給食業界を変える株式会社PECOFREEの育児と仕事を両立できる組織づくりとは

独創的なビジネスモデルや事業の成長性などが注目される企業を紹介する本企画。今回は、ランチのサービスを導入したい学童施設や学校、企業とサプライヤーである弁当業者、そして学生さんや働く方々をつなぐサービス「ペコフリー」を展開する株式会社PECOFREEにインタビューをさせていただきました。

ITの活用で給食の市場を改革する株式会社PECOFREE

元々、学校に給食を提供する産業給食の世界で、工場長や取締役として経験を積んできた代表取締役の川浪達雄さんが、2021年に設立した株式会社PECOFREEは、「給食の新しい仕組みづくり」を提案しています。

ITを活用したランチの予約注文サービス「ペコフリー」の導入実績は、ローンチから2年で500件を突破。食堂が撤退したり、購買部がなかったりと、食のインフラについて課題を持つ学校や企業のニーズに見事にマッチしました。

サービス導入先の学童施設や学校、企業へランチを届ける弁当業者は、どの都道府県にもあるため、今後もエリアを拡大しながら、日本全国のお客様に向けたサービス展開が可能です。

会社名 株式会社PECOFREE
住所 福岡県福岡市南区塩原1丁目28-1
Lune Ayla
事業内容 ・「PECOFREE(ペコフリー)」の開発・運営
・給食・食品業界のDX支援
設立 2021年2月
公式ページ https://pecofree.jp/

今回は株式会社PECOFREEの本部COOである黒岩陽子さんに「ペコフリー」のサービス内容や事業の成長、女性社員が活躍する職場の環境などについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社PECOFREEの本部COOを務める黒岩陽子さん

株式会社PECOFREE
本部COO

黒岩 陽子さん

学校・企業のランチを便利に。給食業界のDX化・地域活性も担う「ペコフリー」

株式会社PECOFREEのサービス「ペコフリー」がスマホの画面に写っている画像
▲「ペコフリー」を使って事前に好きなメニューを予約しておけば、学生さんなどの利用者は、食堂の行列に並ばず余裕を持ってランチを楽しめる

編集部

まずPECOFREEさんの事業について教えてください。

黒岩さん

私たちは、スマホから気軽にランチを注文できるアプリ「ペコフリー」の開発・運営をしています。高校生などのサービス利用者はメニューから好きなランチを簡単に事前注文できるのが特徴で、弁当業者様はシステムを閲覧することで事前に必要数を把握できるのも大きなメリットです。

給食業界のDX化を進め、ITを活用した収益化の新しいシステム構築や弁当業者と学校・施設のマッチングで地域経済の活性化を創出したいと考えております。

編集部

事業立ち上げの経緯についてもお教えいただけますか。

黒岩さん

長く産業給食の世界にいた当社の代表取締役である川浪達雄が、学生たちの昼食を取り巻く環境や、学校給食の市場をもっと改善したいという思いでPECOFREEを立ち上げました。

特に高校は義務教育ではないため給食がないんですよね。そこで、各高校には食堂などが設けられているのですが、不採算で撤退しているところが多数あるんです。

短い昼休憩の時間では回転が悪く、いつも混雑しているとなれば、学生は家から弁当を持参したりコンビニで買ってきたりで食堂を利用しません。現在、日本の高校生が約300万人(※)いる中で、食堂の利用者は1割程度と言われています。
(※)出典/文部科学省「令和4年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」

編集部

そんなに少ないとは驚きました。高校で画期的なランチのサービスが必要とされていたのですね。

黒岩さん

あまり知られていなかったと思うのですが、ランチの問題は学生、学校、保護者にとって悩みの種だったわけです。食堂が混雑している場合や品切れだった場合は、昼休みの間に学生がランチを食べられないという事態になってしまいますし、食堂維持のコスト増加で、食堂の撤退がやむをえなくなると、保護者から学校に問い合わせや要望が増えます。共働きの世帯が増えていることもあり、保護者にとって弁当づくりは大きな負担です。

保護者の皆様に「高校に給食のようなものがあった方が良いか」というテーマでアンケートを行ったことがあるのですが「弁当づくりに苦労している」や「給食があれば負担軽減に役立つ」という設問に90%以上の方が「そう思う」という回答をしているんですよ。

