神奈川県藤沢市役所の100年先の未来に続く「変革」と「挑戦」のカルチャー

神奈川県藤沢市役所の100年先の未来に続く「変革」と「挑戦」のカルチャー

先進事例になるような革新性ある事業や取り組みで注目を集める企業、自治体を特集するこの企画。今回は住みやすいまちとして人口増加を続ける神奈川県藤沢市役所にお話を伺いました。

スマートシティ・DX化の先進的な取り組みを進める神奈川県藤沢市役所

神奈川県藤沢市は人口約44万人を擁し、湘南地域の中心都市として発展を続けるまちです。豊かな自然と生活の利便性が共存する住みやすさを背景に子育て世帯を中心に転入が進んでおり、全国的な人口減少が進行する中、人口増を続けています。

近年藤沢市では、全国のスマートシティの取り組みの先駆けとなる「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」をはじめとし、スマートシティやDX化など持続可能なまちづくりを重点的に進めています。またJR東海道本線の新駅開設も予定されており、それに合わせたますますのまちの盛り上がりが期待されているのが特徴です。

自治体 神奈川県藤沢市
本庁舎住所 神奈川県藤沢市朝日町1番地の1
公式ページ https://www.city.fujisawa.
kanagawa.jp/index.html

官民協働で数々の先進的な取り組みを進める藤沢市では、市役所でも民間企業からの中途採用の受け入れや民間企業への出向など、多様な視点を取り入れつつより良いまちづくりを行っています。今回は民間企業から転職し藤沢市役所で活躍する総務部職員課の本間さん、上野さんに、藤沢市役所の仕事の魅力や、新たな取り組みが多数生まれる背景などについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
神奈川県藤沢市役所の本間さん

神奈川県藤沢市役所
総務部職員課上級主査

本間 唯人さん

神奈川県藤沢市役所の上野さん

神奈川県藤沢市役所
総務部職員課主査

上野 恵彦さん

ジョブローテや出向、最先端の政策への対応などを経験できる市役所の仕事

神奈川県藤沢市役所の職員課

編集部

本間さん、上野さんはお二方とも民間企業を経験されて現在藤沢市役所の職員課で働かれているとのことですが、前職でのお仕事や藤沢市役所に転職されたきっかけを教えていただけますか?

本間さん

私はお菓子や化粧品のパッケージを制作する会社で商品開発や営業に従事した後に転職し、藤沢市役所で現在12年目を迎えました。前職では営業という仕事柄さまざまな人の人生相談を受ける機会が多く、「人のライフステージに関わる仕事ができたら面白いのではないか」と思うようになったのが転職のきっかけです。元々藤沢市が地元だったこともあり、市民の生活を多面的にサポートできる藤沢市役所に転職しました。

神奈川県藤沢市役所総務部職員課の本間さん
▲「人のライフステージに関わる仕事がしたい」との思いから藤沢市役所に転職したという本間さん

上野さん

私は前職で教育現場のICT導入支援などを行う会社で営業職をしており、藤沢市役所に入職して現在約10年となっています。前職では行政との関わりも多く、その中で藤沢市がICT推進に力を入れていることを知ったのが転職のきっかけです。私の場合は藤沢市出身ではありませんが、藤沢市役所のICT推進に関わりたいと思い藤沢市役所に転職しました。

神奈川県藤沢市役所総務部職員課の上野さん
▲藤沢市のICT戦略に惹かれ転職したという上野さん

編集部

藤沢市役所では現在の職員課に配属されるまで、どういったお仕事をされてきたのでしょうか。

本間さん

最初に経験したのは、道路をつくるための用地を購入する仕事です。その後内閣府に出向し、1年間地方創生推進のための法律や規制緩和の取り組みに携わりました。藤沢市役所に戻ってきた後は地域活動や市民協働の取り組みに関わる部署を3年間経験し、現在の職員課に配属されて現在は4年目となります。

編集部

約10年間の間でいろいろな経験をされているんですね。上野さんも同様にジョブローテーションをされているのでしょうか。

上野さん

私の場合は少し異例で、最初に配属された部署を8年間経験しました。そこで行っていたのは、住民票を発行したり転出転入手続きをしたりと、いわゆる市役所業務で皆さんが想像するような業務です。その部署にいるときにマイナンバー制度がはじまりました。部署内でマイナンバー制度導入の仕組みを整備する担当に選任いただき、それに奮闘した後に現在の職員課の配属となりました。

