エンジニアドリブンを掲げるムーブ。残業マイナス20時間を実現している秘訣とは

新しい時代の働き方を実践する企業へのインタビューを通じて、働き方のリアルな姿に迫る本企画。今回は社員の約75%をエンジニアが占める、株式会社ムーブの働き方に迫ります。

残業時間マイナス20時間というユニークな施策を打ち出す株式会社ムーブでは、どのようにエンジニアが成長し、やりがいを感じられる環境を作っているのか、どんな人が活躍しているのか伺いました。

株式会社ムーブとは

20代から30代のエンジニアを中心とする株式会社ムーブは、「生産性高く、効率よく、楽しく働く」をモットーにした働き方を実践している企業です。幅広い業種のシステム受託開発やシステムコンサルティングが同社の事業の柱となっています。

会社名 株式会社ムーブ
住所 東京都新宿区新宿2-9-18 エビスビル6F
事業内容 ・Webシステムの受託開発・保守
・自社サービスの開発・保守
・システムコンサルティング
・プロジェクトマネージメント支援
設立 2006年6月6日
公式ページ https://moove.co.jp/
働き方 ワークライフバランス重視

エンジニア主体の働き方や企業経営を実践している株式会社ムーブは、売上至上主義に走ることなく、社員が心身ともに健康的に暮らせることを何よりも大切にしています。

今回は、株式会社ムーブの創業者であり代表取締役社長の西坂大介さんにインタビューさせていただきました。ご自身も現役のプロジェクトマネージャー兼エンジニアとして活躍されている西坂さんがなぜエンジニアの働く環境を大切にしているのか、そこに込められた想いも教えていただきました。

本日お話を伺った方
株式会社ムーブの創業者であり代表取締役社長の西坂大介さん

株式会社ムーブ 代表取締役社長

西坂 大介さん

サーバー構築からシステム保守まで手掛けるムーブの事業

編集部

最初に、ムーブさんの事業内容について教えてください。

西坂さん

当社では、OSS を利用した Web システムの受託開発を主な事業の柱としています。

例えば、月間約50億PV越えのブログサービスのシステム開発・保守に加え、マッチングサービスのシステム開発・保守、動画・書籍レンタルサイトの開発などの案件に携わっています。リリース後に高負荷で困っているシステムのリファインをすることもあります。

また、要件定義からはじまる一連の開発工程すべてを自社内で行っております。

編集部

単にシステムを開発するだけでなく、要件定義から手掛けていることに驚きました。

西坂さん

ムーブの特徴は、まさにそこにあります。システム開発では要件定義から運用まで対応できるため、トータルでクライアントに貢献できます。また、自社サービスの開発・運用やシステムコンサルティング、プロジェクト支援などの事業を展開しており、幅広い視点からお客様のご要望にお応えできると思っています。

各プロジェクトでは、開発する機能ごとにエンジニアをアサインしています。クライアントの課題の本質はどこかを常に意識しながら、工数の見積りからリリースまで、プロジェクトにアサインされたエンジニアが一貫して行っているのも特徴です。

編集部

起業の背景や会社作りの思いについてお聞かせください。

西坂さん

前職では大手インターネットサービス会社のエンジニアとして働いていました。その会社でエンジニアとして働いていた経験を踏まえて、一緒に働く社員みんなが心身ともに健康で、豊かに暮らせる会社にしたいと思っています。

ムーブがエンジニアドリブンな働き方を目指す理由

笑顔で話す株式会社ムーブの西坂代表取締役

編集部

ムーブさんでは「エンジニアが心身ともに健康に働ける環境」を作っているとお話にありました。なぜ、そのように考えるようになったのでしょうか?

西坂さん

大手インターネットサービス会社でエンジニアとして働いていたときは、帰宅は週1回程度という超ハードな環境で働いていました。

当時はそれが当たり前だと思っていましたが、起業して自分で会社を始めてみると、毎日家に帰れる生活に変わりました。「あれ?これが当たり前の働き方なのでは?」と考えはじめ、ムーブではワークライフバランスを大切にした働き方をエンジニアに提供しなければいけないと思うようになりました。

編集部

まさに、ご自身のエンジニアとしての経験から生まれた考え方だったのですね。とはいえ会社の経営を考えると、ある程度売り上げを確保するために無理をしないといけないこともあったのでは?

