注目企業の躍進の理由や新しい働き方などについてインタビューをしていくこの企画。今回は、スマートクリニックの拡大など、ITの力を活用して婦人科医療のDXを推進するヘルステック企業、ルナドクター株式会社にお話を伺いました。
ルナドクター株式会社とは
ルナドクター株式会社は、「女性の健康に関する面倒くさいを徹底的に排除する」をミッションに掲げ、2020年9月に創業したスタートアップ企業です。
スマートクリニックの拡大や、オンラインでの医療システムの開発など、テクノロジーと医療の力を掛け合わせ、女性が感じる健康の悩みや医療現場の課題の解決に取り組んでいます。創業1年目から売上数億円、2期目には売上ベースで百数十億円、
会社名 | ルナドクター株式会社 |
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住所 | 東京都新宿区新宿3-22-12 新宿サンパークANNEX 4階 |
事業内容 | スマートクリニック事業、医療DXシステム開発事業、Femcheck事業、検査代行事業 |
設立 | 2020年9月15日 |
公式ページ | https://company.luna-dr.com/ |
今回は、急成長を遂げている背景や若手でも事業責任者として活躍できる環境、インターンシップ制度などについて、ルナドクター株式会社の代表取締役社長である近都さんと、事業開発部の原口さんにお話を聞かせていただきました。
女性医療の煩わしさ解消を目指した事業展開
▲ルナドクター株式会社が掲げるミッション、ビジョン、バリュー
編集部
はじめに、ルナドクターさんではどのような事業を展開されているのか教えていただけますか?
原口さん
まず、ルナドクターでは「女性の健康に関する面倒くさいを徹底的に排除する」をミッションに掲げ、ビジョンとして「女性がもっと暮らしやすくなれば世の中はきっともっと良くなるはず」を掲げています。IT×医療の力で患者さんが感じる通院の面倒くささを解決することで、女性が働きやすい社会の実現を考えています。
そのうえで、大きく2つの主軸で事業を行っています。まず1つ目が、自宅でのオンライン診療および自宅検査キット「FemCHECK」の事業です。
具体的には、病院に行かずとも自宅でおりものなどから性病の検査ができたり、更年期障害などの検査をオンラインでできるように研究を進めたりしています。異常がわかった場合はオンライン上で診療し、薬剤を処方してご自宅にお届けしています。
2つ目がクリニックの運営支援です。婦人科を3店舗、美容医療を3店舗、脱毛クリニックを2店舗運営しており、徐々に拡大を進めているところです。
編集部
ミッション、ビジョンにもあるように、女性に特化した事業やサービスの展開を行われているのですね。このようなミッションを掲げる背景があれば教えていただけますか?
近都さん
日本はどんどん少子高齢化が進んでいて、いずれ労働力が足りなくなると言われています。2040年には生産人口が約6000万人まで減少すると推計されている中で、労働力を確保するためには女性の社会進出が必要不可欠です。
しかし、女性にはライフタイムに応じた課題や悩みがつきものです。私たちは、そんな女性の社会進出の不都合を取り除いていきたいと考えています。
ルナドクターでは、10代から60代まで、年代ごとに課題を分けています。例えば10代前半であれば脱毛や性病、40代からは更年期障害、50代60代の方はシミやたるみ、またそもそもの健康に対する悩みと、各年代で悩み・課題は異なります。私たちは年代ごとの悩みに応じてサプリや商品を開発し、保険診療だけではなく自由診療での美容クリニックを展開しています。
また、働き盛りの世代に関しては、海外ではピルを服用して仕事に月経前症候群(PMS)が影響しない形で働くことが普通となってきている一方で、日本ではこうした働き方が浸透していない状況があります。私たちはこうした働き方の促進を支援しています。
編集部
女性特有の悩みは身近な人にも相談しづらかったり、生きづらさや働きづらさを抱えていたり、婦人科に行くこと自体ハードルが高く感じられたり、という方も少なくないと思います。ルナドクターさんの理念や事業は、そうした女性の方々にとって心強いのではと感じました。
▲ライフタイムに応じて、女性の悩みを分類している
消えないニーズを拾う既存事業と時代の流れを汲んだ新規事業で急成長
編集部
ルナドクターさんは、近年急成長されていると伺っています。具体的な数値について教えていただけますでしょうか。
原口さん
弊社は2020年創業で今3期目になる会社です。昨年の2期目で売上ベースで百数十億円を達成し、
一般的にスタートアップ企業は外部から資金調達をして、その資金をテコに事業拡大していると思います。しかし、弊社は外部からの資金調達を行っておらず、自己資本のみで運営をしている、スタートアップとしては珍しい企業だと思っています。
編集部
成長されている要因をぜひ教えていただけますでしょうか?
