「オーラルヘルスへのアクセスを向上」。PHILDUCT(フィルダクト)は新たな発想で歯科業界を変革する

企業が展開する魅力的な事業やその成長、インターンの内容についてお話を聞く本企画。今回は、旧態依然とした歯科業界の中で、3Dテクノロジーを用いた歯科矯正サービス「DPEARL(ディパール)」により、新しい価値の創造に挑戦する株式会社フィルダクトを取材しました。

「東京医科歯科大学発ベンチャー」に歯科分野で第1号認定されたヘルステックスタートアップ

「東京医科歯科大学発ベンチャー」の式典での株式会社フィルダクト代表取締役CEOの金子奏絵さんと取締役COOの春名航佑さん
▲フィルダクトは「東京医科歯科大学発ベンチャー」に認定されている

株式会社フィルダクトはデジタル化が進む歯科業界で、近年関心が高まっているオーラルヘルス(口腔の健康)を通じた予防医療に取り組むスタートアップ企業です。歯科技工士の資格を持つ金子代表と、医学部など医療系出身のBizdevメンバーなどが中心となり、3Dテクノロジーを用いた歯科矯正サービス「DPEARL」を開発・運営しています。

また2023年3月には、東京医科歯科大学の研究成果や人的資源などを活用し起業したベンチャー企業の中で、歯科分野での第1号として「東京医科歯科大学発ベンチャー」に認定されています。

会社名 株式会社フィルダクト
住所 東京都千代田区神田淡路町1-15-3西堀ビル2F
事業内容 ・DPEARLの企画・運営・開発
・デジタル支援、歯科矯正・オーラルヘルス推進事業
設立 2018年3月
公式ページ https://philduct.com/

今回は株式会社フィルダクトが展開する事業やインターンの詳細、採用のポイントについて、代表取締役CEOの金子奏絵さんと、取締役COOの春名航佑さんにインタビューしました。

本日お話を伺った方
株式会社フィルダクト代表取締役CEOの金子奏絵さん

株式会社フィルダクト
代表取締役CEO

金子 奏絵さん

株式会社フィルダクト取締役COOの春名航佑さん

株式会社フィルダクト
取締役COO

春名 航佑さん

3D技術を活用した歯科矯正サービス「DPEARL」を展開中

株式会社フィルダクト公式サイト内のDPEARL説明箇所
▲3Dプリンターでつくられた透明マウスピースを活用した歯科矯正サービス「DPEARL」(公式サイトより引用)

編集部

まず最初に、フィルダクトさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

金子さん

私たちは、日々進歩するテクノロジー/技術や現代の生活者の価値観/ライフスタイルに寄り添い、歯科業界に新しい価値を創造するヘルステックカンパニーです。私自身が東京医科歯科大学修士課程に在学していた2018年3月に設立し、2019年11月から3Dテクノロジーを用いた歯科矯正サービス「DPEARL」を展開しています。

DPEARLは、3Dプリンターでつくられた透明マウスピースと、独自のスマートフォンスアプリ「DPEARL support」を使って、様々な症例に対応する歯科矯正サービスです。

まず、私たちと提携する症例経験豊富な歯科医師とのカウンセリングから始まり、歯科医師からユーザーである患者さまに矯正プランが提示され、納得いただければ治療へと進みます。治療で使用するマウスピースは、国内の矯正を専門とする歯科技工士によりつくられたものです。

治療中は月1回の通院があり、歯科医師に相談しながら進めていきます。遠方にお住まいの患者さまには歯科医師の判断によりオンラインでも対応しています。DPEARL supportを使って治療進捗を管理したり、困りごとに対応するチャットサービスを利用することもできます。

また、歯科医院および医師向けの事業として、DXツールの導入により歯科業界内の提供プロセスを改善するサービスも展開中です。顧客や予約、カルテの管理に加えて、歯科技工の領域とも連携できるワンストップのアプリケーションを開発・提供しています。

