現在活躍している企業の働き方をお伝えしていくこの企画。今回は周産期医療に携わる医療従事者のワークライフバランスの向上や、妊娠中のお母さんと赤ちゃんの安心・安全な出産をサポートするメロディ・インターナショナル株式会社を取材させていただきました。
メロディ・インターナショナル株式会社とは
メロディ・インターナショナル株式会社は、「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」という理念のもと、遠隔で妊婦さんや胎児のモニタリングができる「モバイル分娩監視装置iCTG」を開発・製造している企業です。
iCTGの特徴は、計測したデータをネットワークを介して閲覧用端末に送信することで、遠隔地からでも妊婦さんのお腹の張りや胎児の心拍をチェックできることです。これにより、妊婦さんはさまざまな状況でも安心して安全な出産に臨めるようになります。
会社名 | メロディ・インターナショナル株式会社 |
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住所 | 高松本社:香川県高松市林町2217-44 ネクスト香川304 東京拠点:東京都中央区日本橋本町2丁目3-11 日本橋ライフサイエンスビルディング |
事業内容 | 遠隔医療サービスにかかるプラットフォームと医療機器の製造、開発および販売 |
設立 | 平成27年7月27日 |
公式ページ | https://melody.international/ |
働き方 | 在宅・リモートのハイブリッド |
今回は、事業開発部営業企画課の東條真千(とうじょう まち)さんに事業内容、女性が働きやすい環境づくりや社内カルチャーなどについてお話を聞かせていただきました。
安心・安全な出産のためのモバイル分娩監視装置「iCTG」を開発
▲iCTGのイメージ。モバイル型なのでいつでもどこでも、妊婦さんと胎児の様子がモニタリングできる
編集部
まず最初に、御社の事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
東條さん
メロディ・インターナショナルは、香川大学発のベンチャー企業です。世界標準となっている分娩監視装置の基本原理の発明者である原量宏(はらかずひろ)教授(※1)と竹内康人教授(※2)を技術顧問として、遠隔で胎児の心拍・陣痛を測り、母子の健康状態を確認できる「モバイル分娩監視装置iCTG」を取り扱っています。
(※1)原量宏氏(香川大学瀬戸内圏研究センター特任教授)
(※2)竹内康人氏(香川大学瀬戸内圏研究センター客員教授)
このプロダクトは遠隔で利用できるという特徴があるので、ご使用いただいている地域、活用方法も幅広いです。
世界に目を向けると、安全に出産できる医療体制が整っていない国はいまだに多く存在します。国外への展開としては、初めはタイのチェンマイでJICAの技術プロジェクトとして導入され、現在では海外14カ国以上で活用されています。
日本国内でも、モバイルの強みを活かして僻地や産科医不足の地域で徐々に普及しています。日本国内でも産科医が不足する周産期医療過疎地域はたくさんあるんです。
編集部
たしかに、国内でも地域によっては産科に通院するのに何時間もかかる方もいると聞きます。
東條さん
そうなんです。また、切迫早産などのハイリスク妊婦を受け入れることができる施設数は充分とは言えません。
私たちは、そんな状況を少しでも変えていくために、iCTGを活用した「周産期遠隔医療コミュニケーションプラットフォーム」を構築しています。遠隔で妊婦さんと胎児をモニタリングし、測定したデータを医師や助産師と共有することで、世界中のお母さんに、安心・安全な出産をしてもらうことを目指しています。
iCTGのメリットは医療現場の負担軽減にもつながる
▲iCTGのデータはスマートフォンやタブレット端末に送信され、遠隔地にいる産婦人科医もチェックできる
編集部
近年、産科医と医療スタッフの過酷な労働状況による疲弊も問題になっています。メロディ・インターナショナルさんの事業は、そういった課題の解決にもつながっていくのでしょうか。
東條さん
はい。iCTGの活用により遠隔で妊婦さんや胎児をモニタリングし、測定したデータを医師や助産師と共有することで、周産期医療の現場の課題を解決していけると考えています。
これまで産婦人科で使用されてきた分娩監視装置は、プリンターを搭載した本体と測定器から構成され、あらかじめ配線工事がされている場所でしか使えないものでした。
メロディ・インターナショナルの製品は、本体が妊婦さんのお腹につけるトランスデューサに内蔵されており、そのトランスデューサはワイヤレス、閲覧用端末とはBlutoothで接続しており、簡単に持ち運ぶことができます。タブレットやスマートフォン、PC等さまざまなデバイスでデータを確認することができ、モニタリングする場所を選びません。
