ユニークな事業と独自のカルチャーで成長を続ける企業にインタビューする本企画。今回は「重さ」を切り口にして、在庫管理の自動化・工程カイゼンを進めるDXソリューションを開発する「株式会社スマートショッピング」をご紹介します。
株式会社スマートショッピングとは
株式会社スマートショッピングは、「日々のモノの流れを超スマートに」をビジョンに、IoT重量計を使った在庫管理自動化・DX支援SaaS製品を開発しています。
主要事業の「スマートマットクラウド」は、計量機能を持つマット型デバイスの上でモノを保管することで在庫の消費量をデータ化し自動発注、さらにモノの流れを見える化するサービスで、製造業やサービス業を中心に導入が広がっています。
会社名 | 株式会社スマートショッピング |
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住所 | 東京都品川区西五反田2-1-22プラネットビル5階 |
事業内容 | IoT重量計を使った在庫管理自動化ソリューションの開発・運営 |
設立 | 2014年11月 |
公式ページ | https://smartshopping.co.jp/ |
働き方 | フルリモート勤務 |
株式会社スマートショッピングには、事業のユニーク性や成長性に魅力を感じて大手IT企業や外資系金融機関から転職してきたメンバーも多く、ベンチャー企業ならではのスピード感を持って社会に変革を起こし続けています。
今回は、代表取締役で共同創業者の林英俊さんに、企業成長の秘訣や社内カルチャーについて伺いました。
「重さ」を計るマットで在庫管理を自動化&モノの流れをDXする
▲株式会社スマートショッピングは「モノの流れを超スマートに」というビジョンのもと、IoTを用いた在庫管理システムなどを提供している。(公式サイトから引用)
編集部
はじめに、スマートショッピングさんの事業内容について教えてください。
林さん
私たちは、「モノの流れを超スマートに」というビジョンのもと、モノの「重さ」に着目した在庫管理自動化・DXソリューションを開発・提供しています。
メイン事業の「スマートマットクラウド」は、弊社が開発したIoT重量計「スマートマット」の上に在庫を置くと、重さの変化をもとに消費量が可視化され、簡単に在庫管理や自動発注ができるプロダクトです。「数」ではなく「重さ」で管理するため、液体や気体、個数を数えることが大変なネジなどの部品も正確に在庫を把握することができます。
▲株式会社スマートショッピングは、重量を測ることで在庫管理や発注管理をする「スマートマットクラウド」をメイン事業として展開している。
編集部
どのような事業者が、どのような場面で「スマートマットクラウド」を活用しているのでしょうか?
林さん
最も多いのは、製造業のお客様です。原材料をスマートマットの上で保管することで在庫をリアルタイムで把握し、発注や生産の判断や、棚卸にかける時間の削減などに役立てていただいています。
また、ホテルをはじめとする宿泊施設では、シャンプーなどのアメニティからドリンク、リネンに至るまで、さまざまな在庫管理にご利用いただいています。
サービス業では、労働力の大部分が顧客サービスに充てられており、在庫管理や発注業務は雑用とみなされています。人手不足が深刻化するなか、なるべく雑用に手間をかけずに運営したいというニーズが高まっており、弊社のシステムを導入していただく機会が増えています。
編集部
在庫の減り方をデータ化してみると、これまで気づかなかった発見などもありそうです。
林さん
はい。在庫データを24時間365日、自動で記録しグラフ化することは、在庫消費の実態を知ることに繋がります。そのため、弊社のプロダクトが活躍する場面は発注や棚卸だけにとどまらず、事業者ごとに様々な業務の改善に役立てることができます。
編集部
スマートマットクラウドの利用者からは、どのような声が届いていますか?