編集部

公式サイトを拝見しましたが、とても洗練され親しみやすいイメージでした。DPEARLのサービスを使ってみたいと思われる方も多いと思います。

歯科矯正の業界構造のアップデートをめざして起業

ピッチに登壇する株式会社フィルダクト代表取締役CEOの金子奏絵さん

編集部

続いて、金子さんがフィルダクトを設立された背景を教えていただけますか。

金子さん

「日本の歯科業界とそのビジネス構造を変えたい」という想いがあったからです。

私は、歯科技工を学んでいた大学時代にもどかしい思いをしていました。歯並びに問題があると、虫歯や歯周病の疾患につながるという論文は多数ありますが、それが広く認知されておらず、疾患の予防の社会実装につながっていませんでした。

また、歯並びの悩みをコンプレックスとして抱える方もいるなど、歯並びの問題は人々のイキイキした生活に悪い影響を及ぼす可能性が高いというのに、治療している人が少ないという事実もあります。

国民の50%に歯並びの改善が必要だといわれている日本での未受診率は、中国やアメリカと比較しても、高い部類に属しています。

編集部

なぜ、日本では歯科矯正を治療する人が少ないのでしょうか。

金子さん

日本で歯科矯正が進んでいない理由は「高額だから」そして「治療期間が長いから」というものが挙げられています

事実、現在日本において歯科矯正にかかる費用の相場は80万円から120万円と高額で、昔と変わらないアナログな方法でマウスピースなどの商品を取引しているため、治療期間も長引く傾向があります。

編集部

確かに歯科矯正は保険が使えないため高額で、何年も歯にワイヤーを固定するイメージがありますね。

金子さん

そこで私が立ち上げたのがDPEARLです。3DプリンターやCADといった現代の最新テクノロジーを活用して透明なマウスピースをつくり、「歯科矯正をしたい」と思っている多くの方々に、最適な治療やカウンセリングを届けています。

DPEARLであれば、費用相場のおよそ半額ほどでの治療が可能です。サービスの導入によって歯科医院のDX化・効率化が促され、矯正治療のコストダウンと治療期間短縮が図られています。DPEARLによる歯科矯正は、歯並びに悩んでいる方の身近なものになっており、予防歯科や予防ヘルスケアにも大きく寄与しています。

編集部

DPEARLで、歯科矯正を取り巻くシステムを大きく変えたのですね。歯並びに悩んでいる多くの方に知ってほしいと感じました。

ローンチから2年でLINE公式アカウント登録1万人を突破。成長の秘密は?

株式会社フィルダクトの矯正歯科サービスDPEARLを効果的に使用するための専用アプリDPEARL supportの画面
▲矯正治療の期間中にモチベーションの維持・向上を手助けする専門アプリ「DPEARL support」(公式サイトより引用)

編集部

DPEARLが多くの患者さまや歯科医師に興味を持たれ、受け入れられているのはなぜでしょうか。

金子さん

取り外しができて装着時に目立たない、透明マウスピースを使う歯科矯正の手法自体は、20年以上前からありましたが、その頃はまだ患者さまにとっては高額なものでした。そこでDPEARLは、テクノロジーを活用するとともにビジネス構造そのものを変えることで、リーズナブルな費用でのサービス提供を実現しました。

加えて、ほかのマウスピース矯正に比べて、全顎矯正にも対応できるなど適用症例が幅広いことや、アプリによるサポートサービスが充実していることも、私たちが選ばれている理由の一つです。

サービスの申込窓口であるLINE公式アカウントは、スタートから2年で登録者数が累計1万人を超えました(2022年3月時点の数字)。提携歯科医院である「DPEARL Spot」も、全国のいろいろな地域でサービスを利用していただくべく拡大しています。

編集部

DPEARL専用のアプリ「DPEARL support」には、どのような特徴がありますか。

金子さん

「DPEARL support」には、初診から治療終了まで患者さまに伴走するような機能が詰め込まれています。スマホで撮影した口元の画像を歯科医師へアプリ上で提出し、現在の状態をチェックしてもらえる機能や、教育コンテンツもあります。

矯正治療中には、1日20時間以上マウスピースを装着する必要があるのですが、うっかり装着を忘れてしまうこともあるかと思います。できるだけそういったリスクを最小限に抑えつつ、アプリを通して楽しみながら矯正期間のモチベーションを高められるようさまざまな面からサポートする機能が好評です。

編集部

治療中の患者さまを応援してくれるアプリですね。これがあれば、治療終了まで頑張れそうです!

