「わさびを世界へ」。若手がグローバルに活躍する金印株式会社の働き方とは

グローバル展開や若手の活躍など、これからの日本の「ミライ」づくりを推進している企業を紹介する本企画。今回は、わさびの美味しさを世界に発信している金印(きんじるし)株式会社に、インタビューをさせていただきました。

国内外の加工わさび市場をリードする金印株式会社

金印株式会社の企業イメージ画像

金印株式会社は業務用加工わさびで国内トップシェアを誇り、世界60カ国以上にわさび商品を輸出している「加工わさびのパイオニアメーカー」です。加工わさびのおいしさと品質を追求しており、原料は国産、本わさびの香りと辛みを損なわない独自のマイナス196℃超低温すりおろし製法を編み出すなど、妥協のない姿勢で業界をけん引してきました。

加工わさび以外に、おろししょうがや柚子こしょうといった薬味類、たれ・ドレッシング類をはじめ、本わさび由来の機能性表示食品や化粧品なども取り扱っています。また、わさびで培ったノウハウを生かして天然のブルーローズ素材「オーラムブルー」を開発するなど、新規事業への挑戦にも積極的です。

会社名 金印株式会社
住所 (本社)愛知県名古屋市中区栄3丁目18番1号ナディアパークビジネスセンタービル23F
事業内容 ・わさびなど食品の製造販売
わさび商品(生おろし、練り、粉)、生おろししょうが、レホール、マスタード、生おろしにんにく、練り梅、わさび漬、たれ、ドレッシング、スープ類など
・わさびの健康食品、化粧品、鮫皮おろしなどの販売(※)※この事業内容はFSSC22000の認証登録には含まれません
創業・設立 1929年創業、1952年設立
公式ページ https://www.kinjirushi.co.jp/

金印株式会社は、国内に4社、海外に2社ある金印グループ各社を束ねる役割を担っているほか、商品開発、各種研究、ブランドの管理などを行っています。

原料栽培や苗生産を行う金印アグリ株式会社、3工場を有して原料加工や商品生産を行う金印わさび株式会社、世界に販売ネットワークを張って商品販売を行っている金印物産株式会社、および海外の2社と連携して、グループ全体で金印ブランドを守っているのです。

今回は、金印株式会社の総務人事部部長である木下さんと、金印物産株式会社の海外営業課課長である中村さんに、金印グループのグローバル展開や若手の活躍についてお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
金印株式会社 総務人事部部長の木下さん

金印株式会社
総務人事部部長

木下さん

金印物産株式会社 海外営業課課長の中村さん

金印物産株式会社
海外営業課課長

中村さん

約40年前、わさびの啓発から始めた海外進出

金印物産株式会社の中村さんの商談の様子

編集部

まず、金印さんのグローバル展開についてお話をうかがわせてください。海外に事業展開をされたきっかけというのは、なんだったのでしょうか。

木下さん

1980年代初頭、アメリカで寿司ブームが起こりました。その頃に、現在の会長と副会長が食品関係の展示会のためアメリカ出張に行き、ダウンタウンでお寿司を食べたことが海外進出のきっかけとなっています。

実はその出張時に、お寿司を食べたときに、わさびがまったく効いていなかったのです。「どんなわさびを使っているの?」と見せてもらったところ、そのお店ではバケツで粉わさびを練ったものを使っていました。いつ練ったのかと尋ねたところ、1週間ほど前という返事が返ってきたそうです。

わさびは辛みも香りも揮発性なので、食べる直前に混ぜないとおいしさが飛んでいってしまいます。これではダメだ、わさびとは何かというところから伝えていかないといけないと会長たちが危機感をもったことから、1984年にロサンゼルス駐在所(現KINJIRUSHI WASABI INTERNATIONAL CO.,LTD ロサンゼルス本社)が開設されました。

商社を通じて商品をただ売るのではなく、流通量や流通する地域が拡大すればいいというのでもなく、わさびが本来持っている価値や美味しさを海外でもしっかり伝えなければと考えたのです。そこで、現地に駐在員を派遣して、わさびの本質的価値の啓発に取り組んでいくことになりました。

おおよそ毎月1回1週間の海外出張で現地の販売をレクチャー

金印株式会社の海外向け商品
▲海外向け商品の一部。「WASABI」の存在感と知名度は世界でも高まっている

編集部

取引国が増え、グローバル展開が推進されていくなか、現在の国際事業部ではどのような業務が行われているのでしょうか。

中村さん

私は、国際事業部の海外営業課でアジアとオセアニアのエリアを担当しています。出張ベースで現地に行き、パートナー企業や卸売業者であるディストリビューターの営業担当者さんに商品の提案を行ったり、販売のレクチャーをしたりすることが主な役割です。

今では「WASABI」と言えば、ほぼ世界中で通じるようになりました。国や地域によって異なりますが、わさびとは何かという説明から入る必要はほとんどありません。ただ、現地の営業担当者さんのなかには、わさびに対しての理解が金印ブランドが求めるラインに追いついていない方がいることも事実です。

