています。
週に1回、チーム全体でKPTといわれるミーティングをしています。これは1週間でKeep(良かったこと)、Problem(改善するべきこと)、Try(これからやってみること)を共有する時間なのですが、その時間内で仕事の話だけではなく、お互いの個人的な話もしています。
例えば、「今週、子育てでこんないいことがあった」や、「今こんなことに困っている」「ちょっと体調が悪い」などです。直接業務でやり取りする機会が少ないメンバー同士でも、ここで他のメンバーの悩みや調子を知ることができます。
編集部
メンバーがお互いを知る場を意識して設けていらっしゃるんですね。
上原さん
はい。毎日の「朝会」も同じように、チェックイン(※)の時間を設け、「グッド・アンド・ニュー」と言われる24時間以内にあった良かったことをみんなが話すようにしています。これも、朝ちょっと気分が良くなったり、メンバーの人となりを知ることができる時間になっています。
(※)チェックインとは、会議におけるアイスブレイクの一つで、テーマを決めて参加者が順番に話していく手法のこと
フルリモート・フルフレックス制。働き方は柔軟に選べる
▲XTalentメンバーはバーチャルオフィスやチャットを使ってフルリモートで働いている
編集部
Slackでの朝会やミーティングのお話がありましたが、XTalentメンバーの働き方はリモートワークがメインでしょうか?
上原さん
はい。弊社メンバーはフルリモートで働いており、メンバーの居住地は東京、新潟、京都、愛媛など様々です。そういえば、今度、宮城に移住するメンバーが1人います。
また、先日は「実は今週、実家のある広島に帰っていたんですよ」と言うメンバーがいて、周りは全然知らなかったということもありました。こんなふうに、どこにいても働くことはできます。
編集部
採用ページで、XTalentさんには正社員11名と業務委託メンバー数名がいらっしゃると拝見しました。みなさんの業務上のコミュニケーションはSlackがメインですか?
上原さん
Slackに加えて、バーチャルオフィス「oVice(オヴィス)」を利用しています。人数が少ないころはSlackやZoomだけで良かったのですが、メンバーが増えてからはコミュニケーションを取る機会が減ったため、バーチャルオフィスの導入を始めました。
みんな基本的にバーチャルオフィスに入っているので、チーム同士のコミュニケーションや「ちょっと今、相談できますか」という声掛けはしやすくなったと思います。
編集部
フルリモートでもバーチャルオフィスやミーティングでの雑談タイムなどを活用して、心理的安全性の高い状態をつくっていらっしゃるのですね。上原さんご自身をはじめ育児中のメンバーもいらっしゃると思いますが、皆さんの働く時間については、いかがでしょうか?
上原さん
アウトプットをベースにその人に適した働き方を選べることが大事だと思っているので、フルフレックスタイム制を採用し、働き方は柔軟に選べるようにしています。
例えば、この日は保育園の行事があってほぼ1日不在だけど朝の1時間だけは勤務するとか、ペットを病院に連れていきたいから中抜けをするとか、この日は日中ではなく夜ちょっと遅い時間に仕事をするとか、です。
編集部
柔軟な働き方の制度やそれを支えるカルチャーがあって、皆さん、自然といろんな働き方をされているのですね。
上原さん
はい。育児をしているメンバーが多いので、皆、ライフイベントとうまく折り合いをつけながら働いていると思います。
実は今、育休に入っているメンバーがいるのですが、その社員は採用選考の時から妊娠していることが分かっていたので、入社後は産休に入る前提で仕事を進めてきました。そんな採用のケースもあります。
編集部
採用選考時から「フェアであること」が徹底されていることの表れですね。
メンバーは「何かをトレードオフにしない」働き方を実現
▲XTalentさんのDEIポリシーページではメンバーの働き方や労働時間についても公開されている
編集部
「withwork」のサービスでは「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトに転職支援をしていると伺いました。XTalentのメンバーも同じように、キャリアとライフどちらかを諦めるのではなく、両方を実現させていらっしゃるのでしょうか。
上原さん
その通りだと思います。実は、私たちは「ワークライフバランス」という言葉はあまり使っていません。XTalentメンバーはみんな、結構、仕事はするんですよね。なので、ワークとライフの時間バランスがものすごくとれているかというと、そうとは言えないかもしれません。
ただし、みんな「何かをトレードオフにしない働き方やキャリア」を実現していると思います。
例えば、あるメンバーは人材紹介の仕事がめちゃくちゃ好きで、その仕事をずっと続けていきたかったけれど、以前在籍していた会社では育児と仕事の両立がどうしても難しく、産後は好きだった人材紹介の仕事をすることを諦めかけていました。
しかし、XTalentであれば、育児をしながらでも人材紹介の仕事にチャレンジし続けられるとわかり、転職して、今では弊社で人材紹介の仕事で活躍しています。ときには残業することもあるため、完全にバランスのとれた働き方というわけではないかもしれませんが、その人の中では「やりたいこと」をトレードオフにせずに活躍できています。
編集部
確かに、ワークライフバランスという言葉は、1日8時間を労働時間、あとは自分の生活時間とすることを指すわけではないと思います。