リクエストに応えて、提携歯科医院を増やし全国展開を目指す

株式会社フィルダクトの矯正歯科サービスDPEARLを紹介するページに掲載されているユーザーを紹介するページ
▲使用感などユーザーの声を多数紹介(公式サイトより引用)

編集部

DPEARLを利用している患者さまにはどのような方が多いのでしょうか。

金子さん

20代から40代が中心で約70%が女性です。地方にお住まいの方々の登録も多く、遠方から通院くださっている患者さまもいらっしゃいます。

編集部

患者さまからはどのような声が届いていますか。

金子さん

ご満足の声を多くいただいており、中には「DPEARLのデザインや世界観が好きです」という感想もいただけて、とても嬉しいですね。提携歯科医院が近隣にない方からは、「提携先であるDPEARL Spotをもっと増やしてほしい」というリクエストもいただいています。


LINE公式アカウントには、提携歯科医院を設置してほしいエリアを具体的に回答いただく項目もあり、これまでに100件以上のエリア拡大リクエストが届いています。

提携歯科医院は関東を中心に、東北・東海・関西などのエリアにありますが、対象エリアとしても医院数としてもニーズに追いついていないのが現状です。今後は拠点を全国規模でさらに増やして、事業拡大に取り組んでいきたいと考えています。

編集部

地方の登録ユーザーは、近隣に提携歯科医院ができるのを待ちわびているでしょうね。全国的なニーズに応えて、拠点拡大が進んでいきそうですね。

平均年齢は25歳。裁量を持って歯科医院とも商談に臨む

編集部

フィルダクトさんで働かれているのは、どのようなメンバーですか。

金子さん

医療やヘルスケア領域に興味と社会意義性を感じている、とても優秀なメンバーが集っています。平均年齢は25歳くらいです。

編集部

メンバーの皆様は、フィルダクトさんのどのようなところに魅力を感じて働いていると思われますか。

金子さん

年齢やキャリアに関係なく、裁量が大きい業務を任されるところでしょうか。メンバーには現在のスキルレベルより、もう一段上のところに取り組んでもらうように心がけています。短期的に成長し、それを自ら実感できる環境に魅力を感じてくれているのではないでしょうか。

編集部

若手メンバーの方はやりがいのある仕事を任されていると思うのですが、具体的な内容をお教えいただけますか?

金子さん

例えば、各歯科医院向けにサービス導入を提案する業務があります。

日本の歯科業界には新しい変化が起きづらい側面があり、そこに若手のセールス担当が新規事業を携えてやってきても「大丈夫?ビジネスの話ができるの?」と言われてしまうケースも少なくありません。

しかしながら、なかには私たちの事業およびプロダクトそのものにフォーカスしてフラットに接してくださる歯科医師さんや歯科技工士さんも大勢いらっしゃいます。私たちはそういった方々との対話を重ねて、提携という形で手を組みながら、フィルダクトならではの柔軟さと行動力を最大限に活かして事業を展開しています。

編集部

なるほど、若手の方もDPEARLのサービス拡大に直接かかわっていらっしゃるのですね。

インターンから社員へ。理由は任される仕事が面白いから

株式会社フィルダクト取締役COOの春名航佑さん
▲元々はフィルダクトでインターンとして働いていた春名航佑さん

編集部

取締役COOの春名様は、元々はインターンとしてフィルダクトさんで働いていたそうですね。

春名さん

私は医学部在学中から、医療・ヘルスケア領域で事業づくりに自分自身で挑戦してみたいと思っていたので、当初フィルダクトでは「半年くらい修行できればいいかな」くらいの気持ちでインターンをスタートしました。

