躍進する企業の成長要因やワークライフバランスについて紹介するこの企画。今回は、配送伝票や配送ラベルをはじめとする多様な印刷物の製造、自動車製造業向けの生産物流システムの開発、郵送物に関するデータ処理事業などを手がける小林クリエイト株式会社を取材しました。
小林クリエイト株式会社:86年の歴史と多角的な事業展開
1937年創業の小林クリエイト株式会社は、印刷サービスを主軸に事業を展開する企業です。国内で初めて計測用記録紙の製造に成功した同社は、印刷サービスの他、自動車製造業向けの生産物流関連のシステム開発、郵送物などに関するデータ処理事業、医療関連用品の販売、医療関連システムの開発など、多岐にわたる事業を展開しています。
会社名 | 小林クリエイト株式会社 |
---|---|
住所 | 愛知県刈谷市小垣江町北高根115番地 |
事業内容 | ・データプリントサービスなどの業務受託サービスの販売・運用 ・業務システムの開発・販売・保守・運用 ・医療関連用品の販売および医療関連システムの開発・販売・レンタル・保守・運用 ・業務用帳票の製造・販売 ・計測器用記録紙の製造・販売および関連用品の販売 ・コンピュータ関連用品およびオフィス用品の販売 ・業務用機器の製造・販売・レンタル・保守 ・植物工場による野菜の生産・販売 |
設立 | 1946年5月30日 |
公式ページ | https://k-cr.jp/ |
働き方 | ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク) |
創業86年を迎える全国展開の印刷メーカーである同社は、企業の課題解決や業務改善を行う企業として新たな分野にも積極的に挑戦しています。全国に営業拠点を持ち、中国にも海外関連会社を設けており、さらなる成長が期待されます。
そこで今回は、経営企画部部長の原田さんと経営企画部人事企画課の片岡さんに、小林クリエイトの企業成長を促す要因やカルチャー、ワークライフバランスについてお話を伺いました。
小林クリエイトのRFID事業:394億円の売上を支える成長の柱
編集部
小林クリエイトさんは、日本で初めて計測用記録紙の製造に成功され、創業86年を迎えた今も印刷サービス業界を牽引されています。成長を実感できる具体的な数字などがあれば、お聞かせください。
片岡さん
はい。当社の売上高は2021年度が367億4000万円、2022年度が371億9600万円、2023年度が約394億円と、着実に増益しており、成長を実感しております。
編集部
右肩上がりで売上が伸びている要因はどのようなものだとお考えですか?
原田さん
コロナ禍で一時的に落ち込みはありましたが、その後、官公庁など行政向けの案件が回復したことが最も大きな要因です。
特に、2023年1月1日より開始された国土交通省の自動車検証電子化事業が大きく貢献しています。自動車検査証の有効期間、所有者の氏名・住所、使用者の住所、使用の本拠の位置などが登録された電子車検証の製造・納品を当社が全て請け負っております。このRFID(※)技術を国の事業に導入できたことが、成長の最大の要因だと分析しています。
※RFID:電波を用いてICタグやICチップの情報を非接触で読み書きする自動認識技術
編集部
電子車検証には、小林クリエイトさんのどのような技術が活かされているのでしょうか。
原田さん
電子車検証は、7インチサイズの台紙にICタグを付けています。当社の技術は、ICタグを印刷物に貼り付ける工程や、貼り付けた印刷物を一般のプリンターで使用できるようにする部分で活かされています。
さらに、搬送中のICタグ破損を防ぐ仕組みも当社のテクノロジーによるものです。これらの技術が国土交通省に評価され、採用に至りました。
当社の強みは、従来の印刷技術に加え、ICタグやICチップの貼付、切り抜き、のり塗布などの加工技術です。
編集部
今後、国内の全自動車に御社の技術を活用した電子車検証が発行されるため、さらなる増益が期待できますね。
自動車業界における小林クリエイトのRFID技術:業務効率化の実現
編集部
電子車検のほか、御社のRFID事業の導入実績を教えていただけますか?
原田さん
愛知県の大手自動車会社様に導入実績がございます。完成車両を日本全国の販売店に納品する際、工場はオプションの有無や車体の色、シートの種類などを正しく組み込む必要があります。膨大なチェック項目は物流管理表と呼ばれる帳票でチェックします。現在はその帳票にもICチップが搭載されるようになっており、その製造を当社が請け負っています。
完成車両の90%にICチップ付きの帳票がついているため、納品時のミスの大幅な軽減に役立てられています。
編集部
小林クリエイトさんのRFID事業は、今後どのような分野で活用されることが予想されますか?
