魅力ある働き方をテーマに、様々な企業の取り組みを紹介しているこの企画。
今回は、国内で培った商業印刷のノウハウをもとに海外拠点(ベトナム・中国)でも事業展開する「昭栄印刷株式会社」にお話を伺いました。
昭栄印刷株式会社とは
▲販促企画・出版・拠点設立支援でアジア全域にサービスを提供している(引用元:公式サイト)
昭和34年に設立した昭栄印刷株式会社は、商業印刷や雑誌関連の印刷物を得意としている企業です。もともとは本社のある新潟県で、地元に密着した印刷会社として官公庁からの案件を主とした仕事を担っていましたが、現在は東京・大阪・ベトナム・中国に拠点を持ち、活躍の場をアジア全域へと拡大しています。
また近年は新規事業を展開する「事業開発推進部」を設け、印刷物だけでなくデジタルサイネージやウェブサイトの制作などを手掛けているほか、イベントの請負や実施などにも挑戦しています。
会社名 | 昭栄印刷株式会社 |
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住所 | 新潟県新発田市住田97 |
事業内容 | 印刷物全般/企画・デザイン・見本帳制作/web・モバイルサイト制作/システム構築 |
設立 | 昭和34年2月1日 |
公式ページ | https://www.shoei-p.jp/ |
今回は、昭栄印刷株式会社の田澤さんと本間さんに、育休取得率・復帰率が男女ともに100%であること、女性が働きやすい環境がどのようにつくられているのかなどについてお話を聞かせていただきました。
海外にも拠点を構え印刷事業を展開。新事業にも挑戦
▲印刷事業を軸に販促、企画、IT分野、海外拠点支援を行っている(引用元:公式サイト)
編集部
まず最初に、昭栄印刷さんの事業について教えていただけますか?
田澤さん
私たちは、雑誌やパンフレットの作成のほか、デジタルサイネージやウェブサイト、アプリ制作などの企画・デザインを通してお客様の販促活動を支援している印刷会社です。国内では新潟・東京・大阪、海外ではベトナム・中国に拠点があり、アジア全域へサービスを提供しています。
ベトナムでは、手しごとでしか実現できない繊細な見本帳や高品質なパッケージ、中国ではロゴやポスターなどのグラフィックデザイン、マルチメディアデザインなどを中心に、たくさんのお客様と取り引きをさせていただいています。
編集部
近年、新しい分野の事業にも挑戦されているとお聞きしました。
田澤さん
おっしゃるとおり、新規事業を扱う「事業開発推進部」を立ち上げていて、印刷とは異なる事業も進めています。
お話ししたウェブサイト制作などもそのひとつで、IT関連のプロダクトについても実績を重ねています。また、イベントの開催なども請け負っていて、現在すでに動いているものもあります。まだ詳しくお話ができない部分もあるのですが、海外拠点をベースにどんどん事業拡大していきたいと模索しています。
編集部
海外に積極的に進出し、IT関連など新事業も展開しているのは、昭栄印刷さんの特徴ですね。印刷業界のなかでも、先進的な試みを続けていらっしゃるのではないかと感じました。
育児に協力的な文化。育休取得率・復帰率は男女ともに100%!
編集部
昭栄印刷さんは育児中の方などいろいろな社員にとって働きやすい環境があり、評価されていると伺いましたが、いかがでしょうか?