何でも学ぶというスタンスで、社員と同じ稼働範囲とスタイルでさまざまな業務を任せてもらって取り組んでいくうちに、フィルダクトの事業が自分のやりたいこととリンクしていて、心の底から面白いと日々感じるようになりました。

ちょうどそのタイミングで代表の金子から、社員登用とともにCOOのポジションを提案されたので、思い切って挑戦する意思決定をしました。

編集部

春名様がフィルダクトさんの社員になると意思決定をされるときに、一番の決め手となったのはどのようなことでしたか。

春名さん

金子が描いているビジョンが大きくて、それは私が自分ひとりで見ている世界とはやや異なるものではあるのだけれど、その大きな絵を描いて実現していく過程を一緒に歩んでみたいなと感じたことです。きっと自分が手伝っていくうちに「何か新しいワクワクすることが次々と起きるんじゃないかな」という直感もありました。

編集部

春名様のほかにも、インターンからそのまま社員として入社されたメンバーがいらっしゃるそうですね。仕事を任されること、挑戦することを面白いと感じられる方には刺激的な職場ですね。

顧客対応も行うフィルダクトのインターン。裁量が大きい仕事を経験

編集部

フィルダクトさんではどのような方をインターンに採用されているのでしょうか。

春名さん

まずは、どんなことをやりたいのか、どんな条件で稼働したいのかといったポイントを候補者のみなさんからしっかりお聞きします。私たちがお願いしたい業務もお伝えして、お互いに納得できた場合に採用に向けてやりとりを進めていくイメージです。

編集部

フィルダクトさんがお願いしたい仕事とはどのようなものですか。

春名さん

インターンというと、一般的には社員のアシスタント業務がメインで顧客とは直接やりとりすることがほとんどないというケースが多いかと思うのですが、私たちの場合は、歯科医師や歯科技工士と対面形式で行う業務や、サービスを利用する患者さまとのコミュニケーションも任せています。当社のインターンの特徴ですね。

編集部

インターン生も社員の皆様と同じ業務を担い、貴重な経験ができるのですね。

任せたいポストは複数あり。採用では「挑戦する人」かどうかを重視

株式会社フィルダクト代表取締役CEOの金子奏絵さん
▲採用のポイントを教えてくれた金子奏絵さん

編集部

フィルダクトさんでは採用の際にどのようなポイントを重視されていますか。

金子さん

挑戦してきた経験の有無を重視しています。在りたい姿に向け自分なりに頑張った、高い目標を掲げてクリアしたという方がフィットするようなイメージです。そうした過去の経験や結果を活かし、これからさらに自分自身をアップデートしていきたいと考えている方とぜひ一緒に働きたいです。

「とにかくベンチャーに飛び込みたい」という気概のある方も大歓迎です。歯科業界に風穴を開けていく私たちとしても、一緒に事業を加速させられるメンバーが増えるのは嬉しいことです。20代後半が推進する若いチームの力で挑戦し、歯科業界に新しい価値を創造するという目標を成し遂げたいですね。

編集部

市場が大きく、またレガシーな部分が残る業界に、ベテランだけではなく若い力で挑もうとされているのですね。

金子さん

なので、すごくやりがいがあると思います。歯科医院のほかに、大学との折衝や教授とのやりとりなど、事業拡大をけん引するフロントでさまざまなステークホルダーと関わりながら活躍できますし、マーケティング・ディレクション(PM)・提携クリニックとのコミュニケーションを統括するポジションもありますので、挑戦したいと思われる方にはぜひご応募いただきたいです。

編集部

フィルダクトさんでは、インターン生でも中途入社の方でも、早いうちから裁量が大きな仕事に携わり、自身を成長させていることがわかりました。

本日はありがとうございました!

■取材協力
株式会社フィルダクト:https://philduct.com/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/company_917215/about