働き方に関するさまざまな取り組みを実施する企業にインタビューするこの企画。今回は、三井物産グループのICT領域を担い、国内・海外問わず幅広いフィールドでDX推進事業などを展開している三井情報株式会社にお話を伺いました。
三井情報株式会社とは
▲三井情報は、半世紀を超えるICT事業のナレッジをつなげ、未来をつくるという理念を持つ(採用ページから引用)
三井情報株式会社は、『ナレッジでつなぐ、未来をつくる』をパーパスに掲げ、ICTを基軸とした事業を展開しています。
三井物産の情報システム部門が独立して発足以来、半世紀にわたり培った技術や知見を活かしながら、お客様と共に社会課題の解決や新たな価値の創出に取り組んでいます。
会社名 | 三井情報株式会社 |
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住所 | 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー(本社) 東京都中野区東中野2-7-14(東中野オフィス/先端技術センター) |
事業内容 | ・ITマネジメントサービス及びコンサルティング ・システムインテグレーション ・ITインフラ構築及びサービス ・クラウドソリューション ・情報通信機器、エレクトロニクス関連製品及び産業装置の提供 |
設立 | 1991年6月 |
公式ページ | https://www.mki.co.jp/ |
働き方 | テレワーク・オフィス出社のハイブリッド フレックスタイム勤務制度(コアタイム10:00-15:00) |
三井情報株式会社は現在、社員一人ひとりが主体的に働きキャリアを形成していく“キャリアオーナーシップ”を推進中です。その取り組みは、「キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2023」「HRアワード 2023」の各賞(※)で表彰されるなど、対外的にも高く評価されています。
(※)各賞の詳細
キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2023:パーソルキャリア株式会社が運営。個人と組織の持続的な成長に取り組む企業を表彰している。
HRアワード 2023:厚生労働省の後援のもと、日本の人事部が運営。人や組織に関する優れた取り組みを実施する企業を表彰している。
今回は、そんな働き方に関する各種事例や「人が集う」オフィスの工夫、充実したサークル活動に代表される独自のカルチャーなどについて、人事および広報の部署に所属されている皆様にお話を聞かせていただきました。
月間平均労働147時間!勤務時間の短縮を可能にしたボトムアップ型組織
▲人事企画・管理室の室長を務める根本さん。
編集部
本日はよろしくお願いいたします。初めに、三井情報さんのワークスタイルの特徴についてお話を伺いたいです。1日の勤務時間が7時間15分(法定8時間)と短くされていますが、これはなぜでしょうか?
根本さん
弊社では、所定の⽉間平均労働時間を147時間に設定し、法定の平均162時間より15時間短くしています。
これは、親会社である三井物産に合わせているからです。弊社は、三井物産の情報システム部門が独立した会社であり、⻑年にわたり三井物産の関連システムを請け負っています。そうした経緯から、三井物産の業務時間とあわせた労働時間としています。
編集部
とはいえ、実際に働く時間を制限して業務が回るようにするには、大変な面もあったのではないでしょうか。
根本さん
従来から勤務時間は7時間15分のため、大きな障壁はありませんでした。働く時間を制限した中で、業務を効率よく回すために、社内で「働き⽅改⾰」を始めたところからお話ししていきます。
時代の流れもあって、弊社では2017年に「働き⽅改⾰推進室」を⽴ち上げ、私も兼務で同室に所属していました。一般的には、すぐさまトップダウンで様々な施策を打ち出していくと思うのですが、私たちはそうはしなかったんです。
会社が初めに行ったことは、「残業を少なくしていこう」というメッセージの発信です。それに対して、各部署やチームが反応してアクションを起こし、結果としてテレワークやサテライトオフィスを導⼊したりと、どんどん働き⽅が変わっていったというのが実際の経緯です。
このようにすぐに変化していけたのは、そもそも効率的に仕事をしていきたいという社員間の共通認識があったことと、その当時「働き方改革」プロジェクトを先導していた組織が副社⻑直轄であったので、しがらみなくスピーディーに着⼿していけたのも良かったのだと思います。
編集部
各部署からのアクションとしては、たとえばどのようなものがあったのでしょうか。
根本さん
比較的多かったのは、「会議の時間を短くしよう」という取り組みです。これに関しても、時間を測るなどの手法が先行することはなく、各部署のメンバーが自ら考えて適したアプローチをすることで、自然と達成できています。
編集部
働き方を変えていくというのは全社的なプロジェクトだと思うのですが、それをボトムアップで実施されてきたというところに、三井情報さんのカルチャーがわかりやすく現れていると感じました。
全体の約4割がリモート勤務。育児・介護のサポート制度も
編集部
いま現在の三井情報さんの働き方についてお聞きします。最初に、出社とリモートの比率を教えてください。
根本さん
現在は、リモートワークが約4割、出社が約6割です。全社的なルールは定めていなくて、部署によっては週2回出社を推奨していることもありますし、個人の意思で自由に選択しているケースもあります。
制度としては、サテライトオフィスの利用もできますが、新型コロナウイルスの流行前などに比べると、使用頻度は減っており、自宅・オフィスのどちらかがメインとなっています。
編集部
勤務時間についてはいかがでしょうか?
