福岡と台湾に拠点を持つカプセルジャパン。「出戻り社員」も歓迎な働き方に迫る

独自性のある事業やグローバルな事業で注目される企業を紹介する本企画。今回は、日本と台湾を拠点にインフルエンサーマーケティングやYouTubeアニメのプロデュース、日本発のIPの世界展開を支援する事業を行う「カプセルジャパン株式会社」をインタビューしました。

カプセルジャパン株式会社とは

カプセルジャパン株式会社のオフィス内に飾られた所属クリエイター一覧

カプセルジャパン株式会社は、福岡と台湾に拠点を持つグローバルカンパニーとして、中華圏で活動するクリエイターのマネジメントや、インフルエンサーマーケティング、アニメをはじめとする日本のIPコンテンツの海外展開支援をしています。

YouTuberなどの個人がコンテンツを制作し収益をあげる「クリエイターエコノミー」が世界的に拡大しているのを背景に、カプセルジャパンの事業も成長を続けており、2022年にはYouTubeアニメのプロデュース事業にも参入しました。

会社名 カプセルジャパン株式会社
住所 福岡県福岡市中央区天神4-6-28 天神ファーストビル7階
台湾支店:台北市松山區八德路三段34號15樓
事業内容 ・台湾などにおけるYouTuberを中心としたクリエイターマネジメント
・YouTuberを軸としたインフルエンサーマーケティング
・YouTubeアニメを中心としたIPのプロデュース
設立 2013年11月
公式ページ https://jtg.capsuleinc.co/

今回は、カプセルジャパン株式会社の成長の秘訣や社内カルチャー、海外勤務が可能なインターン制度について、代表取締役の埴渕修世さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
カプセルジャパン株式会社の代表取締役である埴渕修世さん

カプセルジャパン株式会社
代表取締役

埴渕修世さん

インフルエンサー事業に加え、日本のIPの海外展開を支援

カプセルジャパン株式会社のオフィス内風景

編集部

最初に、カプセルジャパンさんの事業内容について教えてください。

埴渕さん

弊社は、日本と台湾に拠点を持つグローバルカンパニーとして、クリエイティビティやIP(※)を活用したビジネスを展開しています。
(※)Intellectual Property の略で、アニメキャラクターやなどの知的財産のこと

具体的な事業として、YouTuberを中心としたクリエイターマネジメントや、インフルエンサーを起用した台湾でのマーケティング支援を主軸としていますが、2022年からYouTubeアニメのプロデュース事業もスタートしました。

編集部

中華圏で活動するインフルエンサーのネットワークに強みをお持ちだと伺いました。

埴渕さん

はい。私たちは、弊社に所属するYouTuberを含め、台湾をはじめとする中華圏に影響力を持つインフルエンサーと広いつながりを持っています。そして、この強みを日本の企業・自治体の台湾におけるマーケティング支援に生かしています。

編集部

具体的に、どのような方法で支援しているのでしょうか?

埴渕さん

例えば、日本の自治体が台湾から観光客を呼び込みたいとき、台湾で人気のあるインフルエンサーを起用したプロモーションを行うことができます。

また、台湾に売り込みたい商品やサービスがある日本企業に対しては、ライフスタイル、食品、美容など商品ごとに最適な現地のインフルエンサーを起用してプロモーションすることができます。

編集部

現地で人気のあるYouTuberを起用し、現地目線に立ったマーケティングができるのですね。

埴渕さん

はい。社内にも台湾の市場やSNSトレンドを熟知したメンバーがたくさんいるので、現地の商習慣に合った最適なソリューションを提供することができます。

チャンネル登録者150万人!台湾で人気のYouTuberが所属

カプセルジャパン株式会社の所属クリエイターである「三原JAPAN」(左)と「アラン(阿倫)」(右)
▲所属クリエイターである三原JAPANさん(左)とアラン(阿倫)さん(右)

編集部

カプセルジャパンさんがマネジメントするYouTuberには、どのような方がいますか?

埴渕さん

弊社に所属する人気YouTuberに、三原慧悟さんが中心になって活動する「三原(サンエン)JAPAN」がいます。三原さんは日本人ですが、YouTuberとして海外でチャレンジしたいという気持ちを持っており、弊社で再生回数やチャンネル登録者数の拡大を支援してきました。

今ではチャンネル登録者数が150万人を超え、台湾で活動する日本人YouTuberとして現地で有名な存在となっています。2019年には台湾の蔡英文総統とのコラボレーションも実現しました。

また、日本に住んで10年になる台湾人のアランさんは「台湾人に向けて日本を紹介するならアラン」という存在になりたいという希望を持ち、台湾人から見た日本の魅力などについてYouTubeで発信しています。