編集部

多くの部署を経験するのももちろんですが、一つの部署で経験を積み上げた上で、国の新たな政策を遂行するために最前線で活躍するというのもすごい経験ですね。

上野さん

そうですね。普段の業務では他の自治体と関わる機会はあまりないのですが、マイナンバー制度の導入の際は県内自治体と連携しながら進めていったので、仕事の幅を広げる意味でも良い経験だったと思います。

藤沢市の特徴である“DX”。オンライン面接を他自治体に先駆けて導入

神奈川県藤沢市役所のインタビュー風景

編集部

市役所というのは市民生活のサポートだけでなく、まちの魅力づくりを牽引していく役割も担っていると思います。藤沢市役所でお仕事をされている中で感じる藤沢市の特徴や魅力を教えてください。

本間さん

やはり世間的にも注目度が高いのは、JR東海道本線藤沢駅と大船駅の間に開設される予定の新駅ではないでしょうか。新しい駅ができることで周辺の開発も進むため、そこから生まれる新しいまちづくりの取り組みを経験できるというのはなかなかないことだと思います。

もう1つの大きな特徴は、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」に代表されるSDGsの取り組み、ICTを活用したDX化などを先進的に進めていることです。とはいえ他自治体と比べると進んでいる方であっても、世界的な視野で見ていくとまだまだ追いついていない部分はあります。だからこそここからどう発展させていくかという余地があるのも面白い部分だと思っています。

編集部

本間さんと上野さんが藤沢市役所で働いてきた約10年間で、DXの面で進んだと感じられることはありますか?

上野さん

電子化はかなり進んでいると思います。市役所というと書類仕事のイメージがあるかもしれませんが、藤沢市では電子化が進み資料共有もしやすい形に変わってきています。それは非常に大きな変化ですね。

採用面ではオンライン面談を導入したのが大きな変化です。コロナ禍において対面での面接が難しいという状況を受けて、職員からオンライン面接を導入するアイデアが上がったことが端緒となりました。結果的にさまざまな地域からご受験いただくことができ、採用の視野を広げることにもつながりました。

本間さん

オンラインミーティングについては採用の場だけでなく市役所内での会議にも活かされています。藤沢市役所は各部署の連携や情報共有の機会がとても多いのが特徴で、それは施策・事業を推進する上でとても良い点なのですが、一方で市内のさまざまな拠点にいる職員が一堂に会するのは難しい部分がありました。

しかしそこにオンラインミーティングを導入することで、それぞれの場所にいながらすぐに集まって話し合うことが可能になったんです。それによって意思決定のスピードが上がっているのは、この10年間で感じる大きな変化です。

市役所でお酒が飲めるDJイベントも!?市民とつながる新庁舎

神奈川県藤沢市役所の本庁舎

編集部

まちの魅力を発信するためのシティプロモーションの取り組みにおいても、藤沢市さんで実施している特徴的なものがあれば教えてください。

上野さん

藤沢市役所では2017年の新庁舎竣工をきっかけに、市役所を活用したイベントを積極的に行っています。庁舎だけでなく市役所の敷地も使って市民の方が楽しめる場を提供しているのが特徴で、子ども向けにスケートボードを普及する場として活用してもらったり、定期的にマルシェを開催したりしています。

市役所にはテラスもあるのですが、そこで音楽イベントも実施しました。DJによるプレイを聴きながらお酒も飲めるんです。市役所でお酒が飲めるなんて、まずないですよね!それも市役所職員から出た案で、「外部の人たちともっと連携した取り組みを行っていきたい」という思いから実現しました。

編集部

市役所というと事務手続きでしか行かないイメージがありますが、こんな楽しいイベントがあれば足を運んでみたくなりますね!

職員の活躍を加速させる、アイデアを実現するカルチャー

神奈川県藤沢市役所のインタビュー風景

編集部

オンライン面接の導入や市役所でお酒が飲めるイベントなどは職員の方が考えたアイデアということですが、藤沢市さんでは職員の方のアイデアを良く実現されているのでしょうか。

本間さん

はい。藤沢市の市長、副市長は各部署や職員の考えをとても尊重してくださるので、藤沢市役所ではボトムアップでアイデアをどんどんと実現できる環境があります。

新しいアイデアを実現する際には各部署との連携が必要な場面も多くありますが、先ほども言ったように市役所内で各課の連携や情報共有の機会が多く、「何かをやろう」となったときに、関係部署が前向きに協力し合う雰囲気が醸成されています。オンライン会議により集まりやすくなったことで、その傾向は加速化しているなと感じますね。

職員間の関係もフラットで、「立場が違うから意見が言えない」ということがないのも藤沢市役所の魅力です。部長クラスであっても、副市長であってもお話をすることができます。そういった意味ですごく仕事のやりがいがある環境ですね。

5年で3つの部署のローテーション、庁内公募制度で職員のキャリア形成を支援

神奈川県藤沢市役所のインタビュー風景

編集部

ボトムアップで職員のアイデアを実現していくこと以外にも、藤沢市役所で職員の方の成長を後押しするような制度はありますか?

