300年企業は常に挑戦を続ける。ヤマサ醤油の多様な事業と「自主性」を尊重した働き方

300年企業は常に挑戦を続ける。ヤマサ醤油の多様な事業と「自主性」を尊重した働き方

企業の成長の背景にある若手社員の活躍や、それを支えるカルチャー、支援制度にスポットを当て、企業の魅力を探るこの企画。今回は日本を代表する300年企業、ヤマサ醤油株式会社を取材しました。

食と医薬で健やかな暮らしを支えるヤマサ醤油株式会社

ヤマサ醤油株式会社東京支社の新社屋
▲2024年完成の新東京支社

ヤマサ醤油株式会社は、正保2年(1645年)から続く、しょうゆの老舗メーカーです。長い歴史の中で培われた技術はヤマサ醤油を総合調味料メーカー・医薬品メーカーとして発展させ、さらには日本の味を世界に広げるグローバルな事業展開へとつなげています。

会社名 ヤマサ醤油株式会社
住所 千葉県銚子市新生町2-10-1
事業内容 ・醤油の製造・販売
・各種調味料の製造・販売
・医薬品類の製造・販売
・その他
設立 創業:1645年
設立:1928年11月
公式ページ https://www.yamasa.com/

そこで今回は、しょうゆから医薬品まで広がったヤマサ醤油株式会社の事業内容や多彩な製品開発の背景にある同社のカルチャー、活躍する社員の特徴について、人事企画室の古池和具さんと大蔵佑月さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
ヤマサ醤油株式会社人事企画室の古池和具さん

ヤマサ醤油株式会社
人事企画室

古池 和具さん

ヤマサ醤油株式会社人事企画室の大蔵佑月さん

ヤマサ醤油株式会社
人事企画室

大蔵 佑月さん

外食・中食業界への特別注文品で独自性を持つヤマサ醤油

ヤマサ醤油株式会社のナショナルブランド商品画像

編集部

300年以上にわたって日本の食文化に欠かせないしょうゆを作り続けているヤマサ醤油さんですが、改めて御社の事業内容についてお聞かせ下さい。

古池さん

正保2年(1645年)初代当主 濱口儀兵衛がしょうゆ発祥の地 紀州から銚子へ移り、本場の製法でしょうゆ醸造を始めました。江戸の食文化発展の一翼を担ってきた当社は、現在ではしょうゆの製造・販売に加え、昆布つゆ・昆布ぽん酢など各種調味料の製造・販売も展開しています。

しょうゆ・つゆ・たれ類は、家庭用製品の他にもレストランや居酒屋などの外食産業、コンビニエンスストアなどの中食産業にも提供しています。さらに業務用においては、お客様専用にオーダーメイドをする特別注文品を製造・販売しており、売り上げが伸びています。

少子高齢化に伴い、人口が減少傾向にあるなか、当社としては、より付加価値の高い製品をご提供できるよう努めています。

編集部

特別注文品の売り上げが伸びているとのことですが、そこにはどのような要因があると思われますか?

古池さん

市場として中食の分野が成長していることが背景にあると分析します。また、当社が特別注文品を製造する際の小回りの良さも成長要因の1つです。

当社は特別注文品専用のグループ会社を本社近くの千葉県銚子市と滋賀県竜王町に設けており、多品種の製造が可能となっております。

ヤマサ醤油株式会社人事企画室の古池和具さん

古池さん

当社のしょうゆは首都圏の高級料亭や寿司店など、和食店の8割以上でご使用いただいており、プロの料理人の方々に支持されています。そのような業務用のお客様との深いお付き合いがあるため、新たな商品のご提案ができたことも要因です。

また、ナショナルブランド品の味作りにおいても非常に自信を持っており、そのような安心感が、特別注文品の受託へとつながっていると自負しております。

編集部

なるほど。長きにわたっておいしいしょうゆを家庭のみならず、外食産業にも提供し続けたことによる信頼の高さが、販路拡大につながったというわけですね。

世界初!酸化防止の機能を備えた容器の開発

編集部

ヤマサ醤油さんの「ヤマサ 鮮度の一滴」の発売はセンセーショナルな出来事でした。開封後、何度注いでも中に空気が入らず、酸化を防いで長期間鮮度を保つことができる容器入りのしょうゆですよね。この容器の開発に至った背景についてもお聞かせいただけますでしょうか。

古池さん

ありがとうございます。開封後に酸化による劣化が起きることは、しょうゆメーカーにとっては長年の課題でした。空気に触れず、工場で出来立てのしょうゆの鮮度をキープする機能を備えた酸化防止容器を初めて世に出したのがヤマサ醤油です。

