人口増加率トップ!茨城県つくば市役所が推進する職員のワークライフバランス

人口増加率トップ!茨城県つくば市役所が推進する職員のワークライフバランス

働く人たちのワークライフバランスを大切にし、若手が活躍できる職場づくりを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は茨城県南西部にある「つくば市」のつくば市役所にお話を伺いました。

豊かな自然環境と都市の利便性を両立する「茨城県つくば市」

茨城県つくば市は県南西部に位置し、北に筑波山、東には日本で2番目に大きい湖である霞ヶ浦を控えた豊かな自然環境の中にあります。

豊かな自然を擁する一方、筑波研究学園都市としてさまざまな研究・教育機関が立地し、国の「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定され、先端技術を活用した街づくりを進める科学の街としても知られています。

また、つくばエクスプレスが開通したことで都心へのアクセスも容易になり、近年は子育て世帯を中心に転入が進んでいます。令和4年中の人口増加率は2.30%となり、市区部において全国1位になりました。

自治体名 茨城県つくば市
本庁舎住所 茨城県つくば市研究学園一丁目1番地1
公式ページ https://www.city.tsukuba.lg.
jp/index.html

科学技術を結集し、市民の教育や福祉、住みやすさに力を入れているつくば市ですが、つくば市役所で働く職員のワークライフバランス実現にも重きを置いています。

ワークライフバランスを推進する部署を設置したり、育児休業などの取得促進や業務のDX化など、働きやすい環境の整備を進めています。

今回は、菊地さんと寺田さんに、つくば市役所職員で働く皆さんのワークライフバランスを充実させる取り組みについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
インタビューに応じてくれた、つくば市役所の菊地さん

つくば市役所
総務部人事課 係長

菊地 由紀さん

インタビューに応じてくれた、つくば市役所の寺田さん

つくば市役所
総務部人事課組織開発推進室 主任

寺田 拓登さん

ワークライフバランスで実現する“働きやすさ”と“働きがい”

つくば市役所の人事課の執務室の様子

編集部

本日は茨城県つくば市役所さんでの、ワークライフバランスについてお伺いしたいと思います。はじめに、菊地さんと寺田さんの所属と職種について簡単にご説明いただけますか?

菊地さん

私は総務部の人事課に所属しています。事務職で役職は今年度から係長です。

寺田さん

同じく総務部で、菊地の人事課の課内室でもある、組織開発推進室に所属しています。事務職で役職は主任です。

編集部

お二人は新卒で入庁されたとお伺いしていますが、中には民間企業から転職してきた方もいると思います。新卒と中途で、業務内容やワークスタイルなどに違いはあるのでしょうか?

菊地さん

転職者向けに業務を切り分けたり、職を用意したりはしていません。基本的には転職された方も、新卒者と同様に主事級からスタートします。

近年では、採用試験を受験する段階から、受験者のワークライフバランスに対する意識は高まっているように感じています。ワークライフバランスが保たれた環境は、単に働きやすさを実現するだけでなく、職員の働きがいにも繋がっていくと思います。

ワークライフバランスを推進するために独立した課も

編集部

つくば市役所で働く皆さんのワークライフバランスを実現するために、取り組まれていることを教えてください。

菊地さん

つくば市にはワークライフバランス推進課という課があります。これは、「つくば市職員のワークライフバランス推進プラン」を主導し進めていく部署です。

推進プランでは男性の2週間以上の育児休業取得率100%、出産補助休暇など育児のための特別休暇の取得率100%など、様々な項目について目標値を掲げています。

ワークライフバランス推進課の職員は、「あの部署の職員から育休の希望がありそうだ」「もうすぐ育休に入る」というのを把握すると、本人や所属長に対して育休制度の説明などを個別対応で実施しています。

編集部

ワークライフバランス推進課はいつ設置されたのですか?

菊地さん

平成30年度までは人事課の課内室で、5年前に課として独立しました。

様々な取り組みの甲斐あって、徐々に育休を取得する風土が出来つつありますね。「男性でも当たり前に取るよね」という感覚は、育休対象ではない職員にも根付いてきているように感じています。

編集部

ワークライフバランスの推進に力を入れていかなければならない、と課として独立したということですね。

育休取得率は女性10割、男性8割以上の高水準の環境とは

つくば市役所の人事課の菊地さん

編集部

育児休業についてのお話がありましたので、こちらについて掘り下げていきたいと思います。育休を取得する風土は出来つつあるとのことですが、実態はどれほどでしょうか?