そこで、金印の商品を売ってくれている営業担当者さんに対して商品の勉強会を行ったり、ときには「こうやって説明をすれば、現地のレストランの方に評価していただいて商品を買ってもらえます」ということをわかっていただけるよう、一緒に同行販売を行ったりもしています。

編集部

出張の頻度というのは、どれくらいなのでしょうか。

中村さん

だいたい月に1回、現地に1週間ほど滞在しています。コロナ禍の前は月の3分の2は海外出張だったと聞いていますが、今はまだオンラインでの商談も織り交ぜながら徐々にペースを戻している状態です。席は東京にありますので、出張に行かないときは国内の営業と同じような形で業務をしています。

海外営業課での業務を通じて、金印ブランドの強さを再発見

金印物産株式会社の中村さんの業務中イメージ

編集部

グローバル展開について、金印さんの強みを教えてください。

中村さん

ただ商品を輸出するのではなく、現地に拠点を築いて、わさびの価値を啓発しながら、信頼関係を築いてきたことが強みではないかと思います。

私は国内営業部から国際事業部に異動して1年も経っていないのですが、以前から海外営業にチャレンジしたいと思っていました。そうした機会が得られるのは、金印が40年にわたってグローバル展開をしてきて、国内・海外さまざまな地域に拠点や部署があるからこそです。

また、海外営業課で仕事をするようになってあらためて、海外での金印ブランドの認知度・信頼度の高さをとても強く感じました。そうしたブランドのもと、わさび、ひいては日本の食文化を世界に発信していけることにやりがいを感じています。

編集部

海外営業の醍醐味というのは、どこに感じていますか。

中村さん

金印は提案型営業を特徴としていて、当社の商品の良さを説明するだけでなく、お客様ごとの課題や現状を分析してそれに合わせた提案をしていくというスタイルが基本です。その土地ごとの食文化を学び、それに合わせて提案していくことが大事だと思っています。

わさびという日本の食文化を海外でどう合わせていくのかを考え、提案した結果、当社の商品を評価していただいたり、販売につながったりしたときには、海外営業ならではの醍醐味を感じます。

編集部

わさびの啓発をすることから海外進出をはじめて、日本の食文化を発信しながら40年かけてわさびを「WASABI」として世界の70カ国以上に浸透させてきたわけですね。

チャンスの多い環境のなか、30代の部長も活躍する金印

金印株式会社のミーティングイメージ

編集部

次に、若手の活躍について聞かせていただけますでしょうか。

木下さん

金印では入社後1年ごとに昇格の機会がありますので、早い方だと30代前半で管理職になっています。例えば、中村さんは32歳で海外営業課の課長です。年齢に関係なく、活躍できるチャンスが多い会社だと思います。

中村さん

東日本部長も西日本部長も、30代なかばですね。

木下さん

金印は今年で創業95年の老舗と呼ばれるような企業ですので、どちらかというと年功序列のイメージが強いのではないかと思います。実際はイメージとは異なっていて、若くして管理職になる方も多いですし、上下や部門の壁を越えていろいろなチャレンジができる会社です。

中村さん

私は、国内営業部にいた頃に「わさびアイスクリーム」の商品開発を担当させてもらったことがあります。お客様との商談で、「こんな商品があったらいいな」という話で盛り上がったことがきっかけでした。

早くから責任ある仕事を任せてもらえるチャンスが多いですし、部門の垣根が低いので、やる気さえあれば先輩や上司のサポートのもと、若手でも自分の職種にとらわれない思い切ったチャレンジができる環境があります。

編集部

若くして管理職になったり、周囲のサポートを受けて部門にとらわれないチャレンジができたりと、チャンスの多い環境のなかで、多くの若手社員さんたちが活躍されているということですね。

見過ごされがちな部分も評価する独自のポイント制度

金印株式会社の金印ポイント制度のポイントランキングを確認する社員さんたち
▲金印ポイント制度のポイントランキングで盛り上がることも

編集部

金印さんの社内で、年齢に関係なく活躍が評価されるような仕組みがありましたら、教えてください。

木下さん

金印ポイント制度という、現在の社長が構築した独自の制度があります。日々の業務のなかで、いろいろなことに使える金印ポイントが得られるというシステムです。

もともとは、生産部門の方の「一生懸命に機械のメンテナンスをする、業務の改善をするといったような、評価には通常反映されない行動」に少しモチベーションを与えたいということで、つくられました。今では、全社に広がって、ポイントを得られる行動やポイントの使い先も拡大しています。

編集部

どういったことをすると、ポイントが得られるのでしょうか。

木下さん

例えば、スキルの一覧があって、「このスキルをこういったレベルで取得したら何ポイント」という制度があります。これは新スキルを取得した本人はもちろん、それを教えた社員さんにも育成ポイントがつくというのが特徴です。

指定スキルをすべて取得してしまった方は、スキルポイントはそれ以上つきません。しかし、後輩を育成することで育成ポイントがもらえるわけです。育成側のモチベーションにもなりますし、教えてもらう側も気兼ねなく教えてもらいやすいのではないでしょうか。