西坂さん

むしろ起業当初はクライアントも少なく、今よりも早く仕事を切り上げて帰っていた日もありましたよ。

会社立ち上げ当初は人も少なく、案件が重なると忙しい時はありましたが、当時からダラダラと長く仕事するのではなく効率を最大化させて成果を出すことに重点を置いていました。やるべきことをしっかりやりつつ、仕事する時間はできるだけ短く、というのが当社の社風になっているかもしれません。

編集部

ムーブさんでは創業当初から、効率的に仕事をすることが良いという企業の価値観があったのですね。

ミーティングは最小限。目指せ残業マイナス20時間

株式会社ムーブのオフィス風景

編集部

残業ゼロを掲げる企業が多い中、ムーブさんでは「残業マイナス20時間」を掲げていらっしゃいます。とても新鮮な発想ですが、詳しく教えてください。

西坂さん

ムーブの本来の業務終了時間は18時ですが、17時に業務を終えられれば1ヶ月の残業時間はマイナス20時間になるという考え方です。もちろん、リリース前など忙しくなることもありますが、ほとんどの社員が17時に仕事を終えています。

編集部

とても生産性が高い環境ですね。一体どうやって実現しているのですか?

西坂さん

毎日17時までに業務を終わらせるためには、集中して質の高い仕事をしなければいけません。ただ、人によって効率的に働く方法は人それぞれですから、基本的にタイムマネジメントは自己裁量にしています。

休憩時間も「12時から13時」とかっちり決めるのではなく、「15時からお昼を食べてもらっても構わない」というスタイルです。

編集部

例えば無駄なミーティングをしない、などという工夫もされているのでしょうか?

西坂さん

そうですね。毎日朝礼で進捗状況などを共有する以外は、できるだけ形式的なミーティングはしないようにしています。もちろんお客様との定例会議などはありますが、最小限にしようと声を掛け合っています。

編集部

実際に転職してきたエンジニアの方のなかには、残業マイナス20時間という環境に驚く方もいらっしゃるのでは?

西坂さん

「本当にみんな17時で帰るんだ」と入社したばかりのメンバーにびっくりされることはよくあります。四半期ごとに社員と面談をしているのですが、子育て中の社員から「子どもと過ごす時間が長くなった」と喜んでもらえることもあります。

強いて働く時間を短く設定することの弊害を挙げるとすれば、クライアントとの会食は19時くらいから設定されることが多いので「会食の時間まで、時間が余ってしまう」というくらいでしょうか。

編集部

その弊害は思いつきませんでした。残業がないことで、ご家族と過ごす時間が増えるだけでなく、スキルアップしたいと思った際にも勉強時間を確保できるなどエンジニアとして成長する環境が整っているムーブさんの社風、とても羨ましいです。

売り上げ至上主義ではなく社内のリソースを考えて案件を受注

株式会社ムーブのオフィス風景

編集部

効率を最大化させること以外に、社員の働く環境を整えるために工夫していることはありますか?

西坂さん

会社として案件を受注する際に「残業して頑張って開発すれば、納品できる」という残業ありきでの受注をしないようにしています。

売上至上主義になると、社内のリソース状況を考慮せずに受注するため、どうしてもエンジニアにしわ寄せがいきがちです。このような事態にならないように、受注前に社内のリソース状況をちゃんと考慮して判断しています。

編集部

現場サイドの負担を考えずに仕事ばかりが増えれば、売り上げが上がっても働くエンジニアの方たちが疲弊してしまいます。ムーブさんでは、仕事を受ける段階から工夫していることに驚きました。

西坂さん

そうですね。「社員が健康に人間らしく暮らせること」はムーブが何よりも大切にしている考え方なので、その軸はぶれないようにしています。

リモートワークでは自社開発のバーチャルオフィスを活用

編集部

ムーブさんでは、リモートワークも取り入れていると伺いました。リモートワークの際にはどのようにコミュニケーションをとっていますか?