原口さん
まずは、既存事業が順調に伸びていることが挙げられます。先ほどご説明した自宅でのオンライン診療や検査キット事業、クリニックの運営支援事業が堅調に推移しています。
また、
さらに、弊社の事業の中心である女性のライフタイムに応じた悩みは、今後も消えることなくより深刻化していくと考えられます。そして、ご存知の通り医療費は国防費と同じくらい予算があり、私たちは保険診療も行っています。
今後も消えないニーズに焦点を当てており、拡大するマーケットで事業を展開していますので、それも伸びている要因の一つです。
編集部
今後も拡大が見込まれるマーケットで事業を展開しており、
M&A、外部との協業を進め、最終的には女性のためのプラットフォームを
編集部
M&Aを積極的に進めているそうですが、こちらについても教えていただけますでしょうか?
原口さん
私たちは女性のたくさんある悩みを全て解決していきたいと考えており、それを実現するには事業をゼロから作るより、いろんな会社さんと協業した方が早いと思っています。どんどんM&Aを進めていき、最終的には女性のためのプラットフォームを作り上げたいと考えています。
何かあったときに、ルナドクターに相談すれば全てが解決するような世界にしたいですし、これが弊社の事業戦略の方針です。現在は、新規事業で児童発達支援事業の立ち上げを行っており、こちらのM&Aを積極的に進めています。
編集部
今後、どのような展開を考えていらっしゃるのか、差し支えない範囲で教えていただけますか?
近都さん
例えばヘルスケア領域でしたら、おりものから婦人科系の疾患がわかるだけではなく、外部と協力しながら新しい領域に進出しようと考えています。先ほどお話しした更年期障害などの検査は、東京大学さんと協業をして共同研究を進めています。
また、小林製薬株式会社さんとも業務提携を開始して、婦人科系疾患の早期発見の研究を進めています。いずれもまだ事業としては確立はしておらず、研究開発段階ではありますが、外部の企業や機関との協業に積極的に取り組んでいます。
編集部
他社や外部の機関との協業や、M&Aを積極的に進めていくことで、ルナドクターさんが掲げる女性の悩みを全て解決できる場所を構築していこうとされているのですね。
事業責任者は平均30歳。業界未経験、入社1ヶ月で任せられる事例も
▲現役婦人科医・産業医でもある、ルナドクター株式会社代表取締役の近都さん。若手の事業責任者のフォローアップも行う。
編集部
現在の体制についてお聞きしたいのですが、ルナドクターさんでは平均年齢どれぐらいの方がご活躍されていますでしょうか?
近都さん
事業責任者には基本的に20後半から30中盤くらいまでのメンバーがなっています。なので事業責任者の平均年齢は30前後と、比較的若いうちから責任あるポジションで活躍できる環境です。
編集部
もともと医療業界で働かれていた方が多いのでしょうか?
近都さん
業界問わずですね。今の事業責任者には他の企業で取締役として上場させたメンバーや、自分で起業した会社を売却した後に入社したメンバーなどがいます。あとは私のように事業責任者としての経験はないけれども、ベンチャー企業で鍛えた後に事業責任者にチャレンジしているメンバーもいます。
編集部
業界問わず、転職されてきて活躍されている方が多いということですね。
原口さん
私は2023年の8月に入社しました。社歴は浅いのですが、事業責任者を任せてもらっています。現在、弊社では新規事業として児童発達支援の分野への進出を進めており、M&Aも積極的に検討しています。
事業責任者や事業部長が名ばかりとなっている企業もあるかもしれませんが、弊社では本当に驚くくらい任せてもらえるんです。案件の精査、契約書の締結、企業価値を算定するデューデリジェンス、そして最終契約の締結という一連のプロセスを、基本的に私が責任持って全て行っています。通常であればやり取りは事業開発、契約書は法務、デューデリジェンスは専門チームと、ある程度は分担すると思います。
1ヶ月〜1ヶ月半ほどで責任あるポジションを任せてもらえるという点は、会社としても経営者としても度量の深さを感じますし、弊社の特長ではないでしょうか。
挑戦も失敗も許容する体制が社員と企業の成長に繋がる
編集部
原口さんは事業責任者は未経験で、そんな中で全てのプロセスを責任持って担当するのは非常に大変なのではないかと思います。フォローアップの体制などはどのようになっているのですか?