編集部

なるほど。「ペコフリー」はランチについて課題を持っていた学生、学校、保護者にとって、この上ないサービスだったのですね。

サービス開始2年で全国500件の導入実績。流通総額は前年比666%にUP

編集部

PECOFREEさんの業績はどのようになっているのでしょうか。

黒岩さん

「ペコフリー」がスタートして2年ですが、500以上の学童施設や学校、企業が導入してくださいました。導入先は北海道から鹿児島まで全国に拡大しているんですよ。流通総額も大幅に増えていて、前年の666%に成長しています。

株式会社PECOFREEのサービス「ペコフリー」の導入実績株式会社PECOFREEのサービス「ペコフリー」に関する月次トラクションの増加数

編集部

このような成長の要因についてお聞かせいただけますか。

黒岩さん

学校における食堂の撤退や、核家族・共働き世帯が増える中で弁当づくりが負担になるなど、世の中に「子どもを取り巻く食のインフラを守りたいけど守れない、何とかしたい」というニーズが高まっていて、そこに「ペコフリー」がマッチしたのだと考えています。

また規模は様々ですが、世界に誇れる日本ならではの質の高い給食をつくるノウハウを持った弁当業者様が、各都道府県にいらっしゃって「この地域ではサービスを導入できない」ということがないのです。どの地域でも導入可能なので、全国的に拡大を進められています。

編集部

すでに全国に広がっているのですね。まさに、給食業界に革命を起こしているのだと感じました。

導入費ゼロで実現するランチ改革。みんなに嬉しいサービスを提供し成長

株式会社PECOFREEのメンバー3名のミーティング風景

編集部

「ペコフリー」のサービスが多く受け入れられている理由は何でしょうか。

黒岩さん

私たちは、サービスを導入していただく学校様には導入費をいただいていません。ですから、学校内で予算の試算や申請などが必要なく、どんなタイミングからでも始められます。そこが多くの学校様から導入していただけているポイントなのだと思っています。

弁当業者様からは、サービスのご利用にあたって決済手数料を含む一定額をいただいていますが、初期費用はかかりません(※)。そして「ペコフリー」を使っていただくと、弁当業者様は本来の製造・配送業務に集中できるというメリットがあります。
(※)学校や企業への提案に使用するリーフレット作成費用は別途発生

発注プロセスとしても、登録は二次元バーコードで行い、決済はアプリ内でクレジットカードもしくはコンビニ後払いにて行います。スマホ1台で完結するため、すごく効率的です。

また、ランチを頼みたい学生さんに事前に注文を入れてもらうシステムなので、弁当業者様は注文数を天気に左右されることがなく、見込み調理も必要ないので、フードロスの削減につながります。

編集部

「ペコフリー」を導入した弁当業者様はずいぶんと仕事のやり方が変化したでしょうね。

黒岩さん

そうですね。給食の製造と配送をされている弁当業者様は、電話やFAXを使って業務のやりとりをしているところがまだまだ多くある印象ですが「ペコフリー」なら、渡した弁当の数と現金に相違がないかの確認などが、アプリ一つで完結します。

当日の朝に電話注文を受けて、配送先で現金を受け取り、釣銭を数えて渡すというような方法で決済をしている弁当業者様には、DX化で業務の負担を減らすお手伝いができているのかなと感じております。

編集部

学生さんや保護者の方へのメリットにはどんなものがございますか。

黒岩さん

学生さんは、まず予約注文しておけば、ランチにありつけないという事態がなくなります。行列に並ぶこともないので、昼休みを有効に使えます。栄養的にしっかりしているので、保護者の方には安心していただけます。また、スマホで決済が完了するので、子どもに余計なお金を持たすのが心配という保護者の方にも喜んでいただいています。