田澤さん
確かに、弊社は『ハッピーパートナー企業』『プラチナくるみんマーク取得』『イクメン応援宣言企業』の認定を受けていますね。さらに『えるぼし』の申請も予定しています(※)。
(※)それぞれ、女性や育児中の社員が活躍している企業を評価する制度。
ハッピーパートナー企業:新潟県による、男女ともに活躍できる職場環境を整えている企業を認定する制度。
プラチナくるみん:厚生労働省による、「子育てサポート企業」を認定する制度。
イクメン応援宣言企業:新潟県による、男性労働者の育児参加を応援する企業を認定する制度。
えるぼし:厚生労働省による、女性が能力を発揮しやすい職場環境を満たしている企業への認定制度。
ただ、これは認定を受けるために制度を整えたわけではないんです。ハラスメントがない職場づくりや育児休暇取得率を上げる取り組みなどは、世間で声が上がるずいぶん前から実践していました。私たちがすでに整備していた社内制度が、行政の認定を受けるために必要な取り組みと重なっていたのです。
弊社の社内制度は、時代の流れに沿って「もっと働きやすいように」と進化しています。『くるみんマーク』から『プラチナくるみんマーク』へ、また『えるぼし』の取得へと、企業にとって取得のハードルは高くなりましたが、それによって社内制度がグレードアップし、社員にとってより良い環境づくりが進んでいると思います。
編集部
世の中で男性の育児休暇は権利として当たり前だと言われるようになりましたが、なかなか取得が難しい企業様も多いと感じています。そのような中で、昭栄印刷さんが「社員が誰でも育児休暇を取得しやすいように」と配慮されていることを教えていただけますか?
本間さん
昭栄印刷では、育児休暇を希望する社員たちとその都度話し合いをしています。休暇に入るスケジュールや復帰の予定時期、復帰後の働き方などについて希望をしっかり聞いて、お互いが納得できるように擦り合わせ、復帰しやすい環境に戻ってこられるようにしています。
編集部
企業側から、復帰しづらい状況をなくそうと働きかけているのですね。
本間さん
業務にもよりますが、どなたかが育児休暇の間に代わりとなる新しい社員を補充することは、周りの社員や復帰予定の社員、人事も含めて話し合って決定しています。どのような方法が一番良いのか、その都度希望を聞きながら皆さんが働きやすいように、復帰しやすいようにしています。
現在、育児休暇の取得率は男女ともに100%、休暇を取った後の復帰率も100%です。最近は、育児を契機に退職するという事例は全くないですね。休暇は、出産・育児だけに限らず介護のためというケースもあります。社員の皆さんが長く働けるよう、先のことも見据えて柔軟に対応しています。
編集部
男女ともに活躍できる昭栄印刷さんの職場環境は、国や自治体などの外部から認められているほか、それで満足せず改善を続けていらっしゃるのですね。新しいライフステージを迎える方にとって、すごく魅力的な企業だと感じました。
女性も長期的にキャリアを積み、活躍できる環境がある
▲取材に対応いただいた田澤さん(右)と本間さん(左)。昭栄印刷では女性社員が多く活躍している
編集部
先ほどお話しいただいた、「育休取得率・復帰率が100%」というのは、結婚や出産後も働き続けられるかを視野に転職先を考える女性にとって、とてもありがたい環境ですね。
田澤さん
そうですね。以前、女性社員が産前産後休暇・育児休暇を取得して、そろそろ復帰という頃に「年子が生まれる!」と判明したことがあったのですが、弊社では当然この場合も休暇を取得してもらいました。
復帰をすることなく連続して休暇を取得するということになるのですが、私たち昭栄印刷はそんなときも遠慮せずに申請できる環境なんですよ。
編集部
そのような先輩もいらっしゃるのですね。これから出産・育児を考えるという社員の方にとって心強い前例ですね。
本間さん
復帰後の時短勤務についても、時間や期間は社員一人ひとりの希望に合わせて対応しています。「復帰直後はすぐにフルタイムで働きたい」という方がいれば「しばらくは時短勤務がいい」という方もいます。
家事・育児を手伝ってくれる人がいるかどうかなど、家庭環境や考え方は千差万別ですので、周りの社員で話し合ってスムーズに復帰できるようフォローしています。
また、ある程度子どもが大きくなって「そろそろフルタイムで働きたい」という方には、通常の勤務時間と同じ始業・終業時間で縛らず勤務しやすい時間帯を選んでもらうなどの工夫をしています。
編集部
復帰する社員の気持ちと復帰する社員を迎える現場の気持ちをしっかり考えてくださっているのですね。これから結婚、出産、育児など様々なライフイベントを迎えようとしている女性も、長く働き続けられそうな環境だと感じました。
数字に表れる「女性の働きやすさ」
編集部
続いて、データ面についてお教えいただければと思います。昭栄印刷さんの社員の男女比はどうなっていますか?
