会社をもっと良くしたい!静岡鉄道株式会社の若手社員が取り組む心理的安全性の向上とは

企業で活躍する若手社員や女性社員にスポットを当て、企業の魅力を探るこの企画。今回は静鉄グループの中核企業として、静岡市地域の生活に根差した幅広い事業を展開している静岡鉄道株式会社を取材しました。

静鉄グループの中核企業として発展する静岡鉄道株式会社

静岡鉄道株式会社は、25社のグループ会社からなる静鉄グループの中核企業です。交通、流通、自動車販売、不動産、レジャー・サービス、建設などの事業をグループ展開し、静岡市民の生活に密着した多角的な事業を行っています。

2019年5月に創立100周年を迎えた同社は経営理念に「安全・安心・快適のあくなき追及」を掲げ、地域に欠かせない総合生活文化企業グループであり続けるため、「信頼され、選ばれる静鉄グループ」を目指し、さらなる100年に向けて邁進しています。

会社名 静岡鉄道株式会社
住所 静岡県静岡市葵区鷹匠一丁目1番1号
事業内容 ・鉄道、索道事業 
・不動産事業 
・ビジネスホテル事業
・附帯事業(広告・ゴルフ場・リゾートホテル・介護・カード)
設立 1919年5月
公式ページ https://www.shizutetsu.co.jp/
働き方 スーパーフレックスタイム制度

長きにわたって地域住民の生活に寄り添い続けている静岡株式会社では現在、若手社員が中心となってさまざまなプロジェクトに取り組み、新たに生まれ変わろうとしています。

そこで今回は、プロジェクトの中心メンバーである3名の若手社員に、プロジェクトの目的ややりがい、ワークライフバランスへの取り組みなどを伺いました。

本日お話を伺った方
静岡鉄道株式会社の住吉さん

静岡鉄道株式会社
人事部 人財採用課

住吉 昂太さん

静岡鉄道株式会社の大山さん

静岡鉄道株式会社
人事部 人財育成課

大山 智世さん

静岡鉄道株式会社の影山さん

静岡鉄道株式会社
不動産ソリューション事業部 事業戦略課

影山 舞さん

若手社員が構想を立てた「しずてつ未来プロジェクト」とは?

編集部

創業100年を超える老舗鉄道会社の静岡鉄道さんでは、さまざまな新しい取り組みをされていると伺っております。はじめに、その取り組みの内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

影山さん

不動産ソリューション事業部の事業戦略課に所属している私は、静岡鉄道の価値向上に取り組む「しずてつ未来プロジェクト」を担当しています。若手が中心となって進めているこのプロジェクトの中でも沿線の不動産の開発を主に担っています。

「しずてつ未来プロジェクト」とは、11キロの静岡鉄道の沿線の価値をどのように向上させていくかをテーマに若手社員が立てた構想です。「みんなでつくる日常が特別な街」をビジョンとし、沿線を4つのエリアに区切ってそれぞれの特徴を出していく活動を行っています。

■「しずてつ未来プロジェクトの詳しい内容はこちら!
https://project11.shizutetsu.net/

編集部

具体的な活動についてもお聞かせいただけますでしょうか。

影山さん

静岡市の中心街である鷹匠エリアに複数の企業が入居するシェア型社員寮の「SUBACO」と、コワーキングスペース/シェアオフィスの機能を持たせた「=ODEN(イコールオデン)」、フードホール「OTOWA FOOD HALL SHiiiTO(シート)」の、3つの施設を新たに開発しました。

音羽町駅にて2024年3月24日にグランドオープンしたばかりの「OTOWA FOOD HALL SHiiiTO(シート)」は、地域密着型のフードホールとして人の「顔」が見え、人と「繋がる」場所になるよう開発に取り組んできました。すでに4店舗のテナントが入っており、今後はイベントなども開催する予定です。

地域の会社と連携し、静岡市全体を盛り上げることが目標

編集部

それぞれの開発は影山さんの他、静岡鉄道の若手社員が中心に進めているのでしょうか?

影山さん

2020年開業の「=ODEN(イコールオデン)」ではピッチイベントの開催や会員様同士の交流を促進する活動などを、若手が中心となって行っています。

また、シェア型社員寮の「SUBACO」は会社間の連携を目指しており、各会社の若手社員の方々に進んで交流してもらうことで、静岡市を盛り上げる人材になっていただきたいという思いを込め、若手が中心となり開発を進めました。

「しずてつ未来プロジェクト」は当社単独の取り組みではなく、地域のさまざまな企業様に携わっていただき、お互いがwin-winの関係になるような仕組みを作っていきたいと考えています。

