一人ひとりが個性や強みを発揮できる組織づくりを行う企業を紹介する本企画。今回は、プロジェクションマッピングを用いたショーなどを手がけるNAKED, INC.(株式会社ネイキッド)にインタビューしました。
あらゆる表現を通じて社会に価値を提供するNAKED, INC.
NAKED, INC.は「Core Creative, Total Creation, and Borderless Creativity」を理念に掲げるクリエイティブカンパニーとして、ジャンルを問わない活動を行い、時代や社会に新たな価値を提案しています。
東京駅舎のプロジェクションマッピング「TOKYO HIKARI VISION」や、世界遺産の二条城を会場とした花の体感型アート展「NAKED FLOWERS」など数々の代表作を生み出し、アジアや中東でのプロジェクトも手がけています。
会社名 | NAKED, INC.(株式会社ネイキッド) |
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住所 | 東京都渋谷区元代々木町25-8 |
事業内容 | ・自社IP事業 ・NEW ENTERTAINMENT事業 ・地域共創事業 ・企業クリエイティブコンサルティング事業 ・ライフスタイル事業 ・アートプロデュース事業. |
設立 | 1997年10月 |
公式ページ | https://naked.co.jp/ |
働き方 | ・リモートワーク |
プロジェクションマッピングの先駆者として知られるNAKED, INC.ですが、近年はコンサルティング型の提案にも力を入れており、マッピングにとどまらない様々なクリエイティブ手法でクライアントの課題を解決に導いています。
約半数が女性という職場には子育てをしながら活躍する社員も多く、リモートワークの導入などを通じて柔軟な働き方ができる環境が整っています。また、肩書きにとらわれないボーダレスな組織を目指しており、さまざまな職種や出身国のメンバーがセクションの枠を超えて意見を出したり助け合ったりするカルチャーがあります。
今回は、近年の企業成長や女性の活躍、ボーダレスな組織づくりについてプロデューサーの篠宮琴絵さん、人事を担当する北原岳史さんにお話を聞かせていただきました。
成長のカギはクライアントの課題を解決するコンサルティング事業
編集部
数々の話題作を手がけてきたネイキッドさんですが、近年の事業環境についてお話しいただけますでしょうか。
北原さん
新型コロナウイルスの流行が収束しイベント需要が回復したことや、大規模なプロジェクトが増えていることを背景に、2023年4月以降は業績が顕著に拡大しています。年間の売上規模としても、順調に伸びている状況ですね。
編集部
なぜ、大規模なプロジェクトが増えているのでしょうか。
北原さん
これまでは単発のイベントを積み上げる営業スタイルを取っていましたが、近年は単なる「プロジェクションマッピングを作れる会社」ではなく、クリエイティブを活用したコンサルティングを提供する会社へと進化したことが理由のひとつです。
「マッピングをしたい」とご相談くださるクライアント様は、そのイベントを開催することによって解決したい何らかの課題を抱えているはずです。そのため、ただクリエイティブを提供するだけでなく、課題を把握し解決する方法を一緒に考えるようにしています。
編集部
コンサルティングの例としては、どのようなものがありますか?
北原さん
例えば、弊社は東京タワーの展望台を舞台に、夜景とプロジェクションマッピングを融合させるイベントを手がけています。このプロジェクトのスタートは、「みんな夜景が好きなのに、なぜか東京タワーに来ない」という課題でした。そこで、「タワーに登る理由を作ろう」ということになり、「夜景に対してプロジェクションマッピングができたら面白いのではないか」というアイディアが生まれました。
夜景と映像のコラボを多くの方に楽しんでいただくと同時に、「夜景ってやっぱりいいね」と再認識してもらうことにつながれば東京タワーを訪れる人が増え、課題を解決できると考えました。
マッピングはあくまで手段。「それを通じて何を実現するか」が大事
編集部
コンサルティングを重視するようになった背景についてもお話いただけますか?
