多様性を推進し、誰もが働きやすい職場づくりをする企業を紹介するこの企画。今回は、スマートフォンで完結するクラウド労務管理サービスを手がけるワークスタイルテック株式会社を取材しました。
ワークスタイルテック株式会社とは
ワークスタイルテック株式会社は、すべての人が楽しく働くことができる環境を目指し、労務管理の業務負担をテクノロジーの力で軽減するサービスを提供しています。
主要事業の「WelcomeHR」は、従業員の雇用契約書や個人情報の収集、保護者の同意などをスマートフォン上で完結できるサービスで、飲食店のアルバイトスタッフなどを中心に約50万人に利用されています。
会社名 | ワークスタイルテック株式会社 |
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住所 | 東京都港区南青山2-15-5FARO1階 |
事業内容 | HRソフトウェアの企画・開発・販売 |
設立 | 2016年4月 |
公式ページ | https://www.workstyletech.com/ |
働き方 | ・フレックス勤務 ・ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク) |
ブラジル出身のCEOをはじめ、社員の約半数が海外出身というワークスタイルテック株式会社には、それぞれが自分で考え行動することが評価されるカルチャーがあります。また、多くのメンバーが子育てをしながら勤務しており、残業ゼロの推進やフレックス制の導入で柔軟な働き方を実現しています。
今回は、代表取締役CEOを務めるドレロドリゲス・グスタボさん(ドリーさん)にお話を伺いました。
労務管理の負担を減らし、働く人を幸せにする「WelcomeHR」を開発
▲ワークスタイルテック株式会社は、労務管理サービス「WelcomeHR」で現場の負担軽減をサポートする。(公式サイトから引用)
編集部
まずはじめに、ワークスタイルテックさんの事業内容について教えてください。
ドリーさん
私たちは、スマートフォンで完結するクラウド労務管理サービス「WelcomeHR」を開発・運営しています。
WelcomeHRは、従業員の入社手続きに必要な雇用契約書の締結や個人情報の収集を、すべてスマホで行うことができるサービスで、人事労務作業の負担軽減や現場のペーパーレス化に貢献しています。
編集部
競合サービスと比較したとき、WelcomeHRのどのような点に特徴がありますか?
ドリーさん
IT化があまり進んでいないと言われる飲食業や小売業に特化したサービスであることが、WelcomeHRの特徴です。
このような業種は、現場におけるパソコン利用が一般的ではないことが多いので、スマホでの使用を前提とした仕様にしています。また、アルバイト従業員が多く働く業界なので、未成年を雇用する際に必要となる保護者のサインをデジタルでできる機能もあります。
わかりやすさと使いやすさが評価され、現在400社ほどに導入いただいているほか、登録ユーザー数は約50万人にのぼります。
編集部
スマホが普及し、パソコンの使用に慣れていない人が若い世代を中心に増えていると聞きます。WelcomeHRのようにスマホで雇用契約を交わせるサービスは、今後ますます需要が高まりそうですね。
日本人の仕事の満足度を上げたいと思ったことが起業のきっかけ
編集部
ブラジルご出身のドリーさんが、日本の労働現場のDXを手がけることになった経緯について教えていただけますか?
ドリーさん
私は、ブラジルの大学を出て現地で新聞記者として働いたあと来日し、慶應大学大学院メディアデザイン研究科でデザイン思考を学びました。卒業後、ソニーの商品企画やリクルートのUXデザイナーを経験し、2016年にワークスタイルテックの前身であるモティファイ株式会社を創業しました。日本での生活は15年になります。
労働に関わる事業を立ち上げるきっかけとなったのは、リクルートでの経験です。リクルート時代は、リクルートキャリアで転職や採用の仕事に携わっており、働く人の幸せについて考えることがよくありました。私は、「日本の労働者は仕事に対する満足度がとても低い」と感じていて、この状況を何とかしたいとずっと思っていました。
そこで、従業員の働きがいや会社に対する思い入れを可視化するサービスを手がけるモティファイ株式会社を設立しました。その後、労務管理の現場のDXやペーパーレス化にも挑戦したいと思い、モティファイを事業譲渡してワークスタイルテックに名称変更し、WelcomeHRの開発を始めました。
編集部
ワークスタイルテックさんのサービスには、働く人の幸福度を上げたいというドリーさんの思いが込められているのですね。
ドリーさん
はい、ペーパーレス化が進んでいない飲食店などでは、労務管理を担当する店長や人事担当者が書類仕事で残量をしたりリモートワークができないという課題があります。WelcomeHRはスマホで完結するので、在宅で作業でき、ストレスの少ない環境を実現します。
また、労務や法律に関わる業務が好きな人はごく一部です。「やりたくない仕事」であることを前提にデザインすると、利用者に優しいサービスが出来上がります。
「デザイン思考」でユーザーに優しいサービスを開発
編集部
ワークスタイルテックさんは、利用者の立場に立ったサービスを意識しているという印象を受けました。これには、ドリーさんが大学院で学んだデザイン思考(※)も活かされているのでしょうか。
(※)デザイナーおよびクリエイターなどの考え方を他の分野に活かして解決に導く思考法。ユーザーの視点に立って課題を見つけることが特徴。
ドリーさん
はい。デザイン思考はあらゆることに使えるスキルなので、私たちのサービスにも生かされています。
私たちのマーケット調査は、ユーザーになりきるくらいの気持ちで行います。利用者の生活に入り込み、その人の立場になって、どうすれば使いやすいと感じるか、どのような表現なら分かりやすいかを徹底的に考えます。
編集部
分かりやすさを意識した具体的な例はありますか?