編集部

「ペコフリー」は、利用する誰もが喜ぶというサービスなのだということが分かりました。

製造業者をしっかりフォローして信頼関係を構築。嬉しいエピソードも共有

株式会社PECOFREEのメンバーミーティングの風景

編集部

「ペコフリー」について、サービスの提案や利用時のフォローなどはどのようにされているのでしょうか。

黒岩さん

拠点は福岡にありますので、遠く離れた場所のお客様(お弁当の製造業者)には電話やオンラインを通してまずは対応をさせていただいています。

新しいことを始めるときに、躊躇されるお客様は多くいらっしゃいます。特に「システム」や「ログイン」などの言葉を聞くだけで、難しいと身構えられてしまう場合もありますが、全国の弁当業者を一件ずつ回るのは難しいので、電話やオンラインでもまずはご理解いただけるよう、しっかり話をして分かりやすい説明ができるよう力を入れています。

編集部

お客様と対面はしなくても、対話して理解を深めることを大切にしていらっしゃるのですね。お客様から聞いたお話で印象に残っているものはございますか。

黒岩さん

これまで企業との取引しかしていなかった弁当業者様で、「ペコフリー」を通じて高校に弁当を届けるようになったお客様から伺ったお話です。

「ペコフリー」では弁当を納品する際に注文リストを一緒に納めるのですが、弁当の容器と注文リストを回収すると、高校生から「今日もおいしかった」とのお礼や「こんなメニューが食べたい」というリクエストのメッセージがリストに書かれていることがあるそうです。

高校生向けの給食は未開拓市場だったので、その弁当業者様も高校生のサービス利用者様とは関わった経験がなく「新しい刺激をもらっている」と喜びのお言葉をくださいました。

編集部

素敵なお話ですね。弁当業者様は「ペコフリー」を利用し始めたからこそ、未開拓市場への参入を果たし、また他では得られないメッセージを受け取ることができたのですね。

日本全国の弁当業者と協業。さらなる地域経済への貢献と成長を目指す

株式会社PECOFREEの代表取締役を務める川浪達雄さんとメンバーのミーティング風景
▲株式会社PECOFREEの代表取締役を務める川浪達雄さん

編集部

「ペコフリー」の今後の展開について教えてください。

黒岩さん

小学校・中学校では給食の無償化が叫ばれていますが、高校は義務教育ではないという根本的な問題があります。高校生たちに栄養のある食事を届けたいという思いをたくさんの人が持っていながらも、いまだに具体的な解決策がなく未開拓市場と言われていますので、ここに私たちが特化して新しいサービスを生み出し、展開していけたらと思っています。

編集部

PECOFREEさんがされようとしていることは、とても社会的貢献度が高い事業だと思いました。市場拡大についての見込みはどうでしょうか。

黒岩さん

日本には高校が約6,000校(※)ありますので、この未開拓の市場はまだまだ開拓の余地があります。また、今後は幼稚園や保育園、福祉施設など既存の給食市場のリプレイスも進めていきたいと考えています。
(※)出典/文部科学省「令和4年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」

ほかにも、例えば各地域で提携している弁当業者様と地産農家、そしてPECOFREEがタッグを組んだ商品開発で地域経済の発展をリードしたいという思いがありますので、妊活中や産後のケア食、離乳食、介護食などをOEM化して事業にできたらいいなと考えています。

また、高齢者の方には冷凍ではないものや、学童施設にいる子どもたちに栄養のあるおやつを届けてあげられたらいいですね。

編集部

PECOFREEさんの企画する商品が、全国の弁当業者様の手によって誕生する日が来るということでしょうか、楽しみですね。

最高執行責任者、ブランド責任者も女性。更に女性が働きやすい環境づくりを目指す

株式会社PECOFREEの女性メンバーがホワイトボードに向かっている様子

編集部

PECOFREEさんのメンバー構成はどのようになっていますか。

黒岩さん

女性4名、男性6名で、うち男性1名は代表の川浪です。2023年10月には2名の女性を新たに採用しました。彼女たちの新しい意見や考えを尊重しながら、人材育成をスタートしたところです。

編集部

PECOFREEさんで働く女性が、どのような活躍をされているのか教えてください。

黒岩さん

私は最高執行責任者を任せてもらっています。もう一人の女性はブランド責任者を任されています。

私は、弁当業者様や学校関係者の方と直接やり取りをしながら、対話を深めていくことで課題を一つひとつ解決したり、またそのことを喜んでいただけたりということに日々喜びを感じています。