二重構造で構成されたパウチ型容器からはじまったしょうゆの“容器革命”は、現在は鮮度保持ボトルの「鮮度生活シリーズ」として販売しています。世界で初めてしょうゆに鮮度という付加価値を確立し、しょうゆの概念を変革したパイオニアとして、今後も自信をもっておいしいしょうゆを提供してまいります。

医薬・化成品分野にも貢献するヤマサ醤油のバイオテクノロジー

編集部

ヤマサ醤油さんは医薬・化成品分野の事業も展開されていると伺っております。こちらについて、詳しくお聞かせ下さい。

古池さん

1950年代、ヤマサの研究員であった國中明が、鰹節のうま味成分が5’-イノシン酸、干し椎茸のうま味成分が5’-グアニル酸であることを発見したことを機に、最終的には5′-イノシン酸と5′-グアニル酸の工業的生産に成功したことが当社の医薬・化成品事業のはじまりです。

核酸関連化合物に特化した医薬品原薬・中間体をはじめ、化成品、化粧品、その他工業製品に幅広く利用されています。

当社は核酸医薬において、国内随一のリーディングカンパニーとしての地位を確立しており、特に核酸の分野に特化した医薬品類の原薬の開発・製造を強みとしています。また、核酸関連化合物の合成技術を応用して、診断薬の分野にも事業展開しています。国内では珍しく、開発・製造・販売まで一貫体制で行っている点も当社の強みです。

編集部

具体的にどのような製品にヤマサ醤油さんの技術は活用されているのでしょう。

古池さん

ヤマサの技術から生まれた核酸関連物質は、ドライアイ治療薬、抗がん剤、抗ウイルス剤などの医薬品原薬や、乳児用ミルクの栄養強化剤、化粧品や育毛剤などの機能性化粧品の主成分にも利用されています。

編集部

なるほど。ヤマサ醤油さんは食と医薬、2つのアプローチで私たちの暮らしを支えているのですね。

グルテンフリーのたまりしょうゆをはじめ、海外展開を図るヤマサ醤油

編集部

日本のヘルシーな食文化は海外からも注目されています。日本食に欠かせないしょうゆを製造・販売するヤマサ醤油さんにおいても、海外展開はされているのでしょうか。

古池さん

東京支社の国際事業部が海外のお客様をフォローしております。また当社は海外にもグループ会社を展開しており、双方が協力しながら、海外のお客様をフォローしております。

海外のお客様に向けては、各国の基準と照合したうえで製造した輸出専用品や、特別注文品等も、提案をしております。

編集部

海外向けの商材には、どのような製品が多く輸出されているのでしょう。

古池さん

健康志向が高い欧米では、グルテンフリーの食品に高い需要があります。当社グループ会社のSAN-J INTERNATIONAL Inc.が製造するたまりしょうゆは小麦粉を使用していないため、アメリカではTAMARIと呼称されて親しまれている他、ステーキソースなどの調味料にも多く利用されています。

編集部

さまざまな日本の食品メーカーが海外事業を展開するなか、海外市場におけるヤマサ醤油さんではどのような展開をされているのでしょうか。

古池さん

海外ではジャパニーズソースとしてすでに認知されているしょうゆは、一般的な調味料とシーズニングとしての広がりを見せています。最近ではプライベートブランドというかたちで展開する企業もあり、そこに対して当社は原材料の供給をし、要望に応じた商品を製造するケースが増えています。

主体性を尊重し、自分らしく働けるのがヤマサ醤油のカルチャー

ヤマサ醤油株式会社人事企画室大蔵佑月さん

編集部

続いて、ヤマサ醤油さんの働き方について伺います。御社に入社した場合、社員はどのようなステップを踏み、キャリアを形成するのでしょうか。

大蔵さん

新卒入社の場合には、入社2〜3年目で先輩上司のサポートを受けながら自分の担当を持ちます。社会経験後に入社する場合は、個々の実務経験に応じてサポートをしていきます。お客様ごとに提案内容を自身で考えてカスタマイズするなど、自分らしい営業活動ができることが当社の特徴です。

また、研究職や開発職においてもやる気があれば自分のやりたい研究やプロジェクトに参加する機会を得ることができ、研究職においては入社初年度から自分でテーマを掲げ、研究に取り組んでいます。

このように、主体性を尊重する風土が根付く当社には、若手が早くから活躍できる土壌があります。

編集部

営業職の「自分らしい営業活動」とは具体的にどのような活動なのでしょうか。エピソードなどがあればぜひ、お聞かせください。

大蔵さん

新卒入社2年目の女性社員が、得意先に提案する販促用のパンフレットを作成した事例があります。当社の業務用商品を扱っていただいている通販サイトがあるのですが、そこには商品が羅列された、ある意味ではありきたりなチラシが掲載されていました。