また、医療従事者の指導の下で、妊婦さんが自分で装着できるよう、シンプルな作りになっております。防水なので消毒や水洗いが簡単にできる点も特長です。
さらに、iCTGを活用することで、緊急搬送時にも搬送先の病院に必要な情報をリアルタイムで提供できるため、到着後すぐに適切な処置が可能になります。
編集部
私も出産を経験していて、分娩監視装置がどれだけ大きいか知っていましたので、iCTGを拝見して「こんなに小さいんだ」と本当に驚きました。この利便性により、医師や看護師の負担を軽減していけるのですね。
急成長を支える製品のオリジナリティと周産期医療への寄与
▲メロディ・インターナショナル株式会社がiCTGを活用して目指す周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」(公式サイトから引用)
編集部
メロディ・インターナショナルさんはさまざまな賞を受賞されたり、国や自治体などとも連携されているそうですね。
東條さん
はい。最近では、経済産業省の「行政との連携実績のあるスタートアップ100選」に掲載されました。本社のある香川県には島がいくつもあって、島に住む妊婦さんは健診や出産の際に高松市まで来る必要があるという、瀬戸内ならではの問題がありました。今回は香川県三豊市(みとよし)の粟島(あわしま)での実証実験を掲載していただきました。
編集部
そうなのですね。これまでの実績を各方面で取り上げられ、今はまさに成長の真っ只中という状況でしょうか。
東條さん
主要KPIは前年比109%増で推移しています。また、従業員数については、2021年の10月時点では15名でしたが、現在は25名です。
編集部
従業員数がかなり増えたのですね。そのように急成長を遂げた御社の強みは、どんなところにあるとお考えですか。
東條さん
分娩監視装置をワイヤレス化・IoT化したオリジナリティと、競合他社がいないこと、「どこでも、いつでも、お母さんと胎児の状態をモニタリングできる」という製品の特長を活かした営業活動を行なっていることが挙げられると考えています。
また、海外においては、JICA等の国際機関と協力して、発展途上国における周産期医療の改善に寄与でき、それを他の国にも展開できたこと、国内においては、行政と協力し、周産期医療過疎地域における緊急搬送や有事に寄与できたことも強みだと思います。
編集部
妊婦さんは世界中にいますし、離島や周産期医療過疎地域はたくさんあるので、今後も大きな成長が見込まれますね。また、インフルエンザなどの感染症予防の観点からも、対面の必要がないiCTGは優れた機器だと感じました。このような社会的意義のある仕事に携わることで、やりがいを感じることができそうです。
管理職の4割が女性。女性が活躍しやすい柔軟な勤務形態
▲リモート打ち合わせの様子。会議などもリモートで行われるため、フルリモート勤務でも支障はない
編集部
メロディ・インターナショナルさんでは女性が活躍されているとのことですが、女性社員の比率や管理職の女性の比率を伺えますか。
東條さん
社員数は男女半々で、管理職の約4割が女性です。フルリモートで子育てをしながら営業活動をしている社員もおりますし、妊娠中で時短勤務の社員もおり、勤務形態はさまざまです。また、「今日は妊婦健診があるから中抜けします」といったことも可能です。
編集部
各人の状況やライフスタイルに合わせて、柔軟に勤務形態を変えているのですね。家庭や出産と仕事を両立をしたい女性が働きやすい環境だと感じます。御社では、くるみん認定を取得されているとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか。
東條さん
メロディ・インターナショナルは「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」を企業理念としており、まずは足元から固めたいと考えてのことです。社員の出産・子育てをサポートして、お母さん・お父さんが働きやすい会社作りをしたいという社長の尾形の思いがきっかけとなり、認定を取得しました。
また、福利厚生の一環として、妊娠中の社員にiCTGを貸し出し、弊社顧問の原教授自らモニタリングし、個別アドバイスをいただけるという制度があります。
編集部
女性社員が働きやすい企業は増えていますが、御社は、妊娠中の社員も安心して仕事ができる環境が整っているのですね。また、実際にiCTGを利用してみることで、製品の特長がより理解でき、ユーザー視点のより良い製品づくりにもつながりそうです。
定時退勤やプレミアムフライデーでワークライフバランスを推奨
編集部
メロディ・インターナショナルさんでは、妊娠中や子育て中の社員をサポートする制度は他にもありますか。
東條さん
