Web制作を手がけるNERD株式会社が、あえて「ドライな文化」を推進する理由

注目企業の若手社員の活躍や、ユニークな社内カルチャーについて紹介するこの企画。今回は、Web制作やデジタルマーケティング支援などを行う「NERD株式会社」にインタビューしました。

NERD株式会社とは

2017年創業のNERD株式会社は、企業やサービスのWebサイトの制作や、広告運用やSEO対策を通じたデジタルマーケティングの支援などを行っています。

高い提案力を伴うディレクションを強みとしており、クライアントの課題を解決に導く質の高いアウトプットが評価され、口コミや紹介によって事業を拡大してきました。

会社名 NERD株式会社
住所 東京都墨田区向島1-5-9ブリシア隅田公園503
事業内容 ・WEBサイト制作
・WEBシステム・アプリ受託開発業
・WEBマーケティング支援
・WEBメディア運営
設立 2017年11月
公式ページ https://nerd.co.jp/
働き方 ・オフィスレス
・フルリモート
・フルフレックス

NERD株式会社は創業以来、オフィスレス、フルリモート、フルフレックスを導入しており、社員の自立性を重視するカルチャーが浸透しています。オフィスレス・フルリモート環境は、コロナ禍以前より実施しています。

今回は、NERD株式会社 創業者/CEOの天明ルイス栄一郎さんに、働き方や社風、若手社員の活躍を支える取り組みについて伺いました。

本日お話を伺った方
NERD株式会社の創業者/CEOである天明ルイス栄一郎さん

NERD株式会社
創業者/CEO

天明ルイス栄一郎さん

NERDが口コミや紹介で事業を拡大できる理由とは

NERD株式会社が手がける広告運用サービスを説明する資料
▲NERD株式会社は、Web制作や広告運用など、デジタルの分野でクライアントの課題を解決する事業を手がける。

編集部

まず最初に、NERDさんの事業内容について教えてください。

天明さん

弊社は、大企業から中小企業まで、法人のお客様に向けた3つの事業を展開しています。

まず1つ目の事業がWeb制作で、企業やブランドのWebサイト、広告などをクリックした時に表示されるランディングページ、ECサイトやオウンドメディアの制作などを手がけています。

また、2つ目の事業がスマートフォンのアプリやWebサービスの受託開発、3つ目がWebサイトなどに集客するためのマーケティング支援で、広告運用やSEO施策を行っています。

編集部

NERDさんの企業サイトには、「お金と時間をかけず」に「結果の出る」アウトプットを重視しているという説明がありました。

天明さん

私たちには制作力とマーケティング力、そしてこれまでに500を超えるプロジェクトで蓄積したノウハウがあります。これらをフル活用することで、価格を抑えながら結果が見込める施策を打ち出しています。

満足度の高さを支えるのは丁寧なディレクション

NERD株式会社の広告運用に関する説明資料

編集部

NERDさんは2017年の創業以来、売上を順調に伸ばしていると伺いました。どのような点が成長に寄与しているとお考えですか?

天明さん

弊社は、営業活動ではなく口コミで成長してきました。お手伝いしたクライアント様に「別の企業にもNERDを紹介したい」と思っていただけるような仕事をすることを大切にしており、弊社ではこれを「紹介三昧」と呼んでいます。

結果的に赤字になったとしても、適切な時間や工数をかけてお客様に満足いただけるものを作ることを第一に考えるので、それが評価につながり新たなご依頼をいただけるのだと思います。

NERD株式会社がクライアント向けに作成した、仕事へのスタンスを説明する資料

編集部

クライアントの満足度を高めるために意識していることは何でしょうか?

天明さん

まずは、お客様への提案をしっかり行うことです。例えば、Webサイトの制作をご依頼いただいたとしても、それがお客様の課題解決に効果がないと判断すれば「やめた方が良いです」と正直にお伝えし、別の施策を提案します。

言われた通りに制作するのではなく、本音で話すことがお客様の利益につながり、信頼を生むので、弊社のメンバーは全員このような姿勢でクライアント様と向き合っています。

NERD株式会社の社員がオンラインミーティングで資料を投影しながら発言するようす
▲NERD株式会社の打ち合わせ風景。クライアントにはアウトプットを画面共有しながら丁寧に説明する。

編集部

ディレクションの業務を丁寧に行っているのですね。

天明さん

はい。Webサイト制作の場合、サイトの設計図や文言をお客様が考え、制作会社はデザインだけ行うようなケースも多いのですが、お客様が設計図まで書けるのならフリーランスのデザイナーに依頼すればよく、制作会社は必要ありません。

私たちがやるべきことは、お客様のビジネスをどのようにWebサイトで表現するかを考え、提案し、実現することです。そのためには、ディレクターがお客様のお話をしっかり聞いて咀嚼し、サイトのユーザビリティを考えながら最も理想的なものを作り上げる必要があります。

ディレクションがしっかりしていないと、デザイナーやエンジニアにしわ寄せが行き、いい加減なアウトプットになってしまいます。

正社員・業務委託のメンバーが一丸となって内製化することで品質を保証

NERD株式会社が作成したWebサイトの設計図
▲NERD株式会社は、クライアントの課題を解決に導くようなWebサイトの設計を意識している。

編集部

NERDさんが、そのほかにアウトプットについて意識していることはありますか?