北原さん
東京駅の駅舎を使った「TOKYO HIKARI VISION」が大きな話題になったことで、2012年以降、プロジェクションマッピングが広く一般に浸透しました。これをきっかけに弊社の知名度は大きく上がりましたが、同時に「今後は競合が増えて価格競争に突入するだろう」という危機感も持ちました。
そこで、差別化や優位性を確保するために、まずは空間演出や体験を意識したプロジェクトを強化しました。その後、クライアント様との関係が深まるにつれて課題をご相談いただく機会が増え、現在のようなクリエイティブを活用したコンサルティングにも力を入れるようになりました。
編集部
プロジェクションマッピングの先駆けとして知られるネイキッドさんですが、それだけにとどまらない事業展開をしているのですね。
北原さん
弊社を設立した村松はよく、「プロジェクションマッピングは書道家における筆みたいなものだ」という話をします。いい書のためにはいい筆が必要だけれど、筆は筆でしかありません。これと同じで、マッピングはあくまで「手段」のひとつであり、それを使って何を実現するかを一番に考える必要があるということです。
そのため、クライアント様から「マッピングをしたい」というご相談をいただいたとしても、課題を聞き取るなかで必要と感じれば「それならライトアップという方法でも素敵な体験を作れるのではないでしょうか?」とか、食をテーマにしたプロジェクトなら「パーティーをやった方がいいと思います」といった提案をすることもあります。
篠宮さん
ネイキッドは課題を徹底的に洗い出したうえで最善のイベントを組み立てるので、クライアント様の満足度も高いと感じます。
編集部
プロジェクションマッピングに固執することなく、クライアント第一であらゆる手段を提案できるところがネイキッドさんの強みであり、成長の秘訣なのですね。
国内のみならず世界各地で作品を発表。イベント会場で商談を行うことも
編集部
ネイキッドさんは海外事業も好調だと伺いました。これまでにどのような国でプロジェクトを手がけてきたのでしょうか?
北原さん
おっしゃるとおり、海外との取引実績が多いのは弊社の特徴といえます。ヨーロッパや北米含め全世界に進出しており、直近では特にアジア・中東などにも力を入れています。
弊社の代表作のひとつである花の体感型アート展「NAKED FLOWERS」は台湾や香港、韓国でも開催していますし、シンガポールでは動物園とコラボしてデジタルアートやプロジェクションマッピングなどを楽しんでもらう「Secret Wild-erland Mandai Wildlife Reserve×NAKED, INC.」を2024年3月まで開催しています。
また、中東でのプロジェクトのひとつとして、サウジアラビアでは歴史的建造物として知られるムラッバ宮殿を舞台にしたエンターテインメントイベントに参加しました。
編集部
海外の国の方から「自分の国でも開催したい」という問い合わせをもらうケースが多いのでしょうか?
北原さん
そうですね。日本のイベントに来ていただいた海外の方に、「自分の国でも開催したい」と会場でお声かけいただくこともあります。以前、日本橋で「NAKED FLOWERS」を開催した時はバックヤードに打ち合わせスペースを作り、その場で商談を行いました。
海外事業の加速を目指し、採用活動も強化したい
編集部
今後の事業の目標があれば教えてください。
北原さん
海外事業のさらなる拡大を目指しています。シンガポールの動物園との初コラボなど、海外での新しいプロジェクトも順調に増えているため、この流れを継続させていく予定です。
編集部
事業の拡大に伴い、組織の拡大も計画しているのでしょうか。
北原さん
はい。最近の急成長に採用が追いついていないので、今以上に採用活動に力を入れたいと考えています。
これからは利益もしっかりと出せる体制を整えなくてはいけません。そのためには外注の比率を下げる必要があり、優秀な社内人材の確保が欠かせません。
編集部
コンサルティング事業や海外事業で成長を続けるネイキッドさんの今後の展開が楽しみです。
女性比率が5割のNAKED, INC. 入社数年でプロデューサーとして活躍する人も
編集部
女性社員の比率が約5割というネイキッドさんでは、さまざまなポジションで女性が活躍されていると伺いました。篠宮さんは、プロデューサーとしてどのようなプロジェクトに携わっていますか?
