日本の発酵文化を世界に届けるマルコメ株式会社が若手の発信力で急成長している理由

日本の発酵文化を世界に届けるマルコメ株式会社が若手の発信力で急成長している理由

大きく成長中であり、若手メンバーがいきいきと活躍している企業を紹介する本企画。今回は、2024年に創業170年を迎えるという長い歴史を持ち、味噌をはじめ糀甘酒や大豆のお肉など数々のヘルスコンシャスな食品を発信しているマルコメ株式会社にインタビューを実施しました。

味噌や糀甘酒など多くの伝統ある食品を扱う「マルコメ株式会社」

信州味噌のふるさと、長野県に本社を持つマルコメ株式会社。「日本古来の発酵技術を通じて、生活者のすこやかな暮らしに貢献する」という企業理念のもと、味噌や糀甘酒、大豆のお肉などおいしく健康的な食品を開発・製造しています。

会社名 マルコメ株式会社
住所 長野県長野市安茂里883番地
事業内容 家庭用・業務用みそ、即席みそ汁の製造販売
家庭用・業務用糀商品の製造販売
家庭用・業務用大豆商品の製造販売
海外向け商品の製造販売
設立 1854年(安政元年)
公式ページ https://www.marukome.co.jp/

今回はマルコメ株式会社の人事総務部の町田さんに、売上高が伸びるきっかけとなった人事改革や、その人事改革で抜擢された若手社員についてお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方

マルコメ株式会社
人事総務部

町田 基樹さん

人事改革を行い、売上高が14年で1.6倍以上の成長を達成

マルコメ株式会社の営業メンバー3名

編集部

最初に、マルコメさんの近年の成長の経緯について教えていただけますか。

町田さん

売上高は2009年度に300億、2016年度は400億、2022年度に500億円を超えました。

編集部

規模が大きな企業であるにもかかわらず、急速に成長されているのですね。急成長されている要因はどういったところにあるのでしょうか?

町田さん

7~8年前に人事改革を行ったことが、主な成長の理由です。「自律分散」「ビジョン先行」「OODAループの働き方」という3つにポイントを置いて変革を進めました。

編集部

それぞれのポイントについて、説明をしていただけますでしょうか。

町田さん

「自律分散」とはボトムアップ形式で社員一人一人が自ら行動を起こすスタイルで、上司はあくまでフォロー役です。上司は1on1のミーティングで日々の業務の進行状況を確認しながら的確にサポートします。

「ビジョン先行」とは、会社全体のビジョンを自分の立場に落とし込んだビジョンに策定してもらうスタイルです。社長、役員、部長、管理職のビジョンをみながら各々がビジョンを設定しています。

「OODAループの働き方」とは、「Observe(観察)」、「Orient(状況判断、方向づけ)」、「Decide(意思決定)」、「Act(行動)」の4つのステップを繰り返す手法です。刻一刻と変わる状況を適切に判断し、行動し続けることを大事にしています。

編集部

3つのポイントに共通しているのは、社員の自発的な行動を尊重する考え方ですね。

町田さん

そうですね。3つのポイントは独立したものというよりは、組織づくりを進める上で相互に関係し合うものだと考えています。

編集部

結果的にどのような組織変革を実現することができたのでしょうか。

町田さん

マーケットの変化をよく観察して、個々が明確なビジョンをしっかり持って判断し、行動していく組織に変わりました。一人一人が主体的にビジョンを描いて自分から行動を起こし、ビジョン達成のために邁進するようになったことで、売上の向上にも繋がっています。

会社全体のビジョンを、社員それぞれが自分の立場に落とし込むことが大事

編集部

マルコメさんでは、会社全体のビジョンから社員それぞれが自分の立場に落とし込んだビジョンを策定する「ビジョン先行」というビジネスモデルを採用されているとのことですが、マルコメさんの会社全体のビジョンを教えてください。

町田さん

マルコメがお客様と約束するビジョンは「マルコメの発酵技術で世界に圧倒的な『驚き』、『感動』、『健康』を届けていく」ことです。

編集部

マルコメさん全体のビジョンを、社員の皆さんが自分の立場に落とし込んだ結果、例えばどのような行動につながっていくのでしょうか。

町田さん

例えば人事総務部で働く社員の場合、従業員をはじめ当社に関連する人の心に驚き・感動・健康を届けることができる組織を目指しています。営業職であれば、お客様に驚き・感動・健康が伝わるライフスタイルをご提案しています。