林さん
在庫を数える負担が大幅に減ったという声はもちろんですが、品質や納期の改善につながったという報告もいただいています。
工場では、組み立てなどに使うネジの供給が遅れると生産ラインが止まってしまいます。ラインが止まると納期の遅れや売上の損失につながるので、現場の人たちはネジの欠品を防止しようと緊張感を持って業務を行っています。スマートマットクラウドを導入することで、現場の負担も減りますし、欠品によるスケジュール遅延を回避することができます。
編集部
人手不足に加え、原材料やエネルギーコストの高騰も深刻になるなか、業務の効率化や在庫戦略の見直しにつながるサービスは今後ますます注目されそうだと感じました。
日用品の購入ストレスをなくす消費者向け事業も展開
編集部
BtoB事業として展開するスマートマットクラウドのほかに、一般消費者向けのサービスも行っているということですが、こちらについても教えてください。
林さん
一般向けには、日用品の買い物を自動化する「スマートマットライト」というサービスを展開しています。
これはスマートマットクラウドの機能を絞ったもので、マットの上にドリンクやコピー用紙などの消耗品を載せておくと残量を自動で計量し、少なくなったらAmazonに自動注文したり、スマートフォンに通知を送ったりします。
この事業については、弊社の売上拡大のためというより、IoTを身近に感じてもらうためのPRと位置付けています。
編集部
アマゾンが以前、押すだけで商品を注文できる「ダッシュボタン」を提供していましたが、スマートマットライトの場合はボタンを押す必要すらなく注文まで自動で完了するということですね。
林さん
はい。これは1クリックもすることなく注文を完了する「ゼロクリックショッピング」を可能にするサービスです。
▲スマートマットライトは、1日4回商品の残量を計測し、Amazonへの自動注文や買い時通知をする。(公式サイトから引用)
林さん
私は創業前にアマゾンジャパンに勤務していたのですが、ダッシュボタンが撤退したのは、人が物を購入するまでに行う一連の動作をしっかりと分析できていなかったからだと思っています。
まず、ダッシュボタンは「商品の注文」という動作の負担を軽減するものですが、ボタンを使用しなくてもスマートフォンで2、3クリックすれば注文できます。そのため、ボタンに価値を感じる人が少なかったのだと思います。
私たちは、注文する作業より「残量を確認する作業」の方がストレスが大きく、これを解決するサービスこそ必要だと考えました。例えば、シャンプーを使った時に残りが少ないことに気づいて「買わなきゃ」と思っても、浴室から出ると忘れてしまうことはありませんか?
編集部
よくあります。次の日にお風呂に入って思い出します。
林さん
そんなふうに日用品の残量に振り回されるストレスがなければ、生活はもっと快適で便利になると考えたことが、スマートマットライトを開発したきっかけです。
編集部
日用品の注文に新しい体験をもたらすスマートマットライトは、「IoTを身近にする」という狙い通りのサービスだと感じました。
目指すは世界。スマートショッピングの成長の軌跡と今後の目標
編集部
ここからは、スマートショッピングさんの企業成長について伺いたいと思います。まずは、起業の経緯からお話しいただけますでしょうか。
林さん
私が前職のアマゾンジャパンで定期購入サービスを担当した経験が起業につながりました。
定期購入は便利そうに見えるのですが、課題もありました。定期購入を申し込む際、2週間や1ヶ月など、購入頻度を自分で設定する必要があるのですが、設定したタイミングより早く在庫が切れることもあり、ほしい時に必ず届くとは言えなかったんです。
その時に思ったのは、先ほどのダッシュボタンの話にも通じるのですが、買う手間を省くのではなく、買う前の残量確認という課題を解決したいということでした。そして、残量や、どのくらい消費したかを可視化することで、買い物に革命を起こせるのではないかと思うようになりました。
編集部
スマートマットライトのような一般消費者向けの事業アイデアから始まったのですね。
林さん
はい。社名が「スマートショッピング」なのは、そのためです。コンシューマー事業からスタートしたわけですが、製造業をはじめとする企業も在庫管理に大きな課題を抱えていることを知り、現在はBtoB事業をメインに行っています。
日本の良さが詰まった事業だから世界で評価されるチャンスがある
編集部
スマートショッピングさんは2024年で創業10年を迎えますが、ここ数年で企業が大きく成長したと伺いました。
林さん
はい。BtoB事業のスマートマットクラウドの展開を始めた2018年以降、急成長が続いています。このサービスは現在900社ほどに利用していただいており、マットの流通量は5〜6万個にのぼります。
編集部
25億円を超える資金調達も行っており、投資家からの注目度の高さがうかがえます。スマートショッピングさんの事業のどのような点が評価されているとお考えですか?
林さん
多くの現場が抱える在庫管理という根源的な課題に取り組む事業に成長性を感じていただいているのだと思います。また、弊社の事業が日本だけでなく世界で評価してもらえる可能性が高いことも、期待につながっていると思います。
編集部
世界で評価されると考える理由は何ですか?