篠宮さん
クリエイティブコンサルティングに関係するプロジェクトですと、2023年12月〜2024年1月にかけて高知城で開催した「NAKED夜まつり 高知城」があります。
クライアントの高知県さんは県土が東西に広い形をしているため、「観光資源が点在していて観光客が周遊しづらい」という課題を持っていました。そこで、どうすれば周遊につなげられるかを考え、「高知県×NAKED, INC.」という形で、食や文化、歴史、有名人など高知の良さを高知城に集約するというコンセプトを提案しました。
編集部
イベントに来た人が高知県内の魅力にまとめて触れ、「実際に行ってみたい」と思うような仕掛けにしたのですね。
篠宮さん
その通りです。例えば、高知県には透き通る青色をした仁淀川があります。美しい川の色は「仁淀ブルー」と呼ばれ、多くの人を魅了する観光スポットなのですが、中心部からはやや距離があるため、観光客の呼び込みに課題を抱えていました。
そこで、ライトアップや音で仁淀川のような空間を作って訪れた人に川の魅力を知ってもらうことで、「実際の仁淀川にも行ってみよう」というマインドの醸成を狙いました。
挑戦者を歓迎し周囲がサポートをするカルチャーがある
編集部
篠宮さんがネイキッドさんでの仕事にやりがいや魅力を感じるのはどのような時ですか?
篠宮さん
手を挙げれば社歴に関係なく任せてもらえる点に魅力を感じます。私は浅草出身で、2020年に入社してからずっと「いつか浅草を舞台にしたプロジェクトに関わりたい」と言い続けてきました。
そんななか、浅草花やしきさんから弊社に、開園170周年に合わせた新エリアに関するご相談をいただき、「私にやらせてください」と立候補しました。プロジェクトを率いるのは初めてでしたが、経験が足りない部分は周りに助けてもらいながら、2023年の夏に日本の四季を体感できるデジタルアート「NAKED花景色」をオープンすることができました。
編集部
周囲はどのような方法でサポートしてくれましたか?
篠宮さん
私はプロデューサーとして担当し、上司にあたるマネージャーがサポートしてくれたのですが、「これはこうしなさい」と先回りして教えるのではなく、まずは自分の力で設計し、改善した方が良い部分があればアドバイスする形で支えてくれました。そのおかげもあり、自分で考えて動く力がついたと感じます。
編集部
苦労した点もあれば、教えてください。
篠宮さん
大きなお金が動くプロジェクトなので、「意味のあるお金の使い方」についてはとても悩みました。
それまでは先輩の下について動いていたので、お金に関わることは基本的に先輩が担当していました。しかし、花やしきのプロジェクトでは収支の計画を立てるところから自分でやらなくてはなりません。そのため、予算の中でお金をどう使うのがクライアント様の課題を解決するうえで一番良いのか、責任感と緊張感を持って真剣に考えました。
編集部
プロジェクト責任者としての経験を通じて多くのことを学び、成長したのですね。
篠宮さん
そうですね。お金のことだけでなく、クライアント様との調整や全体のスケジュール管理も含めて自分ですべて担当できたからこそ、やり遂げた時の達成感は大きく、できることがすごく増えたと感じました。
リモート勤務も可能だから子育て社員も働きやすい
編集部
ネイキッドさんには、出産や子育てを経て働いているメンバーもいるのでしょうか?
篠宮さん
はい。アートディレクターのトップを務める女性は2児の母で、子育てをしながら活躍しています。ほかにもママさん社員がおり、子どもの学校が終わった後や夏休み期間中にオフィスに子どもを連れてくる人もいますよ。
北原さん
私と一緒に人事を担当している女性社員は子どもが3人おり、ほかの社員が育休から復帰する時などは自身の経験を活かしてアドバイスをしています。子育ての事情を理解してくれる存在がいることで、子どもを持つ社員が安心して働くことができていると感じます。
編集部
勤務時間や働く場所を柔軟に選択できる制度はありますか?
