企業の若手活躍やSDGsへの取り組みを紹介するこの企画。
今回は、多文化共生社会の実現に向けてシェアハウス運営などの取り組みを展開するボーダレスハウス株式会社にお話を伺いました。
国際交流・情報発信により多文化共生を目指す、ボーダレスハウス株式会社の概要
ボーダレスハウス株式会社は、異なる国籍の人と共同生活を送ることができるシェアハウス事業をメインとし、多文化共生の実現に向けた多様な取り組み・活動を行う企業です。
シェアハウスの入居者は日本人と外国籍の人が半々になるように設定されており、現在日本・韓国・台湾の3か国で全76棟が展開されています。
ボーダレスハウス株式会社が目指すのは、人種や国籍を超えた国際交流と相互理解による「真の多文化共生」。日常的に文化交流を行うことができるシェアハウスは、語学習得に役立つだけでなく、多様な価値観を育むことができる場となっています。
多文化共生社会の実現においては、地域の理解を深めていくことも非常に重要です。ボーダレスハウス株式会社では、入居者同士の交流はもちろんのこと、地域も含めたコミュニティづくりを行っています。
2022年から異文化理解の発信と交流をテーマとした新事業「BORDERLESS STATION」をスタートしました。シェアハウスという場の提供だけでなく、さまざまな交流・発信を通じた地域ぐるみのコミュニティの醸成を進めています。
会社名 | ボーダレスハウス株式会社 |
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住所 | 東京オフィス:東京都台東区柳橋1-10-8 2F 関西オフィス:京都府京都市上京区五辻通千本東入上る桐木町880KeFUstay&lounge1階 ※ソウル・台北オフィスもあり |
事業内容 | シェアハウス運営事業 |
設立 | 2008年5月 |
公式ページ | https://www.borderless-house.jp/jp/ |
今回は、ボーダレス株式会社の細木拓哉さんにインタビューを実施しました。
メイン事業であるシェアハウス運営を始めたきっかけや、多文化共生社会をめざし展開する事業の目的や意義、そして多くの若手社員がいきいきと活躍する背景などについてお話を伺っています。
出会い・交流により差別・偏見を解消。真の多文化共生を目指す
▲シェアハウスを通して、多様な文化を持つ若者の交流の場をつくっている(公式サイトから引用)
編集部
ボーダレスハウスさんは国際交流ができるシェアハウスを運営されていますが、まずはこの取り組みを始めた経緯や目的を教えていただけますでしょうか。
細木さん
我々の事業の目指すところは、国籍など個人のバックグラウンドに関わらず皆が自由に自分らしく暮らせる真の多文化共生社会の実現です。SDGsの17の目的の中では「10.人や国の不平等をなくそう」に関わる取り組みを、シェアハウス事業などの国際交流というアプローチから展開しています。
国内であっても海外であっても、国籍などのバックグラウンドを理由に不当な扱いを受けてしまう場面がまだまだ多くあるのが現状です。例えば海外の方が日本に留学をされる際、外国人という理由だけで家を借りられないということも少なくありません。ボーダレスハウスはもともとはその課題解消のために、我々が保証人という形で間に入り住居を借りるお手伝いをするという事業から始まりました。
では外国人というだけで住居を借りられない問題の根本は何なのか。それはやはり、皆さんの中に出会ったことのないものに対する恐怖心がどうしてもあるからだと思います。その知らないものに対する恐怖心にメディアなどから刷り込まれている差別や偏見も合わさって、海外の方を「外国人」という枠にはめてしまっているのではないでしょうか。
それならば、人と人とが出会い、交流するきっかけをつくることで、知らないことに対する恐怖心や差別・偏見は解消されていくのではないか。その思いがきっかけとなり、国際交流シェアハウス事業を始めました。
シェアハウスという衣食住をともにする密な交流の場を提供することで、自分や相手のアイデンティティを理解し合える手助けになると思っています。こうした交流機会の提供を通じて、日本の方も海外の方も共存できるコミュニティづくりを行うことが我々の事業の目的です。
シェアハウスは日本人と海外の方が半々。国籍もバックボーンも多様な方々が利用
編集部
ボーダレスハウスさんのシェアハウスには、主にどのような方が入居されているのでしょうか。
細木さん
18歳から39歳までの方を対象としており、日本人が50%、海外の方が50%となるように設定しています。日本人の場合は社会人が7割で、残りの3割は学生さんその他となっています。海外の場合は6割程度が学生の方で、残り4割がインターンシップ・旅行・社会人として来られている方と、少し学生の比率が高いのが特徴です。
編集部
どの国の方の利用が多いなどの特徴はありますか?