菊地さん

実際には、私も寺田も育児休業を取得した経験者です。女性職員の育児休業取得率はここ数年100%で、男性職員に関しては2023年10月1日時点で、対象者の約87.1%が取得できているような状況です。

育休期間は最低でも2週間以上としていて、最近では1年間取得する方も出てきました。寺田も今の部署で1年間の育児休業を取得したんですよ。

編集部

寺田さんが育休取得された時のお話をお聞きしたいと思います。育休を取得したときの状況や、職場の雰囲気はいかがでしたか?

寺田さん

私の場合は、育児休業を取りたいという気持ちがあった状態で異動が決まりました。異動した直後の4月の段階で、新所属長やメンバーに育休を取得したい旨の話をしたんですね。

そうすると「それは取るべき」「寺田さんが気持ちよく取得できるように、育休のことを踏まえて、業務の振り分けなどをやっていこう」と周りの雰囲気は本当に協力的で、様々な配慮をしてくれました。

業務の割り振りなど、周囲が積極的に育休取得を後押し

つくば市役所の組織開発推進室の打ち合わせ中の様子

編集部

配慮とは具体的にどういったものがあったのでしょうか?

寺田さん

一番配慮してもらえたと感じたのは、業務の割り振りですね。10月に育休に入る予定だったので、4月から9月で完結できるものをメインで担当して、通年の業務は他のメンバーが担当、という形に割り振ってもらいました。

編集部

育休を1年間取得するというのは、男性だと少し長めという印象があるのですが、その点で周りの方々の反応は何かありましたか?

寺田さん

周囲からそのようなことを言われることはありませんでした。私の場合は「自身に1年間取得したいという気持ちがあるのであれば、むしろ取った方がいいよ」と声をかけていただくことが多く、後押しする空気を周囲が作ってくれたように思います。

復職後の働き方や業務配分をサポートするための面談

つくば市役所の組織開発推進室の寺田さん

編集部

職務に戻りやすいようになど、復職後のサポートはありましたか?

寺田さん

週1回程度、短いスパンで所属長が個人面談をしてくれました。それにプラスして、随時、話したいときに話を聞いてくれたり、相談事を聞いてくれたりもしましたね。

面談以外でも「実際に働いてみてどうか」「困っていることはないか」と本当にこまめに声をかけてくれたのも覚えています。

何かあったらすぐ言える環境でもありましたし、職場への戻りづらさは特になく、むしろ配慮いただいてることに対して、非常にありがたい気持ちでした。

菊地さん

復職後のサポートとしては、育休から復帰する職員には性別問わず、復職面談を推奨しています。復帰前の段階で、復帰後の働き方について所属長と確認します。

つくば市では、1日最大2時間まで勤務時間を短縮できる「部分休業制度」をはじめ、育児に関連する制度があります。どういうライフスタイルを保ちながら職務に復帰したいか、などを打合せます。

復職面談の目的は、本人の不安を取り除きスムーズに業務に入れるようにという配慮と、いわゆるマミートラックへの配慮です。

女性だと長く職場を離れたことで、昇任や昇格から遠ざかってしまうケースも少なくありません。そうしたことが出産を機に生じないように、という予防的な側面もあります。

編集部

復職面談の内容はどういうところに反映されるのでしょうか?

菊地さん

基本的には復職後の働き方や業務の割り振りですね。所属長は、本人のキャリアアップに対する希望なども把握した上で、仕事と家庭生活とのバランスを取れるよう業務配分やマネジメントに役立てています。

