株式会社インターホールディングスの真空特許技術が挑む食品ロス削減と循環型社会の実現

成長著しい企業の特徴的な事業や、躍進を支える理念、今後の展望などを紹介するこの企画。今回は世界最高峰の真空特許技術を保持し、二酸化炭素排出とフードロスの削減など、サプライチェーンが抱える課題解決に挑む、株式会社インターホールディングスを取材しました。

世界唯一の真空特許技術で地球課題を解決する株式会社インターホールディングス

株式会社インターホールディングスは、真空特許技術を活用し、サプライチェーン向け事業を展開するクライメートテック(※)分野のスタートアップ企業です。保有している真空特許技術は、ロケットと同じ技術を使用しており、真空率99.5%を実現する世界唯一の技術として注目されています。
※クライメートテック:二酸化炭素排出量の削減・地球温暖化の影響への対策などを講じるための革新的なテクノロジー

真空特許技術を活用することで、地球全体で年間約10億トン排出されている二酸化炭素を、10年後には1%にあたる5.7億トンに削減することを目標に掲げる同社は、多くのサプライチェーンが抱えるフードロス、GHG(温室効果ガス)、コスト削減などの課題解決支援を通じ、循環型社会の発展に寄与することを目指しています。

会社名 株式会社インターホールディングス
住所 東京都渋谷区恵比寿3丁目42-13 1F
事業内容 真空特許技術のライセンスおよび製品ビジネス
環境アクセラレータービジネス
設立 2019年3月
公式ページ https://www.inter-hs.com/

そこで今回は、真空特許技術がもたらす食品ロスや二酸化炭素の削減の可能性や、企業成長の背景にあるインターホールディングスのビジネスモデルなどについて、代表取締役社長CEOの成井五久実さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社インターホールディングス代表取締役社長CEOの成井五久実さん

株式会社インターホールディングス
代表取締役社長CEO

成井 五久実さん

真空特許技術のライセンスおよび製品ビジネス、環境アクセラレータービジネスを展開

株式会社インターホールディングスの真空サプライチェーンソリューションのイメージ画像
▲独自の真空技術を活用し、生産から消費までを真空で保存することで賞味・消費期限の大幅な延長を可能としている(公式サイトから引用)

編集部

インターホールディングスさんが保有する真空特許技術は、どのような分野で活用されているのでしょう。まずは事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

成井さん

当社は世界中の個別包装をできる限りなくすことを目標に、2019年に設立したスタートアップ企業です。世界最高峰の99.5%の真空率を実現する真空特許技術を活用し、サプライチェーン向けに真空特許技術のライセンスおよび製品ビジネス、環境アクセラレータービジネスを展開しています。

独自の真空技術を活用した真空サプライチェーンソリューション「INTER®︎」は、生産から消費までを真空で保存することで賞味・消費期限の大幅な延長を可能とします。

編集部

通常保存と真空保存とでは、具体的にどのような差が出るのでしょう。

成井さん

食品を真空で保存することで、劣化や腐敗の原因となる酸化を止めることができます。例えばお米の場合、真空保存をすることで約半年間は新米の状態をキープすることができます。

ワインの飲み残しをボトルのまま保存をするとすぐに酸化が進み、風味が劣化してしまいますが、当社の超高真空容器なら、約1ヶ月間、味が全く変化することなく保存ができます。

ロスを出さず、しかも鮮度を保つ。実店舗での導入事例とは

株式会社インターホールディングスが開発した機器による「無添加ベジブロス」の量り売りのようす
▲提携する「HACARI中目黒店」で、実際に量り売りをおこなっているようす

編集部

インターホールディングスの技術を、実際に導入されている企業の事例をご紹介いただけますか?

成井さん

株式会社yolozが運営する野菜量り売り専門店「HACARI中目黒店」とタッグを組み、フードロス削減に向けた取り組みを行っています。

同社が販売する「無添加ベジブロス」は、本来廃棄になる野菜のへたや切れ端などを活用した出汁となっており、フードロスに大きな成果を上げている反面、添加物不使用のため賞味期限が短く、商品化が困難でした。

そこで当社の真空特許技術を用いた液体用の真空容器「懸垂量り売り用液体真空容器」を活用することで、賞味期限を3日から14日に延ばすことができるようになりました。また、必要な分だけを購入できる量り売りなので、ロスが全く出ないという成功事例となっています。