「子どもの用事で出勤が遅れます」ということは一報入れるだけで良いことになっています。また、フルリモートの社員については、部署間での会議や全体会議が毎週行われているので、そこで情報共有をしたり、チャットアプリや電話で連絡を密にとり合うことで、孤立しないようにしています。
それから、会社として、定時ぴったりに仕事を終えられるようにしています。
編集部
成長中の企業では、ワークライフバランスが取りにくいイメージがありますが、定時に退勤できるのは何か工夫があるのでしょうか。
東條さん
まず会社として、プライベートを充実させることで、仕事のパフォーマンスも向上するという考えがあり、定時での退勤やプレミアムフライデーを実施して、メリハリをつけて働くことを推奨しています。
業務時間内の効率化で言うと、多くの人が意見を出し合って実行に移すスピードがとても速いと感じています。色々な意見を出して「やってみよう。もしうまくいかなかったら改善しよう」というスピード感で、新しい意見をどんどん取り入れるので、私はとても面白いと感じていますし、業務の効率化にもつながっていると思います。
編集部
意思決定のスピードが速いのは、ベンチャーならではですね。社員の皆さんが働きやすくなるためのサポートは、他にどんなものがありますか。
東條さん
メロディ・インターナショナルではメンター制度があります。入社後3か月間、週に1回、メンターである先輩社員と、ざっくばらんに近況を話す機会が与えられます。私も入社したばかりのときは右も左もわからなかったので、メンタル面で大きなサポートになりました。
編集部
会議などで新しい意見も否定せずどんどん取り入れる風土であったり、メンタル面のサポートを得られるメンター制度であったり、社員の皆さんが萎縮せず安心して仕事に取り組める雰囲気が醸成されていると感じます。社員の心理的安全性が高いことが、仕事の効率化につながっているのかもしれませんね。
企業理念に共感し、部署を超えて協力し合う社内カルチャー
編集部
次に、メロディ・インターナショナルさんのカルチャーや社風について伺えますか。
東條さん
メロディ・インターナショナルでは「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」という企業理念に共感した人が集まっていると感じます。月に1回、社の方向性などを共有する会があるのですが、メンバーの経歴や年齢はさまざまで、仕事内容もさまざまですけれど、みんな同じ方向を向いていると感じます。
私が入社して驚いたのは、何か困ったことが起きたときなどに、部署を超えてみんなで協力してくれる点です。私が仕事でわからないことがあったときに、手を止めて話を聞いてくれたり、協力してくれたりということは何度もありました。
また、特徴的なのは、本社勤務の社員全員が同じ空間にいることです。社長の尾形(CEOの尾形優子さん)や二ノ宮(取締役CIOの二ノ宮敬治さん)、他の社員もみんな同じ部屋にいるので、話を聞きやすい雰囲気があったり、会話が聞こえてきたりして、それが問題の解決につながったりします。
編集部
部署を超えて助け合えるのは、全社員が同じ空間にいて、他の部署の状況がわかるからこそなのかもしれませんね。必要な時に助け合えるというのは、メンタル面でも業務の効率化の面でも良い影響がありそうです。
会社と一緒に自分も成長していきたい人には最適な環境
編集部
採用面では、御社にはどういった方がフィットしそうでしょうか。
東條さん
メロディ・インターナショナルではiCTGが世界中に広がり、世界中の妊婦さんやその家族に安心・安全な出産を届けることを目標に、社員一人ひとりが試行錯誤しながら一体となって作り上げていく面白さがあります。みんなのアイディアが形になっていくスピード感はベンチャーならではだと思います。
企業理念に共感していただくことはもちろんですが、「会社や社会のために自分の得意なことを活かしたい」「会社と一緒に自分も成長していきたい」という方にとっては、楽しく働けるのではないかなと考えています。
また、私自身、営業サポートやマーケティング、広報など幅広い仕事を担当しています。所属部署や型にとらわれず、自分がやりたいと思ったことにどんどんチャレンジできる環境ですし、経験がなくても手厚くサポートしてくれる会社です。そういったことに面白さを感じられる方が良いかもしれませんね。
編集部
もう既に決まっているものをこなしていくというよりは、自分で新しいことに挑戦したり改善点を見つけたりというように、向上心を持って働いていけるような人が、御社にはフィットしそうですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
メロディ・インターナショナル株式会社:https://melody.international/
採用ページ:https://melody.international/recruit/