SDGsの取り組みを行う企業や成長企業を紹介していくこの企画。今回は、GHG(温室効果ガス)排出量算定・可視化クラウドサービス『zeroboard』を開発・提供し、国内外問わず多くの企業に対してGHG排出量の見える化をサポートしている「株式会社ゼロボード」にお話を伺いました。
株式会社ゼロボードとは
株式会社ゼロボードは「気候変動を社会の可能性に変える」をミッションに掲げ、企業の脱炭素経営をサポートするスタートアップです。事業の主軸であるGHG排出量算定・可視化クラウドサービス『zeroboard』は、2022年1月に提供を開始し、すでに国内外2,000社以上(2023年5月時点)もの企業に導入されています。
その他、脱炭素に関するコンサルティングやブランディング支援を行うなど、脱炭素化社会の実現の足がかりとなる「可視化領域」へ多角的な事業で挑む、急成長中の企業です。
会社名 | 株式会社ゼロボード |
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住所 | 東京都港区三田3-5-27 住友不動産三田ツインビル西館10F |
事業内容 | ・GHG排出量算定クラウドサービス『zeroboard』の開発・提供 ・脱炭素経営に関するコンサルティング ・ユーザーコミュニティ「All Aboard!」の運営 |
設立 | 2021年8月24日 |
公式ページ | https://zeroboard.jp/ |
働き方 | ・フルリモートがベース ・フルフレックス制(5:00~22:00の間/コアタイムなし) ・任意出社(オフィス営業時間:9:00~18:00) |
今回は、人事部長の宮本さんに、株式会社ゼロボードが手掛けるSDGs事業の特色や社内カルチャー、フレキシブルな働き方についてお話を聞かせていただきました。
SDGsの目標達成へ向け、脱炭素化の課題をサポート
▲「気候変動を社会の可能性に変える」をミッションに、多角的に脱炭素化をサポートしている(採用ページから引用)
編集部
はじめに、ゼロボードさんの事業内容についてお聞かせください。
宮本さん
ゼロボードはCO2をはじめとしたGHG(温室効果ガス)の排出量ゼロ政策の一つである、企業活動におけるGHG排出量の算定・可視化をサポートする企業です。GHG排出量算定クラウドサービス『zeroboard』の開発・提供を軸として事業を展開しています。
その他、コンサル事業では脱炭素に関するオンラインセミナーなども随時開催していますね。「脱炭素経営の始め方」といった初級者向けのセミナーから、企業担当者様を講師に招きGHG排出量算定における課題解決のための講演会を行うなど内容はさまざまです。
2023年3月には東京ビッグサイトで行われた『脱炭素経営EXPO』に出展し、『zeroboard』の紹介や企業担当者様・弊社代表による講演会を行いました。
▲展示会風景。ゼロボードの社員による『zeroboard』の説明のようす
▲展示会では社員が登壇して、参加者に向けて『zeroboard』を説明
▲展示会ブースのひとこま。『zeroboard』の搭載機能をまとめて紹介
サプライチェーン全体のGHG排出量を可視化できる『zeroboard』
▲ゼロボードが提供するGHG排出量算定・可視化クラウドサービス『zeroboard』の概要
編集部
先ほどお話に出た、ゼロボードさんが開発・提供する『zeroboard』というサービスについて教えてくださいますか?