本間さん
産業ごとに集計しているデータを参照すると、印刷業・製造業の女性の割合は21.3%が平均値(※1)ですが、弊社では47%(※2)とほぼ半数を女性が占めています。
また、管理者層も女性が占める割合の平均値が3.3%(※1)であるのに対して、弊社は11.11%(※2)と平均を大きく上回っています。
(※1)厚生労働省雇用環境・均等局長発表:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る基準における「平均値」について」を参照
(※2)令和5年4月時点
編集部
女性社員だけでなく、女性の管理職も平均より多いのですね。長期的に勤務していると、時短やパートなど働き方に色々と変化がありそうですが、それが評価などに影響することもあるのでしょうか。
田澤さん
昭栄印刷では、「正社員だから」「パートだから」ということで分けることはないですし、働き方の違いで評価に差をつけることもありません。同じ講習会やイベントにも参加しています。
一緒に働いている社員同士でも「早く退社するので時短勤務だな、パートだな」などと、時間の違いしか意識していないと思います。お任せする仕事は、その方が勤務できる時間や権限の中で各自責任を持ってやってもらっています。
なお、フルタイムで勤務している方には「正社員になりませんか」という声掛けをしています。その方の希望を聞いて、働きやすいように勤務してもらっています。
編集部
昭栄印刷さんではつねに社員の方々の気持ちを尊重しているので、皆さんが「長く働きたい」と感じていらっしゃるのですね。育休からの復帰率の高さも、そこに理由があるのだと感じました。
環境保全や地域貢献、職場づくりなどSDGsの取り組み多数
▲「チームエコ活動」で公園を清掃しているようす。地域貢献がSDGsの達成に繋がっている
編集部
昭栄印刷さんでは、SDGsの達成に向けた取り組みを積極的にされていらっしゃいますね。代表的なものを教えていただけますか?
田澤さん
印刷業界では古い設備を使用する場合に、廃液の問題などがありました。昭栄印刷では、そこについても早い段階からISO14001を取得して対応しています。これはすでに行っていた取り組みですが、設備的にも先駆けとなるものを積極的に導入し、環境に負荷のかからないような配慮をしてきました。
また、地域経済活性化・社会貢献活動として、新潟県にあるテレビ局の環境プロジェクト「チームエコ」に賛同しています。近くの公園や山の清掃活動に毎年継続して参加し、地域の皆さんとエコ活動を通した交流をしています。また、地域で行われるスポーツ大会へも積極的に参加しています。
編集部
その他の取り組みはいかがでしょうか?
本間さん
弊社では昔から、“全てはみんなの「幸せ」「笑顔」のために”という理念に基づいた「男女誰でもが快適に働ける・活躍できる職場づくり」を行っており、それが自然とSDGsの目標につながっています。
先ほどお話しした育児休暇の取得率100%を継続するための取り組みはもちろん、多様な働き方の制度を構築するために社労士による講習会も行っています。
田澤さん
それに加えて、社員の働きやすさを意識して職場環境の整備をしています。社内に職場改善の委員会があり、社員の皆さんが職場で気づいた「ここを変えればもっと良くなるのでは?」という意見を集めています。ポイントは他部署の人から意見をもらうということです。
例えば製本工場で「腰に負担がかかる作業が多い」ということがあったとします。製本工場でずっと働いている方は、それが日常になってしまっていて気づけないことがあると思うのです。他部署から見てその作業がつらそうに感じるのであれば、委員会と部署で話し合い、様々な方向性から検討して改善につなげています。
編集部
当たり前になってしまっていることを、工夫してもっと良くしようという取り組みなのですね。社員の皆さんが意見を出し合いながら、快適な職場環境をつくっていることがすごく魅力的だと感じました。
▲SDGs宣言書の一部。昭栄印刷では「人権労働」「環境」「製品サービス」「社会・地域貢献」などさまざまな分野で取り組みを続けている
社員は「昭栄」という船に乗る家族。イベントも頻繁に開催
▲60周年の記念旅行では、社員とその家族を招待したとのこと
編集部
ここまで伺ってきて、昭栄印刷さんが社員の働きやすさを優先してきた企業であることがよくわかりました。社内のイベントなどはあるのでしょうか?