開発のメンバーは、驚き・感動・健康をキーワードに、未来のあるべき食生活、ライフスタイルを想像しながら商品企画を練っています。

編集部

マルコメさんのそれぞれの部署で、会社全体のビジョンが業務に反映されることで、具体的な成果につながっていくんですね。

描いたビジョンを実現するために「糀みつ」「大豆のお肉」など人気商品が誕生

マルコメ株式会社の開発・販売している「糀みつ」の商品外観
▲「糀みつ」は砂糖の代わりとして使えてかつ健康的ということで、多くの消費者から喜びの声が届いている。

編集部

「マルコメの発酵技術で世界に圧倒的な『驚き』、『感動』、『健康』を届けていく」という会社全体のビジョンが、新商品の開発に反映されている例を教えてください。

町田さん

例えば、「糀みつ」という商品があります。米こうじから作った植物由来の発酵甘味料で、砂糖の代替品として料理やスイーツに使えます。

人工甘味料とは異なる「糀みつ」は、お客様の健康に寄与できる点で、国内はもとより海外からの注目度もかなり高い商品になっています。

編集部

おいしくて、しかも健康的な商品なので、お客様に支持されているんですね。

町田さん

はい。「糀みつ」は原料に余計な添加物を加えていないことが特徴です。

なお、マルコメはたまたま「糀みつ」という商品を完成させたわけではなく、お客様に健康的な食生活を送ってもらうために私達がどういう商品を展開すればいいのかを逆算して生まれた商品です。

編集部

まずマルコメさんのビジョンがあって、ビジョンを実現していくために「糀みつ」を開発した、という順番なんですね。

町田さん

そうです。今話題になっている「大豆のお肉」も、同じような段階を踏んで開発されました。

編集部

一般的には大豆ミート、ソイミートと呼ばれている商品ですね。こちらも、お客様のニーズを拾って開発したのではなく、ビジョンを実現する中で生まれた商品であるということでしょうか。

町田さん

はい。マルコメでは基本的にはお客様のニーズから商品開発をするのではなく、お客様も気づいていない領域の商品をマルコメ側から提案していくことを大事にしています。プロダクトアウト(※)というとネガティブな意味で使われがちですが、お客様は知らない商品を欲しいとは言えません。マーケットインではなく、良い意味でもプロダクトアウトを大切にしています。

「大豆のお肉」で言えば、動物性たんぱくは環境面での課題もあります。健康的なライフスタイルを求める上でも今後お客様の意識が変わってくると思います。
(※)プロダクトアウト:顧客のニーズではなく、企業側の理念や技術を基準として商品開発を行う考え方

編集部

先手を打って、動物性のお肉に代わる新しい商品を市場にリリースしているわけですね。

町田さん

お客様が現在、動物性たんぱくに対する疑問がなくても、ソイミートがスーパーに並んでいれば「マルコメから『大豆のお肉』が出ていたから、ちょっと食べてみようかな」となる可能性があります。実際に食べていただいて「こんな商品があったんだ!」という驚きと感動を感じてもらって、健康になっていただく。そういう展開を目指しています。

お客様の声をもとにした商品改良は継続して必要ですが「糀みつ」や「大豆のお肉」のような5年後、10年後の将来を描いて開発した商品をご提案することが大切だと考えています。

編集部

時代を先取りする商品を開発するために、ビジョン先行の思考をすることが社員一人一人に求められているということですね。

お客様のライフスタイルに商品を浸透させるため、従来とは違う売場づくりを提案

編集部

商品開発以外にも、ビジョンから逆算する思考によって売上のアップにつながっている事例はありますか?