根本さん
弊社は、10時から15時がコアタイムのフレックスタイム勤務制度を導入しています。定時である9時15分から17時30分(昼休憩1時間)で働く社員も多いのですが、たとえば採用担当者は夕方から夜にかけて面接が入っていたりもするので、そこはフレックスタイム制度を柔軟に活用しています。
編集部
ありがとうございます。その他に、こんな働き方をしているという事例があればお教えいただきたいです。
根本さん
三井情報では申請した上で副業をすることも認めており、以前に比べると、異なる企業で自分の能力を発揮しているメンバーも増えてきています。中には終業後に、同時に4社くらいの仕事を請けている社員もいました。
また、育児や介護をしている社員のサポートについても、近年は力を入れています。短時間勤務や時差出勤、各種休暇など、法で定められた範囲以上に支援できるよう制度を整え、場合によっては実家などに拠点を移して働くこともできます。
編集部
リモートワークやフレックスはもちろんのこと、副業や育児・介護との両立など、さまざまなライフステージの社員に対応できる制度が整っているのですね。
個人が主体的に成長していく「キャリアオーナーシップ」を重視
▲キャリア推進室の室長を務める山田さん。
編集部
先ほどは現在の三井情報さんのワークスタイルについてお聞きしましたが、その根底にある理念をお教えいただけますでしょうか?
山田さん
弊社は2023年4月から第七次中期経営計画がスタートしており、基本戦略のひとつに「人的資本の強化」という項目があります。そこで重視されているのが「キャリアオーナーシップ」という考え方です。
キャリアオーナーシップとは、社員が働きがいを感じながら仕事に取り組み、主体的に成長しキャリアをつくっていくという姿勢を指します。
つまり、組織だけに自らのキャリアを委ねっぱなしにするのではなく、自らの主体的なキャリア形成を通じて、組織に貢献し、個⼈も会社も持続的に成⻑していくことを目指しています。キャリア推進室としても、今このメッセージを強く打ち出しています。
念のため補足すると、キャリアオーナーシップは決して個人のわがままを許容するものではありません。社員⼀⼈ひとりがキャリア形成を通じて最高のパフォーマンスを出そうとする意欲と、会社としても多様な人材が活躍できる場を提供し続けながら、相互成長していくことが必要だと思います。
編集部
キャリアオーナーシップを浸透させるために、どんな取り組みをされているのでしょうか。
山田さん
キャリアオーナーシップ推進としては、働く上での「観・マインド」を醸成するための動画の提供や、社員一人ひとりのより良いキャリア形成を支援する側の上司向けの対話会、全社説明会のほか、キャリアを考えるための外部有識者を迎えたMKIキャリアフォーラム、キャリアデザイン研修等を実施しています。
また、風土醸成に関しては、世良が所属する経営企画統括本部を中心に、全社的なワークショップや周年イベント等、さまざまな試みをしています。「ナレッジでつなぐ、未来をつくる」というパーパス(作成当時はキャッチコピー)を作ったのも、その⼀環です。
編集部
まだ計画の推進中だとは思うのですが、実際に取り組みの効果も現れているのでしょうか?
山田さん
はい。エンゲージメントサーベイ(※)の結果を⾒ても、「個人の尊重」「心理的安全性」「上司の支援」などの項目の肯定率が3年連続で上昇しています。
(※)エンゲージメントサーベイ:従業員のエンゲージメント(組織と個人のつながりの強さ)を数値化して改善するための調査。
これからは、内発的動機である「働きがい」の項⽬についても、より良い結果が得られるようにしたいです。そのために今、⼈事と経営企画が⼀緒になり、新しい施策をいろいろと考えているところです。
キャリアで悩む社員に対して、上長は1on1で丁寧にサポート
編集部
三井情報さんが進めるキャリアオーナーシップについて、もう少し詳しく伺いたいです。たとえば、主体的にキャリアを考えて少し迷ってしまったメンバーに対して、フォローはあるのでしょうか。
山田さん
ありますね。「上⻑が部下のために1on1の時間を確保し、丁寧に対応している」ということが当てはまります。これは、先ほどのエンゲージメントサーベイで高い肯定率が出ているチームの上⻑にヒアリングした結果、わかったことです。
具体的には、毎週チームの全員に1人あたり30分かけて話を聞いていたり、業務以外のことも積極的に話してもらったりしているようです。この工夫についても、人事発信ではなくチームリーダーの取り組みが実を結んだものだと考えています。
私は他社の人事の方とも話す機会もありますが、1on1のカルチャーを醸成させるのはどこの企業でも大変だとおっしゃっていましたね。でも、三井情報ではそれが⾃然発⽣的にできている部署もあります。全部署に1on1のカルチャーが根付くまでは相当の時間を要するかと思いますが、自社に合う形を模索していきたいと思います。
編集部
荒川さんは採用企画室の室長をされていますが、どのように対応されたのですか?