編集部

地域をよく知り、愛着を持って暮らしている企業とのパートナーシップは、さらにプロジェクトを盛り上げる起爆剤になることが期待されますね。

保守的な企業風土をなんとかしたい!若手の発案で実現した「静鉄プロレス電車」

編集部

「しずてつ未来プロジェクト」が誕生した背景や、沿線エリアの開発のほかに手がけたイベントなどがあればぜひ、お聞かせください。

影山さん

交通インフラ系の会社と聞くと少し固いイメージを持つ方が多く、当社も数年前まではどちらかというと保守的な風土が根付いていたと感じます。そのような中で若手社員が中心となっているものが「しずてつ未来プロジェクト」です。

ご紹介した沿線の不動産開発の他、2023年度には”地域を盛り上げたい”という思いを込めた電車のイベントとして、プロレス団体「FREEDOMS」様が、走行中の静岡鉄道車内をプロレスリングにして試合を行う「静鉄プロレス電車」を運行しました。このアイデアも若手社員から生まれました。

編集部

若手社員からのユニークかつ、斬新なアイデアが実現できる環境から、静岡鉄道さんの風通しの良い社風と、挑戦を後押しする新しいカルチャーが根付いていると感じました。

地元企業と共に課題解決に挑む「越境研修」

静岡鉄道株式会社が実施している「越境研修」の様子

編集部

大山さんは人事部に所属されていると伺っております。研修制度など、静岡鉄道ならではの取り組みなどがあればお聞かせいただけますでしょうか。

大山さん

私が主に担当している若手社員向けの「越境研修」という取り組みがあります。

これまでの若手社員向けの研修は座学が中心で、講師からマーケティングや課題解決などを教えてもらう一方通行のスタイルでした。多様性が重視され、正解が1つとは限らない今の時代において、「異なる価値観の中で一緒に価値を創り上げ、正解を探すことが必要になってくるのでは」という考えから、越境研修を実施しています。

課題のヒアリングからフィールドワーク、プレゼンを実施

静岡鉄道株式会社が実施している「越境研修」の様子

編集部

とても興味深い「越境研修」ですが、研修はどのような内容で行われるのでしょう。

大山さん

入社4年目の社員研修を例に挙げると、地域の中小企業様と共に課題解決を図る研修を実施しております。

期間は約4ヶ月となっており、チームに分かれて事業者様が抱えている課題をヒアリングし、解決に向けた具体的な施策を一緒に考え、提案します。ただ提案をして終わるのではなく、実際に自分たちでフィールドワークをし、成果を発表するプレゼンを行うまでが一連の流れになっています。

編集部

実際に研修に参加した若手社員からはどのような声が聞かれますか?

大山さん

社外に出ることで今まで当たり前だと思っていたことが必ずしもそうではないことや、異業種で働いている同世代の方と一緒になって検証することで、新たな価値観を見出し、視野が広がったなどの声が寄せられています。

編集部

異業種間交流ではなく共に課題解決に挑むことで視野が広がり、物事を本質的に捉えることができると感じます。素晴らしい研修制度ですね!

心理的安全性の向上を含む「みんなの100日プロジェクト」

静岡鉄道株式会社のミーティングの様子

編集部

住吉さんも人事部に所属と伺っております。静岡鉄道さんの若手活躍の背景には、どのような要因、取り組みがあるのでしょう。

住吉さん

若手が意見を言いやすかったり、新規プロジェクトを立案しやすい環境の背景にあるのが、当社が取り組む「心理的安全性の向上」です。

心理的安全性が高い職場とは、地位や立場に関わらず、誰もが率直に意見を言える状態である職場のことを指します。当社では何を言っても大丈夫という「話しやすさ」、困った時はお互い様の「助け合い」、とりあえずやってみようの「挑戦」、異能、どんとこい!という意味での「新奇歓迎」を要素に掲げ、これらを全社的に高めることを目指しています。

先ほど影山から話があったように、どちらかというと保守的だった静岡鉄道ですが、ボトムアップをし、「心理的安全性の向上」以外も含めて、会社をより良くしていこうという狙いから、全社横断の有志プロジェクト「みんなの100日プロジェクト」(通称:100プロ)に取り組んでいます。

課題は“ノビシロ”。「しずてつノビシロ100課事典」を作成

編集部

心理的安全性の向上に取り組むことになったきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか。

住吉さん

さまざまな要因がありますが、1つはコロナ禍の閉塞感で社員サーベイの満足度が10%以上悪化したことが挙げられます。それに伴い、離職率も悪化し、このままでは地域の足である“しずてつ”が維持できない状況となる可能性がありました。

このような状況を打破するためにはまず、自分たちの会社を自分たちでなんとかしなければという考えに至り、人事部と労働組合により課題を把握するためのアンケートを実施しました。