また、仕事以外で「わさびを啓発するイベントを自分で起案して実施しました」というような、企業の価値を高める活動をした場合などもポイントになります。サンクスメールの送受信でもポイントがつくほか、ポイント獲得につながる項目は10種類以上あり、見過ごされがちなちょっとした行動や自分の得意な部分を、ポイントが貯まるという形で評価してもらえる制度です。

ポイント利用で昇格試験なしの無条件昇格も可能

金印物産株式会社の中村さんの業務中イメージ

編集部

金印ポイント制度で貯めたポイントはどのようなことに使えるのでしょうか。

木下さん

基本的には、1ポイントあたり20円として賞与に足されます。食事会の経費にもできますし、昇格にも利用可能です。役職が高くなると必要ポイント数も上がっていくのですが、課長の手前の役職まではポイントを貯めることで昇格試験を受けなくても無条件で昇格していけます。

編集部

金印さんでは、実際にポイントを利用して昇格する方もいらっしゃるのでしょうか。

木下さん

毎年、何人かいます。最初の無条件昇格には2,000ポイント必要ですので、若手はまずそこが目標ですね。それから、ポイントのランキングを毎月発表しています。

編集部

ランキング上位になると、何か特典があるのでしょうか。

木下さん

「スキルポイント」などそれぞれのジャンル別に、年間で金、銀、銅という賞が授与されます。受賞すると賞金が出ますので、ポイントを貯めた特典とダブルでもらえるというのが嬉しい点です。

また、年間トップの金賞になると、海外研修に行けるという副賞がつきます。生産部門や経理・人事のような間接部門では、なかなか海外出張に行くチャンスがありません。そのため、そういった部門の社員さんたちを中心に、年間の金賞を目指して競いあっています。

困ったときには役員にも相談できるフラットな人間関係

金印株式会社のオフィス

編集部

ポイントを競い合うなど業務に対するモチベーションが高いなか、周囲の助け合いやサポート体制についてお聞かせいただけますか。

中村さん

若くして責任ある仕事を任されますが、1人で途方に暮れてしまったり、どうしようもない状況になったりという経験は今までに一度もありません。社内の雰囲気として仲間・先輩・上司に相談がしやすく、サポートが必要なときにはしっかりとフォローもしてもらえるからです。場合によっては、役員に相談をさせていただいたり、一緒に商談に同席していただいたりすることもあります。

木下さん

金印は、上司に相談する、自分の意見を述べるというハードルが、高くない会社なんです。部長とも、その上の役員とも、わりと気軽に話せるフラットな関係性が築かれています。

営業部門に限らず、ほかの部門でも同じくなのですが、普段から役員が何かと社員に声をかけているというのも大きいですね。役職や年齢は関係なく、とにかくいろいろな考えを聞きたいという社風ですので、アイディアをどんどん出すようにと言われますし、若いから意見が通らないということもありません。

編集部

金印ポイント制度や社風によって、年齢を問わず意見をいったり、いろいろなことに積極的にチャレンジするような土壌がつくられており、さらに仲間・先輩・上司はもちろん、役員にも相談ができるようなフラットな人間関係が築けているわけですね。

変化を楽しんでチャレンジができる方にピッタリ

金印株式会社のオフィス

編集部

最後に、この記事を読んで金印さんに興味を持った方に向けてのメッセージをお願いします。

中村さん

金印は、本気でやりたいと思えば、どんどんチャレンジをさせてもらえる会社です。先ほどもお話しましたが、私も「海外営業をしたい」という希望がかなって、国際事業部に異動をしました。

上司や先輩から言われたことだけをやるのではなく、自分で創意工夫して働きたいと思う方にはとても合う環境だと思います。また、金印はグローバル展開や新規事業にも力を入れていますので、世界情勢や経済動向の変化に常にアンテナを張り、会社や会社を取り巻く環境の変化を恐れずに楽しめる方、チャレンジ精神にあふれている方に来ていただきたいです。

木下さん

確かに、変化を楽しめる方がいいですね。会社としても、勤怠やコミュニケーションツールなどの電子化が進んでいたり、全社的にフリーアドレスだったり、AIなどをいち早く導入したりと、新しい変化を柔軟に取り入れています。新卒と中途入社の割合も半々くらいですので、「老舗企業だから」と構えているとギャップに驚かれるかもしれません。

また、原料の栽培から商品の製造や販売まで一貫してやっている、研究もしているという食品会社はなかなかないのですが、金印はそこをすべてやっています。そのため、いろいろな職種がありますし、ジョブローテーション制度もあります。小さい会社であるため出番も多いです。

部門を越えて幅広く活躍できますので、「いろいろなことにチャレンジしていきたい」「自分の可能性を広げたい」という方にはピッタリだと思います。

それにプラスして、食品会社ですので「食に興味がある」「食べることが好き」という、食いしん坊で常に食に対してアンテナを張っている方に来ていただけたら嬉しいです。

編集部

変化を楽しめる方、自分の可能性を広げてチャレンジしたいという方にどんどんチャンスがめぐってくる職場だということですね。どうもありがとうございました!

■取材協力
金印株式会社:https://www.kinjirushi.co.jp/
採用ページ:https://www.kinjirushi.co.jp/recruit/