ワークライフバランスの実現と企業成長の両立に成功している企業を紹介する本企画。今回は、暗号資産取引所を運営するビットバンク株式会社を取材しました。同社では、従業員の生活の質を向上させながら、企業としての成長も実現しています。
ビットバンク株式会社:暗号資産取引所のパイオニア企業
ビットバンク株式会社は、ビットコインを含む37種類の暗号資産を取引できる「bitbank.cc」という取引所を運営しています。
2017年の取引所開設以来、「オーダーブック」による透明性の高い価格設定と強固なセキュリティ対策により、会員数を63万人まで拡大し、国内取引所で取引量ナンバーワンを達成しました。
会社名 | ビットバンク株式会社 |
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住所 | 東京都品川区西五反田7-20-9 KDX西五反田ビル7F |
事業内容 | 暗号資産(仮想通貨)関連事業 関東財務局長(暗号資産交換業者) 登録番号 第00004号 |
設立 | 2014年5月 |
公式ページ | https://bitbank.cc/ |
働き方 | ・全社員フルリモート勤務 ・朝フレックス(就業時間を3時間まで前倒し可能) |
「オープンでフェアな社会を実現する」というビジョンを掲げるビットバンク株式会社は、人事制度の透明性向上にも力を入れています。新しく導入した人事制度では、職種や等級ごとの役割を明確に定義し、社員が評価に納得しやすく、将来のキャリアを描きやすい環境を整えました。
さらに、会社の成長にはワークライフバランスが不可欠と考え、全職種でフルリモートワークや朝フレックス制度など、柔軟な働き方を推進しています。
今回は、事業拡大に伴う組織づくりやワークライフバランスへの取り組みについて、人事担当の加藤正晃さん、東口航大さん、砂川彩花さんにお話を伺いました。
ビットバンク株式会社の強み:透明性と安全性で実現した国内トップの取引量
編集部
まず初めに、ビットバンクさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか?
加藤さん
弊社は2014年に創業し、2017年からビットコインやイーサリアムをはじめとする37銘柄(※)の暗号資産を売買できるプラットフォーム「bitbank.cc」を運営しています。
(※)2024年1月時点
合計の預かり資産額は国内上位で、取引量としては国内の暗号資産取引所のなかでナンバーワン(※)です。
(※)CoinMarketCap調べ(2021年2月時点)
編集部
暗号資産交換業者は国内に30社以上ありますが、そのなかでビットバンクさんはどのような点に強みを持っていますか?
加藤さん
ほかの大手取引所と比較した場合、ビットバンクの特徴はオーダーブックによる取引(※)をメインに提供している点にあります。オーダーブックは顧客同士のマッチングによる取引なので、スプレッド(買値と売値の価格差)が販売所と比べて小さい傾向にあります。価格の透明性が高く、顧客にとって有利な条件で取引できる仕組みだと言えます。
(※)買い手と売り手による注文の数量や価格を集計してリアルタイムで投資家に情報提供し、買い注文と売り注文の価格が一致した場合に取引が発生する仕組み
編集部
安全への取り組みについてはいかがですか?
加藤さん
まず、日本では安全な方法で暗号資産を保管することが法令で定められています。弊社では、暗号資産をインターネットと完全に切り離されたオフラインの状態で保管することで外部からアクセスできないようにする「コールドウォレット」を採用しています。
また、国内の暗号資産取引所として初めて(※1)情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO/IEC 27001:2013/JIS Q 27001:2014」認証を取得(※2)しました。
(※1)ビットバンク株式会社調べ(2022年3月時点)
(※2)認証取得組織:ビットバンク株式会社 経営管理部門、リスク管理部門、プロダクト部門、システム部門
加えて、セキュリティ上の脆弱性を発見・報告してくれた方に企業が報奨金を支払う「バグバウンティプログラム」(バグ報奨金制度)を国内の取引所に先駆けて導入しています。現在、暗号資産詐欺を事前に防ぐ仕組みも検討しており、今後もセキュリティ対策のブラッシュアップを続けていきたいと考えています。
ビットバンクの組織戦略:成長を支える革新的な人材マネジメント
▲2018年には保有暗号資産をビットバンクに預け入れると年利を受け取れるレンディングサービスを開始した。
編集部
加藤さんは取引所の運営開始から間もない2017年12月に入社されたと伺いました。ここまでの企業やサービスの成長を、どのようにお感じですか?
