働き方や福利厚生などで先進的な取り組みをされている、また独自のミッションやバリューが浸透している企業をインタビューする本企画。今回は「Just for Fun」をミッションに掲げ、個人事業者から中規模企業まで店舗を運営する方々にむけてお店のデジタル化を総合的に支援するサービスを提供する STORES 株式会社 にお話をうかがいました。
STORES 株式会社 とは
2018年2月で創業5周年を迎える STORES 株式会社 は、「Just for Fun」をミッションに掲げ、個人事業者から中規模企業のお店のデジタル化を総合的に支援するサービスを提供しています。
また、新しい働き方として注目されている「WORK LOCAL」は、日本全国での居住を可能にした独自のものです。手厚い福利厚生制度とあいまって従業員のモチベーションを最大限に引き出しています。
会社名 | STORES 株式会社 |
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住所 | 東京都渋谷区東3丁目16番3号 エフ・ニッセイ恵比寿ビル4階 |
事業内容 | インターネットビジネスの企画・開発・運営 |
設立 | 2012年3月 |
公式ページ | https://www.st.inc/ |
働き方 | 「WORK LOCAL」で全国に居住可能 フレックス |
STORES 株式会社 のミッションは「Just for Fun」です。これを実現するためのバリュー「3つの行動指針」や、注目すべき働き方である「WORK LOCAL」、そしてメンバーのライフステージの変化に寄り添う福利厚生などをお聞きするとともに、採用において重視しているポイントを伺いました。
中小事業者の商いを長く、楽しいものに
▲STORESさんが提供している5つのサービスの画面イメージ
編集部
まずは事業内容の説明からお願いします。
佐俣さん
弊社は「Just for Fun」をミッションに掲げており、個人事業主様や中小規模の事業者様が運営しているお店のデジタル化を総合的にサポートしています。私たちは、こだわりや情熱、楽しみで駆動されている経済があると考えており、個人のそういう思いで始めた商いを、長く楽しく続けられるように支援しているんです。
STORES が提供しているサービスは、ネットショップ開設やPOSレジ、キャッシュレス決済、予約システムや店舗アプリ作成などサービスを展開しています。これらのサービスを組み合わせてお使いいただくことで、より簡単で効率的な事業運営が実現し、少ない人数でもより多くのことができるようになります。
編集部
中小事業者様の中には、デジタル化についてはまだよくわからない、という方も少なくないのでしょうね。
佐俣さん
そうです。ここ数年で日本経済のデジタル化も、だいぶ進んできました。でも、キャッシュレス一つとっても、まだまだ成長の余地があります。これは地方でも大都市圏でも同様です。非常に進んでいる業種や業態もあれば、これからが導入の本番という業種・業態も多くあります。
弊社はこれからデジタル化・キャッシュレス化の本番を迎える事業者様に対し、しっかりと支援していきたいと思っています。
ミッション「Just for Fun」に込めた思い
▲「Just for Fun」というシンプルで力強いミッションを掲げる(会社紹介資料から引用)
編集部
これからデジタル化に拍車をかけようと意気込んでいるお店が、楽しみながら事業を展開できるように支援する。その思いを「Just for Fun」というミッションに込めているのですね。
佐俣さん
弊社では、サービスをお使いいただいているお客様をオーナーさんと呼んでいます。オーナーさんは基本的に起業家や事業家の方々です。そういう方々がなぜその事業を始めたのかといえば、いろいろあれど、それが楽しいからなんです。そして、そのこだわりや情熱を商品に込めて提供することで、自分たちのお客さんにもよろこんでもらいたい、そういう思いでやられています。私たちは、その熱量を信じています。
とはいえ、事業を継続することは難しいことでもあるので、オーナーさんたちに良いデジタルプロダクトを提供することで、長く楽しく事業を続けていただきたい。そうした思いからミッションを「Just for Fun」としました。
編集部
そういうお話を聞くと、御社とオーナー様との関係も濃密なんだろうなと想像できます。オーナー様からのフィードバックも相当おありなんでしょうね。
佐俣さん