荒川さん
私の場合は、「時間は空けておくので、1on1の設定は個人に任せる」というスタイルですね。スケジュールを公開しているので、メンバーから「7日の15時から予定を組んでいいですか」というような形で連絡が来たら、その時間で実施します。月1回でも2週間に1回でも、タイミングを含めてメンバーの自由です。
1on1では、基本一回30分として業務内容やこれからのキャリアについて、もしくはプライベートのことでも、何でも自由に話してもらいます。普段から雑談はしていますが、あえて時間を区切って会議室を確保して話すことで、新鮮な意識でお互いと向き合うこともできます。
また、実は私自身1on1を受ける側ですが、1on1をお願いする側でもあるんです。同じグループ人材開発部に、社内コーチングをしているメンバーがいるので、月1回ペースで1時間がっちりと話をさせてもらっています。こういう関係性を築けるのが、三井情報の良いところであると考えていますね。
編集部
キャリアを自らで選んでいくといっても、当然ながら相談したいこともありますよね。そういったときに、信頼できる上長に1対1で話す時間をとってもらえるのは、すごくありがたいことだと感じました。
コミュニケーションの中心となる「MKI LOUNGE」
編集部
ところで、本日インタビューをさせていただいている三井情報さんの東中野オフィス9F「MKI LOUNGE」は、すごく開放的で良い雰囲気ですね。社員の方々からはどんな声が届いているのでしょうか?
根本さん
MKI LOUNGEは「リアルコミュニケーション&コラボレーションスぺース」として位置づけており、2020年1月にリニューアルしたものです。社員からの評判も非常に良く、17時30分以降はアルコールフリーなので、時間になると飲食可能なスペースでは缶を開ける「プシュッ」という音が聞こえてきます(笑)。
世良さん
お酒に加えておつまみもあるのですが、利用者からの要望に応えて、少しずつバリエーションも増えてきたような気がします。
実は、ここでのコミュニケーションは、自分のチーム内での親睦を深めるだけではありません。他の部署とのヨコ・ナナメの関係をここで築いているケースもたくさん⾒られます。愛宕オフィスにも同じように、17時30分以降飲食できるスペースがあるので、社員も行き来して交流が深まっています。
山田さん
ついこの前も、3ヶ月間の新入社員研修を終えたメンバーが人事と一緒にここで雑談をしていたところ、まだお互いにあまり知らない技術部門職や営業部門職の社員が集まって盛り上がって、最初のほうは6人だったのが、最終的に20人くらいになっていました。
ちなみに、社内カフェ&バーは「TSUDOI-BAR」(集い場)という名称で、まさにその名前通りに使われていると思います。
編集部
すごく良い名前ですね!「TSUDOI-BAR」はみなさんもよく利用されているのですか?
山田さん
もちろんです。終業後にちょっとお酒を飲みながら会話するだけではなく、仕事について軽い相談をしたいときなどにもよく利用しています。「会議をするほどではないけど、ちょっと意見をもらいたい」「愛宕のメンバーにもモニター越しに軽く見てもらおう」という感じで、ざっくばらんに活用していますよ。
目的に合わせて適したエリアを利用できる。ときにはイベントの開催も
▲「MKI LOUNGE」の各エリアはそれぞれ異なるデザインで、活発なコミュニケーションの源泉となっている。(公式サイトから引用)
編集部
三井情報さんの魅力的なMKI LOUNGEは、社員の方にどのように使われているのでしょうか?