加藤さん
私が入社する少し前の2017年5月ごろに、ビットコインなどの暗号資産が急騰したことをきっかけに、日本でも暗号資産が注目されるようになりました。私自身も金融商品の取引経験があったこと、ビットバンクのオーダーブック(注文板)による取引に魅力を感じていたこと、そして業界の成長が見込めることなどから入社を決めました。
その後、2018年1月に国内の他の取引所で、外部からの不正アクセスによる暗号資産の流出事件が起きました。このような環境下で、ビットバンクを安全な取引所の選択肢として考えていただく機会が増えました。さらに、サービスの改善を継続的に行ってきたことで多くの方に支持していただき、会員数は63万人(※)まで拡大しました。
(※)2024年1月時点
編集部
サービスを高める努力を続けてきたからこそ、国内有数の取引所へと成長できたのですね。
ビットバンクの人材:暗号資産の未来を信じる150人の専門家集団
編集部
事業の成長に伴い、従業員数も150人を超える規模まで拡大していますね。
加藤さん
暗号資産が流行し始めた当初は、業界全体に成長を優先させる傾向がありました。しかし、国内取引所で暗号資産の流出が起きたことなどをうけて、成長だけでなく安全管理の徹底も重視するようになりました。その結果、弊社においてもコンプライアンスや内部監査、安全性を高めるための開発など「守り」の体制も強化するため、新しいメンバーが増えていきました。
また、暗号資産は短期的に見ると価格変動が大きいですが、長期的に見ればある程度右肩上がりで成長しているので、弊社や業界の未来に可能性を感じて入社してくれる人も多いです。
編集部
東口さんは2021年3月に、砂川さんは2022年9月に入社されたと伺いました。おふたりはどのようにしてビットバンクへの入社を決めたのでしょうか?
東口さん
私は以前、暗号資産の企業向けのウォレット開発会社に勤務していましたが、その会社がM&Aされることになったのをきっかけに、残るか転職するか考えるようになりました。
経験を活かして暗号資産に関わる仕事がしたいと思いさまざまな企業の方とお会いしましたが、弊社の取締役の野田と知り合いだったことや、加藤や代表の廣末と面接で話した時の印象がよかったことが決め手となり、ビットバンクへの入社を決めました。
砂川さん
前職はアパレル企業で人事を担当していました。転職を考えるようになったきっかけは、採用を通じてより企業が活性化する施策や取り組みに携わり、キャリアを磨いていきたいと考えたことです。
そんな時に、東口さんよりスカウトをいただきました。当時は暗号資産に関する知識がほとんどなかったのですが、この会社にはビットバンクや暗号資産の未来を信じて挑戦しているメンバーがたくさんいることや、「会社のビジョンを実現するためには人事戦略が欠かせない」と考えている点に共感し、入社を決意しました。
ビットバンクの人事制度:「オープンでフェア」な評価とキャリア支援
編集部
組織の拡大に合わせて人事制度なども拡充していく必要があると思います。ビットバンクさんでは、どのように対応してきましたか?
東口さん
2021年の下半期に、等級・報酬・評価の3つから構成される新たな人事制度を導入しました。
それ以前は明確な人事制度がなく、評価者の主観で給与や昇給が決まっているような状況でした。そのため、評価のプロセスや、結果がどのように給与に結びつくのかを可能な限り明確化して社内に共有することが必要だと考えました。
編集部
導入の狙いについてもお話いただけますか?
東口さん
「オープンでフェアな社会を実現する」という弊社のビジョンを人事制度にも反映させることと、社員がキャリアパスを描きやすいようにすることが導入の目的です。
例えば等級制度では、職種ごとに各等級で求められる実力や役割を明確化したジョブディスクリプションを作成しました。これにより、自分がどのような実力を身につけ、どのような役割を果たせばステップアップできるのかが分かりやすくなりました。結果として、社員はキャリアのロードマップを描きやすくなり、目指すものが明確化されることでモチベーションの向上にもつながると考えています。
編集部
新しい人事制度を導入したことによる変化は感じますか?
加藤さん
オープンでフェアな「ガラス張り」の人事制度ができたことで、社員の納得感が高まったと感じます。
弊社では、社員の働きがいを調査するエンゲージメントサーベイを実施しています。人事制度を導入する前から高い点数でしたが、導入後はさらに数値が向上しました。高いエンゲージメント水準を維持するためには、今後も組織の現状に合わせてさまざまな施策を継続的に実施することが重要だと考えています。
イノベーション促進策:ピッチコンテスト「BITBANG!!!」で新規事業を創出
編集部
人事制度以外にも、さらなる企業成長に向けて力を入れていることはありますか?