アンケートでは、みんなが望む生活を送るためには、社内にどのような制度や取り組みがあったらいいかなどの項目を設けました。その中で大きな課題、「のびしろ」として浮き彫りになったことの1つが心理的安全性に関することでした。当社ではこのアンケートを「ノビシロアンケート」と呼んでいます。

編集部

「ノビシロアンケート」の結果を踏まえ、静岡鉄道さんでは具体的にどのような施策に取り組まれたのでしょう。

住吉さん

アンケートで発掘した多くのノビシロを100プロで歩みを進める課題とし、百科事典の様に一覧化した「しずてつノビシロ100課事典」を作成しました。100日で全てを解決することはできなくても、100日で一歩進めることはできるという思いが込められています。

例えば、心理的安全性の向上に関することでは、社内で話しやすくするためにはまず、仲間を知ることが大切という考えのもと、働くみんなを見える化する「しずてつ仲間図鑑」を作りました

社内イントラで社員同士のプロフィールを見ることができ、中途入社の新入社員の紹介や、入社時には社員からのwelcome寄せ書きとしても活用しています。社長ももちろんユニークな写真と共にプロフィールを掲載しています。

編集部

トップである社長自らがプロジェクトに参画することで、会社全体が「話しやすい」、オープンな環境になりますね。

住吉さん

ありがとうございます。心理的安全性に関するレクチャーは、若手プロジェクトメンバーが新任管理職に対してレクチャーしていることも画期的な取り組みです。心理的安全性を部下目線で理論的に語ることで、話しやすい、挑戦できる環境づくりにより近づくことができると感じています。

繁忙期が異なる部署の社員が他部署を手伝う「静鉄おてつたび」

編集部

心理的安全性の4因子の1つ、「助け合い」についての具体的な施策についてもご紹介いただけますでしょうか。

住吉さん

他部署の業務を手伝いあえる「静鉄おてつたび」を実施しています。繁忙期が異なる部署・社員が、他部署の業務を手伝い合える仕組みとなっており、例えば、鉄道の現場の繁忙期に本社部門の社員が接客を手伝うかたちです。手伝ってほしい案件は現在累計で20ほどあり、マッチングは100%となっています。

全社員がプロジェクトに関わる「挙手」「握手」「拍手」の3つのポイント

編集部

心理的安全性の向上をはじめとした取り組みを実現するには、社員全員の協力が必要と思われます。プロジェクトを遂行するにあたり、取り組まれていることはありますか?

住吉さん

事務局だけでなく社員みんなでつくっていくための関わり方として、施策ごとに「挙手」、「握手」、「拍手」の段階での関わりを設計しました。

「挙手」は個別施策のリーダー、「握手」は手を取って推進するメンバー、「拍手」は実務は忙しくてできないけれど、アイディアやヒアリングなどで協力する応援者というかたちになっています。このように、誰もが関われる仕組みを作ることで、通算100名以上の社員がプロジェクトに関わってくれました。

編集部

なるほど。複数の関わり方を設計することで、社員は自分が関われる分野でプロジェクトに参画できるというわけですね。

100年の歴史と新しい挑戦の調和がもたらした変化

静岡鉄道株式会社のオープンスペース
▲柔軟な働き方ができる静岡鉄道では、オフィスにオープンスペースを設けるなど、社員の働きやすい環境にも常に取り組んでいる

編集部

「みんなの100日プロジェクト」を遂行した結果、風土や会社の雰囲気はどのように変化しましたか?

住吉さん

包括的にアプローチした結果、課題となっていた退職者数も減少し、従業員満足度も過去最高値となる83.4%に上昇しました。定量的な効果以外でも、例えば育児休暇から復職した社員から「育休から戻ると、別の会社みたいに前向きになっていた」という声も寄せられました。

「みんなの100日プロジェクト」は外部評価もいただき、「心理的安全性AWARD2023」において最高ランクのプラチナリング賞を受賞することができました。社内だけではなく、客観的にも取り組みが認められたことに、とても嬉しく思っています。

編集部

静岡鉄道さんのどの様な取り組みが「心理的安全性AWARD2023」受賞につながったと思われますか?

住吉さん

心理的安全性の向上は、受賞をするために取り組んだプロジェクトではありませんが、転換期だったのは、コロナ禍によって人の移動が制限されたなか、鉄道会社としての存在意義を問われたことです。

コロナ禍はダメージが大きかったのも事実ですが、会社が生まれ変わるきっかけでもあり、会社の価値観も大きく変わりました。100年間、地域と共に歩み続けてきた歴史と新しい価値観が調和しているのが現在のフェーズです。心理的安全性の向上をはじめとした新たな取り組みに、社員一丸となって乗り出した結果が受賞につながったと分析します。