その結果、日本在住の台湾人KOL(※)として認知されており、日本の企業が台湾向けのプロモーションを行う時にアランさんをインフルエンサーとして起用していただく機会も増えています。
(※)Key Opinion Leaderの略で、消費者の購買意志決定などに強い影響力を持つ人を指す

編集部

訪日客数が回復しているほか、日本市場の縮小などを背景に海外進出を狙う企業も増えているので、カプセルジャパンさんのようなインバウンド・アウトバウンド支援は、今後ますます必要とされそうです。

日本のVTuberやアニメの価値を世界で高めたい

カプセルジャパン株式会社所属クリエイターのIPコンテンツであるYouTubeアニメ「大学生ズの恋。」のキャラクター
▲YouTubeアニメ「大学生ズの恋。」は2022年3月の活動開始以来、累計3億回以上の視聴回数を達成している。

編集部

アニメなどのIPコンテンツ事業については、どのような事例がありますか?

埴渕さん

YouTubeアニメ専門の編集・運用チームが社内あり、所属クリエイターのチャンネル「大学生ズの恋。」の運用、「魔法少女プリズマジカ」など自社オリジナルアニメの制作および運営を実施しています。

その他の事例としては、日本発の英語圏向けVTuberグループ「ホロライブEnglish」(YouTubeチャンネル累計登録者数1780万人以上)の海外プロモーション支援として、台湾でのコラボカフェの企画・運営を行いました。

編集部

反響はいかがでしたか?

埴渕さん

若い人から年配の方まで多くの方にご来店いただき、日本のIPやエンタメコンテンツの力を感じました。

VTuberやアニメ、漫画といった日本のエンタメカルチャーには世界中に多くのファンがいますが、海外でビジネスとして成功させる方法に悩む企業が多い実情があります。弊社では、そのような企業様と一緒になって、日本が誇るIPを海外に売り込む戦略を考えたいと思っています。

編集部

日本のIPにはまだまだ可能性があるということですね。

埴渕さん

はい。弊社は、インターネット発のIPの価値を最大化することを目指しており、ミッションに「Empower and expand internet-driven IPs.」を掲げています。

現在は台湾を中心に事業を行っていますが、今後はよりグローバルに活動しながら、世界における日本のIPの存在感を高めたいと思っています。

編集部

IPの価値が上がれば、コンテンツを作るクリエイターさんの活躍の場が広がり、収益面でもプラスに働きますね。

カプセルジャパン株式会社の公式サイトに掲載されたミッション
▲カプセルジャパン株式会社は「Empower and expand internet-driven IPs.」というミッションのもと、日本のエンタメカルチャーの世界展開を支援している(公式サイトから引用)

起業のきっかけはイラクの友人。カプセルジャパンの成長の軌跡

カプセルジャパン株式会社のオフィス内風景

編集部

2013年に埴渕さんが設立したカプセルジャパンさんですが、創業からどのような成長過程を経て、現在に至ったのかお伺いできますか?

埴渕さん

カプセルジャパンは、私が29歳のときに立ち上げた会社です。サラリーマンとして働いていたときから、30歳になる前に起業しようと決めていました。

編集部

起業したいと思ったきっかけは何ですか?

埴渕さん

私は学生時代にバックパッカーや留学生として海外で過ごすことが多かったのですが、ロンドンに留学中、当時アメリカと戦争をしていたイラク出身の友人から戦争の話を聞く機会があり「何とかしたいのに、自分には何もできない」と無力さを感じました。

それをきっかけに、「何かを変えるためにはパワーをつけなければいけない」と思い、起業を目指すようになりました。

編集部

世の中を変えたり影響を与えたりするためには組織の力が必要だと考えたのですね。福岡で創業したのには理由があるのでしょうか?

埴渕さん

福岡市は2012年、雇用創出や経済活性化を目的に「スタートアップ都市」を宣言しました。私は福岡に縁もゆかりもなかったのですが、「ここに行ったら良さそうだ」という思いで福岡で起業しました。

そこからどのようなビジネスをするのか考え始めたのですが、起業前に台湾で働いていたこともあり、自分の強みを活かすなら台湾にいた方が可能性がありそうだと感じ、2〜3年後には拠点を台湾に移しました。

編集部

はじめは事業内容も固まっていなかったということですが、どのような経緯で現在のビジネスに至ったのでしょうか。

埴渕さん

台湾に拠点を移してからも紆余曲折が続き、インターネット関連のサービスなどを試していました。ある時、仕事の一環でYouTuberさんにプロモーションをお願いする機会があり、その時はじめてYouTuberの費用対効果の良さを知り、衝撃を受けました。これが、現在のビジネスの原点です。

はじめはそのYouTuberさんの問い合わせ対応やファンミーティングの開催などを手伝う程度だったのですが、次第に事業を拡大し、インフルエンサーを起用したマーケティング支援などを行うようになりました。

編集部

埴渕さんの信念や行動力が、カプセルジャパンさんの今の姿につながっているのですね。

新規事業としてYouTubeアニメの制作を開始

カプセルジャパン株式会社のオフィス内風景

編集部

今ではインフルエンサーを起用したプロモーション支援を年間1,000件以上手がけていると伺いました。近年の成長について、どのように感じていますか?