加藤さん
新規事業を企画するピッチコンテスト「BITBANG!!!」について紹介させてください。これは、取締役の野田が発案して半期に1度開催している取り組みで、取引所事業に並ぶ「次の事業の柱」を生み出すことを目的としています。
弊社代表の廣末は、ピッチコンテストの説明の際に小説「下町ロケット」に出てくるセリフを引用します。会社を2階建ての家に例え、1階は会社経営のために必要なお金を稼ぐ「現実」で、2階部分には「夢」があるような会社にしたいと話しています。取引所サービスにとどまらず夢のある会社であり続けるために、ピッチコンテストは重要な取り組みとなっています。
編集部
ピッチコンテストには、社内の方なら誰でも参加できるのでしょうか?
加藤さん
はい、そうです。年齢も職種もさまざまなメンバーが応募してくれます。一般的にこのようなピッチコンテストには、フロント業務に携わる方が参加することが多いのですが、弊社ではバックオフィス系の社員も積極的に参加しており、会社全体で盛り上がる施策になっています。
編集部
ピッチコンテストをきっかけに事業化したものはありますか?
加藤さん
2023年12月にスタートした、弊社では初の非金融事業のGameFi(※)におけるスカラーシップ制度のマッチングサービス「FiKNOTS(ファイノッツ)」は、ピッチコンテストのアイディアから誕生した事業です。
(※)ゲームにDeFi(分散型金融)の要素を組み合わせたブロックチェーンゲームの総称
FiKNOTSはGameFiのプレイヤー向けのサービスです。NFTを保有している人(マネージャー)がNFTを借りたい人(スカラー)にNFTを貸し出し、スカラーはそれを利用してゲームをプレイします。獲得した報酬はマネージャーとスカラーで分配する仕組みになっています。
編集部
取引所事業にとどまることなく、社内の知恵やノウハウを出し合ってさらなる発展を目指しているのですね。
ワークライフバランスの追求:企業成長の鍵となる働きやすさの実現
編集部
ビットバンクさんでは、エンゲージメントサーベイの「ワークライフバランス」に関する項目で従業員の満足度100%を達成したと伺いました。働きやすさの理由はどのような部分にあるとお考えですか?
砂川さん
弊社では全職種においてフルリモートワークを実施しています。通勤時間がなくなることで、社員から家族と過ごす時間や趣味に充てる時間を増やせたという声が多く寄せられています。さらに、通信費や光熱費の支援として、月に1万円の補助も行っています。
フルリモートワークという働き方に加えて、2023年2月から国内全域を対象とした採用を始めました。これにより、遠方に住んでいる方が東京の会社で活躍するチャンスにもつながっています。
加藤さん
国内全域への採用拡大により、三重県在住の方を社員として迎えることができました。前職では転勤が多く、家族と離れて暮らす期間が長かったため、子どもの成長を間近に見ながら働きたいという希望で入社してくれました。入社半年ほどですが、すでに能力を発揮し、活躍しています。
編集部
全国採用によって、これまで出会えなかったような優秀な方とも出会うチャンスができたのですね。残業時間については、いかがでしょうか?
砂川さん
弊社には残業を推奨しないカルチャーがあるため、月の残業時間は全社平均で19時間程度です。オンとオフをしっかり切り替え「やるときはちゃんとやる」という働き方ができる職場だと思います。
編集部
フレックス制度など、勤務時間を柔軟に調整できる仕組みはありますか?
東口さん
始業時間を3時間まで前倒しできる「朝フレックス」を導入しています。この制度を使えば、子どものお迎えや自身の用事のために早めに仕事を終了することができます。
私は会社から電車で1時間半ほどかかる神奈川県の小田原市に住んでいますが、フルリモートワークのためほとんど出社することはありません。筋トレが趣味なので、平日は朝フレックスを利用して早めに終業し、ジムに行っています。
編集部
ビットバンクの皆さんが、フルリモートワークや朝フレックスを活用してメリハリをつけながら働いている様子がよくわかりました。
コミュニケーション活性化策:オンラインとオフラインを融合した交流促進
編集部
全職種においてフルリモートワークで勤務されているとのことですが、コミュニケーションで意識していることはありますか?
東口さん
弊社では毎朝、全社員が参加するオンライン朝会を実施しています。この朝会では、会社の1日単位の概括的な業績確認や、暗号資産業界のトピック、さらに国内外の経済・社会情勢、IT関連の情報を社長から共有しています。
また、チーム単位で必要に応じてオンラインミーティングを行うなど、フルリモートワークでも顔を合わせ、言葉を交わす機会を意図的に設けています。
編集部
社員同士が気軽に交流できるような企画はありますか?