人事評価にもプロジェクトの貢献度を反映

編集部

人事評価制度について、具体的な指標とあわせてお聞かせいただけますでしょうか。

住吉さん

人事評価については行動評価と成果評価を基準にしています。行動評価の特徴としては、心理的安全性等のチームへの貢献要素が10%含まれており、「みんなの100日プロジェクト」のアウトプットとしても、評価制度まで社員の考えを反映させる動きがあります。

編集部

まさに社員みんなで静岡鉄道をボトムアップし、より良い会社づくりへと取り組まれているのですね。

最大3年間の育児休暇と子供が小学4年生まで利用できる時短勤務

編集部

続いて、働き方やワークライフバランスについて伺います。女性の活躍を推進する企業に与えられる「えるぼし」を認定されている静岡鉄道さんですが、管理職の男女比についてお聞かせください。

大山さん

全体の管理職が78名いる中、女性は14名となっており、約18%が女性管理職となっています。比率としてはまだ少ないのですが、女性管理職者は年々増加傾向にあります。

編集部

ライフステージの変化を受けやすい女性ですが、働きやすさをサポートする、静岡鉄道さんならではの制度などはありますか?

大山さん

制度面ではライフステージの変化に合わせてさまざまなサポートを受けることができます。子育て支援に関するところでは、法令基準で1年間となっている育児休業は当社の場合、最大3年間を取得することができます。

また、時短勤務においても法令基準では子供が3歳に達するまでとするなかで、小学校4年生に達するまでが対象となります。育児休業、時短勤務ともにかなり長い期間になっていることからも、子育て支援の手厚さを実感しています。

実際に制度を利用し、復職している管理職の社員も多く、モデルケースが社内で活躍していることは、将来のキャリアを考えるうえでも、非常に参考になると感じています。

影山さん

「しずてつ未来プロジェクト」でも女性社員が積極的に携わっているので、女性が活躍する場がたくさんあることも当社の特徴の1つです。

男性社員も積極的に子育てに参加できる柔軟な働き方

編集部

子育て世代の社員の具体的な働き方はどのようになっていますか?

大山さん

育休産休明けで復職した社員の中には在宅ワークを選択することで、無理なく子育てと仕事を両立している者もいます。また、スーパーフレックスタイム制度の他、保育園の送迎や学校行事で中抜けできる制度もあるので、家庭環境に合わせて柔軟に働くことができます。

これらの制度は男女問わず活用しており、男性社員も育児休暇や在宅ワーク、時短勤務が可能です。男女関わらず育児と仕事を両立できる環境が整っています。

編集部

多様性を重視した働き方ができることで、男女ともに将来のキャリアを考えながら、柔軟な働き方ができるというわけですね。

チャレンジ精神を持ち、地域貢献にやりがいを感じる方を歓迎

静岡鉄道株式会社の大山さん、影山さん、住吉さん

編集部

静岡において地域の方と共に長きにわたって歩んできた歴史と、心理的安全性の向上など、新たなことに挑戦されている静岡鉄道さんの企業姿勢に感銘した読者は多いと思われます。御社ではどのようなマインドを持っている方が活躍されているのでしょう。

大山さん

地域のインフラを支えている交通事業が母体にあるので、街づくりなどを通し、地域に必要不可欠な存在でありたいという意識が根本にあります。静岡の街をより良くしたい、地域のために何かをしたいという思いを持って働いている社員が多いと感じます。

住吉さん

キャリア入社や新卒入社の社員に言われるのは「人の良さ」です。優しく穏やかな人が多いなど「人の良さ」が入社の決め手になったという学生が実は9割に上ります。これは当社の自慢です。

編集部

社員のマインドや特徴は、御社にフィットする人物像そのものと感じました。最後に、採用におけるメッセージをお願いします。

住吉さん

心理的安全性に代表されるように風通しが良く、若手でもどんどん意見を発信できるのが当社の特徴です。実現する会社のリソースと実作業の塩梅が良く、例えるなら「大企業とベンチャーの良いとこどり」といった会社です。

何か挑戦したい、新しいことをやってみたいという方に非常にフィットする環境なので、ぜひ、興味のある方はジョインいただければ幸いです。

大山さん

静岡鉄道は地域に密着したさまざまな事業を展開しており、魅力ある会社と自負しております。事業を通して地域に貢献できることにやりがいを感じる方を歓迎します。会社としても若い世代が多く、全体の半数を20〜30代が占めています。キャリア採用者も年々増えているので、新しい風をぜひ、吹き込んでいただきたいです。

編集部

新しい事業への取り組みや心理的安全性の向上は、会社が与えてくれるものではなく、社員自らが切り拓いていくことに価値があることを、今回の取材を通して教えていただいたように感じます。

本日はありがとうございました。

■取材協力
静岡鉄道株式会社:https://www.shizutetsu.co.jp/
採用ページ:https://stknavi.com/