宮本さん
『zeroboard』の特徴は、GHG排出量が算定・可視化できることです。組織の排出量や製品別・サービス別排出量の把握はもちろんのこと、国内外のグループ会社や製造拠点とデータ連結ができるため一元管理が可能になります。
また、製品の部品を製造・納品・供給するサプライヤーの実績値まで収集する機能もあり、自社だけでなくサプライチェーン全体の排出量の算定・可視化も可能です。
他には排出量の削減管理や費用対効果のシミュレーション機能なども搭載されていますね。GHGプロトコル(※)などの国際的開示形式にも対応しているため、国外の企業様にもご利用いただいています。
(※)GHGの排出量の算定・報告をする際の国際基準
▲『zeroboard』はパナソニックや岩谷産業をはじめとした大企業を中心に、国内外約2,000社以上で利用されている
編集部
『zeroboard』は算定だけでなく開示要望にも対応しているということで、企業活動における脱炭素化には欠かせないサービスですね。
宮本さん
そうですね。2022年4月の「改正地球温暖化対策推進法」の施行によってGHG排出量ゼロへの取り組みが加速しているため、算定・可視化のニーズはさらに高まっていると感じます。
プライム市場に上場している企業様に関しては、CO2の排出量を算定・報告する法令はありませんが、今回のルール改訂で実質的には義務化されました。つまり、上場企業様はCO2の排出量の可視化・報告・削減へさらに力を入れている状況です。
また、自社の排出量だけでなく、新たにサプライチェーン全体で排出量を算定しなければいけなくなった点もニーズが高まっている要因ですね。例えばメーカーさんであれば、仕入れる部品の製造過程で出るCO2まで把握して報告しなければいけません。
編集部
自社の排出量を把握するだけでなく、取引先の排出量まで把握するとなれば、相当な労力と時間がかかりそうです。
宮本さん
そうなんです。この部分はおそらく企業努力では解決しにくいと思うんです。仮にお弁当屋さんがプラスチックの容器を仕入れる際に、容器の排出量までコントロールするのは難しいですよね。容器を製造する会社に1個当たりのCO2の量を減らしてもらうように交渉するか、CO2の排出量を低く抑えられる製造元を新たに探すしかありません。
このように、今後は他の会社を巻き込んでCO2を削減しなければいけないので、自社のCO2の排出量を抑制する方法を導き出す必要があるんです。だからこそ、エクセルより効率よく排出量の算定・可視化ができることに加え、他社さんのCO2まで見える化できる『zeroboard』のニーズが高まっています。
日本国内では早いタイミングで算定・可視化に着目して『zeroboard』を開発・発表したことが、ゼロボードの成長につながっていると思いますね。
▲『zeroboard』のダッシュボード画面。総排出量だけでなく、月間別・算出対象別でも表示される
パートナー戦略でグローバル規模の脱炭素に挑む
編集部
ゼロボードさんはあえて排出量の算定・開示のプラットフォーマーに徹していると伺いました。
宮本さん
はい。自社でソリューションを持たないと決めていますね。たしかに自社でGHGの削減までサポートすれば、よりお客様に受け入れられやすいかもしれませんが、その反面お客様の選択肢を狭めることになります。
そのため、ゼロボードはプラットフォーマーに徹し、ソリューションを持つパートナー企業様と業務提携を締結して、彼らから顧客の課題に合った削減ソリューションを提供していただいています。脱炭素は一社で実現できるものではありませんので、みんなで取り組める座組みを構築しています。そこに賛同してくださる企業様とのパートナー戦略は、多くの方々から共感をいただいていますね。
2022年には削減サポートのソリューションを持つ三菱UFJ銀行様をはじめ、豊田通商様や三菱商事様などとパートナーを組み、アジアでのサプライチェーン排出量の可視化を目指す取り組みを開始しています。
編集部
プラットフォーマーに徹することでソリューションを持つパートナー企業様を巻き込み、グローバル規模でサプライチェーン排出量の可視化に貢献しているんですね。
事業の急成長と新たなサービス展開にあわせ組織を拡大中
▲トライ&エラーを繰り返しながらより良いもの・価値を生み出す
編集部
ゼロボードさんは2021年8月設立にもかかわらず、2023年4月時点ですでに従業員数が100名を超していますが、組織づくりの面では今後どのような戦略を考えていらっしゃるのでしょうか。
宮本さん
いち早くお客様のニーズにお応えできる体制作りと、膨大にあるサービスの質を高めるため、2023年のうちに新たに120名を採用したいと考えています。2022年に採用した方と合わせると、2023年中に200名を超える規模感になると思いますね。
サービスの機能追加など、スピード感を持って対応するには人員を確保しなければいけません。それに、会社の成長に合わせて内部管理体制の維持にも人員が必要になりますし、お客様からのニーズが多いほど営業活動も必要です。
それを実現するためには、開発・ビジネス・コーポレートなど全方位的に人員が必要なので、大量採用を実施しているという経緯です。
▲事業拡大に伴う人員増加を見据えて移転した現在の新オフィス