おっしゃる通りです。オーナーさんからのフィードバックは、ものすごく重要だと思っています。オーナーさんからいただく声は、常にプロダクトチームはもちろんのこと、経営陣も見ています。そしてご指摘いただいた課題の解決を、最も重視しています。それによりサービスの価値を着実に高め、オーナーさんからはさらなるご支持をいただくという好循環を目指しています。
メンバー全員を巻き込んだバリューの策定
編集部
次に御社のカルチャーについてうかがいます。2022年3月に新たなバリューとして「3つの行動指針」を策定されました。こちらについての説明をお願いいたします。
佐俣さん
行動指針は「オールスター」「挑戦スパイラル」「デリバリーアニマル」の3つから構成されています。
まず、「オールスター」はメンバー全員が何らかの専門家となって得意な分野を磨こうというものです。二つ目の「挑戦スパイラル」は、難しい問題に取り組み、高みを目指すというもの。そして三つ目の「デリバリーアニマル」は、最短で着実に価値を届けることに執着するというものです。
編集部
このバリューをメンバー全員を巻き込んだワークショップで策定したと聞いて、とても驚きました。その狙いや経緯をお願いします。
佐俣さん
策定してから1年が経つのですが、それ以前はバリューを定めていなかったんです。共通する価値観が暗黙知としてあり、それで十分だったからです。ところが組織が大きくなる中で、そうもいかなくなってきたんですね。暗黙知ではなく、きちんと明文化し、社内にはっきり姿勢として打ち出したほうがいいというフェーズに入ってきたんです。
しかも会社が大きくなっていく中で、今までの価値観をそのまま継続していいのか、という問題意識もありました。価値観の一部は見直したほうがいいのではないか、という議論ですね。そこで全社員を巻き込んで、みんなで意見を出し合いながら策定することになりました。
予想外に早いバリューの社内への浸透
編集部
バリューの策定に全社員を巻き込んだことで、どんな効果が現れましたか。
佐俣さん
社内への浸透が思った以上に早いように感じます。策定して1年経ちましたが、日々の行動や意思決定などで、バリューが影響を与えていると感じることがよくあります。
編集部
メンバーとのコミュニケーションで、バリューに則った発言があるわけですね。
佐俣さん
そうです。例えば弊社は日常的なコミュニケーションツールとしてSlackを使っていますが、その中で「それはオールスターだね」とか「デリアニ(デリバリーアニマル)だね」といったスタンプを押すことがよくあります。スタンプはモニタリングをしており、どのスタンプがどういうふうに押されているかを常にウォッチしています。
また、バリューラジオという社内ラジオを毎月1回、開催しています。ここでは毎回、社内からゲストを呼んでバリューを言語化してもらっています。「推しバリューは何か?」や「そこに至ったストーリーはどんなものか」といった質問を投げかけています。
あとはワークショップですね。弊社のバリューは比較的、抽象度が高くなっています。なので自分たちの業務に落とし込んだ場合に「業務のどの部分がバリューに当たるのか」や「どう行動すればバリューに則れるのか」ということを、考える余白があるんです。そのことが社内へのバリューの浸透を早めているのだと思います。
バリューを体現することの重要性
編集部
メンバーがバリューを体現しているかどうかは、人事評価にも影響を与えるのでしょうか。
佐俣さん
はい。人事評価制度は成果評価だけではなく、行動評価にも組み込んでいます。例えば、目標を設定する際にも「もっと挑戦的にした方がいいんじゃないか」といったことを組み込むこともあります。
編集部
バリューの体現について、佐俣さんの印象に残っている事例がありましたらお聞かせください。
佐俣さん
例えばバリューの一つであるオールスターですが、これはそれぞれの専門性を活かして働こうということです。このことが普段の採用活動の中で、非常に顕著になってきています。ここが本当に変わったなと思う部分です。
自分のチームに欠けている才能や技術、あるいは新たに加えたい専門能力を持っている人を、採用活動を通じて積極的に探しに行ったり、時には口説きに行くようになったんです。オールスターを実現するために、良い人材を探すことが、当たり前に議論されるようになったんですね。
編集部
明文化されたことで、すべきことが明確になったということでしょうか。やはりバリューを策定したことの効果は、いろいろな形で出てきているのですね。
新たな働き方のスタイル「WORK LOCAL」とは?