原田さん
現在、当社が注目しているのが医療分野です。例えば、介護施設では入居者が施設を抜け出し、迷子になるケースが稀にあります。ICチップが内蔵されたリストバンドなどを入居者に身につけていただくことで、施設側は入居者の現在位置をリアルタイムで把握することができます。
また、医療施設では夜間に点滴や投薬など処置が必要な患者様に対し、照明を明るくしなくてもICチップを読み取ることで本人確認ができます。このような技術を活用することで、医療現場におけるトラブルの撲滅に貢献したいと考えています。
さらに、流通や製造の分野でも活用の幅を広げたいと考えています。商品や材料の数量、保管場所、移動経路などを正確に把握することで、欠品防止や不正流通の防止に役立てていきたいと考えています。
農業分野にも活用されるRFID技術。“植物工場”でレタスの安定収量、品質、価格に挑む!
編集部
小林クリエイトさんではアグリ事業にも取り組まれていますが、こちらについて詳しくご紹介いただけますか?
原田さん
食糧の安定供給への取り組みとして、完全に管理された環境で収量・品質を安定させて野菜を生産する植物工場事業に取り組んでいます。現在はレタスの栽培に注力しており、苗にICチップを付けて、肥料量や日照時間などのデータを収集しています。これにより、育成状況を見える化し、品質と価格の安定化を目指しています。
閉鎖環境である植物工場内では、病害虫のリスクがほとんどないため、露地栽培よりも日持ちのするレタスを供給できています。また、天候に左右されずに安定した生産が可能となっています。
製造から輸送までを一貫して請け負うBPO事業
編集部
小林クリエイトさんはBPO(※)事業にも力を入れているとのことですが、御社のBPO事業の特徴や強みについてお聞かせください。
※BPO:Business process outsourcing。企業が自社内部で行っている特定の業務やプロセスを、外部の専門的なサービスプロバイダーに委託するビジネスの手法
原田さん
印刷サービスを主軸とする当社のBPO事業は、もともと請求書や領収書、ダイレクトメールなど、個別のトランザクション系の書類を印刷してお客様にお返しするといった、ベーシックな作業を行っていました。
健康診断においても、診断結果を印刷して、受診された方に郵送するまでが従来の当社の仕事でした。しかし健康診断には、予約の受付や事前に問診票や検便キットなどを郵送する業務があります。病院や医療施設の職員が手作業で行っていた部分を当社が担えば、予約から結果の郵送までをすべてアウトソーシング化することができます。これにより、医療機関は本来の業務である健康診断にのみ人員や経費を充てることができます。
編集部
印刷サービスからBPOに発展した背景やきっかけについてお聞かせください。
原田さん
BPO事業スタート時は、印刷物のデータをお預かりして印刷をし、お客様にお返しする部分のみを当社で請け負っていました。その際、大手自動車会社様より、印刷物を部署別に仕分けをして郵送してほしいという依頼を受けたことが、当社のBPO事業の発展のきっかけです。
しかし受けたはいいものの、お客様のデータ内に部署ごとの情報が入っていなかったため、情報がある部分から当社が判断をして仕分けしたものをポスティングをするサービスを始めました。この経験から単に印刷したデータを郵送するだけではなく、その前後の作業にお客様のお困りごとがあることがわかり、送る、受け取るまでの一連の作業を担うようになったのが当社の現在のBPO事業です。
編集部
長年培った印刷サービスの技術を軸に、流通までを一貫して小林クリエイトさんが請け負うことで、企業は業務フローやプロセスを改善できるというわけですね。
新BPO工場の設立:効率化とセキュリティ強化の実現
編集部
2024年秋にBPO事業の新工場が稼働すると伺っております。規模はどのくらいなのでしょう。
原田さん
5階建ての工場は、1、2階が物流倉庫、3、4、5階で印刷と処理を行う構造になっています。1フロアが約2,000平米、総床面積は約1万2,000平米という規模の工場が完成する予定です。
編集部
ますますの発展が期待されますが、工場新設にはどのような狙いがあるのでしょう。
原田さん
創業86年を迎える当社は、比較的コンパクトな工場をいくつか建てながら、徐々に現在の規模にまで拡大してきました。しかしながら情報入力、印刷、仕分け、梱包、郵送と、工程が細分化するBPO事業において、工場が点在していると効率化が悪いという実情がありました。それらを1箇所の工場にまとめ、効率化を図ることが工場新設の狙いです。
