SDGsの目標実現に向けた事業を行う企業を紹介していく企画。今回は、竹歯ブラシなどサステナブル製品の開発・販売を行うスタートアップ「株式会社ミヨオーガニック」をご紹介します。
株式会社ミヨオーガニックとは?
▲MiYO ORGNIAC(ミヨオーガニック)のブランド名でホテルアメニティを開発している
株式会社ミヨオーガニックは、MiYO ORGNIAC(ミヨオーガニック)のブランド名で、歯ブラシなど毎日使う日用品において、サステナブルな選択肢を提供する企業です。
2018年から開発を開始し、外資系ホテルなどでの先行導入を経て、2020年5月にブランドをローンチ。ブランドアイコンとなっているオーガニック竹歯ブラシと歯磨きペーパーが「グッドデザイン賞」を受賞するなど外部評価も得ています。
現在は取り扱いアイテムの拡充やアップサイクル事業にも力を入れており、今後は日本発サステナブルブランドとして、アジア、アメリカ、ヨーロッパなどグローバル展開も視野に入れています。
会社名 | 株式会社ミヨオーガニック |
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事業内容 | ・環境配慮型アメニティの製造 ・サステナブル商品の輸出入事業 ・アップサイクル事業 |
住所 | 愛知県名古屋市昭和区川名町5-5-1 |
設立 | 2023年4月 |
公式ページ | https://miyo-organic.com |
今回は、代表取締役の山本美代さんに事業立ち上げの背景や女性メンバーの活躍、今後のビジョンなどを伺いました。
「竹歯ブラシ」150万本を販売、プラスチック15トン削減
▲竹歯ブラシは使い心地を考え、日本人の口腔サイズに合う小さめのヘッドにした
編集部
はじめに、ミヨオーガニックさんはどのような会社か教えてください。
山本さん
私たちは「MiYO ORGNIAC」というサステナブルブランドを運用している会社です。竹歯ブラシや歯磨きペーパー、竹製のヘアコームなど、環境に優しい選択肢をお届けしています。
現在、お客様として大きなターゲットはホテル業界です。この他、個人のお客様向けに、ドラッグストアやオーガニックショップなどでも販売していただいています。
私たちは日用品によって「地球の温度を下げる」ことをビジョンに、プラスチックやCO2を削減していくことを目標にしています。
編集部
ミヨオーガニックさんの竹歯ブラシにはどのような特長がありますか?
山本さん
竹歯ブラシは循環素材である竹を使用し、防カビ材や漂白剤を使わないオーガニックな製品です。現在の私たちのお客様のほとんどがホテルですが、私たちはホテルで使い捨てるのではなく、宿泊後も持って帰って使い続ける文化を作りたいと思っています。
そこで、歯科衛生士さんと開発し、しっかり磨ける歯ブラシを目指しました。使い心地を考え、日本人の口腔サイズに合う小さめのヘッドにしています。竹歯ブラシを持ち歩けるコットンポーチも作りました。
編集部
「使い捨てではないホテルアメニティ」という概念を作られたのですね。ホームページでは、リッツカールトン福岡、MUJI HOTEL GINZAなどたくさんのホテルでの取り扱いがあることを拝見しました。これまでどのくらいの販売実績があるのでしょうか。
山本さん
150万本の竹歯ブラシを販売し、15トン以上のプラスチック削減に貢献しています。これからも環境に配慮しつつ、ホテル業界のお客様の要望に沿えるようなものを開発し、ラインナップを増やしていきたいと考えています。
出張先のホテルで”がく然とした体験”から、開発がスタートした
編集部
そもそも、山本さんが竹歯ブラシの開発を考えたのは、どのようなきっかけからだったのでしょうか?
山本さん
食器コーディネーターとして働いていた2018年に、出張先のホテルで手に取ったアメニティの歯ブラシを見て「夜と朝、2回使っただけで捨てられる。世界中でどれだけの歯ブラシが捨てられているのか」とがく然とした経験からです。
もったいないなと思い、すぐに「環境に優しい 歯ブラシ」「エコフレンドリー ホテルアメニティ」等と検索しました。ところが、当時は全然そのような製品の選択肢がありませんでした。そこで、もう単純に、ないのなら作ろうと思い立ちました。
編集部
もったいないと感じる人はいても、作る側に回ろうと行動される方は少ないのではないでしょうか。山本さんは元々、環境への問題意識をお持ちだったのでしょうか?
山本さん
はい。私自身が海外に行く機会が多く、海外の友達が多いということもあり、日本と海外の環境への取り組みや意識の違いが以前から気になっていました。
最近は日本でも変わってきていますが、長らく日本ではエコという言葉に対してちょっとダサいというイメージがあったように思います。日本はこのままではいけないという思いは強く持っていました。
編集部
そこでホテルアメニティから地球環境に良いインパクトを与えるものを作りたいと考えられたのですね。素材として竹を選んだのはなぜでしょうか?