町田さん

営業面でも逆算の思考を発揮しています。マルコメの「大豆のお肉」は乾燥タイプや冷凍タイプなど、いろいろな形で商品展開しているのですが、よりお客様のライフスタイルに寄り添えるように売り方も工夫しています。

編集部

どういった売り方を提案されているのでしょうか。

町田さん

営業担当の提案の一つに、「大豆のお肉」を畜肉と同じように白いトレーパックに入れて精肉売場に陳列する売り方があります。豚肉や牛肉の横に一緒にトレーで置かせてもらうことで、お客様が「大豆のお肉」を探しやすくなりました。

「大豆のお肉の使い方がわからない」というお客様もまだまだいらっしゃるため、見せ方や並べ方を工夫することで、「お肉と同じように調理できる」ことがわかりやすくアピールできます。

編集部

大豆だから豆製品のコーナーに並べるのではなくて、使うシーンから逆算してお肉のコーナーに陳列する形ですね。やはり、商品を売る場所というのは重要なのでしょうか。

町田さん

「大豆のお肉」に限らず、陳列コーナーについては今いろいろと工夫をしています。

例えば、マルコメの主力商品である味噌はスーパーの中ほどにあるグロサリー、加工食品の陳列棚に置かれていますが、お客様がグロサリー売場に寄られることは「醤油、味噌が切れていたな」という時だけで毎日の買物ではあまり足を運びません。

通常、普段使いに必要な野菜売場や魚、肉、乳製品などのコーナーは立ち寄る頻度は高いです。そこで生鮮や日配売場に、調味みそや糀甘酒、野菜や豆腐とあわせる大豆のお肉の惣菜シリーズを置くことをご提案しています。

編集部

確かに、野菜や肉、冷蔵のコーナーは毎日足を運びますね。

町田さん

あらゆる売場でマルコメの商品をお客様に手に取ってもらって、その結果としてマルコメの商品を食べてお客様に健康的な生活を送っていただきたいという逆算で考えています。

海外でも「発酵」は注目キーワード。若手のパワーで海外進出を強化中

編集部

日本国内はもとより、発酵の可能性を世界へ広げるというミッションに関して、マルコメさんはどのように取り組んでいますか。

町田さん

海外事業は現在47か国に輸出しています。健康志向の高まりと世界的な和食ブームから発酵食品misoの輸出は伸び、世界へ向けた新たな時代が始まっています。海外のシェフも和食に興味を持ち、アメリカやアジアのみならずフランスやオーストラリアなどでも味噌が注目されているのは嬉しい話です。豊かな日本文化を凝縮したような味噌の魅力を、もっともっと味わっていただきたいと思います。

編集部

海外進出は、まさにこれから本番という段階なのですね。海外進出に向けてのチーム編成も始まっているのでしょうか。

町田さん

これからもっと海外進出を担う人材を増やすために、社内公募制で立候補をした社員に対して研修を進めています。

編集部

今後、どのような形で海外展開を進めていく予定なのでしょうか。

町田さん

海外は北米、中国、韓国、タイの4つの現地法人を中心に活動をしています。味噌や米甘酒、大豆のお肉など、植物由来の原料に関する知見がマルコメが一番得意とするところなので、この分野の展開に力を入れていく予定です。

編集部

日本の発酵食品の可能性を、先陣を切って発信されるんですね。

町田さん

発酵というキーワードは、世界的にもとても注目されています。ヨーロッパの有名なシェフなど料理関係の専門家にアプローチをして、発酵食品の新たな展開を考えています。

経営者感覚を持つ優秀な若手は、入社後数年で管理職へ登用

編集部

マルコメさんでは、若手社員の登用についてどのような考え方をお持ちなのでしょうか。

町田さん

初めにお話をした人事改革の話に繋がるんですけど、「会社で掲げるビジョンを共有していれば、年齢や性別、入社歴に関係なく、誰もが自分発信で動いて、仕事を推し進めてください」ということを経営陣から社員に伝えています。

実際に、入社1年目、2年目から大きな仕事を任されて、活躍しているメンバーがいます。

編集部

例えば、どのような部署の方が活躍されているのでしょうか。

町田さん

マルコメの主力商品「料亭の味」などを製造している生味噌第三工場では、坂戸というメンバーが23歳で副課長として管理職を任されました。今は課長として約50人のスタッフの先頭に立ち、プレイングマネージャーをしています。

編集部

どのような理由で、坂戸さんが管理職に登用されたのでしょうか。

町田さん

一番の理由は彼自身が入社したときから経営者感覚を持っていたことにあると思います。最初は他の社員と一緒に一つのラインを担当していたのですが、作業をしながら「もし自分が社長だったら、今何ができるか?」という目線で、主体的に動くメンバーだったので、早期に管理職になってもらいました。

