事業の革新性や新規性のみならず、働き方やSDGsへの取り組みなどでも独自性を発揮している企業をインタビューする本企画。
今回は特殊冷凍のトータルソリューション事業を展開しているデイブレイク株式会社に、特殊冷凍事業ならではのフードロス削減策や人出不足対策法などをお聞きしました。さらにはフレックスタイムを基軸とした家庭優先の働き方、そしてメンバーの親密度を高める福利厚生「デイブレイクマルシェ」などについて伺いました。
デイブレイク株式会社とは
2013年7月に設立されたデイブレイク株式会社は、「作り手から食べ手までのより良い未来を創造する」をミッションに掲げる特殊冷凍のトータルソリューションカンパニーです。
冷凍機の製造・販売のみならず、その効果的な活用に関するコンサルティングや顧客が開発した冷凍食品の代行販売など、幅広い事業を展開しています。
2022年3月にはマイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されました。
会社名 | デイブレイク株式会社 |
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住所 | 東京都品川区東品川2-2-33 ニウケビル5F |
事業内容 | 特殊冷凍ソリューション事業 特殊冷凍食材の流通事業 |
設立 | 2013年7月 |
公式ページ | https://www.d-break.co.jp/ |
働き方 | フレックスタイム制度(コアタイム9:00~15:00) |
デイブレイク株式会社の躍進の原動力は事業の独創性とともに、「家庭優先」を重視するワークライフバランスへの取り組みがあります。
その内容を伺うとともに、社内で評価の高い福利厚生「デイブレイクマルシェ」やフードロス削減によるSDGsの取り組みをお聞きしました。
さらには採用試験へのチャレンジを考える読者へのメッセージを伺いました。
冷凍機を販売してから始まるソリューション事業
編集部
まずはデイブレイクさんの事業内容について、ご説明をお願いいたします。
佐藤さん
弊社の事業を一言でいえば「特殊冷凍のトータルソリューション事業」になります。特殊冷凍とは一般的な急速冷凍に、冷風の温度や当て方などの特殊技術を付加することで、より高品質な冷凍を行うものです。これを実現するハードウェアとして、独自に開発した「アートロックフリーザー」という冷凍機を販売しています。
アートロックフリーザーは食品に乾燥や変色につながるダメージを最小限に抑え、限りなくありのままを維持しながら凍結する冷凍機です。肉や魚のほかに調理済みの料理も冷ますことなく冷凍でき、しかも解凍後にはできたての味を再現できます。
編集部
食品にダメージを与えない凍結がデイブレイクさんの強みなのですね。
佐藤さん
そうです。しかも弊社の場合、冷凍機を販売してから本当のビジネスが始まります。一般的なメーカーさんの場合、冷凍機を販売すればそれで終わりというところがほとんどだと思います。
弊社はご購入いただいたお客様が冷凍機を最大限に活用できるよう、例えば冷凍耐性のあるレシピを開発したり、その前後の加工工程をサポートさせていただいたりなどのコンサルティング業務を行っています。しかも、この時に出来上がった高品質な冷凍食品を、お客様に代わって販売させていただくフード販売も行っています。
編集部
単にハードを販売するだけでなく、実際に有効活用するためのコンサルティング、さらにはそこで生まれた冷凍食品の販売までを行っている。だから「トータルソリューション事業」なのですね。
顧客と密接につながる「デイブレイクファミリー会」
編集部
お話をうかがっていると、お客様との関係性を重視する姿勢が、社風として確立しているように感じられます。
佐藤さん
ありがとうございます。例えば弊社が主催している「デイブレイクファミリー会」は、弊社のお客様はもちろんですが、飲食業や仕出し業、水産業や畜産業、そして農業などさまざまな業種の経営者様にご参加いただいています。そして特殊冷凍機の活用法を皆で研究し、冷凍食品の新時代を皆で作ることを目指しています。
編集部
デイブレイクファミリー会には具体的にどんなコンテンツがあるのですか。
佐藤さん