「キャリアとライフをトレードオフにしない」というサービスコンセプトや「フェアな労働市場をつくる」という企業ミッションを、XTalentメンバー自身が体現されていることがうかがえました。
リモートワーク設備支援など、独自の福利厚生制度も
編集部
リモートワークや柔軟な働き方を支える、御社独自の福利厚生制度があれば教えてください。
上原さん
生産性高くリモートワークで働くために、リモートワークに特化した設備投資ができる「リモートHQ」(※)というサービスを導入しています。これを使えばワークチェアとディスプレイ、昇降デスクぐらい揃えられるようになっているので、みんな、かなり設備を充実させて仕事できていると思います。
(※)社員に対し毎月決まったポイントが付与され、社員はポイントを使って在宅勤務に必要なオフィス備品をレンタルする仕組み
このほか、入社時から5日の有給休暇を付与する制度もあります。
編集部
働き方の柔軟性や快適さを支える制度もあり、メンバーの皆さんは満足度高く働いていらっしゃるのではないでしょうか。
上原さん
そうですね。月1回、雇用形態にかかわらず従業員エンゲージメントサーベイを実施しており、ここ最近の結果は10点満点中、8点台となっています。
ただし、数字だけでは見えてこないこともあるため、サーベイをとった後に組織開発のメンバーが全員と1on1ミーティング(1対1の面談)をしています。そこで、課題があればアラートを上げてもらったり、状況を確認してもらうようにはしています。
編集部
雇用形態を問わず、毎月、エンゲージメントサーベイを行っているという取り組みに、多様性を尊重し、あらゆる人材が能力を発揮できる風土をつくろうとされていることを感じました。
社会を変えたいという強い意志を持つ人はぜひチャレンジを
▲採用で大事にしていることについて語る上原さん
編集部
最後に採用についてお聞きしたいと思います。上原さんが採用において大事にしていることを教えていただけますか?
上原さん
「フェアな労働市場をつくる」というミッション、「多様なリーダーが生まれ、個と組織が活性化する社会へ」というビジョン、「ありたい未来を考えよう」「真摯に向き合おう」「背中を預けよう」という3つのバリューへのフィットはとても大事にしています。
また、求めることについて2つキーワードで挙げるとすると、「自己開示ができること」「社会に対して課題意識を持っていること」です。
1つめの「自己開示」についてですが、お互い背中を預けて戦ったり、ミッションにしっかり向き合っていくという状況では、自分が考えていること、感じていることをオープンに伝えられることは重要だと思います。また、ポジティブなことだけではなく、自分が何か困ったときには、ちゃんと弱みを開示できるというのもすごく大切だと思っています。
編集部
XTalentのDEIポリシーでは、XTalentで働く人に対し、「誰もが弱さを開示でき、その人らしい活躍の場がある」というビジョンを掲げていらっしゃいました。そこに通じるお話ですね。
上原さん
はい。もちろん、組織としてメンバーが弱さを開示できる風土があるということも必要だと思いますが、メンバー個人としても何もかも自分で抱え込んでしまうのではなく、声を上げられることが必要です。特にフルリモートの働き方をしていると、大事だなと感じます。
編集部
2つめの「社会に対して課題意識を持っている人」については、どのように見ていらっしゃいますか。
上原さん
候補者の方が持っている矢印がどこに向いているのか、という点を見ています。皆さん、働く動機は色々あって良いとは思います。例えば働き方を整えていくとか、年収を上げていくとか、そういう動機ももちろん大事だと思います。
一方で、会社としては社会に対してどうインパクトを与えていくかや、「フェアな労働市場をつくる」というミッションやビジョンをとても大切にしているので、その方が社会に向けた矢印を持っているかという点は重視しています。
編集部
今いらっしゃるメンバーは、その課題意識のベクトルが揃っているのですね。
上原さん
そうですね。メンバーが目指したい未来とXTalentが描く未来が「イコール」である必要はないのですが、ちゃんと交わる点があるのかどうかは大事にしています。
社会に対して課題意識を持っていたり、それを変えたいという強い意志を持っているか、といった点は重視しています。
編集部
社会への課題意識や変えようという強い意志のある方は、面談などでそれを伝えていただくと良さそうですね。
上原さん
はい。XTalentは人材業界出身のメンバーばかりではなく、ファーストキャリアが助産師や保育士、ホテルのコンシェルジュだった人や、ITベンチャー、起業経験のある人など、多様なバックグラウンドのメンバーが揃っています。多様な経験や考え方によって事業を推進していますので、多様な方にチャレンジしていただきたいです。
編集部
上原さん、本日はありがとうございました!
XTalentさんの採用サイトでは、ミッション・ビジョン・バリュー、チーム員へのインタビュー、制度など詳しく紹介されています。転職や労働市場のバックグラウンドや経験に関わらず、上原さんのお話に惹かれた方、XTalentのビジョンや事業に関心のある方は、採用サイトもぜひ覗いてみてください。
■取材協力
XTalent株式会社:https://xtalent.co.jp/
採用サイト:https://xtalent.notion.site/