編集部

工場の作業スタッフから、管理職に抜擢されたという例ですね。

町田さん

会社としては、ビジョン先行、自律分散の理念を掲げているので、どの社員に対しても仕事を制限することはなく、どんどん自発的に推し進めてください、という考え方です。

その結果、ラインの作業をただ受け身でこなすのではなく、坂戸のように経営者目線で物事を進められる社員がいきいきと動き出すことができたのだと思います。

編集部

坂戸さんのいらっしゃる工場課の場合、作業の安全性や効率性を高めることを社員自らが自発的に考えるということですね。

町田さん

品質、コスト、デリバリー、安全など、工場で大切なことはいろいろあります。効率化しながら、どうやって原価率を下げるか、人のやりくりをするのかなどを、坂戸が中心となって考えて、動いてくれています。

入社2年で商品開発課のエースに成長。ポイントはスピード感と意欲的な開発力

編集部

他にも、若手が活躍している例はありますか?

町田さん

商品開発課では、糀甘酒の開発で活躍している山﨑が入社3年目で副課長になりました。糀甘酒のプロジェクトを任されて、「糀リッチ粒」などの新商品開発を手掛けています。

編集部

若手の中で、山﨑さんが際立っていたのはどのような点でしたか?

町田さん

スピード感と開発力ですね。マルコメで新商品を年2回発表するので、商品開発課は多忙なスケジュールなのですが、その中で山﨑は、新しい商品をどんどん市場に展開していく意欲がありました。開発した商品も、お客様に喜んでいただけるおいしい商品だったので、商品開発課の中でスターになるのは自然な流れでしたね。

編集部

坂戸さんや山﨑さんのように、意欲と能力がある若手が活躍できる環境が、マルコメさんにはあるということですね。

町田さん

会社から与えられた仕事ではなくても、自発的に声を上げてやれば何でも実現可能な状況なので、坂戸や山﨑のようにいろんなことにチャレンジする若手が結果を出すことができる環境があります。

「自分が本当にしたいことをしている」メンバーが、一番活躍している

編集部

町田さんから見て、活躍する若手に共通している特徴はありますか?

町田さん

ひとりの人間としてのビジョンをしっかり持っている点が、特徴だと思います。「仕事をしている」というよりは「自分が本当にしたいことをしている」という感覚で働いている方が、大きな結果を出す傾向はありますね。

会社の中で自分のやりたいことができて、しかもそれが会社の利益になり、自分の給料にもつながる。極端に言うと、そんな感覚で働いている社員が一番活躍しています。

編集部

自分の人生の軸と、会社のベクトルが一致しているんですね。町田さん自身も、そんな若手に共感する部分はありますか?

町田さん

はい。私は長野出身ということもあり、そこで作られた日本古来の発酵食品に誇りを持っています。世界のお客様に向けてそれをお届けできると思うと、とてもワクワクしています。

様々な経験を経て成長していきながら、若手を含めたすべての社員と一緒に、これからも夢を追いかけていきたいです。

編集部

会社のビジョンを自分の人生のビジョンに重ね合わせることで、幸福感を持って仕事を進めることができるんですね。

マルコメ株式会社の発酵技術を、世界へ広げる仲間を募集中

編集部

最後に、この記事を読んでマルコメさんに興味を持った方に向けて、採用に関するメッセージをお願いします。

町田さん

会社の企業理念にもある通り、日本が育んできた発酵文化、私達マルコメの発酵技術を世界に一緒に広める夢を共感してもらえる方、かつ自分主体で物事をどんどん推し進めていける方と、一緒に働きたいと考えています。

前向きにポジティブに、楽しく仕事をしていきたいと思っているので、ぜひ仲間に加わってください。

編集部

私たちの食卓に欠かせない会社として親しみのあるマルコメさんですが、若手の方が生き生きと働ける環境を整えながら、日本の発酵文化を世界に発信する企業として成長し続けているんですね。本日は、ありがとうございました。

■取材協力
マルコメ株式会社:https://www.marukome.co.jp/
採用ページ:https://www.marukome.co.jp/company/employment_top/