情報を共有しスピーディに課題解決へ導く開かれた環境
編集部
ゼロボードさんで大事にしている行動指針をお聞かせください。
宮本さん
ゼロボードの行動指針は4つあります。1つ目は「顧客から、課題から」です。まずはお客様が求めているものを把握し、尊重したいと考えていますね。ただお客様の言いなりになるのではなく、お客様の課題に立ち返ることや、社内であればチームの課題に向き合って本質に立ち返って解決策を導き出します。
2つ目の「つなぐ、拓く」ですが、これはゼロボードのサービスにも共通する部分です。GHGプロトコルのScope3(サプライチェーン上の他社によるGHG排出)という考え方も、サプライチェーン全体でCO2量を算定する必要があり、また可視化の先の削減努力に繋げることが重要となるので、みんなでCO2を下げる努力をすることが「つなぐ、拓く」に当てはまりますね。脱炭素は1社で成し得るものではありません。
「拓く」は「自分だけで閉じない」ということです。なので、情報をオープンにする意味も含まれます。また、ゼロボードの事業は新しい領域ですので「開拓」の意味もありますね。
3つ目の「早く、速く」については、ゼロボードはスタートアップなので、とにかくスピード感を大事にするという意味合いです。どこよりも早くお客様にお届けするために、個人の仕事でもスピード感を持って取り組んでいます。
4つ目は「やり遂げる、何度でも」です。新規事業は改善が必要で、試行錯誤を繰り返してもうまくいかないケースは出ると思うんです。そのときにそこで終わりではなく、次の施策を考えなければいけません。何度も挑戦することで良いものが生まれたり、より良い改善ができたり、より良いコミュニケーションができたりするので、この精神を大事にしています。
▲大きな窓と白を基調とした開放的な空間で作業ストレスを軽減
個々の経験を尊重し、多様な価値観を受け入れる
▲仕事風景。意見を積極的に出し合いチーム内で情報や知識を小まめにシェアしている
編集部
他に、ゼロボードさんの独自のカルチャーはありますでしょうか。
宮本さん
社員は大手出身の方だけでなくベンチャー出身の方もいて多種多様ですね。前職の環境によって仕事におけるスピリットや特色が異なるので、さまざまな価値観が混ざっている環境です。
編集部
大手企業とベンチャー出身では考え方や業務の進め方に大きな違いがあると感じますが、個々の価値観を尊重し合えているのですね。
宮本さん
そのように感じます。あとは、環境問題という難しいテーマに向き合い貢献したいと考える方が多く、人に優しい人が集まっていることから「人が価値を作っている会社」だと感じますね。
地球温暖化は、事件や事故のように目の前で起こる短期的な問題ではなく、毎年気温が少しずつ上がっているように、20年・30年という長いスパンで緩やかに状態が深刻化しています。ゼロボードはお子さんを持つ方が多いこともあり、未来のためにできることを考えたいという方が多い気がしますね。
編集部
新しく入った社員さんとコミュニケーションを図る際は、どのような工夫をされていますか?
宮本さん
毎月新たに入社される方にはオンボーディングを実施しています。組織やツールに関する案内だけでなくCO2算定研修も二日間かけて行います。毎月複数メンバーが入社されるので、入社者同士のチームビルディングも兼ねてグループワークも実施します。
あとは、始めたばかりですが新しく入社した方々を集めてSDGsカードゲームをオフラインで行っています。チームビルディングを含めたコミュニケーションはもちろん、環境に対する知識を深める目的もありますね。試しに始めてみたら参加した社員たちから定期的にやりたいという声があがったので今後も続ける予定です。
編集部
SDGsカードゲームを通して、環境の知識を習得してもらうのは面白い試みですね。
▲SDGsカードゲームのプレイ中。社員同士で交流しながら環境に関する知識を得られる
新しい取り組みに挑む社員を讃える「Award」
▲オフィスには社員が集えるリフレッシュスペースやマルチスペースを完備
編集部
ゼロボードさんでは、価値を体現したメンバーへAwardを贈ると伺いました。バリューの中に「挑戦を楽しむ」とありますが、Awardに選ばれた方はどのような挑戦をされたのでしょうか。
宮本さん
Awardに選ばれるのはチームに貢献したり新しいことに取り組んで成果を上げた方ですね。
例えば過去には、コミュニティ立ち上げや新しいウェビナーを企画した方、顧客対応についてチーム内に積極的に情報発信をした方、LCA(※)の算定やCFP算定などの専門分野を学んで、自分が得たに知識を社内勉強会という形でチームに還元したり、お客様のニーズによりお応えできるようプロダクトに反映させたりした方が選ばれています。
(※)LCA:ライフサイクルアセスメント。製品・サービスによる環境負荷を可視化する手法
編集部
新しいことに挑戦するだけでなくチームへ還元する姿勢は、行動指針である「つなぐ、拓く」にも紐づきますね。
リモートベースの働き方。育児中でも柔軟に対応できる
▲フルリモートや部署ごとに出社ルールを決めるなど、チームや個人のペースに合わせた働き方が可能
編集部
続いて、ゼロボードさんの具体的な働き方や勤務上のルールについて伺えますでしょうか?