編集部

インターホールディングスさんの真空特許技術を用いることで、出汁のような液体も風味を劣化させることなく、消費者はまるで出来立てのような味わいを楽しめるのですね。

株式会社インターホールディングスの技術で実現したシャンプー&トリートメントの真空量り売り
▲他には美容院での事例も。シャンプーおよびトリートメントを真空量り売りすることで、劣化を防ぎながらプラスチックゴミの削減も達成

“「捨てない」毎日を、未来に”。循環型社会の実現に向けた取り組み

株式会社インターホールディングスのスローガン
▲真空特許技術による長期保存方法を食品や生活用品の販売に組み込むことで、「捨てる」を極限に減らすことを目指している(公式サイトから引用)

編集部

国内外の多くの企業が注目する真空特許技術を、2022年に権利譲渡されたインターホールディングスさんですが、譲渡の背景にはどのような理由があると思われますか?

成井さん

これまで600以上の特許を取得し、NASAのアポロ計画にも参加されている日本を代表する発明家の1人である萩原忠氏が開発した真空技術は、一般的な真空率が70〜80%とされるところを、99.5%の真空率をキープにすることができる唯一の真空特許技術です。

名だたる企業が真空特許技術を求めるなか譲渡いただけたのは、当社が提案した農家や物流、小売、消費者というサプライチェーン全体に真空技術を広める世界規模のビジネスモデルとそれらをグローバルに展開していく事業構想に共感いただけたことが一番の理由だと思っています。

クライメートテックスタートアップとして“「捨てない」毎日を、未来に”をスローガンに掲げ、ペットボトルなどの使い捨て容器や食品ロスをなくすことで温室効果ガスやコスト削減などの課題を解決し、循環型社会の発展に寄与することを目指し、日々奮闘しています。

真空特許技術の社会実装が企業成長を促進

株式会社インターホールディングスの代表取締役である成井さんが「デル女性起業家ビジネスコンテスト 2023」でプレゼンしたときのようす
▲成井さんの「デル女性起業家ビジネスコンテスト 2023」でのプレゼン風景

編集部

現在、地球上ではどれほどの食料が廃棄されているのでしょう。

成井さん

人口が減少傾向にある日本ですが、世界全体では人口が増加している今、年間約13トンもの食品が破棄されているのが実情です。この数字は地球上で生産される食品の3分の1が捨てられていることを意味しますが、一方では食料飢餓が生まれる矛盾が生じています。

その原因として考えられているのが膨大な量の廃棄食材を処理する際に発生する温室効果ガスです。地球温暖化をもたらし、干ばつや洪水などの異常気象の一因となる温室効果ガスが農業に打撃を与えることに加え、フードロスを放置したままで必要以上の食料を生産したり輸入したりすることは、輸出国の資源枯渇につながり、生産国での飢餓が増える原因となってしまいます。

飢餓をなくすために生産量を爆発的に増やすのは難しく、循環型社会の実現には食品をムダにしないことが急務です。これらの状況から見ても、賞味期限を伸ばす真空技術は注目の分野だと思われます。

編集部

真空特許技術でフードロスや温室効果ガスの解決の一躍を担っているインターホールディングスさんですが、成長の背景にはどのようなビジネスモデルが関係しているのでしょう。

成井さん

成長の理由として、特許という技術をもとにスピード感を持って様々な分野の事業開発を進められていることが挙げられます。知財ビジネスは難しい分野なので、当社のようなスタートアップで参入している企業は多くありません。

当社は特許を取得したことで最速かつ、強固な基盤のビジネスモデルを構築し、社会実装されるまでのプロセスを明確化することで、循環型社会を可能としています。

賞味期限が延長され、フードロスがなくなる世界を目指す過程に、当社の真空特許技術をさまざまな企業様が開放し、使っていくことで収益が成り立っていくと分析します。

編集部

真空特許技術を自社で抱え込むのではなく、幅広く活用してもらうことで収益を上げ、同時に循環型社会にも貢献されていることがわかりました。

カーボンクレジット市場への参入で、クライメートテックのリーディングカンパニーを目指す

真空特許技術を用いた逆止弁の真空パック
▲誰でも簡単に真空化できる逆止弁の真空パックは、リユースすることが可能(公式サイトから引用)

編集部

循環型社会の実現に向け、インターホールディングスさんがフードロスの他に取り組まれていることはありますか?