林さん
スマートマットクラウドは、日本の強みが詰まったサービスです。ものづくりや在庫管理のノウハウは日本が世界一だと断言できますし、そこにIoTマットのような高性能のハードウェアを組み合わせたサービスはとても日本らしく、海外でもきっと高く評価してもらえると思います。
編集部
在庫管理の課題は世界共通と言えますし、日本らしさを活かしたユニークな事業で海外に挑戦するスマートショッピングさんの今後の展開が楽しみです。
モノの流れを可視化することでサプライチェーンのムダを無くしたい
編集部
海外展開に関するお話もありましたが、スマートショッピングさんの今後の目標について教えてください。
林さん
まずは、「モノの流れを超スマートに」というビジョンを今後も大切にしながら、事業を拡大したいと思っています。
私たちは、これまで多くの工場や製造業の支援をしてきました。そして、お客様の現場を訪問するたびに感動するのは、必要なものを、必要なときに、必要な数だけつくる「ジャスト・イン・タイム」という考えをみなさん大切にしていることです。
これを工場だけに留めておくのはもったいないので、モノの流れを可視化する弊社の技術を卸売や小売などサプライチェーン全体に活用し、社会全体が「ジャスト・イン・タイム」になるような世界を作りたいです。
そんな世界が実現すれば、不要なものを作ることも運ぶことも、売ることもなくなります。その結果、モノのムリ・ムダ・ムラがなくなり、SDGsの達成にも貢献できるのではないかと思います。
編集部
スマートショッピングさんのサービスは、さまざまな社会課題を解決に導く可能性を秘めているのですね。
大手出身メンバーも多いスマートショッピングのカルチャーとは
編集部
スマートショッピングさんの社内の雰囲気やカルチャーについても伺いたいと思います。まず、現在の従業員数は約70名ということですが、どのような経歴の方が働いていますか?
林さん
弊社には、プロフェッショナルファームと言われるようなコンサルティング会社や外資系金融の出身者が多く在籍しています。アマゾンやサイバーエージェントなどIT系の大手企業から転職した人もいますし、最近は製造業出身のメンバーも増えてきました。
編集部
スマートショッピングさんに入社を希望する人は、どのような志望動機を持っているのでしょうか。
林さん
弊社のビジョンとプロダクトの面白さに魅力を感じてくれる人がとても多いです。
私たちのサービスには競合と言える相手がいないので、世界初のサービスを手がけているとも言えます。今後、世界を舞台に挑戦できる可能性もあることから、年収を5分の1にしても入社したいと言ってくれたメンバーもいます。
編集部
現在フルリモートを導入しているということですが、みなさんどのような働き方をしていますか?
林さん
それぞれが自分のペースで、アウトプットを意識しながら働いています。短い時間で集中して仕事をし、プライベートの時間をしっかり確保しているメンバーが多いですし、有休も遠慮することなく取っています。
今後も、定期的に全員で集まるなどのコミュニケーション施策を行いながらフルリモートでの働き方を継続する予定です。
コアバリューは「インサイドアウト」と「すごくいいやつ」
編集部
スマートショッピングさんで働くみなさんが大事にしている考えや価値観はありますか?
林さん
弊社では、外から中ではなく中から外へ自発的にアウトプットしていく姿勢「インサイドアウト」をコアバリューのひとつに掲げています。
インサイドアウトを可能にする具体的な要素としては、結果に対して他責ではなく自責で考えること、宣言したらまず自分から動くこと、結果が出たら自発的に反省することで、弊社のメンバーはこのバリューを意識しながら活動しています。
編集部
急成長している企業として、社員にどのような姿勢で仕事に臨んでほしいと思っていますか?
林さん
ベンチャー企業である私たちは、刻一刻と状況が変わるなかで大きな成長を求められるので、変化に合わせて自らも変わることができる人を求めています。
「自ら変われる人」とは、他のコアバリューである「すごくいいやつ」とイコールであると考えています。私たちが定義する「いいやつ」とは、客観的に謙虚に向き合える人、約束を守ろうとする人、フェアな人、あいさつや法律遵守など当たり前のことを徹底できる常識人のことで、このような要素を持つ人が自ら変わることができる人だと思っています。
編集部
謙虚な姿勢で自分を見つめることで自己成長し、それが会社の成長へとつながるのですね。
スマートショッピングは世界を舞台に挑戦したい人を歓迎
編集部
最後に、記事を読んでスマートショッピングさんのお仕事に興味を持った方にメッセージをお願いします。
林さん
私たちは、ものづくりやハードウェアといった、日本の良さを最大限に活かしたサービスを作っています。世界に打って出ることを考えたとき、純粋なインターネット事業では挑戦のハードルが高いのですが、日本の強みをかけ合わせたインターネット企業である私たちには大きなチャンスがあると思っています。
私たちの船に一緒に乗っていただけるのであれば、絶対に後悔はさせません。興味を持った方は、ぜひ声をかけていただければ嬉しいです。
編集部
将来性のある注目事業を行うスマートショッピングさん。アマゾン出身の林さんをはじめ、さまざまな企業で活躍してきたメンバーと一緒に、高い志を持って挑戦できそうです。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
株式会社スマートショッピング:https://smartshopping.co.jp/
採用ページ:https://corp.smartshopping.co.jp/recruit/index.html