天明さん

品質のコントロールのため、業務の内製にこだわっていて、原則、正社員のメンバーで、ディレクションやデザイン、開発、広告運用等の業務に対応しています。弊社でも、バックオフィスを中心に、なかには業務委託で働くメンバーもいますが、兼業ではなく弊社の仕事をメインにしている人が多く、NERDの一員という意識で仕事をしています。

制作会社や広告代理店で、受注だけして大部分を下請けに依頼する企業も多いなか、私たちは基本的に全て自分たちで制作するので、品質に責任が持てるのです。

お客様とのプロジェクトを通じて当社が行うアウトプットは、どれも、私たちとしては「普通に真面目にやっているだけ」という感覚ですが、このような基本的なことが会社の信頼性に大きく関わってくると思います。

編集部

常に真摯な姿勢で仕事に向き合うことは、当たり前のようで難しいものです。NERDさんはそれができているからこそ、口コミで評判が広まり新しい依頼につながっているのですね。

直接会わなくても成長できる。NERDのフルリモート&フルフレックス

編集部

NERDさんは、創業当時からフルリモートとフルフレックスを取り入れていると伺いました。このような働き方を導入する理由は何でしょうか?

天明さん

フルリモートにしているのは、事務所にかかる費用が高いことに加え、オフィスを構える必要性を感じなかったからです。

これは私自身の経験なのですが、学生時代に趣味のオンラインゲームで、顔も見たことがない人たちとチームを作って全国大会で2位になったことがあるんです。その時に、関係を築いたり目標に向かって力を合わせたりすることは、実際に会わなくてもできると実感しました。

海外の大手IT企業の間ではオフィス出社に回帰する動きもありますが、弊社は今後もオフィスレスのまま、フルリモートでどこまで成長できるかチャレンジしたいと思っています。

編集部

フルフレックス勤務は、どのように運用していますか?

天明さん

必要であれば土日も含めて好きな時間に働けるフルフレックス(その代わり振休や勤怠を自身で調整)を導入しています。過度な残業はないので、社員はそれぞれの仕事の状況や都合に合わせて柔軟に勤務しています。

編集部

このような働き方を取り入れる際に意識していることはありますか?

天明さん

フルリモート、フルフレックスというと自由なイメージが先行しますが、その分パフォーマンスはしっかり求めるので、貢献していないと感じられる人にはしっかりと指摘します。

また、このような働き方は、合う人と合わない人に分かれると思います。人と直接会わない環境が苦手な人や、自分から能動的に動くタイプでない人だと、うまく馴染めない可能性があります。そのため、弊社では採用の際に働き方を説明して、自分に合うかどうかイメージしてもらうようにしています。

編集部

どのような人がNERDさんの働き方と相性が良いと思いますか?

天明さん

ゲームなど、時を忘れるくらい集中できるものがある人や、フリーランスにはなりたくないけれど会社に管理されるのも好きではないという人は、フルリモート、フルフレックスの環境でもパフォーマンスを発揮できると思います。

モチベーションは自分で管理。重視するのは社員の「自立性」

NERD株式会社の社員5名が、合宿しながら課題に取り組むようす

編集部

フルリモートを導入するNERDさんですが、社員同士のコミュニケーションをどのように図っているのでしょうか?

天明さん

弊社には、アメリカ的でドライなカルチャーがあります。仕事に雑談は必要ありませんし、社員のモチベーションコントロールは会社ではなく社員自身がするものだと考えています。

編集部

コミュニケーションも、モチベーションも、会社に何とかしてもらうのではなく自分で責任を持つということですね。

天明さん

はい。私がもし社員から「モチベーションが低いです」と言われたら、極論ではありますが、無理して当社で働く必要はなく、選択肢として辞めても良い、と考えるタイプです。

私は、メンバーに一生NERDで働いてほしいとは思っていませんし、今はそのような時代でもありません。ただ、弊社で働くからにはスキルアップし、キャリアが広がったと感じてもらいたいので、社員には自ら目的意識を持って仕事に臨んでほしいと願っています。

編集部

ドライなカルチャーと聞くと、気を遣うことなく働ける職場をイメージしますが、実際はいかがですか?