細木さん
国に関しては本当にさまざまです。一番多い国となるとフランスやイタリアといったヨーロッパの方、その次にアメリカの方が多いかなと思います。
でもその他にも、韓国、インド、マレーシア、シンガポール、スウェーデンなど本当にいろいろな国の方がいらっしゃいますね。私自身もお会いしたことのなかった国の方にも多くご利用いただいています。
編集部
皆さん、やはり日本に来られる理由もさまざまなのでしょうか?
細木さん
そうですね。ただ、アニメや漫画など日本の文化が好きで、そこで日本語を学びたいという理由で入ってこられる方は結構いらっしゃいます。観光地としての需要だけでなく、日本語という切り口でこれだけニーズがあるということは、私もこの会社で働いて初めて知りました。
編集部
アニメや漫画がきっかけで日本語に興味を持つというのは、他の国にはあまりない珍しい特徴かもしれないですね!日本人の方の場合は、どのような理由でシェアハウスを利用される方が多いのでしょうか。
細木さん
留学前の国内留学のような形で利用するケースや、仕事で英語を使う方が言語を学ぶために利用するケースが多いと思います。シェアハウスでただ共同生活を送るというより、その次のステップを見越して入居される方が多い印象ですね。
逆に言うと、ただ共同生活の方が安く住めるからという理由では入居できないような仕組みになっています。複数人の部屋の方が安価にご提供できますが、現在は個室のみのご案内にしているんです。もちろん都内で一人暮らしをするよりは安価ですが、大幅に安く住めるというわけではありません。
最初に申し上げた通り、ボーダレスハウスの本来の目的は、人と人とが交流する中で、潜在的にある恐怖心や差別・偏見意識をなくしていくことです。だからこそ、お金はある程度かかったとしても、国際交流をしたいという意欲がある方にご案内をしたいと思い、そのような料金設定にしています。
シェアハウスだけじゃない。多文化共生に向けた発信・交流の幅広いアプローチを実施
▲多文化共生の発信と交流拠点となっている『ボーダレスハウス浅草橋』
編集部
ボーダレスハウスさんでは、シェアハウス以外にも国際交流に関する取り組みを行っているのでしょうか。
細木さん
採用に際して「シェアハウスの運営がしたい」という理由で応募される方も多いのですが、シェアハウス自体がボーダレスハウスの第一目的というわけではありません。シェアハウスの対象年齢以外の幅広い年代の人にアプローチしていくためのアクションにはどんどん取り組んでいきたいと思っています。
2022年からは、『ボーダレスハウス浅草橋』を拠点に発信と交流を行う『BORDERLESS STATION』という新たな取り組みを開始しました。2階以降はシェアハウスですが、1階はラウンジとなっており、入居者だけでなく地域の方とも交流できる場となっています。
日本以外の国にルーツを持つ方を招いてトークイベントを行ったり、まちづくりをしている方々にインタビューをしたりと、幅広い世代の方に向けて多文化共生や多様性についてさまざまな発信を行っています。
また、より若い世代へのアプローチとして、毎月子ども食堂と国際交流を掛け合わせた取り組みを実施しています。中高生に向けてボーダレスハウスの事業を紹介するといった取り組みも定期的に実施していますよ。
編集部
多文化共生の実現に向けて、幅広い年代の方、また地域も含めて巻き込みながら多様な切り口で幅広く活動していらっしゃることが良く分かりました。対象とする年齢に応じたアプローチを展開されているのも印象的です。
異例のスピード感が若手活躍を生む
▲スピード感あるキャリアアップが可能なボーダレスハウスさん。1年で海外拠点に行く人も
編集部
ここからは、ボーダレスハウスさんの若手活躍のトピックに移らせていただきます。現在、ボーダレスハウスさんではどのくらいの年齢層の方が多いのでしょうか?