本間さん

ジョブローテーションで複数の部署を経験できるのは、職員の成長にとって大きなポイントだと思います。

藤沢市では採用から10年の間に3つの部署を回る方針があり、通常3年から5年で別の部署に異動します。それに加えて、私が職員課を経験する中でもっと早い周期で業務経験を積む必要があるのではないかと感じたことから、5年で3つの部署を経験できるようなジョブローテーションの仕組みを提案しました。もちろん本人の適性やキャリアプランにも関わってくるため、現在は5年と10年の両方のローテーションを人によって見定めながら運用しています。

編集部

本間さんはどのような理由で5年で3つの部署をローテーションするという仕組みを提案されたのでしょうか。

本間さん

市役所に入ってさまざまな上司と話をすると、皆さん口を揃えて「若い内にもっといろいろやっておきたかったな」とおっしゃるんです。通常の周期で5年、6年で配置換えをしていくと、4つ程度の部署を経験した時点で管理職に就くケースが多いのですが、現在市役所内に110程度の部署がある中で3つの部署しか経験できないまま管理職になるというと、少し物足りない感じがありますよね。

そういった背景から、5年で3部署というスパンでのジョブローテーションを提案しました。市役所に入って早い段階でいろいろな部署を経験して人脈をつくり、自身のキャリアビジョンを描いた上でさらに複数の部署を経験するのは、長く活躍していくために意味があることだと思っています。

編集部

藤沢市役所の職員の方のキャリア形成を尊重した上での制度なんですね。

本間さん

はい。またキャリア形成に関連して、2年前から「庁内公募庁制度」も開始しました。これは積極性と意欲・能力を持つ職員を希望部署に配置する制度です。

藤沢市役所にある110程度の部署は、それぞれ全く異なる業務内容を実施しています。部署異動をすることで転職レベルで業務内容が変わり、経験を積みながらゼネラリストとなっていくというのが藤沢市役所のジョブローテーションの前提の考え方です。

しかしその中でも「こういうことをやっていきたい」という本人の希望はあると思います。一方で本人の希望だけでなく、その部署が進めているプロジェクトが求める人物像を加味する必要があるのも事実です。「庁内公募制度」はそのマッチングを行い、本人の適性やビジョンを尊重したキャリア形成を支援していくのが目的となっています。

自身の新たな可能性を広げる民間企業への出向制度

神奈川県藤沢市役所のインタビュー風景

編集部

本間さんは内閣府に1年間出向されていたとのことですが、これも藤沢市役所の職員のキャリア支援のための制度なのでしょうか。

本間さん

そうです。国の省庁へだけでなく、民間企業にも藤沢市役所の職員を派遣しています。

どうしても市役所内だけで仕事をしていると、視野が狭くなってしまう部分があると思います。省庁や民間企業という市役所の外の組織を経験してもらうことで、仕事のやり方や価値観を学んできてもらうことが目的です。

編集部

外部組織への職員の派遣制度はいつ頃から実施されていますか?

本間さん

省庁への派遣は20年前くらいから実施していますが、民間企業への派遣は2年前から開始しました。民間企業への派遣制度を取り入れたのは、コロナ禍がきっかけです。

コロナ禍でテレワークの導入など世の中が新しい動きをどんどんと進めている中で、市役所ではテレワークが進まなかったり、新しいことを決断するのに時間がかかったりする現状を目の当たりにしてきました。民間企業の意思決定のスピードや判断の仕方を学ぶ必要があると考えてこの制度を開始し、現在は3社に出向してもらっています。

編集部

なるほど。具体的にどのような民間企業に出向しているのか、またどういった経験をすることができるのかエピソードがあれば教えてください。

本間さん

広告関係の会社に出向した職員の例があります。そこはもともと自治体の派遣を受け入れている会社で、派遣した職員には民間企業の仕事のやり方や自治体との違いを学んでもらい、最後に研修の総括として「藤沢市に戻ってからやりたいこと」のプレゼンを行うという1年間の研修プログラムを体験してもらいました。