原口さん
私は、全くM&Aの経験がないながらも自分で勉強しつつ、仲介会社の方などいろんな方に教えていただきながら経験を積んで、独り立ちを目指しています。
ベンチャーだと、責任は任せるけどフォローアップがされないといった体制もあるかもしれません。しかし弊社では、代表(ルナドクター株式会社代表取締役の近都真侑さん)をはじめフォローアップしてくれるメンバーがいて、リスクを減らしてくれています。
例えば、自分で立てた仮説を早い段階で壁打ちできる相手がいるので、大きく方向性を誤ってしまうことはほとんどありません。仮にミスをしたとしてもその人の責任に全部することはないですし、自分で意思決定もできるので、かなり自由にやらせてもらえていると感じています。
編集部
若手からでも活躍できる理由、背景がございましたら教えていただけますか?
近都さん
2期目で百数十億円の売上を達成している会社は国内ではほぼない
若手から事業責任者になるには、社内での信頼を積んでいかなければならないと思います。ですが、ルナドクターでは人の可能性を信じて任せるようにしています。
例えば、1億円の資金を調達するとしたら、投資ラウンドのシリーズA(※)でバリュエーション(企業価値)が5〜10億円のラインだと思います。弊社では3億円以下の投資だったら結構ポップにしていて、私のいる事業も1億円以上投資してもらっています。入社してすぐに大きな金額が動く事業を経験できる成長環境です。
(※)シリーズAとは、スタートアップ企業が成長するために行われる資金調達の一つのこと。
編集部
早いうちから裁量のある仕事を任せられるというのは、やりがいに繋がりそうだと感じました。
自ら手を挙げ行動する
▲ユーザーが安心できるよう、オンライン診療だけではなく実店舗も組み合わせている
編集部
社員の皆さんに共通している特徴などがございましたら教えてください。
近都さん
弊社には、裁量を持って仕事を任せる環境です。ですが、それは自分から手を上げて意思表示をしないと仕事が回ってこない環境の裏返しでもあります。
今の環境に甘んじずに「どうしたらもっと良くなるか」「既存事業だけでは解消できない現状を、どういった事業、新しい機能があればいいのか」を自発的に考えて発信して動ける人が多いですし、そういった方が社内で活躍している印象です。
編集部
若手社員の方が中心になって進められている取り組みなどがあればぜひ教えてください。
原口さん
週1日、領域を決めて、みんなで企業研究会を開いています。それによりドメイン知識を深め、勉強会後には実際に会社さんにインタビューをして仮説の検証を行っています。事業をどんどん作っていかなければならないので、事業構造のアナロジーをひたすらやり続けて、社内アセットにためていくという活動をしています。
また弊社はドキュメント文化であるため、全てのミーティングをドキュメントに残すようにして、ナレッジのシェアを頻繁にするようにしています。
編集部
プライベートでも何か活動などはあるのでしょうか?
原口さん
オフィスの近くにキックボクシングのジムがあり、気づいたらみんなで通っていました。みんな仲間という意識があり、上司部下といった上下関係ではなく、背中合わせで一緒に頑張ろうという雰囲気がある環境です。
なので、任せられた責任に関しても「君が責任を最終的には負わなきゃいけないわけではないけど、ちゃんと自分で意思決定して前に進めていこう」という空気が生まれています。
事業でも広告でも、ユーザーと向き合うことを前提に考える風土
編集部
社員の皆さんがフラットな関係でお仕事をされているということですね。それも一つのルナドクターさんのカルチャーだと思いますが、他に御社のカルチャーはありますか?