それに対し、当社の商品を使い、「自分が食べたいと思えるような料理を使ったチラシを掲載したい」という意見を自らマーケティングの部署にかけ合い、チラシを作成しました。結果、お客様から高い評価をいただき、販促につながりました。

ヤマサ醤油株式会社人事企画室古池和具さん

古池さん

商品の隣に調理例として実際の料理を掲載することで、お客様は当社の商品をどのような料理に使うのか、具体的にイメージすることができます。新卒入社2年目の社員がそこまで考えられることに、とても驚きました。彼女のアイデアによってチラシの見栄えも良くなり、購買意欲の促進につながったと分析します。

編集部

ヤマサ醤油さんの主体性を如実に物語っている、素敵なエピソードですね。

オリジナルの提案が求められるヤマサ醤油の営業職

編集部

ヤマサ醤油さんの営業職は、どのようなスタイルで商談をされるのでしょう。

古池さん

マーケティング部からの販促提案をそのまま使用するだけではなく、個々の得意先や、エリアに合わせ、個人でカスタマイズをし、オリジナリティを持って提案することが求められます。

調味料は嗜好性の高い商材であり、エリアによっては首都圏と同様の提案では通らないことも多いので、個人のアイデアを活かすことはもちろん、周囲がサポートをしながら提案をしています。私が長野県の営業を担当していた時は、長野の特産品である野沢菜に、当社の『新味しょうゆ』という、うま味を加えたまろやかな味のしょうゆを使用した、しょうゆ漬けの提案をしたりしていました。

長野県1県を例にしても、エリアによって食文化は異なります。野沢菜は北部エリアの食文化に根差してはいますが、その他のエリアではそこまで食べられているわけではありません。そのため、長野全県で見ると売上金額は大きくありませんでしたが、スーパーマーケットなど小売店の営業を担当した際、本部のバイヤー様や店舗の担当者の方に、「良く売れているよ」と声をかけていただきました。

編集部

単に製品を売るのではなく、その土地の風土や文化に合わせた提案をすることは、地域社会の貢献にもつながっていくのですね。

なんでも相談できるオープンな社風が若手活躍を後押し

ヤマサ醤油株式会社人事企画室大蔵佑月さん

編集部

若手社員が主体性を持って活動するのは、周囲のサポートやフォローも必要だと感じます。ヤマサ醤油さんではどのようなサポート体制を実践されているのでしょうか。

大蔵さん

自分の考えをしっかり持っている若手社員が多い当社では、その意志を尊重しつつ、些細なことでも相談できる環境づくりを意識しています。例えば、ベテラン社員が若手社員から相談を受けた際には、「こんなふうにしてみたらどうだろう」と、アドバイスをすることで若手の活躍を支援しています。

部署長や役員クラスとの接点も多く、社歴や年齢、部署間の垣根もないので、若手も殻に閉じこもらず、風通しの良いオープンな環境で自分らしく働くことができているように感じます。

ナショナルブランドの開発に若手のアイデアが活かされることも

ヤマサ醤油株式会社社員の古池さんと大蔵さん

編集部

若手社員と役員の接点は、どのようなシーンで生まれるのでしょうか。

古池さん

営業職は営業の拠点である東京支社の支社長でもあり、営業担当役員の営業本部長が同じフロアで働いており、接する機会が多いと聞いています。開発職においては若手社員が開発したナショナルブランド製品を会長や社長をはじめとした役員が試食する機会があるなど、年齢や勤続年数を問わず、接点は多く存在します。

従業員数も860数名と、社員一人ひとりが埋もれることがない規模の当社は、若手のうちから自然とさまざまな社員と接点を持てる組織であることも、主体性を大切にするカルチャーにつながっていると感じます。

編集部

企業の顔でもあるナショナルブランド商品に、若手も取り組むことができることに魅力を感じました。

調味料の安定収益により、研究・開発に没頭できる

編集部

一般的に、研究や開発に携わる部門は、ラボにこもって黙々と研究をするイメージですが、ヤマサ醤油さんの技術部門の雰囲気についてお聞かせください。

古池さん

比較的若い世代が多い研究職と開発職は、常にさまざまな意見が飛び交う活気あふれる職場です。与えられたテーマを研究する研究職は、ラボにこもり、1人で研究に没頭するイメージがあるかもしれませんが、当社の場合は、研究へのフィードバックなどを目的に、ラボ間でのミーティングや1on1は研究所の中でも頻繁に行われています。

また、自分自身の研究に対してアドバイスをもらう機会づくりにも積極的に取り組んでおり、みんなで共有をして良いものを作る意識が根付いていると感じます。

医薬・化成品事業や診断薬事業の研究・開発においては、しょうゆを中心とした調味料の安定した収益があるなかで、研究や開発に安心して打ち込めるメリットがあると感じます。医薬・化成品や診断薬の業界においてはベンチャー的な位置にある当社にとって、安定した企業基盤があることは研究職や開発職にとっても安心材料になっているのではないでしょうか。