最後のプレゼンで、その職員は藤沢市のふるさと納税の課題と、それを受けて何をしていくべきかという発表をしてくれました。その内容がとても良かったため、実際にふるさと納税の担当課に配属されることになり、現在も活躍しています。

もう1つ、現在地方銀行に出向している職員のエピソードがあります。銀行で地元企業の方と触れ合う中で、「地元企業さんは『稼ぎたい、利益を得たい』という気持ち以上に『地元を盛り上げたい』という気持ちを持っているんだ」と感銘を受けたそうで、「市役所に帰ってきたら、そういった地元企業の方と関わることができる仕事をしたい」ということを熱く語ってくれました。

上野さん

そういう話を聞くとすごく羨ましいなと思います。私も民間企業に出向したいくらいです(笑)。今後藤沢市役所に転職される方も、定期的な異動だけでなく自分の可能性を広げていける機会があるのでぜひこういった制度を活用してほしいですね。

編集部

民間企業で市役所とは違う仕事の視点を身に付けることはもちろん、自分のやりたいことを見つけることにもつながるとても良い制度だと感じました。藤沢市役所には、そこで得た自分のやりたいことを実現していける環境があるのも素晴らしいですね。

自分の経験を活かしつつ、新たな経験ができるのがやりがい

編集部

採用についても伺います。民間企業から市役所への転職を考えている読者も多いと思いますが、民間企業を経験しているお二方だからこそ感じる、藤沢市役所での仕事のやりがいを教えてください。

上野さん

市役所が民間企業と違うところは、かなり幅広い仕事ができるところです。民間企業の場合部署が変わることはあっても基本的に業態は同じですが、市役所では本当に他分野で経験を積むことができます。それがやりがいにつながる部分はあるのではないでしょうか。

逆にいうと、経験を積むだけでなく自身の経験をいろいろな場面で活かすこともできるということです。転職を考えている皆さんのそれぞれの経験も、藤沢市役所で必ず活かせる場があると思います。

本間さん

民間企業への出向制度を取り入れているように、民間企業で働いたからこその経験を活かせる場が藤沢市役所にはあります。例えば私や上野は営業職で多くの方と接してきた経験を持っているからこそ、市民の方に対する接し方にもそれを活かせているなと感じます。

中途入社だからこそ市役所とは違う視点を持って新しい風を吹かせていくことができますし、藤沢市役所にもそれを拒絶せずに柔軟に受け入れていくカルチャーがあります。そこは民間企業を経験した上で藤沢市役所で働く大きな魅力ですね。

藤沢市の未来を良くする「変革」に挑める人を歓迎

編集部

最後に、記事を読んで藤沢市役所に興味を持った読者の方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

本間さん

市役所への転職を考える方というのは、「安定」を重要視している方が多いのではないかと思います。私もそうでした。しかし藤沢市役所に入って働く中で感じるのは、安定というのは変革・チャレンジの上にあるということです。

社会が目まぐるしく変化している中で、昔と同じことをやり続けているだけでは絶対に安定することはできません。安定しているのは、チャレンジしているからなんです。だからこそ藤沢市役所が持っている従来の考えや価値観、やり方と違うものを持っている方には、ぜひそれを武器にして挑戦してほしいと思います。

民間企業からの転職の場合、事務職だけでなく技術職も多くなっています。土木や建築、電気関係など、ご自身の専門的なスキルを活かして働きたいという方からもご応募をお待ちしています。

上野さん

本間の言うように、「変革」というのは藤沢市役所における重要なキーワードです。それこそ市役所でお酒が飲めるイベントのような、これまでにないような新しいことに挑戦できるのは藤沢市役所の強みだと思っています。10年後、20年後、100年後の藤沢市をより良くしていくために一緒に仕事ができればと思っていますので、変革性を持った方はぜひご応募ください。

編集部

「公務員=安定」というイメージがある中で、安定のためには変革が欠かせないという言葉には気づかされるものがありました。変革を大切にする姿勢を体現するように、次々と新しい挑戦を続けている藤沢市役所さんであれば、これまで培ってきた自身の経験を活かしつつ、さらに多面的な経験を身に付け成長していけるのではないかと感じました。

本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

■取材協力
藤沢市役所:https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/
採用ページ:https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/syokuin/saiyouannai.html