埴渕さん

YouTuberなどのクリエイターエコノミー(※)自体が世界的に成長していることもあり、所属・提携しているYouTuberの売り上げも年々増えています。
(※)クリエイターやインフルエンサーが自分が制作したコンテンツで収益を得ることで形成される経済圏

インフルエンサーのネットワークを広げる取り組みも行いますが、今は所属・提携するクリエイターの活躍の場をさらに広げ、価値を最大化することを優先しています。

また、先ほどお話ししたように、新規ビジネスとしてYouTubeアニメの制作やプロデュースを手がける事業をスタートしています。クリエイター支援事業などで培ったノウハウを活かし、世界展開ができるような自社発のIPコンテンツの創出を推進します。

編集部

この数年は、新型コロナウイルスや、地政学的リスクの高まりなど、世界の情勢が目まぐるしく変わっています。グローバルに事業を展開するなかで、大変なことはありますか?

埴渕さん

大変なことはとても多いですが、そんな時は、事業の見直をしたりリスクヘッジを考えたりするための機会だと前向きに捉えるようにしています。

創業の地・福岡から更なるグローバル企業を目指す

編集部

カプセルジャパンさんは一時期、東京に移転していましたが、2023年4月に再び福岡に本社を戻しました。その狙いについても教えてください。

埴渕さん

福岡から台湾へは東京より短い約2時間半のフライトで行けますし、香港や韓国、タイなどこれから本格進出したい地域へのアクセスも便利です。

私たちの強みを考えたときに、日本のコンテンツやクリエイティビティを世界に広げる取り組みは他社ではなかなかできないと改めて気づいたので、これからは福岡を拠点にして成長をさらに加速させたいと考えています。

編集部

福岡で働くことに対して、どのような印象をもっていますか?

埴渕さん

福岡は、新しいチャレンジをしたり、海外を目指したりすることを応援してくれる風土が強いと感じます。

編集部

食べ物が美味しいことも大きなポイントでしょうか。

埴渕さん

そうですね。美味しいご飯が食べられる場所で働くことは、仕事のモチベーションにプラスに働くと思います。

現在、タイと韓国の企業の買収を検討しており、どちらも美味しい料理がある国です。もしかしたら、ご飯が美味しい国だけをM&A対象にしたら、ビジネスがうまくいくかもしれませんね。

編集部

2022年にはYouTubeアニメのプロデュース事業もはじめたカプセルジャパンさん。創業の地である福岡で、これまで以上に活躍する姿が見られそうです。

平均年齢27歳、「出戻り」OKなカプセルジャパンの働き方

カプセルジャパン株式会社で働くメンバー

編集部

ここからは、カプセルジャパンさんで働くメンバーやカルチャーについて伺いたいと思います。まず、現在の従業員数を教えていただけますか?

埴渕さん

全体で約120名が働いており、台湾出身の人が約100名、日本人が20名ほどです。香港やマレーシア出身のメンバーもいます。

オフィスは福岡や東京、台北にあり、希望に応じて出社やリモートで働いています。

編集部

社員の平均年齢についても教えてください。

埴渕さん

27歳ぐらいです。平均年齢が比較的低いのは、弊社があえて人材の流動性を受け入れているからでもあります。

編集部

長く働くことを求めるより、カプセルジャパンさんで力をつけてから新たな成長や活躍の場でチャレンジすることを応援するということでしょうか。

埴渕さん

そうですね。もちろん、弊社で活躍してずっと働いてくれたら嬉しいですが、市場環境や会社の都合で、必ずしも100%フィットする仕事を提供できるとは限りません。それならば、もっと自分の強みを活かせる場所で挑戦してもらう方が本人にとってプラスだと考えています。

退職後にほかの仕事を経験してから再び戻ってくる「出戻り社員」も歓迎しており、弊社では5〜10%がそのような社員です。ほかの場所での経験を通じてひとまわり成長した社員は、弊社に新しい価値観やアイデアをもたらしてくれる存在として活躍してくれています。

編集部

出戻り社員がそれだけいるということは、退職したメンバーとも関係性も維持しているということでしょうか?