山田さん
愛宕オフィスは⽐較的堅めな雰囲気なので、社内イベントなどを東中野で行うことが多いですね。「Center Court」は、すべてのデスクとチェアを有名アウトドアブランドの製品で統⼀しており、⾃由に持ち運んで動かせるようになっているので、フレキシブルに活用されていますね。
世良さん
先日開催した周年イベントでは、弊社がパートナー契約をしているクリケット女子日本代表とのつながりで、佐野市のゆるキャラ「さのまる」も来てくれたりして、⼤にぎわいでした(※)。社内の懇親会「MKI Fes.」も定期的にやりますので、こういう場をうまく活用してもらえるといいなと思っています。
(※)三井情報株式会社は2019年からクリケット女子日本代表とパートナー契約を締結。一般社団法人日本クリケット協会は栃木県佐野市に本部を置いているため、佐野市とも強いつながりを持つ。
編集部
他には、利用者を過ごしやすくさせるための工夫はありますか?
山田さん
その他には、フロアの照明は色を変えられるようになっています。夜は少しムーディーになったり、イベントのときはパーティーっぽい雰囲気にしてみたりという感じです。
あと、同フロア内にはコンビニが入っているほか、お昼時には別途お弁当の販売もしています。場合によっては、ランチを兼ねて会議の続きをおこなうこともできますね。
MKI LOUNGEは個人のコンディションを整えると同時に、社内・社外を含めてコラボレーションができる空間なので、とにかくオープンに使っていただきたいんですね。今のところ、その試みは成功していると感じています。
編集部
MKI LOUNGEは多くの方たちのコミュニケーションのためのスペースであるとともに、ときにはリラックスし、ときには仕事に集中できる、個人が自分のペースを取り戻すための「サードプレイス」なんですね。
クラブ・サークル活動が盛ん。社内・グループ内の交流が生まれる
編集部
ここで、三井情報さんのカルチャーについて伺いたいです。「三井情報らしさ」が表れているのは、どんなところだと感じていますか?
荒川さん
弊社はクラブやサークルの活動がすごく活発だと思いますね。クラブは20人から、サークルは5人からつくることができて、スポーツ系や文化系など本当に幅広く活動しています。
世良さん
野球部は神宮球場で開催される⼤会への参加もありますし、サッカー部やスキー部も盛んです。また、三井物産グループの会社が会員となっている三栄会という組織があり、定期的に⼤会が開かれているので、社内だけでなくグループ各社との交流も⽣まれています。
編集部
文科系でいうと、どんなものがあるのでしょうか?
世良さん
私はコーチングや英語サークルに参加していますし、ヨガサークルもつくりました。また、「美文字くらぶ」という書道やペン字を習うサークルなど、さまざまなものがあります。
ものづくりサークルでは、「こんなアプリがほしい」「3Dプリンターで○○を作ってみたい」など、みんなの得意を持ち寄って形にすることを楽しんでいます。先日、「TSUDOI-BAR」で会った今年の新⼊社員は、早速ものづくりサークルに⼊ったようで、⾃分が作りたいアプリについて熱くプレゼンしてくれました。
自由にサークルやクラブを設立でき、多くの社員とつながることができるのは、三井情報ならではだと思っています。
「自由」を推奨する会社で、チームとして活躍したい方を歓迎
▲採用企画室の室長を務める荒川さん。
編集部
最後に、三井情報さんに興味を持った方に向けて、メッセージをお願いいたします。
根本さん
弊社は働き方の自由度をどんどん高めるフェーズにあるのですが、そのなかでも毎年増収・増益を続けています。三井物産グループの一員となり「安定」と「自由」のどちらも追求していきたいという方であれば、いきいきと働いてもらえるのではないかと感じています。
山田さん
三井情報ではキャリアオーナーシップの考え方を今後もさらに浸透させていきますし、根本が言うように働き方の自由度が高い会社です。ただ、リモートでも出社でも高い生産性は求められるほか、きっちり成果を上げていくというのは企業に属する社員としては当たり前のことです。
多様な働き方だけでなく、出社時の服装やサークル活動など、弊社は比較的許容範囲が広いと思います。その中で、個人だけでなくチームで連携して働くことができ、「自由には責任が伴う」ということを理解されている方がフィットするのではないかと思います。
荒川さん
採用担当としても、その点は重視しています。キャリアプランも含めて自分の意志で選択していく場面は多いですが、普段の業務では1人だけでおこなう仕事というのはほとんどありません。
チームの規模は部門やその時々によって異なりますが、プロジェクトは複数人で回していくので、チームワークを重視される方と一緒に仕事ができればいいなと思います。こういった弊社の方針やカルチャーに共感していただける方は、ぜひ応募していただければ嬉しいです!
編集部
本日はありがとうございました。
▲お話しいただいた根本さん・山田さん・荒川さん・世良さんと、広報の飯田さん。
■取材協力
三井情報株式会社:https://www.mki.co.jp/
採用ページ:https://www.mki.co.jp/recruit/