大きく四つあり、その一つは「ZOOM飲み交流会」です。こちらは奇数月に開催しており、お酒と特殊冷凍のおつまみを片手に冷凍機に関するノウハウについて語り合っています。二つめは「急速冷凍機有効活用企業現地視察ツアー」です。これは年に1回開催しており、冷凍機を活用して業績を伸ばしている企業のノウハウやオペレーションなどを視察しています。
三つめは弊社のデイブレイクフローズンフードラボが研究した成果を配信する「急速冷凍食材研究レポ」です。こちらは月2回配信しています。そして四つめが弊社の冷凍食材研究の最新の知見を提供している「デイブレイクフローズンフードラボチーム無料電話相談」です。
編集部
コンテンツがかなり充実していますね。特殊冷凍機をビジネスで活用する企業にとっては、非常に有意義な会のように感じられます。
「Microsoft for Startups」に採択された最先端の特殊冷凍技術
編集部
2022年3月にはマイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されましたね。
佐藤さん
おかげさまで採択いただきました。これによりデイブレイクには、マイクロソフトさんが保有するAzureをはじめとした最新テクノロジーへのアクセス権や、マイクロソフトさんのパートナーネットワークを活用した、事業拡大に適した専用のリソースが提供されています。
編集部
支援プログラムは具体的にデイブレイクさんのどんな事業で活用できるのでしょうか?
佐藤さん
主に「アートロックフリーザー」のIoT化です。例えば冷凍庫内のリアルタイムモニタリングやAIによる自動運転モード、そしてコネクテッドサービスの提供、さらには凍結データのビッグデータ処理などに関する機能です。これらをデイブレイクが蓄積してきた食材研究データなどと掛け合わせることで、お客様にとってさらに使いやすいサービスとしてご提供していきたいと考えています。
また、冷凍ソリューションのDX化の一環として、マイクロソフトさんの「HoloLens」を使ったリモートメンテナンスサービスも計画しています。HoloLensとはヘッドマウントディスプレイ方式のホログラフィックコンピュータのことで、ディスプレイを通して空間をスクリーン化し、デジタルコンテンツを操作できます。このテクノロジーを活用して、デイブレイクでは冷凍オペレーションのリモート設計やリモートメンテナンスのサービス開発を計画しています。
フードロス削減を通じたSDGsへの取り組み
▲デイブレイクさんのフードロス削減とCO2排出削減のグラフ(公式ページより引用)
編集部
特殊冷凍技術がもたらした社会的な成果として、デイブレイクさんはフードロス削減を大きくアピールしていますね。
佐藤さん
はい。弊社が創業した2013年7月から2022年4月までの累計で、弊社が実践したフードロス削減量は、1,669.5tに及ぶと推計しています。また、この削減量をCO2削減効果に換算すると、2,682.5tもの削減につながることになります。SDGsへの取り組みとしては、目標12の「つくる責任、つかう責任」や目標14「海の豊かさを守ろう」などに大きく貢献していると考えています。
編集部
1,600t以上ものフードロスの削減量はとても大きな成果だと思います。これが達成できた要因についてはどのようにお考えですか。
佐藤さん
冷凍機を導入いただいたお客様とデイブレイクの社員とが密接にコミュニケーションを図り、使い方や目的意識などを常に深掘りしていることが一番の要因だと思います。
編集部
具体的にどんな深掘りがなされているのですか。
佐藤さん
例えば不揃いで買い手のつかなかったサツマイモのご相談です。デイブレイクとしては焼き芋がトレンドになっていることをアドバイスしました。そして一口サイズの冷凍焼き芋をご提案し、商品化をお手伝いしたという実績があります。
編集部
商品化以外にも、お客様にはいろいろな提案をされているようですね。
佐藤さん
はい。例えば人手不足改善策としての事前調理の導入提案ですね。事前調理した食材を特殊冷凍し、解凍後にすぐ調理工程に移ることができるようにすることで、注文から提供までの時間を省き、少ないスタッフでオペレーションを回すことができるようになります。急速冷凍機は仕込みから完成品までを幅広くまとめて作り、保存することができるんですよ。