天明さん

そうですね、根回しのようなものは存在せず、効率的に働ける環境だと思います。例えば会議をセッティングする場合、メンバーのスケジュールを見て空いてるタイミングがあれば、事前に承諾を得ることなくミーティングを設定することができます。

食事会や飲み会も、「参加したい人だけが参加する」というのが弊社の共通の考えなので、強制的な雰囲気は全くありません。

ただ、実際に会うことでコミュニケーションが深まるという考えは私も持っているので、新型コロナウイルスが流行する前は1泊2日の合宿を企画していました。新規事業を考えたり、性格診断を通じてお互いを理解してもらう機会として活用していましたが、こちらも希望する人だけ参加していました。

編集部

何事も自分の意思で判断して働きたいという人には、NERDさんのようなカルチャーが合っているのではないかと感じました。

自ら考えアウトプットすることが若手活躍の第一歩

NERD株式会社の社員3名が、合宿しながら課題に取り組むようす

編集部

ここからは、NERDさんで活躍する若手社員についてお伺いしたいと思います。まず、現在の従業員数や平均年齢を教えてください。

天明さん

正社員が約20名で、アルバイトや業務委託のメンバーを入れると40〜50名の組織です。正社員の年齢は、30歳手前が多いです。

編集部

正社員と業務委託で、求めるものは異なりますか?

天明さん

業務委託やアルバイトのメンバーに対しては300〜400項目のマニュアルを作成し、タスクをしっかりこなすことを求めます。一方、正社員には責任や権限を持ちながら自分の仕事を作り上げてほしいので、なるべく雑務を与えないでクリエイティブな業務に集中できる環境を提供しています。

編集部

正社員には自分で仕事を作ることを求めるということですが、若手社員であっても同じですか?

天明さん

はい。会社に勤めるメリットとして、経済的な面以外に挙げられるものは「成長」です。成長とは、学んだことを仕事で実践し、形としてアウトプットすることで得られるものです。

また、アウトプットとは、責任を持って自分で考え、行動した先にあるものだと思いますので、若手であっても責任ある仕事を任せています。

例えば、歯科医院からマウスピース矯正の問い合わせを増やしたいという相談があったとしたら、予算を考慮しながらどのような施策を行えば良いのか、自分なりに一から考えて提案してもらいます。もちろん、周りのメンバーは質問されれば答えますが、まずは自分で考えて動くことで成長の実感や手応えを得てほしいと思っています。

編集部

経験が少ないうちは失敗することもあると思いますが、会社としてフォローはするのでしょうか?

天明さん

まず、自分がアウトプットしたものであれば、うまくいかなかった場合に「どこが悪かったのか」、「どのように改善したら良いのか」を自分ごととしてしっかり考えることができるため、失敗を成長につなげやすいと思います。

また、社員には失敗を恐れず挑戦してほしいので、「失敗した場合のリスクは会社が負う」という姿勢を明確にしています。誰かが失敗した場合、その担当者を指名したのは上長であり、最終的には代表の責任です。メンバーが失敗をすれば私が自らお客様のところに出向いて謝罪しますし、リカバリーの作業も担当者だけに任せず一緒に取り組みます。

編集部

成功も失敗も思い切り経験できる環境があると、それだけ成長のスピードも早くなりそうですね。

元エンジニアがマーケターに。入社2年目でチームリーダーに抜擢

編集部

NERDさんで活躍している若手メンバーの具体例がありましたら、教えてください。

天明さん

広告運用部門では、入社2年目の27歳の社員がチームリーダーを務めています。

その社員は元エンジニアで、広告運用は未経験だったのですが、マーケティングに興味があるということで弊社のドアを叩いてくれました。考える力があり、自分のやりたいことが明確なので必ず活躍できると思い、どんどんお客様の前に出てもらいました。

彼は元々海外で育ったため、会話には全く支障がないのですが、本来の頭の良さを発揮するためのプレゼンテーションがあまり上手ではないという印象がありました。そこで、お客様と会う時は事前に台本を用意するようアドバイスしたところ、トークに対する苦手意識も減ったようです。高い広告効果を出せるプロのマーケターとして頼れる存在となり、今ではお客様からも信頼がとても厚いメンバーとなりました。今後、まもなくマネージャーに昇格する予定です。

編集部

入社2年目の社員であっても、管理職に抜擢するのですね。

天明さん

はい。部下を抱えるマネジメントの仕事を通じて、単純に案件をこなすだけではない新しい経験をしてもらい、さらに成長してもらいたいと思っています。

NERDの「プロセスより成果を重視する」評価制度

編集部

NERDさんの評価制度についても教えてください。

天明さん

売上目標を達成するために、部署や個人ごとにやるべき目標を設定し、どのくらい実現できたかに基づいて評価しています。

広告運用の職種だったら、どれだけの案件を獲得するか、どのくらい高い運用成果を出せるかを意識しますし、デザイナーやエンジニアのようにダイレクトに売上に反映されない職種の場合は、デザインのクオリティを上げたり、開発スピードを上げたりすることで受注単価の底上げなどを目指します。

編集部

成果に至るまでのプロセスは評価しますか?