細木さん
20代から30代前半の社員がコア層となっています。
編集部
若い世代の方が組織の中心となっているんですね。具体的に若手社員の方で活躍されているエピソードがあれば教えてください。
細木さん
まずボーダレスハウスの特徴として、スピード感があることが挙げられます。それは検討から実行までのスピードや意思決定の速さに加え、社員のキャリアアップについても当てはまります。
私自身の例で言うと、新卒で入社して1年後には、シェアハウスを管理する2チームのうち、1チームのリーダーを務めていました。そして翌年には2チームのマネジメントをするポジションに移り、今は事業開発を任せてもらっています。
こうしたキャリアステップを踏むメンバーもいれば、1年間現場職を担当したのちに、広報やマーケット部門に異動するメンバーもいます。中には本人の希望で関西に移ったメンバーもいますよ。その方は地域コミュニティの醸成にもっと携わりたいという希望を持っていたため、それなら「関西の方がもっと密接な関わりができるのではないか」ということになり転勤をすることになりました。
同じように、本人の希望で入社1年で台湾に渡ったメンバーもいます。もちろん本人の適性や明確な目的があることは前提になりますが、普通の会社ならマネジメント職を経て5年目、6年目くらいでやっと海外に行くチャンスが得られるところを、ボーダレスハウスの場合本当に1年目や2年目でもチャレンジできる環境があるのが特徴です。
ボーダレスハウスは本人の「やりたい」という希望を尊重し、サポートする
編集部
今のお話を聞いていて、会社としてキャリアプランを用意するのではなく、本人の希望に合わせたキャリアステップを踏める環境があるんだなと感じました。普段から本人の意見を聞く機会を設けているのでしょうか。
細木さん
業務の振り返りとは別で行っている四半期面談の中で、本人の希望や今後のキャリアプランについて話しています。そこでは1年後自分はどういう姿になりたいのかということはもちろん、会社自体がどのようなポジションになっていてほしいのかも聞いています。「会社にこうなっていてほしい、そのために自分はこういう役割を担いたい」ということを話す時間になっていますね。
やりたいことがすべて叶うわけではありませんが、やりたいと希望したことに関してはできるだけ尊重するようにしています。それをやるためにどのようなステップが必要で、どのようなスキルを身に付ける必要があるのかを話し合い、サポートしていける組織体制になっています。
編集部
自分のやりたいことだけでなく、会社としてどうなるべきかを合わせて考えるというのは素晴らしいですね。自分自身のことだけでなく、会社の成長も自分事として考えられるようになると思います。
誰とでも自然なコミュニケーションが生まれるフラットなカルチャー
編集部
御社のカルチャーについて伺います。ボーダレスハウスさんの会社全体の雰囲気の特徴などがあれば教えてください。
細木さん
基本的にフラットな組織で、社長だから、リーダーだからといった雰囲気はありません。社長の隣に学生のアルバイトの方が座って雑談しているような風景も良くみられますね。
最近では在宅勤務が増えてきてなかなか直接コミュニケーションを取る機会も減ってしまったのですが、オフィスに出社したときにはみんなで一緒にご飯を食べています。あえて話しやすい雰囲気をつくるために何か努力をしている、ということはなく、皆自然に交流ができるような環境があるのが特徴です。
助け合える環境があるからこそ、仕事と家庭の両立がしやすい
編集部
ボーダレスハウスさんには子育て中の社員の方もたくさんいらっしゃるとのことですが、子育てをしながら働きやすい環境づくりにおいて取り組んでいることはありますか?