西坂さん

基本的にはチャットツールでコミュニケーションをしています。

ただ、テキストメッセージよりも顔を突き合わせて話したほうが効率がいいことも多いため、弊社で開発したバーチャルオフィスを活用しています。必要に応じてオンラインで画面共有などしながら、コミュニケーションをしています。

編集部

リモートワークでも働きやすい環境づくりに取り組まれているのですね。

エンジニアとして堅実に成長し、認められる環境を

株式会社ムーブの社員の仕事風景

編集部

ムーブさんで働く仕事のやりがいはどんなところにあるのでしょうか?

西坂さん

エンジニアとして着実に、堅実に経験を積みながら成長できるのがムーブで働くやりがいのひとつになっているのではないでしょうか。

例えば、ムーブでのシステム開発業務は要件定義から運用までトータルで携わることが特徴です。もちろん、最初からすべての工程を自走できる人は少ないため、エンジニアたちには自身の成長過程に合わせて挑戦してもらっています。最終的には、案件の提案段階からリリース・保守まで全部できるようになっていただくことが、ムーブの目指すエンジニア像です。

編集部

エンジニアとして成長するための環境づくりについてお聞かせください。

西坂さん

技術的なところに関しては個人の努力に因るところが大きいのですが、会社としては業務を通じてできるだけ成長できる環境を用意するようにしています。

例えば状況が許す限り、各エンジニアの「こんな経験をしたい」「この案件に携わりたい」という希望、または適正に合わせて、案件をアサインしています。

実際に案件がスタートした後も、クライアントとの打ち合わせから、仕様調査や検討・要件定義、見積もりの作成にはじまり、サーバー設計や構築、開発、検証まですべての工程に携わってもらっています。

Webシステム開発に関連するすべての工程に携わることで、幅広い経験ができるため、エンジニアとしての成長を実感できるのではないでしょうか。

編集部

案件の一部分だけを担当するのではなく、トータルで関われるからこそ、自分が今後どの分野でエンジニアとしての経験を積んでいきたいかも見極められそうですね。

わからないことはどんどん聞けるフォロー体制

笑顔で話す株式会社ムーブの西坂代表取締役

編集部

エンジニアとして働く方の年代も幅広いと伺っています。お互いにフォローし合う環境も整っているのでしょうか?

西坂さん

お客さまとのやり取りやプロジェクトの進行の仕方は、私も含め経験のあるエンジニアが丁寧にフォローしています。

若手エンジニアに対して「こういった形で進めればいいよ」とか、「見積もりはこういう形で出せばいいですよ」というところをきちんと伝えながら仕事を進めているため、その点も安心していただけるのではないでしょうか。

編集部

西坂社長ご自身も現役のエンジニアとして活躍されています。社内で若手エンジニアをフォローされるときに、何か工夫されているポイントはありますか?

西坂さん

他のマネージャーとは少し違うかもしれませんが、最初から全部教えてしまうのではなく1から10まであるなら、1から8まで教えて、9から10は自分自身の頭で考えられる余地を残すようにしています。エンジニアとして成長するためには、「自分で考える力」も必要ですから。

もう1つは、気軽に何でも聞ける空気感を意識しています。

編集部

具体的にはどのような工夫をされていますか?

西坂さん

何か特別な仕組みづくりをしているわけではありませんが、忙しい時でも質問されたら、嫌な顔をせず応えることを心がけています。

ムーブでは、「HRT(謙虚・尊敬・信頼)」という気持ちを大切にして仕事をしてほしいと伝えています。おかげさまで職種や社歴に関係なく、メンバー同士フラットな関係性で仕事できているかな、と感じています。

編集部

西坂社長も現役エンジニアとして活躍していらっしゃいますし、エンジニア比率が高いムーブさんだからこそ、気軽にテクニカルな相談もできそうですね。

西坂さん

そうですね。質問することに対して「聞きにくいな」という心理的ハードルがあることでエンジニアが育たなかったら、結果として会社も育ちませんから、その辺りは心がけています。

分からないことが悪ではなく、反対に「聞かないことが悪」という雰囲気にしたいと思っています。

自己研鑽を義務化させない工夫も

編集部

実際に、17時に仕事が終わって帰れるとなると、業務時間外で自己研鑽する社員の方も多いのではないでしょうか?