埴渕さん

はい。個人間でコミュニケーションをとり続けることもありますし、社を挙げた取り組みとしては半年に1度、退職者も参加するイベントとしてバーベキューなどを開催しています。

パリ在住メンバーも。世界を舞台に活躍できる環境がある

カプセルジャパン株式会社で働くメンバー

編集部

カプセルジャパンで活躍しているメンバーの具体例についても教えてください。

埴渕さん

インターンとして台湾のオフィスで働いていた日本人の女性が、正社員に採用されて東京のオフィスで活躍している例があります。日本を拠点にした事業に挑戦したいという思いがある人で、会社が求める人材と、彼女が目指す姿がマッチしたので、正社員になってもらいました。

編集部

ライフステージが変わっても活躍している社員の例はありますか?

埴渕さん

結婚を機にパリに移住した台湾人の女性社員がおり、現在リモート勤務をしながら働いています。

弊社がちょうどコンテンツの海外展開に力を入れるタイミングということもあり、彼女にはフランスでのビジネス展開に貢献してもらっていて、「ちょっとパリのこの会社に行ってもらえる?」という感じで、パートナー探しなどをお願いしています。

彼女としても、パリにいることでバリューを発揮できているという満足感を持ちながら働くことができていると思います。

編集部

IPの世界展開を狙うカプセルジャパンさんなら、世界中どこにいても活躍のチャンスがありそうですね。

カプセルジャパンのインターンは海外勤務のチャンスあり

カプセルジャパン株式会社で働くメンバー

編集部

インターン制度についてもお伺いしたいと思います。先ほどのお話にあった方のように、カプセルジャパンさんでは日本人のインターンが台湾で勤務することもできるのでしょうか?

埴渕さん

はい。海外で勤務するインターンも積極的に受け入れています。日本人が台湾で働く場合もありますし、台湾のインターンが日本のオフィスで働くこともあります。

今後、M&Aなどを通じて他の国にもグループ会社を構えたいと思っており、どの拠点でもできるだけ文化や国がミックスされたチームを作りたいと考えています。

編集部

インターンの方に任せる仕事は企業によって異なりますが、カプセルジャパンさんではどのような業務を経験できますか?

埴渕さん

OJTで実務をたくさん経験してもらっています。

私は常に、「もし自分が社員やインターンとしてカプセルジャパンで働くとしたら、どのような教育制度があったらいいだろうか?」とイメージしながら組織づくりをしています。私が学生時代に参加したインターンでは、現場仕事を通じて大きく成長できたので、弊社のインターンにもできる限り責任のある業務を任せたいと思っています。

編集部

今後も、インターンは積極的に受け入れる予定ですか?

埴渕さん

はい。特に、福岡本社でのインターンを強化したいと考えています。地方都市では東京に比べて経験者の採用が難しいので、今後は定期的にインターンの採用を行い、若いメンバーの育成や企業文化の醸成も行っていきたいです。

編集部

実際の業務に関わることができるインターンは貴重ですし、海外で勤務できるチャンスがあるのも魅力的だと感じました。

クリエイターファーストで考えられる仲間を歓迎

カプセルジャパン株式会社の社員集合写真

編集部

カプセルジャパンさんで働く仲間に求めることや人物像について、教えてください。

埴渕さん

メンバーに求めることのひとつに「クリエイターファースト」があります。

YouTubeコンテンツやさまざまなクリエイティビティを扱っていると、どうしてもビジネスとクリエイティビティの衝突が起きることがあります。

短期的に儲かるやり方があったとしても、長期的に見た時にクリエイターのファンが離れる可能性があるような時は、それをやらない判断をするなど、メンバーにはクリエイターのことを第一に考えた決断をしてほしいと思っています。

編集部

インフルエンサーやインターネットIPの世界は、トレンドの変化が激しいと思います。そのような事業を行ううえでメンバーに求める姿勢はありますか?

埴渕さん

冒険をいとわないで挑戦してほしいです。この業界は変化が激しい分、チャンスもたくさん訪れます。しかし、遠慮したり一歩踏み出すのを躊躇したりすると、機会を掴み損ねてしまいます。だからこそ、恐れないで冒険してほしいと思います。

編集部

若い人の方がカプセルジャパンさんの事業に親和性があるように感じますが、いかがですか?

埴渕さん

そうですね、私は40歳になりますが、この仕事をしていなかったらVTuberが何かも知らなかったかもしれません。

この仕事では、自分の常識にとらわれず、時には高校生や大学生の気持ちになって彼らの常識を理解することが必要です。それができないと古い会社になってしまいます。

年齢が若くなくてもいいですが、自分と異なる常識を積極的に受け入れる人であることは重要だと思います。

編集部

日台をつなぐインフルエンサー事業から始まり、日本のIPの世界展開を目指してYouTubeアニメのプロデュース事業も始めたカプセルジャパンさん。更なる企業成長が見込まれるので、働くメンバーが活躍できるチャンスもたくさんありそうです。

本日は、ありがとうございました。

■取材協力
カプセルジャパン株式会社:https://jtg.capsuleinc.co/
採用ページ:https://jtg.capsuleinc.co/careers