宮本さん
リモートワークをベースとしていますが、強制的なルールはなく、部署ごとの判断に任せていますね。勤務時間については、フルフレックス制でコアタイムは特にありません。
5:00~22:00をフレキシブルタイムとして設けているので、早朝から仕事をする社員もいます。また、オフィスの営業時間は9:00~18:00なので、外部の方との打ち合わせがある場合などはこの時間内で勤務するケースも多いです。
加えて、ゼロボードにはお子さんがいらっしゃる社員が多いので、保育園に預けに行く朝の時間帯に1回抜けたり、夕方のお迎えの時間に1回抜けて子どもにご飯を食べさせてからまたリモートで仕事に戻ったりする人もいますね。このように働き方の自由度は高く、個々のライフスタイルに合わせてコントロールが可能です。
編集部
フルリモートだと社員同士の交流の機会が難しいと思いますが、コミュニケーションで工夫している点はあるでしょうか。
宮本さん
在宅のメンバーが多いので、コミュニケーションにおいてはチャットツール「Slack」の利用が活発です。チャット内ではビジネスに関する記事や他社の取り組みなど、自分が持ってる情報を発信してチーム内でシェアするようすが見受けられますね。会議のときも黙って参加するのではなく、疑問があれば質問するなど、共通して積極性があると思います。
また半年に1回、情報共有とイベントを兼ねて全社員がオフラインで集まる「All Hands(全社会)」を開催しています。
編集部
積極的に情報を共有することで、離れていてもそれぞれの業務や考えがしっかりと把握できますね。さらにはチームのモチベーションの向上にもつながりそうです。
一から学ぶ姿勢と主体性がある方を歓迎
▲増員にも対応可能な広々とした社内
編集部
ゼロボードさんは、採用においてはどのような方を歓迎したいと考えていますか?
宮本さん
「脱炭素経営を支援する事業」と聞くと専門知識が必要だと思われがちですが、今いる社員も最初はCO2の算定などの知識がなく、未経験で入社するケースが圧倒的に多いんです。なので、求職者の方には一から学ぶスタンスでご応募いただきたいですね。
年齢問わず新しいことにチャレンジすることを前提にしているので、選考では業界経験・知識の有無は重要視していません。もちろん、環境問題に取り組む気質や知識があれば心強いですが、それがなくても特に問題はないです。チームで仕事を進めるため、どちらかというと仕事や物事に対する向き合い方を重視していますね。
編集部
仕事や物事に対する向き合い方とは、具体的にどのようなことでしょうか。
宮本さん
例えば、失敗した際に他人のせいにするのではなく、課題を見つけて解決策を見出だせる方や、チームに貢献する方法を見つけられる方と一緒に仕事をしたいと思っています。
あとは、「意識の矢印を自分以外に向けられる方」でしょうか。これは、「自分のため」ではなく「お客様・パートナー様のため」「チームのため」という起点で物事を考えられる方、また相手の考えを理解して寄り添えるような姿勢、スピード感を持って変化に対応できる資質のある方という意味です。
編集部
ありがとうございます。最後に求職者の方へメッセージをお願いします。
宮本さん
環境問題は難しい課題ですが、今の私たちが未来のためにできることは必ずあると思っています。一人ひとりの行動が社会を動かす一端を担うと思うので、環境や地球の未来というテーマに挑戦したい方はお気軽にお問い合わせください。カジュアルにお話できる機会を設けて、お待ちしております。
編集部
企業活動におけるGHG排出量の算定・可視化のパイオニアであるゼロボードさんは、スタートアップならではのスピード感と、常に外へ意識を向けて新しいことに挑み続ける姿勢があると感じました。それが急成長されている理由なのでしょうね。
本日は取材にご協力いただきありがとうございました。
■取材協力
株式会社ゼロボード:https://zeroboard.jp/
採用ページ:https://zeroboard.jp/recruit