▲「WORK LOCAL」の制度詳細(会社紹介資料より引用)。
編集部
次は福利厚生についてうかがいます。御社が大きく打ち出している「WORK LOCAL」とは、どういった制度なのでしょうか。
佐俣さん
弊社のサービスを利用いただいているオーナーさんは日本全国にいらっしゃいます。だったら社員もその近くで暮らすことができれば、オーナーさんのことをもっと知ることができるし、その地域の特性なども、より深く理解できます。インターネットがこれだけ発達してきた中では、こうした働き方は十分に可能だろうと判断してスタートした制度です。
そのため、弊社のメンバーは日本全国どこにでも居住可能ですし、交通費は月に15万円まで支給するので必要に応じてオフィスに出社もできます。そして特急や新幹線、飛行機での通勤も認めています。
それ以外にもリモート環境整備の補助金として毎月1万円を支給したり、コアタイムを12時から16時までのフレックスタイム制を導入しています。
メンバーはこうしたサポートを前提に、好きな街や住んでみたかった場所、あるいは実家がある地域などと、それぞれの事情に応じて住む場所を自由に選択して働けます。こうした環境は長く働いていくうえで、とても大切ではないかと考えています。
編集部
御社は他にも多くの福利厚生を用意しています。その中でも、特によく使われているのはどの制度でしょうか。
佐俣さん
「STORE Visit」ですね。これは創業初期から続けている制度で、STORES のすべてのオーナーさんのサービスや商品を、社員が使用、購入する際に毎月5,000円まで補助するものです。もともとはSTORES サービス自体を体験したり、オーナーさんが STORES のサービスをどのように活用しているかを知るための制度としてスタートし、毎月多くの社員に活用されている福利厚生です。
特徴としては、使って終わりだけでなく「何を買ったか」や「どんな気づきがあったか」、「何がよかったか」といったことを投稿するslackチャンネルを用意していることです。毎日ものすごい数が投稿されているんですよ。
これを読むと、自分たちがいかに幅広いオーナーさんたちにサービスを届けているのかがわかりますし、課題なども見えてきます。インターネット業界では「ドッグフーディング」と呼ばれてますが、自分たちが自分たちのサービスを使うことで学びを得るという意味で、非常に有効な制度だと思います。
メンバーのライフステージに寄り添う「Fun for Family」
編集部
御社の福利厚生で手厚さを感じたのは「Fun for Family」です。メンバーだけでなく、その家族を対象にした制度がかなり充実していますよね。会社として、メンバーのライフステージの変化に寄り添いたいという思いの表れでしょうか。
佐俣さん
そうです。弊社の平均年齢は今30代前半です。いろいろなライフステージの変化がある年代なんです。それは仕事だけではなく、プライベートも含みます。ですからプライベートに関するある種の安心感があれば、より優れたパフォーマンスを発揮して働けるだろうということを考えました。
実は、もともとの制度名は「Fun for Kids」だったんです。出産や育児、子育てなどの支援がスタートでした。ところが親が体調を崩したり、家族が病気になるなどケアするための時間が必要というケースが増えてきたんですね。そこで支援対象をキッズから家族に広げたんです。
その一つが「ファミリーサポート休暇」です。これは二等親以内の家族一人当たりに、年間5日の休暇を付与して自由に使ってもらうものです。まだ出産や育児支援に重きをおいている部分もありますが、今後は介護に対する支援なども重要になるだろうと考えています。
福利厚生制度の見直しにも積極的に対応
編集部
確かに介護支援の重要性は今後、WORK LOCALを推進する中では高まってきそうですね。両親を介護するために実家で勤務するというケースも増えるのではないですか。
佐俣さん
そう思います。ただし、実家に帰るにしても、恒久的な場合もあれば、一時的な場合もありますよね。そういう事情はいろいろと変化すると思います。ですから、その都度相談を受けながら、どう対応すればその方らしい働き方ができるのかを、臨機応変に考えたいと思います。そして制度が足りなければ、作ればいいと思っています。
編集部
制度を固定化せずに、どんどん変えていかれると。
佐俣さん
弊社では福利厚生も一つのプロダクトというか、システムだと思っているんです。ですから「使い勝手が悪い」とか「全然使われていない」ということなら、すぐに見直した方がいいと考えています。
例えば弊社のサービスの中にも、オーナーさんによかれと思ってリリースしたけれど、まったく使われない機能なども過去にはたくさんありました。そこで「なぜ使われないのか」や「どうすれば使いやすくなるのか」ということを常にPDCAで検証してきたんです。人事制度も同じで、当初の想定とは違ったのであれば、「どうすれば改善できるのか」について、積極的に対応していきます。
編集部