山本さん
竹は枯渇しない唯一の循環資源と言われています。切っても切ってもすぐに生えてくるので、地球でもっとも成長速度の速い植物とも言われています。さらにCO2を多量吸収してくれるんです。
成長過程でもこのようなメリットがありますが、使い終わった後にも土に返るという特長があります。そのため、環境に配慮した素材として非常に注目されています。
編集部
使用する竹にも基準がありますか?
山本さん
はい。竹林をきちんと管理することが前提になってきますので、私たちはFSC認証を取得している管理された竹林から良質な約3年目の竹を採用しています。
発想の転換から生まれた「歯磨きペーパー」は、プラ使用量を98%削減
▲顧客の声から開発した歯磨きペーパー。水や唾液に反応することで溶け、ブラッシングすると泡立つ
編集部
歯磨き粉に代わる歯磨きペーパーは、新しい発想の商品ですよね。どのようにして生まれたのですか?
山本さん
竹歯ブラシを販売し始めてからお客様に「竹歯ブラシはとてもいいね」という言葉とセットで必ず聞かれたのが、「歯磨き粉で環境に優しいものってないの?」という言葉でした。私自身もアメニティに付いている小さな歯磨き粉は使い切れない量が入っていて、もったいないなと思っていました。
プラスチックを減らして環境に優しい製品を作るためには、包装を変える必要があります。しかし開発は難航しました。歯磨き粉はペースト状であるがゆえに空気に触れてしまうと固まってしまい、パッケージを紙製にすることが難しかったのです。
そこで、ペーストをやめて中身を紙にしてしまおうと発想を変えました。日本には紙せっけんという文化がありましたので、そこにヒントを得て中身も包装も紙にして誕生したのが歯磨きペーパーです。
編集部
歯ブラシとはまた違う、開発の苦労があったのですね。従来の歯磨き粉とは見た目も大きく変わりましたが、どのくらいのプラスチック削減効果があるのですか?
山本さん
歯磨きペーパーと紙パッケージにしたことで、従来のチューブタイプに比べてプラスチックを約98%削減できています。また、製品の重量や体積が下がったことで輸送時のCO2削減にもつながります。
編集部
98%の削減とはすごいですね!小さな商品が環境にとっては大きな一歩になるのだと感じました。
循環型社会に向け、アップサイクルの仕組みも実現
▲アップサイクルイベントでの1枚
編集部
ミヨオーガニックさんの脱プラスチックの取り組みは、SDGs目標「海の豊かさを守ろう」や「つくる責任つかう責任」などに関わっていると思います。つくる以外の取り組みについても教えてください。
山本さん
ホテルから廃棄されるミヨオーガニックの竹アメニティを回収し、再生しています。細かく砕いて自然由来の樹脂などに混ぜ込み、新たな製品としてホテルや飲食店の備品として使ってもらいます。
編集部
アップサイクルの仕組みを作られたのですね。ミヨオーガニックさんの竹製品以外も回収するのでしょうか?
山本さん
はい。ホテルから出る廃棄プラスチックを回収しています。地域の福祉施設などで選別をしてもらい、同じように様々な製品に生まれ変わらせます。
地球にも地域にも働く人にもいい組織「Bコープ」を目指す
編集部
アップサイクルの取り組みでは地域との関わりも伺えました。ミヨオーガニックさんは地域や社会にとってどのような存在でありたいと思われますか?
山本さん
分かりやすく言うと、地球にとっても、地域にとっても、働く人にとっても”いい会社”でありたいです。今は会社を設立したばかりで土台作りをしている段階ですが、次のフェーズではBコープ認証の取得を目指したいと思っています。
編集部
Bコープ認証は日本ではまだ聞きなじみがないですが、どのようなものですか?