工場の下層階に物流倉庫を作り、印刷の階層に上げて印刷をかけ、加工の階層、処理の階層と、最終工程の出荷までが1つの工場でできるようになっています。また、BPOでは個人情報を取り扱うものも多く、建物間を移動させるには厳重な管理が必要でした。今回新設する工場では建物内ですべて完結するので、セキュリティ面も強化されました。
小林クリエイトの未来戦略:RFID技術とBPOサービスによる業務改革
編集部
印刷サービスとRFIDによる自動認識のノウハウを生かしたソリューションを展開されている小林クリエイトさんの今後の展望についてお聞かせください。
原田さん
自動車製造業向けの物流管理表の事業が今後拡大する中、従来の紙に印刷する方式では情報を書き換えることができません。そこで、RFIDによるICタグやICチップを活用することで、情報の書き換えが可能になります。つまり、情報を持ち運びながら更新できるようになります。当社はこの一連の流れを担うことで、お客様のビジネスに貢献することを目指しています。
ICチップが付いた材料や製品の数量、価格などの情報を、ゲートを通過するたびに読み取り、更新、整理することで、リアルタイムで物流を制御できる仕組みを構築したいと考えています。
BPO事業においても、現在手がけている物流関連の業務に当社のRFID技術を組み合わせることで、少人数でも効率的で正確な物流の実現に取り組む方針です。
編集部
印刷サービスの枠にとらわれず、新しいことに常にチャレンジしている姿勢が、企業成長につながっているのですね。
ワークライフバランス推進委員会が推奨する男性社員の育休取得
▲ワークライフバランス推進委員会主催の男性育休推進セミナーでは、多くの社員が参加し制度を活用している
編集部
続いて、小林クリエイトさんの働き方や福利厚生などの制度についてお聞きします。御社にはワークライフバランス推進委員会があると伺っております。片岡さんは委員の1人とのことですが、どのような取り組みをされているのでしょう。
片岡さん
スタッフの働きやすさと働きがいを両立させた会社を目指すことを目的に活動を行っています。直近では、特に男性の育休取得の推進に力を入れています。これまで育休の申請は女性社員がほとんどでしたが、男性社員も取得したい人がためらうことなく取得してもらえるよう、外部の講師を招いたセミナーの開催や、育休取得に必要な手続きについてわかりやすくまとめた情報発信などの活動をしています。
原田さん
また、ワークライフバランス推進委員会では、男性が育児に積極的に取り組めるよう、"イクボス宣言"という取り組みも行っています。これは管理職が「私は育休を推進します」という趣旨の宣言をし、男性社員が気兼ねなく育休取得できることを目的とした制度です。
実際に育休を取得した男性社員には、その体験談を社内報などで社内に向けて発信してもらい、育休取得の普及活動に協力してもらっています。
編集部
ワークライフバランス推進委員会の活動により、男性社員の育休取得率に変化はありましたか?
原田さん
当社は約1,000人の組織なので、育休対象となる社員数はそれほど多くありませんが、子育て世代に該当する男性社員の多くが育休を取得するようになっています。
編集部
ワークライフバランス推進委員会の活動によって、新たな働き方や制度が整備されつつあるのですね。
キャリアと育児の両立支援:小林クリエイトの女性活躍推進策
編集部
女性社員に向けたワークライフバランス推進委員会の活動などがあればお聞かせください。
片岡さん
当社で最近増えている営業職の女性社員が集まり、出産や子育てなどのライフイベントを迎えた後の働き方についてを話し合う座談会を開催しました。約20名が参加した座談会では、現在困っていること、今後どうしていきたいかなどの意見が活発に交わされました。委員会としてはこの情報を吸い上げ、検討する方針です。
編集部
なるほど。ワークライフバランス推進委員会の取り組みが実際の制度に反映された事例などはありますか?
片岡さん
カムバック(再雇用)制度の導入があります。今はあまりありませんが、育児や介護などの家庭の事情によって離職しなくてはならない場合に使える制度です。カムバック制度に登録をしていただき、育児介護が落ち着いたときに会社に戻ってこられる仕組みにしました。このように実際にある課題に対してワークライフバランス推進委員会が取り組み、解決する動きがあります。
小林クリエイトの柔軟な勤務制度:働きやすさを追求する多様なスタイル
▲斬新なデザインのアメーバデスク。広々としたスペースで集中して作業ができる
編集部
続いて、小林クリエイトさんの働き方について伺います。ワークライフバランスの一環として、勤務時間など取り組まれていることはありますか?