社歴に応じた研修制度。通信教育でスキルアップも目指せる

編集部

制度としてのヤマサ醤油さんならではの研修制度や教育制度などがあればお聞かせください。

古池さん

新卒採用につきましては、入社後1ヶ月間の本社研修の後に、人事サイドによる個人別のフォローが続き、2年目・3年目には、フォローアップ研修という、先輩・後輩社員が一緒に研修をする機会があります。

4年目以降はキャリア採用された社員も含め、スキル面に重きを置いたステップアップ研修を行います。また、業務に必要なことは通信教育で学ぶことができ、費用は会社が負担します。

研究職においては研究機関や学会への派遣があり、スキルはもちろん、人間的な幅も広げられるような体制を取っています。

300年企業であるヤマサ醤油に根付く「チャレンジ」のカルチャー

ヤマサ醤油株式会社の昔のポスター
▲ヤマサ醤油株式会社は300年企業としてさらなる発展を目指している

編集部

現在、人事企画室に在籍するおふたりが感じる、ヤマサ醤油さんの社員としてのやりがいについてお聞かせください。

古池さん

1645年創業の当社は、およそ380年続く企業です。歴史と伝統を守り続けることはもちろん、医薬・化成品、診断薬の事業など、しょうゆの枠にとらわれず、常に新しいことに取り組む姿勢を、社員のひとりとして日々、感じています。

営業職だった時も型にはまった提案ではなく、オリジナルの提案がかたちになっていくことにやりがいと喜びを感じました。

ヤマサ醤油株式会社人事企画室大蔵佑月さん

大蔵さん

2020年にキャリア採用で入社した私は、入社するまではヤマサ醤油はとても大きな組織で、セクションが分かれ、与えられた仕事をしっかりこなすことを求める会社というイメージを持っていました。

しかし、入社して実感しているのは、社員1人ひとりの思いを尊重する企業ということです。380年続く老舗企業でありながら、ベンチャーのような気質も持っており、疑問意識を持って発信し、業務に反映することで評価につながることにやりがいを感じます。

例えば、私の所属する人事企画室の業務だと、社内全体に関わる制度の改善において、自分個人のどんな些細な意見でも周りが真摯に向き合ってくれるので、着実に実現に向けて動いていけるところが、自身と会社の成長に繋がっていると思います。

編集部

300年企業であることに甘んじない、ヤマサ醤油のチャレンジカルチャーが、長い歴史と伝統を支えているのですね。

根気あるチャレンジ精神で、使命感を持って挑む方を歓迎

ヤマサ醤油株式会社社員の古池さんと大蔵さん

編集部

最後に、採用について伺います。300年企業のリレーランナーとして成長し続けるヤマサ醤油さんには、どのような方がフィットすると思われますか?採用におけるメッセージとしてお聞かせください。

古池さん

長い歴史の中、さまざまな挑戦をし続けてきた当社は、今ある現状に満足せず、常にチャレンジ精神を持っている方を求めています。ただ、挑戦する意欲だけではなく、日々の業務をしっかりやりつつ、プラスアルファで挑戦ができる方を歓迎します。

しょうゆの醸造は数ヶ月もかかる根気が求められる仕事です。思うように物事が進まないからといって近視眼的に次に行くのではなく、長い視点を持つことも大切です。日々の業務においても同様に、納得のいくところまでやり遂げ、長い年月をかけてヤマサ醤油を理解し、5年後、10年後を見据え、広い視野を持って取り組むことができる方と共に、働くことができたら幸いです。

また、社会経験のあるキャリア採用は、ある意味即戦力が求められます。この分野の経験はなくても、前職の経験に基づいた考えを発信いただき、足りない部分はサポートしてほしいと声をあげられることが転職の価値だと思っています。

大蔵さん

常に疑問意識を持ち、自分に求められていることを見極めて、使命感を抱きながら挑戦できる方にジョインいただけると嬉しいです。個性を尊重しつつ、根本の部分に責任感と挑戦心がある方を人事としてもサポートしていきたいと考えているので、当社に興味のある方はぜひ、問い合わせください。

編集部

日本国内はもとより、海外においても成熟産業になったしょうゆ製造を、医薬分野においても展開するヤマサ醤油さんのあくなき探究心と自主性を尊重した働き方に感銘した読者は多いと思われます。

本日はありがとうございました。

■取材協力
ヤマサ醤油株式会社:https://www.yamasa.com/
採用ページ:https://recruit.yamasa.com/