所属長が現状をしっかりと把握することで、職員同士がフォローし合うための意識づけや、組織づくりに繋がっています。

職員が使える制度をまとめたハンドブックで休暇取得を促進

編集部

職員のみなさんのワークライフバランスを実現するために、力を入れてる取り組みや特徴的なものがあればお聞かせください。

菊地さん

職員向けにワークライフバランスハンドブックを作成しています。時差出勤勤務制度や育児・介護休暇制度など、職員が活用できる制度についてまとめたハンドブックです。

ワークライフバランス推進課が行っている個別対応で活用して、育休や特別休暇などの取得を促しています。

寺田さん

育休に入るときに、ハンドブックが送られてきましたね。どんな制度があって、どういうときに使えるかを確認できて便利でした。

編集部

制度がたくさんあると覚えたり、調べたりするのは大変なので、一括で確認できるのは便利ですね。

寺田さん

また、所属長向けのページもあるので、所属長の視点を知ることで、個人的な学びになりました。育児休業に送り出す側の職員が自身のために考えてくれていること、実際にやってくれていることが分かることで、更に感謝の気持ちが強くなりました。

育休での欠員をカバーする側の業務負担や気持ちに関する記載があり、「育休を取る側も意識しなきゃいけないな」という気づきも得られました。そのおかげで、メンバーといい関係性を保ったまま休暇に入ることが出来たと思います。

スーパーシティに指定のつくば市、職員の働きやすさとは

つくば市役所の人事課の執務風景

編集部

つくば市さんは先進的な自治体ということで、スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定も受けられていますよね。こちらも職員のみなさんの働きやすさなどに関わっているのでしょうか?

菊地さん

まず、スーパーシティに関しては職員の働き方に直結しているというより、市民が主役で、市民の困り事を解決するための取り組みといえます。それが結果として、職員の働きやすさやワークライフバランスに繋がる可能性はあります。

例えば、実証を続けている取り組みの一つに、インターネット投票があります。従来の投票では、決められた時間に決められた投票所に行かなければならず、投票所運営や投票結果集計など職員の作業負担の多い業務です。

インターネット投票が実現すれば、住民の投票の時間的・距離的負担を軽減でき、さらに職員の作業負担やコストの削減にもなると考えています。

これは一例にすぎませんが、スーパーシティの様々な取り組みにより、業務の効率化や職員の働き方にも良い影響が生じるのではないかと思います。

チャット機能導入で職員間のボーダーレスなコミュニケーションを実現

つくば市役所の人事課が打ち合わせしている様子

編集部

選挙事務の負担軽減はかなり大きいですよね。スーパーシティに関わらず、業務のDX化・効率化として取り組まれていることはありますか?

菊地さん

スーパーシティに指定される以前から、つくば市役所では業務のDX化を進めています。例えば、窓口でのキャッシュレス決済や市税のアプリ納付、公共施設の予約システム導入など、行政手続きのデジタル化のほか、議事録AIやRPAの導入などを促進してきました。

また、AIチャットボットについては市のホームページだけでなく、業務でも2種類のチャットボットが使用可能です。課題や考え方を整理するときや、文章表現に活用しています。

今年度から「LoGoチャット」という自治体専用ビジネスチャットツールを導入し、全職員の間で使えるようになりました。民間企業で導入されているチャットツールのようなものです。これまでは個人メールでのやり取りしかできませんでした。チャット機能を導入してからは、非常に円滑なコミュニケーションを取れています。

例えば、電話対応の難しい聴覚障害のある職員とのコミュニケーションにおいても、チャット機能のおかげで迅速にやり取りできて、ボーダーレス化に役立っていると感じています。

編集部

メールや電話に比べて、素早くやり取りができるのは職員さんの負担軽減になり、生産性向上にもつながりますよね。

人口増加率トップかつ、多様な人々が住む自治体での働きがい

つくば市役所の人事課組織開発推進室の会議風景

編集部

つくば市さんは人口増加率が全国の市区でトップですが、そうした自治体で働くことのやりがいについてどうお考えですか?

菊地さん

つくば市は多様なルーツを持つ人たちが暮らす街だと感じます。約1万2千人の外国の方が様々な国・地域から集まっており、中心部には研究学園都市があることから、研究や科学に携わる人が2万人ほどいると言われています。

市役所で働いていると、そうした多様な方々と関わる機会があるので、面白さややりがいを感じることも多いです。

人口は主に、つくばエクスプレス沿線の地区で増加している一方、周辺市街地では、高齢化・人口減少が進んでいる状況です。

少子高齢化や過疎など、日本全体で問題視されていることが、実は人口増加率1位になったつくば市でも同じように起きていて、まるで日本の縮図のように感じます。

つくば市が掲げているビジョンは「世界のあしたが見えるまち」です。このビジョンには、先進的な科学技術を活用して、日本そして世界にも共通する社会課題を解決するためのヒントを提示していきたい、という思いが込められています。