北原さん
弊社はリモートワークを導入しており、女性男性を問わず「きょうは子どもの面倒を見るからリモートで会議に参加します」といったやり取りが頻繁に行われていますよ。
出社の頻度はチームごとに決めており、週に1度出社して顔をあわせるチームもあれば、遠方に住んでいるメンバーが多いチームはフルリモートを基本として定期的なオンラインミーティングでコミュニケーションを取っています。
篠宮さん
私のチームもフルリモートが基本で、毎朝30分のオンラインミーティングをしています。私自身、夫の仕事の関係で2023年5月から福島のいわき市に住んでいます。
編集部
ネイキッドさんには、子育てや家庭の事情があってもキャリアを諦めなくて良い環境が整っていることがよく分かりました。
NAKED, INC.が目指すのは肩書きにとらわれないボーダレスな組織
編集部
ネイキッドさんの社内カルチャーや、組織の特徴についてもお話しいただけますでしょうか?
北原さん
弊社の企業理念のひとつに「Borderless Creativity」があります。これは、ジャンルやリアル・バーチャルといったフィールドを問わずに新たな価値を提案しようという意味ですが、「私たちの組織自体もボーダレスであろう」という思いも込められています。
篠宮さん
社内にはデザイナーや映像チーム、技術者、サウンドチームなど、さまざまなスペシャリストがいますし、中国や韓国など海外出身のメンバーもいます。職種や国籍の境界を超えて異なる強みやバックグラウンドが混ざり合うからこそ、新しい価値を生み出すことができるのだと考えています。
例えば企画の演出を考える際、ディレクターが全てを考えるわけではなく、ほかの職種のメンバーも「自分の世代としてはこう思う」とか「女性としてはこうした方がいいと感じる」など自身のバックグラウンドを活かした意見を積極的に出しています。
編集部
メンバー全員が担当者のようなつもりで、企画を作っていくのですね。
北原さん
その通りです。私たちは肩書きに捉われない働き方を推進しており、職種ごとにはっきりと色分けされているというよりは、グラデーションのように色が混じり合うような組織を目指しています。
弊社の代表はサッカーに例えて、「フォワードもディフェンス力が必要だし、ディフェンダーも攻撃のことを考えて動くことが求められる」と言っています。ネイキッドも、基本的なポジションはあるけれど、柔軟にポジションチェンジができる組織でありたいと考えています。
さらに言えば、社員だけでなくクライアント様や協力会社の方など、ネイキッドの生態系の中にいる人たち全員とボーダレスな関係で一緒にプロジェクトを作り上げていきたいですね。
表現を通じて伝えたい「本質」を突き詰めて考えられる方を歓迎
編集部
ネイキッドさんが求める人材や、活躍できる人の条件について、人事の北原さんはどのようにお考えですか?
北原さん
まずは、ネイキッドのカルチャーにフィットする方に仲間になっていただきたいと思っています。「Borderless Creativity」については先ほどお話ししましたが、「Core Creative」も私たちの理念です。表現する手法以上に、それを通じて伝えたい「本質(core)」を突き詰めて考えることができる方を求めています。
また、自分の考えや過去の経験に引っ張られたり固執したりせず物事をフラットに考えられる素直な方や、「チャンスは与えられるものではなく、自らつかむものだ」と考える方なら、ネイキッドでご活躍いただけると思います。篠宮がインタビューで「周囲がサポートしてくれた」と話していましたが、自ら手を挙げて挑戦する姿勢を見せたからこそ、周りも「応援したい」という気持ちになったのだと思います。
編集部
篠宮さんからも、ネイキッドさんのお仕事に興味を持つ読者の方へメッセージをお願いします。
篠宮さん
興味があるけれど経験がないからどうしようと思っている方に伝えたいのは、「何とかなる」ということです。私はアートも映像制作もデザインも、何の経験もない状態で入社しましたが、何とかなりました。なぜなら、「何とかする」がネイキッドの行動規範だからです。
困った時はセクションの垣根を越えてみんなが助けてくれるので、恐れずチャレンジしてください。
北原さん
足りないスキルがあったとしても、成長した自分をイメージしながら取り組める方なら、きっと活躍していただけると思いますよ。
編集部
創業25年を超え、今もクリエイティブコンサルティングや海外事業などで成長を続けるネイキッドさん。肩書きにとらわれないボーダレスな組織は、アイディアを積極的に出しながら活躍したいと考える人にとって理想的だと感じました。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
NAKED, INC.:https://naked.co.jp/
採用ページ:https://naked.co.jp/recruit