山本さん
BコープのBはベネフィット(便益)、コープはコーポレーション(会社)の略で、社会や環境に配慮した公益性の高い企業のことです。Bコープ認証はこうした企業に対する国際的な認証制度で、海外ではパタゴニアやダノンなどサステナビリティに寄与している企業が取得しています。
審査には地球にも地域にも従業員にも良いインパクトを与えているかという、大変厳しいチェック項目があります。また、一度取ったら終わりではなく、継続的な審査があります。
編集部
ミヨオーガニックさんは公益性の高い企業として、持続的に成長したいとお考えなのですね。
思いと行動力のある女性メンバーが事業推進中
▲代表をはじめ現在は全員女性のチームで事業を推進している
編集部
ここからはミヨオーガニックさんのメンバーや働き方について伺います。現在の体制や、メンバーの参画背景などを教えてください。
山本さん
特段、女性でまとめようと思ったわけではないのですが、私を含め、現在いる4名は全員女性です。環境や事業に対してすごく思いのあるメンバーが集まっています。
名古屋オフィスで管理系の仕事をしている女性は、私の古くからの仲間で事業をよくわかっているメンバーです。東京オフィスの営業の女性は、新卒から6年間ホテル業界にいました。彼女は離島のホテルで働いたこともあり、海の美しさとそこに流れ着くゴミの量とのミスマッチな光景に胸を痛め、環境への意識を持っていたそうです。
編集部
ホテルでのそのような経験があるからこそ、サステナブルなホテルアメニティの提供に共感されたのですね。現在は営業としてどのような活躍をされていますか?
山本さん
嬉しいことにホテル業界からたくさんのお問い合わせをいただいている状況ですので、彼女はその問い合わせ対応と実際に受注した後の製品を届けるまでのオペレーション業務をメインに行っています。ただ、小さな組織ですので、いろんなことに挑戦してもらっています。
ジェンダーや国籍、年齢の違いを超えて、働きやすい環境へ
編集部
働く人にとっても”いい会社”でありたいというお話がありましたが、従業員の働きやすさのために工夫されていることはありますか?
山本さん
制度はまだこれから作っていくところですが、ライフステージに関わらず働きやすい場所にしたいと思っております。
名古屋オフィスはメンバーのお子さんの学校と近い場所にあることから、お子さんが学校からオフィスに帰ってくるんです。お子さんが「ただいま」と言いながらランドセルを背負って会社に入ってくるような、そんなアットホームな光景も見られます。子どもがいても働きやすい環境ではあると思います。
編集部
海外展開も考えていらっしゃるので、これから多様なメンバーが増えていきそうですね?
山本さん
はい。性別、年齢、国籍、宗教など、本当に何にも関係なく、私たちの会社にフィットする人が来てくれたら嬉しいですし、これまでの伝統にとらわれず、新しい形で働いていけたらいいなと思っています。私自身も今は、自分を表現できているなと思います。
編集部
山本さんはどんなところで自分らしさを表現できていると感じていらっしゃいますか?
山本さん
私自身は伝統的な会社組織の中で働くのが合わないタイプだったのですが、スタートアップはそういった人も働きやすい環境があると思います。今は自分のプロダクトを出せたり、新しいモノづくりの形を模索したりできており、開拓しがい、やりがいを感じています。
編集部
会社がその人らしさを活かせる場であってほしい、と考えていらっしゃるのですね。
「美しい地球を次の世代に」。新しい価値観で切り拓ける人と働きたい
▲「美しい地球を次の世代に」という思いが込められたMiYO ORGNIACブランドの製品ラインナップ
編集部
最後に、これから一緒に働く仲間に向けてのお話を伺います。ミヨオーガニックさんの「美しい地球を次の世代に」というパーパスに込められた思いについて教えてください。
山本さん
パーパスには「美」と「代」の字が入っており、ブランド名とともに、私の名前「山本美代」から来ています。はじめは自分の名前を入れるなんて恥ずかしいですし、抵抗を感じていました。
しかし、母から名前の由来として「美しいものを代々残していけるような女性になるように、という思いを込めて付けた」と聞き、まさにこの事業の思いと合致していると感じました。美しい地球を代々残していくという意志を込めています。
編集部
名前に託された思いを、ブランド名、そしてパーパスにのせられたのですね。今後、事業を拡大されていくにあたり、どんな人と一緒に働きたいですか?
山本さん
地球環境への思いがある方、そして、トラディショナルな価値観ではなく、新しい価値観でやっていける方です。また、私たちのメインのお客様はホテル業界ですので、誰にでも愛を持った対応ができるホスピタリティマインドのある方だと気持ちよく働けると思います。
編集部
先ほど、今は会社としての土台作りをされているところと伺いました。メンバーとしても、事業推進や仕組みづくりまで色々なことに挑戦できるフェーズですね?
山本さん
はい。スタートアップですので、決まった仕事はなく、仕事の内容ややり方もどんどん変わっていきます。柔軟に対応できる方を歓迎します。
編集部
山本さん、本日はありがとうございました!
日用品にサステナブルな選択肢を提供するミヨオーガニックさんは、働く人にとっても心地よくサステナブルな環境をつくろうとされていることが感じられました。ミヨオーガニックさんのパーパスや取り組みに関心を持った方は、ぜひホームページをご覧ください。
■取材協力
株式会社ミヨオーガニック:https://miyo-organic.com
採用ページ:https://miyo-organic.com/pages/recruit