また、セントラルキッチンでまとめて調理することも人手不足対策の有効な提案です。まとめて調理することで料理の品質を均一化できますし、人件費や材料コストのダウンも可能です。場合によっては料理人なしでの店舗運営も不可能ではありません。
なお、既に冷凍機を導入いただいているお客様に、別の企業様のメニューをOEMで生産していただくという事業も新たにスタートしています。
実務を通じて日々実感しているSDGsへの貢献
編集部
デイブレイクさんのメンバーは皆さん、仕事を通じてSDGsへの貢献を意識することが多いのではないですか。
佐藤さん
はい。例えば私は今フードの販売を担当しており、冷凍機を導入いただいた農家さんなどとやり取りをする機会が多くあります。その際によく聞くのは「品質も味もよい農産物なのに、形の悪さで買い取ってもらえない」という悩みですね。
こんな場合でもデイブレイクが、たとえば一口サイズにカットして特殊冷凍の技術を生かすことなどをご提案することで、新たな商品として販売できるようになります。こういう事例を目の当たりにすると、フードロス削減にかなり貢献できているなと感じます。
編集部
農家さんとの直接のやり取りは貴重な経験になるでしょうね。
佐藤さん
おっしゃる通りです。私の前職は食品メーカーでしたが、産地の方とやり取りする機会はほとんどありませんでした。でも産地の方の声を直接聞くことは本当に励みになりますし、次のビジネスを考える上での重要な気付きをいただいています。
ワークライフバランスでは「家庭優先」を最重要視
▲デイブレイクさんでは社員が子連れで出社する光景は珍しいものではありません
編集部
デイブレイクさんはワークライフバランスを重視し、メンバーのプライベートな時間についても、非常に大切に考えているとうかがいました。
佐藤さん
はい。会社の基本的なワークライフバランスの方針として「家庭を優先しましょう」があります。これは男女を問いません。例えば子育て中のメンバーが、お子さんと一緒に出勤をして、朝礼にも一緒に参加するというケースがけっこうあります。これを社員全員が認め合っているんですよ。
労働時間もフレックスタイム制度を導入しており、コアタイムは9時から15時です。それ以外の時間は自由に自分で管理できるので、子育てのための中抜けなどにも柔軟に対応できます。デイブレイクは、子育てをしながらでも働きやすい環境がかなり整っている会社だと思います。
編集部
子育てと仕事の両立に関するエピソードがあればお聞かせください。
佐藤さん
営業の男性メンバーなのですが、その方はかなりの頻度で朝はお子さんと一緒に出社して、朝礼にも一緒に出ています。そして、その方が商談に入ると、他のメンバーがお子さんと遊んであげているという光景をよく目にします。朝出社したときに、大きな大人の靴に混ざって小さな靴が一緒に並べてあるのを見かけると、本当に癒されます。
産前・産後休暇や育児休暇の取得を積極的に奨励
編集部
産前・産後休暇や育児休暇などについてはどんな状況ですか。
佐藤さん
積極的に取得するように会社として奨励しています。この5月にも育休に入る方がいますが、2年間ぐらい取得すると思います。そして復帰についても「いつでも戻ってきてください」という話をしてあります。育休後に戻ってきていただくことも、いつでもウェルカムという感じです。
編集部
育休が取りやすい雰囲気を、社内全体で作っているという感じですね。
佐藤さん
会社としては、社員の当然の権利だと認識していますし、メンバーに長く安心して働いてもらうためには不可欠の制度だと考えています。
ビジョンを具現化する福利厚生「デイブレイクマルシェ」制度
▲デイブレイクさんのミッションとビジョン(公式ページから引用)
編集部
デイブレイクさんはビジョンとして「“あったかい心の連鎖”が生まれる社会を目指す」を掲げています。これを具現化している社内の取り組みには、どんなものがあるのでしょうか。
佐藤さん
個人的には二つの取り組みがあると思っています。まず一つ目は福利厚生の一環でもある「デイブレイクマルシェ」です。
これは規格外などで市場に出せない野菜やフルーツを仕入れて社内で販売したり、デイブレイクフローズンフードラボチームのメンバーが、モーニングやランチ、ドリンクなどに調理・加工して、社員価格で提供したりしているものです。これが本当に安くておいしいんですよ。