西坂さん

技術的なこと以外にも「英語を勉強したいと思っている」などの声を聞くことはありますが、会社として社員がどんな自己研鑽をしているのかフィードバックすることを強要しないようにもしているので、実際どうかは私も把握していません。

編集部

その理由はなんでしょうか?

西坂さん

ワークライフバランスを大切にしたいと伝えている以上、ムーブで働いてくれているメンバーに「プライベートの時間何をしているのか」「どんな自己研鑽したのか」とフィードバックを求めると、実質的に業務時間外でスキルを磨くのが義務化してしまいますよね。

業務時間外の過ごし方まで会社が立ち入ってしまうのは、ムーブが掲げる「健康に人間らしく暮らせる」会社という理念と矛盾が出てしまいますから、あえて聞かないようにしています。

編集部

あくまでも、業務が終わった後の時間をどう使うかは個人の自由というムーブさんの姿勢から、ワーククライフバランスを本当に大切にしたいという本気度が伝わってくるエピソードですね。

経験ゼロからのスタートでもエンジニアとして成長できる

20代の若手も活躍する株式会社ムーブの打ち合わせ風景

編集部

20代、30代の若手エンジニアも多く在籍しているムーブさんですが、どんな方が活躍していますか?

西坂さん

ムーブで働くメンバーの特徴を挙げるとすれば、狩猟民族タイプよりも、農耕民族が多いかもしれません。ムーブは営業主体の会社ではないので、利益をどんどん出していこうよというスタンスではなく「みんなが幸せに、ご飯を食べていける程度に利益を出していこう」というスタンスです。

とはいえ、おかげさまで企業としても成長できています。当社では業績連動の賞与制度を設けていて、直近3年は全社員に一律4ヶ月分の賞与を支給できるなど数字としても結果に残せています。

編集部

エンジニア経験ゼロからでも挑戦できる環境はありますか?

西坂さん

そうですね。今、エンジニアマネージャーとして活躍している社員は、20代前半に全くの未経験から入社したメンバーです。5、6年当社で経験を積んで、今ではチームの中心的な役割を担ってくれています。

編集部

未経験からのスタートで、そこまで活躍されているというのは素晴らしいですね。秘訣は何かあるのでしょうか?

西坂さん

秘訣はなく、その方のコミュニケーション能力と順応性が高いことに因るものだと感じています。クライアントに説明するシーンや、他のエンジニアをフォローするシーンでもそれが生きていますね。思いやりの心もすごくあって、誰に対してもフォローが手厚いので、とても信頼されています。

またムーブでは技術面だけでなく仕事の進め方などのコツを伝えるようにしていますが、確実に実践できているため、着実に成長しているなと感じています。

エンジニアとして独立したいなら、飛び込んでみてほしい

会社のロゴを持っている株式会社ムーブの西坂代表取締役

編集部

最後に、「ミライのお仕事」の読者にメッセージをお願いします。

西坂さん

ムーブのビジョンは「価値あるエンジニアを輩出すること」です。社内には経験豊富なエンジニアも多く、仲間になってくれたメンバーには、しっかり成長してもらえるように最大限サポートしたいと思っています。

ゼロから案件に関われるのもムーブの特徴です。一緒に働く中で、いずれは1人で会社を経営できるようになるくらいのスキルを持ったエンジニアに育ってほしいと思っています。そして、そのようなエンジニアがいつまでもムーブにいたいと思えるよう魅力的な会社にすることが、わたしの使命だと思っています。

「いつかはエンジニアとして独立したい」という夢を掲げている方は、ぜひ一緒に働きましょう!

編集部

本日は、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

■取材協力
株式会社ムーブ:https://moove.co.jp/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/moove-co