ビジョンに則って様々なプロジェクトや施策が進められていますので、社会課題解決に携わったり、貢献したりといったやりがいがあると思います。

市職員から見える、つくば市の魅力とは

筑波研究学園都市の上空からの写真

編集部

つくば市にお住いの職員さんも多いと思います。つくば市の暮らしやすさや魅力を教えてください。

寺田さん

子育て世帯が多く、気軽に育児に関する情報交換ができたり、同じ境遇の人がたくさんいる心強さを持てたり、というのは魅力だと思います。

菊地さん

研究学園都市自体が計画的に作られた都市構造になっているので、市内には大きい公園もありますが、生活圏内にもちょこっとした公園があります。

中心部でも自然が感じられるような環境がありますし、車で少し走れば、筑波山をはじめとした豊かな自然環境があります。すぐそばに緑を感じられるという点も魅力になっていると思います。

寺田さん

自然の豊かさに加えて、人情味のある温かさも感じられます。流入してきた人もたくさんいるので、外からも入りやすく、都会で生まれ育った人も、田舎で生まれ育った人も暮らしやすいと思います。

あとは、つくばエクスプレスがあるので、東京へのアクセスの良さも利点の一つですね。

菊地さん

つくばエクスプレスを使えば秋葉原まで最短45分で行けますし、圏央道も通り、交通面の利便性は非常に高いと思います。都会的な便利さと、田舎ならではの良さのいいとこ取りがしやすい地域なのではと思います。

編集部

自然豊かな半面、交通の利便性が高かったり、教育に力を入れていたりする環境が、子育て世帯も住みやすい理由になっているということですね。

求めるのは自ら考え行動できる人、柔軟性を持った人

つくば市役所庁舎を背景にした菊地さんと寺田さん

編集部

最後に採用に関するお話を伺いたいと思います。つくば市の職員さんとして、フィットする人物像やお二方が一緒に働きたい人物像などをお聞かせください。

菊地さん

異動すると転職したように業務内容が変わるんですね。異動した先々で一から勉強することになるので、自分の可能性を広げられるという意味でやりがいがあると思います。

また、異動によってたくさんの人と一緒に仕事をすることになります。事務職で採用されて同じような事務にあたっていても、職員一人ひとり仕事のやり方や、仕事に向かうマインドは違います。日々刺激をもらえる環境だと感じています。

つくば市というと、スーパーシティだったり研究学園都市だったりと、先進的なイメージを持たれることが多いかと思います。

実際そうした側面もありますが、福祉や教育にも力を入れていますし、窓口で直接市民と対話をしながら進める業務もあります。どの業務も市民の生活には欠かせない大事なものです

対話から生まれる信頼関係を大切にし、多様な人が集うつくば市だからこそ、柔軟性を持って市民や関係機関の人たちと関わる能力が求められます。これから新たに挑戦することや社会課題に対応するためには、自ら考え行動できる人材が必要です。ぜひ、そのような方に来ていただけたら嬉しいです。

寺田さん

つくば市は「世界のあしたが見えるまち」をヴィジョンとして掲げ、様々な施策を行っています。施策そのものの内容はもちろん重要ですが、それと同様に、その施策を進める職員の状態も重要だと考えています。

市役所の業務は、個人で対応できるものはほとんどありません。その中で、個人ではなく、チームとして取り組むことができる。どんなことに対しても、前向きに取り組むことができる。そんな職員が増えれば、ヴィジョンの実現にも繋がっていくのではないかと思います。そのような考え方に共感していただける方と、一緒に働きたいです。

編集部

働き方や暮らし方も多様化する中、豊かな自然環境と都市の利便性を併せ持ち、最先端技術の社会実装を進めるつくば市への転入は、今後さらに増えていくのではと思います。

つくば市民の暮らしやすさ実現とともに、市職員の働きやすさも追求されているからこそ、職員の皆さんも意欲的に働けているのだと感じました。

本日はありがとうございました。

■取材協力
茨城県つくば市: https://www.city.tsukuba.lg.jp/index.html