近都さん
ユーザーファーストを大事にしていて、あらゆる場面において考えるようにしています。ヘルスケアドメインは信用がとても大事だと考えていて、
あえて実店舗を持つようにしているのですが、これは患者さんが安心して来ることができる場所を作っていきたいという思いがあるからです。ちゃんとお客さんと向き合うことを前提としていて、何よりも大事にしています。
広告一つとっても「売れればいい」という考え方ではなく、お客様にちゃんと価値を提供できるか、お客様に不誠実じゃないかを大切にして、綿密にチェックを行っています。CVR(※)がよくても、お客様に正しいメッセージが伝わらなければいけません。
(※)CVR(Conversion Rate)とはコンバージョン率(成果達成率)のこと。サイトを訪れたユーザーのうち、商品購入や資料請求など、会員登録などの行動をしたかを測る指標。
文化としてはまだまだ完全ではありませんが、ユーザーファーストは重要視していますし、今後伸ばしていけるポイントであると考えています。
編集部
医療や美容は関心を高く持っている方が多いですが、通院や関連商品の購入にためらいを感じてしまう分野でもあると思います。ルナドクターさんではお客様を第一に考えられているので、安心感に繋がる方も多数いらっしゃるのではと感じました。
正社員並みの結果も出せる。実践的なスキル、思考を学べるインターン
編集部
ルナドクターさんではインターン生の受け入れをされていると伺いました。現在活躍されているインターン生の人数や学年を教えてください。
原口さん
3〜4年生の5、6名です。リモートワークで働いてもらっているので住んでいるところはバラバラで、東京都内の1人以外は全国各地に散らばっています。
編集部
インターンの受け入れを始めた経緯を教えていただけますか?
近都さん
まずはシンプルに新卒採用をしたいという理由です。労働力が欲しいというのももちろんですが、カルチャーフィットのことも考慮しています。カルチャーに馴染んでくれる新卒社員がいてくれると、会社のカルチャーの浸透がとても順調になると考えています。ですので、早期からフィットしそうな人材の確保を意図して、受け入れを始めました。
また、中途で優秀な人材を採用するのは難しいので、新卒採用して会社で育てていこうという狙いもあります。色々な会社を見てみると、経営者になれるクラスの新卒を採用して、早いうちから経験を与えることでどんどん成長を促しています。なので、弊社も素地がある子を新卒で採用して、早々に大きな経験を任せて成長を見守っていきたいです。
インターンでもただの雑用などではなく、ちゃんと事業戦略に紐づいて考えられるような業務や、他社より大きな機会を与えていく方針です。
編集部
インターンシップ制度は、人材育成の一歩目でもあるということですね。
近都さん
ビジネスはビジネスモデルがセットになってくると考えていて、私たちはビジネスモデルごとの成功の方程式を科学しています。このモデルに沿って学んでいけば、基本的には成功するところまで成長できると思っています。
実際、インターン3日目で正社員ばりの営業の成果を出せているほど、ノウハウ化できています。弊社が行ってきたビジネスの研究を落とし込んだ、ビジネス偏差値が上がるようなカリキュラムになっているので、インターン生にとってはいい環境ではないかと思っています。
編集部
入社後すぐに即戦力として活躍できるような力を、インターンのうちから身につけられるようなカリキュラムを用意されていて、実際に結果を出されている方がいるというのはすごいと感じました。
「ともに日本の女性の働き方を変えていきたい」という方はぜひ応募を
編集部
最後に、この記事をご覧になってご興味持っていただいた方へメッセージをお願いします。
近都さん
医療業界は業界の慣習が強く変化が難しい業界ではありますが、ここでビジネスを立ち上げる経験を積むことができれば、他のどの業界に行っても通用するようなビジネススキルが身につくと思います。
そして弊社は、スタートアップでありながらも自己資本を持っているので、自由とスピード感を両立させながらチャレンジすることができる環境です。さらに若手社員にも個人に任せる度量があり、こうした会社はなかなかないと思います。「自分で事業を作りたい」「自分で意思決定したい」という方にはフィットすると思いますし、ぜひ応募していただきたいです。
日本の女性の働き方を変える会社は、ルナドクターだと考えています。その時代を一緒に作りたいという思いがある方は、ぜひご応募していただけると非常に嬉しいです。
編集部
医療業界は今後も継続的な伸長が予想されていて、市場も拡大していくと見込まれています。ルナドクターさんは、そんな成長市場で既存事業の拡大のみならず、新規事業の立ち上げなども積極的にされているので、「新しいことに挑戦したい」「社会貢献に関わる仕事をしたい」という方に合うのではと思いました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
ルナドクター株式会社:https://company.luna-dr.com/
採用ページ:https://company.luna-dr.com/recruit