編集部

女性のCOOとして会社を大きくしていく中で、女性の働きやすさに重点を置いた制度やサポート体制を、さらに充実させていこうというお考えはございますか。

黒岩さん

自分で「こういう制度があれば嬉しい」と思うものは、独断ではなく代表やメンバーにも共有しています。また、メンバーとの1on1を通して、今どのようなことが不安材料となっているかなどのヒアリングを行い、PECOFREEとしてメンバーを取り巻く環境を、どんどん良くしていきたいと思っています。

育児休暇はもちろん取得してもらいたいですし、一時金の支給なども検討しています。

編集部

女性ならではの視点で、働く環境を常に改善されているのですね。女性の最高執行責任者、ブランド責任者がいらっしゃると、一緒に働く女性メンバーの皆様はとても心強いでしょうね。

PECOFREEで働きたいというファンも。子育て世代をフォローするカルチャー

株式会社PECOFREEのメンバーが4名集まって談笑している様子

編集部

PECOFREEさんにはどんなカルチャーが浸透しているのでしょうか。

黒岩さん

会社全体で子育てと仕事の両立に理解があり、サポート体制が整っています。子どもを迎えに行く時間など予定時刻が近づくと、まわりから「時間は大丈夫?」と声がかかります。メンバーそれぞれが先に気づいて気遣うカルチャーがあるんですよね。業務もサポートし合うのが当たり前になっています。

また、子育て中は働く時間が限られますが、PECOFREEは決められた時間内にやるべき業務ができていればよいというスタンスなので「何時から何時まできっちり」と縛ることはありません。

子育てだけではなく、世代的に介護の問題が出てくる場合もありますが、そのような場合も、病院や施設への面会のために勤務を中抜けして構いません。柔軟に時間を調整できるので働きやすいと思います。

編集部

子育てや介護を両立させたい方にとって、ありがたいカルチャーですね。どのようなメンバーの方がいらっしゃるのか教えてください。

黒岩さん

配偶者がいる、子どもがいるというメンバーが多いです。「子どもが3人いるから、以前は働くのをあきらめていた」という女性も活躍してくれていますよ。

そのメンバーはもともと「ペコフリー」を利用していた保護者でした。私たちのサービスに「なんて素敵なんだ」と感銘を受けてファンになり「このサービスに携わりたい」と当社の公式サイトに問い合わせをしてくれました。

彼女は、ブランクもあるし、限られた時間で働けるところなんてないだろうと思っていたそうなのですが「働くことを諦めなくていいんだよ」と伝えて採用しました。これからも「PECOFREEは、働きたいと思っている女性をサポートします」というメッセージを発信していきたいですね。

編集部

PECOFREEさんのメッセージは、とても温かいですね。仕事を探している女性たちの励みになりそうです。

福岡以外の拠点展開も視野に。前向きに頑張ってくれる方を採用したい

株式会社PECOFREEの本部COOを務める黒岩陽子さん
▲採用のポイントについて教えてくれた最高執行責任者の黒岩陽子さん

編集部

最後にPECOFREEさんが採用の際に重視しているポイントを教えてください。

黒岩さん

まずは「ペコフリー」というサービスを好きになってくれる方、そしてこのサービスを一緒に拡大していこうとアイデアを出してくれるような方を採用したいです。

代表は「何事にも前向きにチャレンジする」という姿勢を大事にしていて、例えば私が乗り越えられそうにない壁にぶつかっているときには「大事なのはトライアンドエラーだよ」と言って背中を押してくれます。

ですので、常に好奇心と向上心を持って、失敗を恐れず取り組める方が当社に合っているのではないかと思います。前向きに「こういったことがやりたい」と発言してくれる方だといいですね。

編集部

福岡での採用になるのでしょうか。

黒岩さん

現在の拠点は福岡ですが、今年は東京に拠点ができ、来年に愛知、大阪と拠点を増やしていきたいと考えています。そこにスキルを持つコア人材を配属して、拠点を大きくしてもらえたらという展望があります。

編集部

PECOFREEさんの拠点展開は、すでに日本全国に提携する弁当業者様がいらっしゃって、導入校もおありなので近いうちに実現されるのではないかと感じました。食のインフラを守るという社会的にも意義のある事業に大きな魅力を感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社PECOFREE:https://pecofree.jp/
採用ページ:https://pecofree.jp/recruit