天明さん

私たちは、プロセスをあまり気にしません。頑張っても成果が出なかったからといって、全てを否定するわけではありませんが、失敗したのに「プロセスは良かった」と評価するようなこともしません。

リモートワークなのでプロセスを管理しづらいことも理由ですが、成果を出すからこそ売上が上がり、その結果として新しいことにチャレンジできる余裕が生まれ、社員の成長にもつながります。そのため、弊社ではプロセスより成果にこだわります。

編集部

プロセス評価のようなあいまいな評価基準を設けないことで、全員が成果という同じ目標に向かって仕事をすることができるのですね。

「プレゼン練習会」で提案力や言語化する力を鍛える

NERD株式会社のプレゼン練習会で使用した、移住をテーマにした資料
▲NERD株式会社の「プレゼン練習会」では、社員が作成した資料を使いながら1分間のプレゼンを行う。

編集部

社員のスキルアップを促すための研修や制度はありますか?

天明さん

代表的な研修として、「プレゼン練習会」があります。日本人はプレゼンがあまり得意ではないと言われていますが、私たちはディレクションに強みを持つ集団なので、社員の提案力を伸ばす取り組みに力を入れています。

編集部

具体的にどのような練習をするのでしょうか?

天明さん

毎月、月末に全員が集まるミーティングがあるのですが、そこで毎回数名ずつ、気に入った商品やお題に沿った内容等のプレゼンを10分〜15分程度行い、それに対して全員がコメントをします。

プレゼンの習慣をつけることで抵抗感をなくし、自信を持って話せるようになることが目的なので、テーマ設定は自由です。実際、デザインの話から、ブラウザのクッキーの技術的な話や自分の好きなカレーの話まで、さまざまな内容でプレゼンを行っています。

NERD株式会社のプレゼン練習会で使用した、ポケモンをテーマにした資料
▲NERD株式会社のプレゼン練習会や勉強会のテーマは、多岐にわたる。

天明さん

プレゼン練習会ではコメントも重視しており、「良かった点」と「こうすればもっと良くなると思う点」を必ず発言するというルールがあります。弊社では、否定から入るのではなく必ず良かった点を伝えた上で、改善すべき点を指摘する「イエスバッド法」を推奨しているので、このようなルールを設けています。

また、自分が感じたことを言語化したり、物事を多角的・客観的に見て論理的に考えるクリティカル・シンキングを養う場にしたいので、コメントで「特になし」と言うのはNGです。

編集部

プレゼン練習会を通じて身につけたものは、クライアントへの提案だけでなく、仕事のさまざまな場面で役に立ちそうですね。

NERDは責任ある仕事を通じて成長したい挑戦者を歓迎

NERD株式会社の合宿で社員9人が集合するようす

編集部

最後に、この記事を読んでNERDさんのお仕事に興味を持った読者の方にメッセージをお願いします。

天明さん

労働は面倒くさいものだから、できればしたくないですよね。でも、働かないと生きていけないという現実があるなかで、どうせやるなら少しでも自分が面白いと思えること、やってよかったと思えることをした方がいいと思っています。そして、その先には「成長」があると思っています。

弊社では、年齢や社歴、学歴、国籍に関係なく、活躍のチャンスがあります。やりたいことがあるのに今の職場では責任を持たせてもらえない人や、自分のアイデアを試せる場所を探している人は、弊社のような環境なら思い切り挑戦できると思います。

同席された末廣さん

私は大企業での勤務経験があり、出社が当たり前という生活を10年近く続けていました。その当時と比べると今の働き方は180度違います。

天明が話したように、相性の良し悪しがあると思いますが、合う人にとっては居心地の良い環境ですし、自分の裁量で責任ある仕事をしたい方には最高の職場だと思います。

編集部

今回のインタビューでは、NERDさんのカルチャーと、その根本にある考え方について率直にお話ししていただきました。社員の自立性を重視する職場ですが、失敗した時は会社が責任を取るというお話にもあったように、社員の成長を見守り助ける温かさがあると感じました。

本日は、ありがとうございました。

■取材協力
NERD株式会社:https://nerd.co.jp/
採用ページ:https://nerd.co.jp/recruit