御社は福利厚生のことを「Boost STORES」と総称していますが、まさしく制度をより良い方向にブーストさせていくというようなお考えですね。
情報のオープン化でメンバーとの意識を共有
編集部
御社のメンバー向け施策を拝見すると、情報のオープン化がとても進んでいると感じます。社内報があったり社員へのインタビューを掲載する「STORES PEOPLE」があったり、経営陣と1on1で雑談ができる「オープンドア」などですね。メンバーとの情報共有を方針として打ち出しているのでしょうか。
佐俣さん
その通りです。弊社は基本的に情報を公開すればするほど、どうやったら自分たちで解決できるかや貢献できるかなどを、メンバーに考えてもらいやすくなると思っています。ですから、あまり閉じたものにしたくないというのはあります。
編集部
その一方で、どこまでの情報をオープンにするかという難しさもありそうですね。
佐俣さん
そうですね。会社が大きくなっていく中では、情報を経営陣から全社に伝える手法と、マネジャーが適切に情報伝達していく手法の二つが必要になってきています。ですからマネジャーが持っておくべき情報と現場のメンバーが持っておくべき情報とを精査しています。
編集部
「オープンドア」のような取り組みは、佐俣さんのような経営陣からみても現場の声を知るよい機会になるのでしょうね。
佐俣さん
おっしゃる通りです。日常的には同じチームのメンバーと仕事をしているわけですが、オープンドアは普段の仕事で接点がないメンバーとのコミュニケーションがほとんどです。その方がやっている仕事のことや現場で起きていることを教えてもらいますが、すべてが重要な学びであり気づきになります。毎回とても楽しみにしています。
採用の重点ポイントは「得意分野が明確なこと」
▲採用のポイントは「得意分野が明確なこと」と語る取締役の佐俣奈緒子さん。
編集部
それでは最後に採用について伺います。御社が採用試験で重視しているポイントはどういった部分でしょうか。
佐俣さん
やはりJust for Funというミッション、世界観を本当に信じていただける方がいいなと思っています。そして何よりも、その人らしい専門性や得意分野がはっきりしていることが大切です。それを弊社でさらに磨き上げ、ご自身の目標として達成したいと思っている方が、弊社には向いているんじゃないかなと思います。
編集部
「バリューにフィットしているか」や「これから身につけていけるポテンシャルを持っているか」などですね。
佐俣さん
その通りです。やはりバリューを満たす方と一緒に働きたいと思っていますので、そこがコアになることは確かです。もっとも現実的には、最初からすべてを身につけている方は、なかなかいないでしょう。
ですから、ポテンシャルでお話することもあります。「そういうことをやりたいと思っている」とか「その実現に向けた努力をしているが、まだ道半ば」という方と、まずは職種や役割に応じたお話しをしたいです。そのうえで、お互いに「なんかいいね」と思えるかどうかが、大事だろうと思っています。
カオスの中で成長でき、社会課題を解決したい方を募集
編集部
御社に興味を持った方には、会社説明会「Hello STORES」などのイベントがとても有意義なように思えます。
佐俣さん
おっしゃるとおりです。Hello STORES は、弊社のミッションやカルチャーを感じていただくためのイベントです。どなたでも無料で参加いただけるので、ぜひお気軽にお申込みください。カジュアルな場なので、弊社の空気感がつかめると思いますよ。
編集部
では最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
佐俣さん
STORES は 今、すごく面白いフェーズに入りました。弊社は決済事業やネットショップ事業、オンライン予約事業などを起源とする会社が統合してできた会社で、ここまでの5年間で、多くの事業者にサービスを提供してきました。
そしてここからの5年が、まさしく次のフェーズなんです。本当に重要な経営課題を解決するための複数のプロダクトを統合的に作っていく段階で、カオスなことが相当起こるだろうと予測しています。このフェーズを一緒に体験して、共に成長していただける方を探しています。
長期スパンで日本を見ると、人口が減少して働き手が減り、少ない人数でより多くのことをやらなければいけない国になるはずです。そうなったときに弊社は、そのど真ん中で役に立てるサービスを作っていきたいと思っていますし、これができる会社は、日本にはあまり多くないと思います。
こういった社会的な課題を解決したい方、そして私たちの身の回りの「商い」そのものを良くしていきたいと思っている方に、興味を持っていただけるとありがたいですね。
編集部
社会的な課題の解決に、使命感を感じられるような方がフィットするということですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
STORES 株式会社 https://www.st.inc/
採用ページ https://jobs.st.inc/