原田さん
働き方のひとつとして、フレックスタイム制度を導入しています。この制度により、従業員は一日の勤務時間を自由に設定できます。例えば、子供の送迎で早めに帰る必要がある場合でも、勤務時間を柔軟に調整できるようになりました。これは特に時短勤務の課題を解決する上で効果的です。
編集部
フレックスタイムを導入されているとのことですが、スタッフのみなさんはどのように活用されているのでしょう。
片岡さん
フレックスタイムは様々な形で活用されています。子育て中のスタッフは保育園や幼稚園の送迎に利用しています。また、自分や家族の通院など個人的な予定にも対応できるため、家庭状況や自分の都合に合わせて勤務時間やスケジュールを決めることができます。
ただし、フレックスタイムの利用には職種による制限があります。稼働時間が固定されている生産職では利用が難しいですが、営業職、システム開発職、企画職など、比較的時間の融通が利く職種のスタッフが多く活用しています。
営業職、企画職はリモートワークも活用
▲フリーアドレス席には、オフィスの象徴となるようなシンボルツリーを配したテーブルを設置。カフェのようなリラックス空間を演出している
編集部
小林クリエイトさんではリモートワークも導入されていると伺っております。利用している社員数や、出社勤務との割合などについてお聞かせください。
片岡さん
個人情報を取り扱う部署や生産職以外では、関東を中心にリモートワークを活用している社員が多いです。出社を希望する社員もいるので、リモートワークをするかは個人で選択することもできるようになっています。
原田さん
管理責任者や経営企画部の中には、ほぼリモートで出勤は月に1、2回という者もいます。システム系の職種もリモートワークを選択する者が多い印象です。また、フリーアドレスを導入した名古屋や東京のオフィスでは、営業職は自宅から直接、得意先を周りそのまま直帰するスタイルの社員も多いです。
編集部
職種や業務内容によってリモートワークの活用に差はあるものの、各自が働きやすさや効率化を考え、働き方を選択しているのですね。
家庭の事情による離職を防ぐため、企業として働き方をサポート
編集部
小林クリエイトさんの取り組みは、くるみん認定や愛知県のファミリーフレンドリー企業登録、あいち女性輝きカンパニー認証などで評価されています。御社が積極的にワークライフバランスに取り組む背景には、どのような理由があるのでしょうか。
原田さん
一言でいうなら"働きやすさ"です。離職率を低くすることに注力する中、家庭の事情などで退職をしてしまう社員が一定数いました。退職理由が家庭の事情であれば、会社としてフォローできることもあるという思いから、ワークライフバランスに取り組むようになりました。
小林クリエイトが求める人材像:チャレンジ精神と素直さを重視
編集部
印刷サービスを主軸に、RFID事業やBPO事業などの事業を展開する小林クリエイトさんの企業成長や、ワークライフバランスに積極的に取り組むカルチャーに興味をもち、感銘を受けた読者は多いと思われます。最後に、転職を検討している読者に向け、メッセージをお願いします。
片岡さん
当社が求めるのは、新しい価値を創造するため、変化を恐れず主体的にチャレンジできる方です。さまざまなサービス、製品を取り扱っている当社には、チャレンジできる場所がたくさんあります。意欲的に業務に向き合い、好奇心を持って取り組んでいただける方を歓迎します。
原田さん
素直に「ありがとう」「ごめんなさい」と言える方と一緒に働きたいと思っています。私自身も常に心がけています。
仕事は楽しいことばかりではありません。しかし、30年間仕事を続けてきたうえで思うのは、1日の大半を仕事に費やすのなら、楽しまなければもったいないということです。そのためには「ありがとう」「ごめんね」と素直に言えることが大切だと思います。物事は自分の心がけ次第で、いくらでもポジティブに捉えることができるはずです。
編集部
素敵なマインドだと思います。素直に感謝しあえる環境が、小林クリエイトさんには根付いているのですね。
片岡さん
はい。入社4年目の私が日々感じるのは、人の温かさです。人を大切にする風土が当社には根付いていると感じます。
編集部
働きやすさと働きがいの両方に取り組まれている小林クリエイトさんなら、会社と自分の成長を楽しみながら仕事に向き合うことができると感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
小林クリエイト株式会社:https://k-cr.jp/
新卒採用ページ:https://k-cr.jp/recruit/
中途採用ページ:https://www.r-agent.com/kensaku/companydetail/93073/