細木さん
ボーダレスハウスにはお子さんがいる社員の方が多いので、家庭やプライベートを尊重する環境づくりには配慮しています。元々弊社代表も、東京を統括しているメンバーも、お子さんの授業参観や運動会などがあれば積極的に休みを取るようにしているので、それがモデルケースになって皆休みを取りやすい雰囲気になっているのではないでしょうか。
編集部
なるほど。実務面でも休みを取りやすくなる工夫などはされているのでしょうか。
細木さん
ボーダレスハウスは基本的に日曜日以外は営業しているためお休みはシフト制ですが、誰かの休みをカバーできるような体制になっています。それは人数を充足させるということもそうですが、一人の社員がマルチタスクに対応できるという点も大きいですね。
特に今の新卒メンバーはジョブローテーションのような形で一番初めにすべてのポジションを経験してもらっているため、業務全体の流れを大枠で把握できています。だからこそ、誰か一人がお休みになったとしても、皆でそこを補完し合えるような体制になっています。
編集部
上の方が積極的に休みを取っていること、誰かが休んでも他の人がカバーできる体制があることで、気兼ねなく休みを取得できる環境が整えられているんですね。子育てをしながら働く上で、とても安心材料となりそうです。
採用に際し「海外の方への想い」「ある程度の英語能力」は必要
編集部
最後に、ボーダレスハウスさんの採用についてお聞きします。海外に住んだことがある、英語が喋れるなど、採用にあたっての条件などはあるのでしょうか。
細木さん
現状今のメンバーは海外在住の経験がある者が多くなっていますが、条件として必須というわけではありませんし、過去には海外旅行程度だという者もおりました。
海外で生活された経験がある方のマッチ度が高いのは「海外生活で周りの人に助けてもらったから、その経験を日本で暮らす海外の方に向けて還元したい」という想いを持っている方が多いからではないでしょうか。海外に住んだ経験がなくても、そういう想いを持っていることは必要だと思います。
英語に関しては、やはり業務の中で使用するため、ある程度喋れる必要があります。業務内容にもよりますが、私はお客様とお話したり電話対応をしたりしているため、6割以上英語を使っています。他の業務であっても3割から4割程度は英語を使用しているかな、という印象です。
イベントを運営するとなっても、英語で司会をしたりアナウンスをしたりする必要が出てきます。集客のための文章も日本語と英語で作成しています。英語を使った業務をしたいという方には良い環境なのではないでしょうか。
新しいポジションを自分で切り開いていきたい意欲のある方を歓迎
▲「いろいろなアイディアがある方に来ていただきたい」と話してくださった細木さん
編集部
最後に、記事をご覧になってボーダレスハウスさんに興味を持った読者の方に向けてメッセージを
細木さん
大変なところもありますが、我々の事業を通じてお客様の価値観の変容や新しいチャレンジのきっかけに寄り添える、とてもやりがいのある仕事です。
また、ボーダレスハウスはボーダレスハウスが掲げるビジョン向けて、今後も新しい事業や拠点にチャレンジしていく段階なので、今まで会社にはなかったポジションにもどんどんと挑戦していける環境があります。自分で仕事をどんどん切り拓いていきたい、新しいポジションを作っていきたいという方にはとてもチャンスがあると思います、いろいろなアイディアがある方にぜひ来ていただきたいなと思っています。
編集部
SDGsの観点からも非常に意義の高い事業を実施されているボーダレスハウス株式会社さん。人と人との交流をテーマにされている分、いろいろな方の意識が変わっていくのを実感できる、とてもやりがいがある仕事だと感じました。年数が浅い内からどんどんとやりたいことに挑戦できる環境も魅力的です。
本日はお忙しい中貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました!
■取材協力
ボーダレスハウス株式会社:https://www.borderless-house.jp/jp/
採用ページ:https://www.borderless-japan.com/recruit/
※ボーダレス・グループの採用ページです。