編集部
それは楽しみですね。メンバーとの話もはずみそうです。
佐藤さん
その場でメンバー同士の会話が生まれることがとても多いですね。しかも、フードロスについて一人ひとりが考えるよいきっかけになっていますし、生産者さんとの繋がりをしっかりと感じることができます。
▲デイブレイクマルシェ制度では様々なメニューが社員に格安提供されています
編集部
最近ですと、どんな料理が出たのですか。
佐藤さん
野菜がたくさん入ったポトフです。こんなに多くの野菜を1日で食べないだろうというぐらいの量が入っていて、とてもうれしかったです。
メンバー間で感謝の意を示す「Unipos」を使った感謝制度
編集部
もう一つの取り組みはどんなことでしょう。
佐藤さん
ユニポス(Unipos)を使ったメンバー間の報酬の贈りあい制度です。例えば「この人のこういうところが素敵だな」とか「こういうところに助けられたな」というのをみんなに配信し、感謝してポイントを贈りあっています。
編集部
親しき中にも礼儀ありではないですが、ちょっとしたことにも、きちんと謝意を表すことはとても大事なことですよね。
佐藤さん
おっしゃる通りだと思います。この制度が始まったことで、「実は裏でこういうことをやってくださっている方がいるんだ」ということが見えるようになったんです。今までは、まったく気付きませんでした。今では私も、人のいいところを積極的に探すようにしています。常に感謝の気持ちを忘れないようにするためにも、とてもいい取り組みだと思っています。
異業種出身者でも社内に素早くなじみやすい企業風土
編集部
デイブレイクさんへ中途入社された方の多くは、異業種の出身だとうかがいました。そういった方々が社内でスムーズに馴染めるような雰囲気はあるのでしょうか。
佐藤さん
これはデイブレイクの企業風土そのものといえるのですが、代表の木下(代表取締役の木下昌之さん)をはじめとした役員層と、他のメンバーとの距離が非常に近いんです。
とてもオープンで、中途入社した方もその日から、ざっくばらんにモノが言える環境です。お互いがダイレクトに話をしたり、常に動きを見せあっているので、異業種出身の方でも会社に馴染むペースが早まるのだと思います。
編集部
経営層との距離が近いという企業風土は、中途入社の方にとってはとても心強いものでしょうね。
佐藤さん
しかもミーティングなど、メンバー同士のコミュニケーションを図る機会が非常に多いことも、デイブレイクの特徴だと思います。会社やチームとして目指している目標が分かりやすいですし、ブレを感じることも少ないと思います。目標などをすり合わせる場がとても多いことが、スムーズな組織づくりに大きく貢献していると思います。
編集部
ミーティングは、どれくらいの頻度で行われているのですか。
佐藤さん
まずは毎朝の朝礼です。これがメンバー間のコミュニケーションの土台になっています。また部門によりますが、週に1度のミーティングもあります。そして月末には月例会があり、そこでは各部門の報告や会社の方針などを周知しています。これ以外にも非公式な集まりが数多く開催されており、メンバー同士の交流は非常に活発だと思います。
求職者に求める資質は「新しいことへのチャレンジ精神」
編集部
最後に、記事を読んで興味を持った読者に向けたメッセージをお願いします。
佐藤さん
新しいことにチャレンジしたいという方に、ぜひご応募いただければと思います。私自身、ベンチャー企業は初めてで、入社前は本当に緊張しました。
ところが実際に入社して、デイブレイクが冷凍市場の拡大や高品質な冷凍食品の普及、そしてフードロス削減などに向けて、全社で一丸となって取り組んでいるその情熱に強く心を打たれました。
社会的な課題の解決に興味をお持ちの方にとって、デイブレイクはとても刺激的で働きがいのある会社だと思います。積極的なご応募をお待ちしています。
編集部
社会的な課題の解決とは、確かに働きがいがありそうです。本日はありがとうございました。
■取材協力
デイブレイク株式会社 https://www.d-break.co.jp/
採用ページ https://d-break.org/