ドリーさん
例えば、サービス画面に表示する言葉の表現です。質問項目で、「扶養家族はいますか?」という聞き方をする場合、若いアルバイト従業員には理解できない可能性があります。そんな時は「あなたの給料で生活している人はいますか?」といった説明を入れることで分かりやすさが格段に上がります。このような考え方はデザイン思考からきています。
編集部
使い手の立場になって考えるから、ユーザーに優しいサービスができあがるのですね。
多様性あふれるワークスタイルテックの社内カルチャーとは
編集部
続いて、ワークスタイルテックさんで働くメンバーや、カルチャーについて伺いたいと思います。まず、従業員数や平均年齢を教えていただけますか?
ドリーさん
現在23名のメンバーが働いており、このうち正社員が16名、業務委託が7名です(2023年8月時点)。
年齢については、新卒入社の23歳から40代までいますが、最も多いのは30代です。平均すると、30代前半になります。
男女比は5:5に近い数字で、子育てをしながら働く人もたくさんいます。
編集部
海外出身のメンバーもいるのでしょうか?
ドリーさん
はい。正社員は5人、業務委託は6人が外国人なので、弊社のメンバーの約半数が外国人ということになります。出身国はベトナムや韓国、ブラジルなどです。
使用する言語は、開発チームが英語で、それ以外の部署は日本語でコミュニケーションしています。
編集部
多様な職場環境だと、さまざまな視点や価値観をプロダクト開発にも活かせそうですね。
目標に向かって自らアイデアを出し動ける人を評価
編集部
ワークスタイルテックさんで働くメンバーは、仕事に対してどのような姿勢や考え方で臨んでいますか?
ドリーさん
私たちは、自分で考えて動くことを重視する組織です。言い換えると、言われたことをきっちりやるタイプは弊社のカルチャーに合わないと思います。
弊社では、バックオフィス、エンジニア、営業、どの部署であっても自分で「これをやりたい」という企画を出してチャレンジすることを求めています。チャレンジをして、PDCAを回して、次はどうしようと考えることができる人が弊社で活躍できる人と言えます。
日本のトップダウン型の会社だと、指示されたことを完璧にやることが求められるかもしれませんが、弊社には、そもそも指示を出す人がいないんです。みんな自分の考えで動いているので、ほかのメンバーの動き方を考える余裕がありません。そのため、指示を完璧にこなすタイプの人は、弊社ではあまり機能しないのです。
編集部
積極的にアイデアを出してチャレンジする人が評価されるのですね。
ドリーさん
はい。しっかりと評価し、昇給や昇格などの処遇にも反映させる努力をします。
編集部
各自が自分の考えで動いても組織がバラバラにならないのには、何か秘訣があるのでしょうか?
ドリーさん
それぞれが考えて動いていても、「目標だけはみんな同じ」という意識を持ってもらうことを心がけています。
目的地にたどり着くなら、移動手段は車でもバスでも飛行機でも構いませんよね。それと同じで、共通の目標さえ意識できていれば、各自がそれぞれのアイデアで動いても、チームの結束力は弱まりません。
編集部
全員が常に目標を意識し続けるために、取り組んでいることはありますか?
ドリーさん
まず、目標については、売上などお金の目標だけではなく、社会へのインパクトや貢献も重視することで、達成することの重要性をより感じやすくしています。
それでも、時間がたつと目標への意識は薄れてしまうので、3ヶ月ごとに実施している合宿の際に改めて伝えたり、メンバーに手紙を書くつもりで定期的に社内ブログで発信したりしています。最近は、文章の代わりに10分ほどの動画を配信していて、1週間の振り返りや社内の情報共有としても役立てています。
編集部
ドリーさんの考えが社内に浸透しているから、全員が同じ方向を向いて取り組めるのですね。
残業ゼロ&ハイブリッド。全員が快適に働ける環境づくりに真剣
編集部
スタートアップ企業は残業が多いというイメージを持つ人もいますが、ワークスタイルテックさんはいかがですか?