成井さん

当社の真空特許技術を用いた逆止弁の真空パックを、長期的な目線でリユースすることでカーボンクレジット市場への参入を目指しています。使用済みの真空パックを洗浄し、再利用することでCO2の削減に大きく貢献し、クライメートテックのスタートアップとして、知名度を上げていきたいと考えています。

編集部

インターホールディングスの真空特許技術は、ますますの成長と発展が期待されます。今後の展望についてもお聞かせいただけますでしょうか。

成井さん

真空特許技術を保持しているだけでは知財ビジネスは成立しないため、その技術をいかに社会実装まで持っていくかが当社の力が試されるところだと思っています。

当社の現在のフェーズは社会実装の方法として、地方自治体やJA様、一次産業分野や食品メーカーなどにアプローチをし、食と密接な関係にあるさまざまな機関や企業様に真空特許技術を活用いただくことに尽力しているところにあります。

2025年までに輸出実績を2兆円にすることを目標に掲げているわが国において、農作物や水産物の鮮度保持や賞味期限の大幅な延長は付加価値となり、価格を上げることにつながります。そこに当社の真空特許技術を活用してもらえるよう、積極的にアプローチをしていく方針です。

編集部

社会実装が拡大することで、インターホールディングスさんが目指す循環型社会の実現に近づくというわけですね。

自分のアイデアで世界が変わる。自己表現ができるメンバーが活躍

株式会社インターホールディングスの代表取締役である成井さんが「デル女性起業家ビジネスコンテスト 2023」で第3位に入賞されたときの表彰風景
▲「デル女性起業家ビジネスコンテスト 2023」で成井さんは第3位に入賞された。その他、同社にはプロフェッショナルなメンバーが揃う

編集部

スタートアップ企業であるインターホールディングスさんのメンバーは、どのような価値観を持って活躍されているのでしょう。

成井さん

人生で一番多く時間を費やす仕事の中でそれぞれの強みを活かし、社会に求められる瞬間を多く作ることを大切にしています。個々の強みを結集させることで自分の強みを最大限に生かし、自己表現ができる会社にすることをメンバー全員と感じていきたいと思っています。

編集部

インターホールディングスさんの真空特許技術を第一線で取り扱う、営業チームはどのような方が活躍されていますか?

成井さん

真空特許技術の社会実装には非常に時間がかかるのが実情ですが、当社の営業チームはバイタリティに溢れており、最強のメンバーが揃っています。

中でも私が人類最強の営業マンと評価する取締役COOの山口には絶大な信頼を置いており、彼が毎日、一生懸命やっていても時間がかかるのなら、それは人類にとって最短なのだと納得し、仕事をしています。

編集部

営業チームをはじめ、インターホールディングスさんにジョインする方は、どのようなことにやりがいを感じていると思われますか?

成井さん

自分のアイデアで世界が変わる可能性を秘めていることにやりがいを感じているメンバーが多いように思われます。

当社は世界で唯一の真空特許技術を持っていますが、取引先となる食品メーカー様や物流企業に技術を渡すことはありません。つまり、真空特許技術をどのように活かすかを自分で考え、企画することで初めて世界を変えうる事業を生み出すことができるのです。

編集部

今のお話から、先ほど成井さんがおっしゃった「真空特許技術を保持しているだけでは知財ビジネスは成立しない」という意味を、改めて理解することができました。

グローバルな視点で社会課題解決に熱量を持って取り組める方を歓迎

編集部

ここまでお話を伺い、インターホールディングスさんが所有する真空特許技術が食品の長期保存を実現することで、私たち消費者は「捨てない」毎日を続けられることがわかりました。

素晴らしい技術とアイデアを持つ御社にジョインするには、どのような方がフィットするとお考えですか?採用に求める条件と併せてお聞かせください。

成井さん

求めるマインドとしては3つあり、1つは社会課題解決に熱量を持って取り組めることが挙げられます。その社会課題に対し、グローバルな視点を持つことが2つ目となります。

日本の物価が東南アジア諸国から比べても落ちている現状を考えたとき、日本国内の基準でビジネスを考える自分のコンフォータブルゾーン(※)から外れて世界に挑戦することで、日本の物価はまた上がってくると信じていることがその理由です。
(※)コンフォータブルゾーン:自分にとって居心地の良い場所

3つ目は自分の強みを理解し、その強みを社会に還元していくといった、明確な強みの認識を持った方と一緒に働きたいと思っています。

また、私自身が女性起業家ということもあり、ダイバーシティの実現を体現していきたいと考えています。国籍や性別を問わずに採用する方針なので、ぜひ、多くの方に応募いただけたら幸いです。

編集部

本日伺ったお話は、転職を検討している読者はもちろん、社会課題の解決や地球環境保護に興味を持っている読者にとっても、非常に有意義な内容として届くと思われます。

貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

■取材協力
株式会社インターホールディングス:https://www.inter-hs.com/