本間さん
ありますね。50周年、60周年の記念旅行は社員およびその家族で一緒に行きました。また、毎年行うバーベキューにも家族を招待しています。弊社の敷地内で行うので、地域の方や取引先の方にお声がけすることもあります。
創業以来、私たちには「和」との意識が浸透しています。「お客様との和」「地域の皆様との和」「グループ会社様との和」そして「社員の和」。特別に指導しているわけでもなく、社訓でもないのですが、自然と根底にあって昭栄印刷の風土になっていると思います。
弊社の社長(代表取締役社長の坂井雅之さん)も「和」をとても大切にしていて、「社員は家族。社員の家族も家族。昭栄はみんなが乗る船だよ」と常々言っています。社員はもちろん社員の家族のことも、大事に思ってくれていますね。
編集部
旅行やイベントも、社員や関係する方々への「幸せ」や「笑顔」のために、というお考えなのですね。
田澤さん
「和」の意識同様、「関係してくださった皆様が家族」という考えが創業当時からあるんですよ。ですから、社内は先輩や上司でも話しかけやすい雰囲気です。上下関係や部署間の壁を意識せずに、働けると思います。
▲バーベキュー開催の当日にはバルーンパフォーマーが来場。社員のお子さんも大喜び
▲バーベキューの前には、家族の方向けに会社見学も行われた
自分発信でアイデアを出し、会社を変えていきたい人を歓迎
編集部
昭栄印刷さんのこれからの採用についてお伺いします。どのような考え方・価値観を持った方が、御社で活躍できるとお考えでしょうか。
田澤さん
昭栄印刷には60年の歴史がありますので、ともすると古い考え方になりがちだと思われるかもしれません。ですが、弊社には社員の色々な声や新しい提案を受け止める懐の深さがあります。
「正しいか正しくないか」などいうことは気にせず、まずは「こういうことをやってみませんか」と自分の意見を言ってくださる方を歓迎していますし、そういう方が活躍できる環境があると思います。
編集部
これまでにも、新しい考え方で事業が変わっていったということはあったのでしょうか。
本間さん
一例としては、元々は官公庁の仕事をメインにした地元密着の印刷会社だった弊社が、インターネットを使った印刷の受注を始めて、全国のお客様に対応できるようになったことが当てはまるかもしれません。
今の時代ではまったくめずらしくないネット印刷ですが、弊社では20年前から実施していて、それによって事業は大きく拡大しました。これからイベント事業に注力しようとしていることもそうですし、新人や若手の意見が業務に反映されるということもたくさんあります。
田澤さん
新潟本社には、20代から60代までの様々な年代の社員がまんべんなくいます。どんな年齢層の方が新人で入社しても、相談しやすい年代の仲間がいます。個人で事業を起こすのは難しいと思いますが、弊社でなら企業の中にいながら仲間に相談しつつ、自分の意見・提案を発信できます。
入社後の活躍により、これまで以上に働きやすくなる、新しい事業が生まれるなど、弊社がさらに進化していくことは大いにあり得ます。職場改善のアイデアをカタチにしたり、経営者のような視点で自分の思いを提案してみたい方には、ぜひ挑戦してほしいです。
編集部
今回お話を聞かせていただき、昭栄印刷さんの社員の皆さんがそれぞれに合った働き方を選びながら、いきいきと勤務されていることがよくわかりました。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
■取材協力
昭栄印刷株式会社:https://www.shoei-p.jp/
採用ページ:https://www.shoei-p.jp/jobs.php