ドリーさん
弊社は、残業ゼロの会社です。小さな子どもを育てているメンバーもいるので、勤務時間内に集中して成果を出しています。
私は、業務がパンパンになっている場合は、スケジュールを延ばすことを検討してもいいと思っています。相手と普段からコミュニケーションをしっかり取っていれば、遅れが生じる際に丁寧に説明すれば受け入れてもらえるはずです。
編集部
働く時間帯も、個人の状況に合わせて選べるのでしょうか?
ドリーさん
はい。弊社は実働8時間で、午前6時から午後10時までのフレックスタイム制を導入しています。例えば、朝8時半に勤務を開始して正午にランチ休憩に入り、午後1時から5時まで勤務したあと、子どもを保育園に迎えに行って、夕食などが落ち着いたあとに残り30分の仕事をすることができます。
1週間の勤務時間の合計を37時間にすればいいので、美容室に行く時や子どもを病院に連れていく時は早めに退社し、代わりに別の日の勤務時間を長めにして調整することができます。
編集部
それぞれの事情に応じて、自由で柔軟な働き方ができる環境なのですね。
ドリーさん
日本には「社員は会社に雇ってもらっている」という考え方がありますが、私は「会社は、ありがたいことに社員に来てもらっている」と捉えています。そう考えると、社員が働きやすい環境を整えるのは当たり前のことなんです。
ただ、全員にとって働きやすい環境とはどのようなものだろうと悩むこともあります。例えば、2022年までフルリモート勤務を実施していましたが、入社したばかりのメンバーから「成長できるか不安だ」「仲間として一緒に過ごす時間が少ない」という声があがりました。結局、今は週に1回全員が出社する日を設けるハイブリッド勤務を導入しています。
このように、全ての人が快適に働ける職場を目指して今後も模索し続ける必要があると感じています。
編集部
「すべての人が楽しんで働くことができる環境づくり」をテーマにサービスを展開するワークスタイルテックさんは、自社でも率先して働きやすさへの取り組みを推進していらっしゃるのですね。
英語力を伸ばしたいエンジニアには最適な環境
編集部
ワークスタイルテックさんでは多くのエンジニアが活躍していると伺いました。23名のメンバーのうち、エンジニアの比率はどのくらいですか?
ドリーさん
正社員が3名、業務委託は7名全員がエンジニアです。合計10名なので、メンバーの40%あまりがエンジニアということになります。
編集部
開発環境についても教えてください。
ドリーさん
開発言語はGoとJavaScriptを使用しています。基本として使用する言語などは決まっていますが、新しいものにもオープンなので、気になったら試すことができます。
また、これから自動学習やAIを活用したサービスも始めたいと思っており、ChatGPTや、Googleが開発した機械学習用のフレームワークであるTensorFlowなども取り入れたいと考えています。
社員には、どのような技術を入れたらより良いサービスを提供できるかアイデアを出して、どんどん試してもらいたいです。
編集部
エンジニアは英語でコミュニケーションをするというお話もありました。国際色豊かな環境で開発できることを魅力に感じる人も多いと思います。
ドリーさん
はい。英語力を伸ばしたいエンジニアにとっては、最高の環境です。エンジニアのスキルがまだ低い場合は入社後にサポートしますし、英語の学習費用を補助する制度もあります。
第二新卒も歓迎!働く人の幸せ実現に挑戦したい人を積極採用中
編集部
最後に、ワークスタイルテックさんで働くことに興味を持つ読者の方にメッセージをお願いします。
ドリーさん
弊社のカルチャーのところでもお話したように、私たちは自分で考え行動する組織です。労務管理の負担を減らし働く人を幸せにするために、アイデアを出しながら挑戦してくれる人とぜひ一緒に働きたいと思っています。
また、自分の力をもっと活かせる場所を探している第二新卒の方も歓迎しています。弊社はスタートアップなので、ビジネスメールの返事や時間を守ることなど社会人としての基礎から教えることは難しいですが、業務上のスキルについては入社してから周りのメンバーのサポートを受けながら身につけることができます。
編集部
インタビューを通じて、ワークスタイルテックさんは社員の成長と働きやすさの両方が叶う職場だという印象を受けました。働く日本人の満足度を上げたいというドリーさんの思いが社内に浸透しているので、常に目標を意識しながらチャレンジすることができそうです。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
ワークスタイルテック株式会社:https://www.workstyletech.com/