東口さん
半期に1度、社員や株主様を招いたパーティーを開催しています。また、社員同士で懇親会やランチをする際にも会社が一部または全額を費用負担する制度があります。
近隣に住む社員同士はオフラインで交流し、遠距離の社員同士はオンラインで交流するなど、さまざまな形で社員間のコミュニケーションを促進しています。
砂川さん
部活動も盛んです。弊社には30以上の部活があり、活動費用の一部は会社が負担してくれます。私は旅行部に所属しており、部活を通じて部署の垣根を超えた交流ができるため、日々の業務でのコミュニケーションも円滑になったと感じています。
その他にも「ヨガ部」や、オンラインゲーム「フォートナイト」に特化した「ビクロイ部」、実務に直結する「オートメーション部」(業務効率化ツールの使い方を習得する部活)など、多様な部活動が存在します。
人材戦略の核心:働きやすさを通じた優秀な人材の確保と定着
▲社内交流が盛んなビットバンクでは、社員同士でアウトドアを楽しむことも。(詳細はWantedlyのイベントレポート参照)
編集部
ビットバンクさんが働きやすい環境づくりに力を入れる背景には、どのような狙いがあるのでしょうか?
東口さん
会社が成長するためには、優秀な社員たちに長く働いてもらうことが大事だと考えています。
暗号資産業界は、就業先として興味を持っていただける方が限られる専門的な業界です。そのため、優秀な人材の採用が課題となっています。
このような背景から、現在の社員にはできるだけ長く働いてほしいと考えています。そのためには、子育てや介護があっても安心して働き続けることができる仕組みづくりが欠かせません。
編集部
社員の働きやすさを向上させることが、企業成長につながるのですね。今後さらに推進したい取り組みはありますか?
加藤さん
弊社は2023年、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けた「くるみんマーク」を取得しました。今後は、より高い水準の取り組みを行った企業が取得できる「プラチナくるみん」を目指し、社内研修などの充実も図りたいと考えています。
ビットバンクが求める人材像:3つのValuesを体現するチャレンジャー
編集部
ビットバンクさんが成長を続けるためには、どのような人材が必要だとお考えでしょうか。
東口さん
暗号資産の未来を信じて一緒に挑戦してくれる方、そして弊社のValuesに共感いただける方です。
弊社は「Integrity」「Challenge」「One team」の3つのValuesを掲げています。「Integrity」は、関わるすべての人に対して誠実であることや、何事にも真摯に取り組むこと、言行に責任を持つことを意味しています。
「Challenge」は失敗を恐れず、自らチャレンジし続けられる人であってほしいという思いが込められており、「One team」は仲間と協力し、共に成長してほしいという意味です。
これらのValuesは形だけのものではなく、組織作りも事業もこの3つの価値観を念頭に行われています。そのため、Valuesに共感いただける人であることがとても大切です。
編集部
東口さん、砂川さんはどのような仲間と一緒に働きたいとお考えですか?
東口さん
私は、暗号資産のなかでも特にビットコインに興味をもっている方が弊社で活躍いただけるのではないかと思います。
ビットバンクは、業界の中でも特にビットコインへの思い入れが強い会社です。今では数多くの暗号資産がありますが、弊社のVisionの「オープンでフェア」はビットコインのコンセプトを基にしているため、特にビットコインの理念に共感している方は、弊社のVisionにも共感いただけると思います。
砂川さん
会社の未来を信じ、事業の成長に向けて一丸となって取り組んでいただける方とお仕事をしたいと考えています。暗号資産業界への興味や熱意を持ちながら、共に成長できる方はぴったりだと思います。
また、リモートワークがメインなので、自分から積極的にコミュニケーションを取れる方、自発的に考えて行動できる方が合っていると思います。
編集部
最後に、加藤さんからもお願いします。
加藤さん
ビットバンクの事業では、お客様の命の次に大切な「お金」をお預かりしており、そこには非常に大きな責任が伴います。だからこそ、Valuesのひとつでもある「Integrity(誠実さ)」は絶対条件だと思っています。
また、何事も「好き」でないと続けることは難しいと思います。最初は暗号資産についてあまり詳しくなくても、「暗号資産のことが好きになれそうだ」とか「興味を持てそうだ」と思っていただける方が弊社のお仕事に向いていると思います。
編集部
暗号資産の未来を信じ、情熱を持って事業の発展に取り組むビットバンクさん。「オープンでフェア」を意識した職場では、誰もが目標を持ちながら、ライフステージや性別に関係なく活躍できそうだと感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
ビットバンク株式会社:https://bitbank.cc/
採用ページ:https://recruit.bitbank.cc/